万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

菅首相は何故辞めたのか?-国民が知らない本当の理由

2021年09月06日 15時33分42秒 | 日本政治

 菅義偉首相の突然の自民党総裁選への不出馬表明は、驚きを以って国民から受け止められることとなりました。菅内閣に対する支持率が下げ止まらないとはいえ、現職の首相である以上、当然に総裁選には出馬するものと見られていたからです。そして、さらに国民を驚かせたのは、菅首相が語った不出馬の理由ではなかったもしれません。’コロナ対策に専念したい’というものであったのですから。

 

 おそらく、国民の大半は、菅首相のこの説明を言葉通りには信じないことでしょう。コロナ対策のためには選挙に時間や労力を割くことができないとなれば、どの国の首脳も、大統領選挙や議会選挙、あるいは、党内選挙を闘うことができず、再選の道を自ら断たざるを得なくなるからです。菅首相と同様の理由を以って選挙への出馬を断念したとするお話は聞きませんので、菅首相の’国民の命と健康を護るためにコロナ対策に専念する’とする’不出馬理由は、国民向けに作られたヒロイックな’カバー・ストーリー’である可能性が高いと言えましょう。

 

 しかも、メディアの多くは、党総裁選への不出馬、あるいは、退陣と表現していますが、事実上の’辞任’である点も気にかかるところです。報道によりますと、党内選挙を経て新しい党総裁が選出された後、即、臨時国会が召集されて新たな首相の指名が行われる予定なそうです。過去には首相と第一党の党首が一致しない事例もありますので、このことは、衆議院議員の任期満了を待たずして首相が交代することを意味しています。同政治日程からしますと、今般の総裁選への不出馬表明は、その実態において辞任と言わざるを得ないのです。

 

 総裁選への不出馬表明が辞任を意味するならば、首相交代を急ぐ必要は何処にあったのでしょうか。ここで国民の多くは、党内人事を思い起こすかもしれません。総裁選への出馬を表明するに際して二階幹事長を交代させる方針を示した岸田議員に対して、菅首相が二階幹事長の更迭を以って先手を打った一件です。国民に不人気な中国派の二階氏を外すことで党内人事の一新を図り、総裁選にあって党員のみならず国民全般からの続投支持を得ようとする思惑があったのでしょうから、この時点では、菅首相は、総裁選に立候補する予定であったはずです。ところが、その二階幹事長との会談後に、急転直下、不出馬を表明すると共に、党内人事も白紙に戻されて同幹事長が居座ることになったのです。こうした経緯から、巻き返しを画策した二階幹事長が菅首相を事実上の辞任に追い込んだとする憶測もあながち否定もできなくなりましょう。報道陣を前に菅首相の不出馬について説明する同幹事長の表情は、どこかうれしげでもありました。

 

仮に、二階幹事長がキング・メーカーであるならば、一体、どのような言葉を以って首相を追い詰めたのでしょうか(何らかの弱みを材料とした脅迫?)。辞任に至るまでの詳しい経緯は、主権者である国民が当然に知るべき情報でありながら、厚いベールで覆われています。

 

その後、二階幹事長は、中国からの覚えがめでたい石破氏を支持するとも報じられておりますので、中国が望んでいるのは石破親中政権の誕生なのかもしれません。しかしながら、その一方で、総裁選挙にあって石破氏が当選する可能性は極めて低く、同幹事長は、’負け馬’に乗っていることになります。敢えて負け組を選択しているとしますと、自滅行為ともなるのですが、自らの生き残りのみが目的であったとしますと、この不可解な行動も理解の範囲には入りましょう。菅首相を退陣には追い込んだものの、この時点での後任は白紙状態にあり、総裁選に際しての二階幹事長の支持条件が自身の幹事長留任であったとすれば、同条件を飲んだ候補者は、石破氏しかいなかったのかもしれません。

 

その一方で、仮に、菅首相の退陣が既に何らかの外部勢力によって決定されていたとしますと、どうでしょうか。総選挙への不出馬表明は、たとえ出馬したとしても無意味なことを、菅首相が悟ったからということになりましょう。このケースでは、二階幹事長の役割は菅首相に引導を渡すメッセンジャーに過ぎないこととなります。同外部勢力は、菅首相の対応を生ぬるいとみて、より強力に’上からの改革’を断行し得る首相への交代を求めたかもしれないのです。接種義務化をも視野に入れてワクチン接種を推進し、ワクチンパスポートの導入を以って全国民をデジタル監視下に置くことに躊躇しないような首相を…。メディアの動向を見ますと、同勢力は、次期首相に河野太郎氏を推しているように見えるのですが、確かに、猪突猛進型の突破力、並びに、容赦ない無慈悲さという面からしますと、同氏に白羽の矢が立てられるのも頷けます。

 

何れにしましても、今般の首相辞任劇にあって、国民は蚊帳の外に置かれております。何時の間にか、日本国が外部からコントロールされ、かつ、全体主義体制に絡めとられることがないよう、国民は、政界に対して強く情報の公開と説明責任を求めるべきではないかと思うのです。


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