万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

EUの京都議定書推進―財政危機の遠因では

2011年11月28日 15時55分30秒 | ヨーロッパ
「京都議定書はシンボル」EU代表団 COP17開幕へ(朝日新聞) - goo ニュース
 もし、温暖化ガスが地球の気候に多大なマイナス影響を与え、人類の生活空間を破壊するならば、その削減は喫緊の課題です。ところが、最近に至って、温暖化現象の二酸化炭素犯人説には疑問も呈されるようになりました。一方、こうした地球温暖化の原因に関する議論は置き去りにして、COP17は、南アフリカで予定通りに開催され、京都議定書の延長問題が議論されるそうです。

 京都議定書の生みの親でもあるEUは、COP17の方針について、当議定書の延長を支持することを早々に表明したそうです。しかしながら、EUのひときわ熱心な温暖化ガス削減への取り組みが、財政危機の遠因となっている可能性は、否めないのではないかと思うのです。何故ならば、京都議定書で削減の義務を負っているのは、EUや日本などの先進国であり、BRICsを始めとした新興国では、厳しい規制はありません。そこで、EU域内の企業が、生産を増加させようとする場合、域内よりも規制の緩い域外の国に工場を建設しようとするインセンティヴが強く働くのです。この結果、域内の産業の空洞化が進み、税収の低下、雇用対策などのための政策費の増加、国債の増発といった負のスパイラルを描くようになったとも考えられます。

 日本国もまた、経済の”6重苦”に直面していますが、EU域内の産業もまた、苦戦を強いられています。しかも、新産業として有望視されいたエコや再生エネルギー分野でも新興国に追い上げられていますし、金融面から期待されていた排出権取引市場も低迷しています。COP17で、新興国への削減の義務付けが実現しないとなりますと、EUは、さらに自らに重い足枷を課すことになるのではないかと思うのです。

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コメント (4)
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