万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

欧州財政危機―ケインズ主義の終焉か

2011年11月10日 17時32分15秒 | 国際経済
イタリア首相、12日にも辞任 後継、元欧州委員が軸(朝日新聞) - goo ニュース
 ギリシャの財政危機は、イタリアにも飛び火し、イタリア国債の金利が危険水準である7%を越したと報じられています。

 危機の連鎖にヨーロッパ経済は不安定な状況が続いていますが、この現象から導かれる結論とは、ユーロを導入した以上、ケインズ主義的な財政拡大政策は、もはや採用できないということなのかもしれません。中央銀行に高い独立性を与えたESCBの設計は、マネタリストの主張を基調としていると指摘されていましたが、今回の連鎖的な財政危機は、マネタリスト的な中央銀行とケインジアン的な政府とが、共存できないことを示しています。リーマン・ショック以来の急速な景気の後退に対処するために、各国は、財政規律を緩めて、国債の増発による財政拡大政策を実施しました。しかしながら、その後に起きる事態については、充分には予測していなかったようです。条約によって、ECBによる国債の直接的な引き受けを禁じられている以上、デフォルトの可能性は、独自の中央銀行を持つ国の数倍に跳ね上がるということを・・・。

 ユーロ圏におけるECBとユーロ導入国政府との政策方針の齟齬は、結局、財政危機として表面化することになりました。ケインズ主義的な景気対策は、危機の先延ばしに過ぎず、時間を置いて、財政危機として欧州経済に襲いかかることになったのですから。この教訓は、ユーロ圏のみならず、世界各国の今後の財政および金融政策に、少なくない影響を与えるのではないかと思うのです。

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