万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本とギリシャ―両首相の逆関係の手続きエラー

2011年11月04日 11時16分40秒 | 国際政治
野田首相、消費増税を表明=国際公約に―G20(時事通信) - goo ニュース
 G20で消費増税を国際公約とした野田首相と、国民投票という”賭け”に出たギリシャのパパンドレウ首相。両首相は、逆関係の手続きエラーをしているように見えるのです。

 野田首相のエラーとは、消費税率の10%上げという国内問題を、G20という国際舞台で公約としたことです。当然に、国民は、野田首相が、国民の合意もなく増税を強行すると予測しますので、野田政権に対する不満は高まります。正しい順序は、最初に、国内において10%の消費税上げについて、国民に充分に説明し、歳出カットなど、財政健全化の道筋を示した上で合意を形成した後で、国際社会に向けて自国の政策として表明することです(国内⇒国際)。一方、パパンドレウ首相のエラーとは、国際問題の解決策を、国民投票という国内手続きに求めたことです。もちろん、民主主義的な手続きとしては、国民投票そのものは否定すべきことではないのですが、ギリシャの場合、政府が包括案を実施しませんと、他のユーロ導入国や世界経済に打撃を与えることになります。ですから、国際責任が伴う事案については、最初に、国際社会において加盟国としての義務の履行を明確にし、その後で、国民を説得するという順序になるはずです(国際⇒国内)。

 ギリシャのパパンドレウ首相は、国民投票で否決されるとは予測せずに、国民投票という手段を選んだのでしょうが、万が一にも”賭け”に負ければ、ギリシャ発の経済危機が世界を覆うことになりかねません。そして、もし、野田首相の手続きが正当化されるとしますと、それは、日本国の財政破綻発の恐慌のシナリオが現実味を帯びていることになるのですが、果たして、敢えて、”国際公約”としなければならないほど、日本国には危機が迫っているのでしょうか。何れにしましても、両政府の説明不足は、内外の混乱に拍車をかけていると思うのです。

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