本日、ポーランドにミサイルが着弾し、二人が犠牲となったとするニュースが飛び込んできました。報道に依りますと、同国に対してミサイルを発射したのはロシアらしいのですが、ウクライナ情勢の現状に鑑みますと、ロシア軍攻撃説には疑問もあります。
仮にロシアによる攻撃であるとすれば、ポーランドはNATOの加盟国ですので、一国への攻撃を全加盟国への攻撃と見して集団的自衛権が発動されることとなります。当然に、第三次世界大戦へと一気に戦火が拡大する事態に直面しますので、この問題は深刻です。このため、NATOの盟主とも言えるアメリカも、一先ずは慎重な態度を示しています。米国防総省のライダー報道官は、記者会見の席で「現時点では、これらの報道を裏付けるような情報はなく、調査中だ」とのみ述べるに留めているのです。ポーランドのドゥダ大統領はツイッターでバイデン米大統領との間では、既に協議の場が設けられたそうですが、両国とも、ここは、拙速な判断は避けたいところなのでしょう。
かくして、ポーランドに対するミサイル攻撃は、調査の対象となったのですが、このことは、アメリカを含めた何れの国も、ロシア軍攻撃説を疑っていることを示しています。日中戦争の発端となった盧溝橋事件のように、誰の仕業であるのか、不明確なケースも少なくありません。着弾は、ウクライナとの国境から約12キロメートル(6キロとする報道も・・・)の東部プシェボドゥフの‘穀物を乾燥させている地域’とされ、ポーランドのラジオ局Zetによれば、流れ弾である可能性は高いようです。攻撃ではなく流れ弾の着弾であれば、意図的ではなくミスによる誤爆になりますので、たとえロシア軍によるものであったとしても、NATOにおける集団的自衛権の発動要件を欠くことになりましょう。流れ弾説が事実であれば、多くの人々が、ほっと胸をなで下ろすことでしょう。
ロシア側の反応を見ても、ロシア軍攻撃説の旗色は悪くなります。多くの識者も指摘しているように、同地の戦況に関する報道が正しければ、ウクライナ側の巻き返しによりロシア軍が一部撤退に追い込まれている現状にあって、ロシアには、戦火を拡大する動機が薄いからです。ウクライナ一国との戦闘に疲弊している状況にあって、強大な軍事力を誇るNATOを自ら引き込もうとするはずもありません。実際に、ロシア国防省は、「状況を悪化させることを意図した挑発」として同説を否定しています。ロシアが戦略の一環としてNATOとの戦いを望んでいるならば、敢えて関与を否定する必要はなく、NATOによる軍事支援などを口実にして、宣戦を布告してもおかしくはないのです。
常識的に考えれば、ロシアがミサイルを発射するはずはないのですが、やはりロシアである可能性が捨てきれないとすれば、幾つかの動機が推測されます。その一つは、ロシア軍内部に潜んでいる‘外部組織’による謀略であったというものです。ロシア軍の指揮命令系統の乱れは、同国の劣勢を説明する理由としてしばしば指摘されていますが、同軍において工作員、あるいは、工作部隊が密かに活動している可能性はありましょう。そして、もう一つの恐ろしいシナリオは、ロシアが、核戦争を計画しているというものです。NATOが参戦すれば、ロシアの敗退が色濃くなるのですが、それは、窮地に陥ったロシアは、核兵器を使用する口実を得ることにもなります。敗戦が決定的となる状況は、ロシアが自己決定した核兵器の使用要件を満たしてしまうからです。これは、いわば、自らを背水の陣に置く捨て身の作戦、あるいは、核戦争での生き残りを確信した上での作戦となりましょう。
ロシアの線が薄いとすれば、ロシア以外で、ポーランドに対して攻撃を仕掛ける動機を持つ者はいるののでしょうか。犯人の推理においては、その犯行で最も得をした人を探せ、という有名な原則がありますが、この原則に照らせば、ウクライナということになります。同国のゼレンスキー大統領は、ロシア軍による攻撃と決めつけ、「著しいエスカレーション」だと述べたと伝わっています。この発言から、同大統領は、同事件がNATO参戦を意味することを深く認識していることが窺えます。NATOの参戦は、ウクライナにとりましは、鬼に金棒なのです。
もちろん、ウクライナ側の自作自演の場合でも、ウクライナ政府のみならず、内部の対ロ強硬派の一部部隊による可能性もありましょう。もっとも、ゼレンスキー大統領の発言からしますと、軍が政府の方針を無視して独自に行動したとは考えがたく、仮に、軍の暴走であったとしても、政府は事後承認しているのかもしれません。
以上に述べてきましたように、必ずしもロシアの攻撃と断定することはできないように思えます。また、上記の可能性の他にも、ポーランド、あるいは、NATO内部の何らかの組織による犯行である可能性もありますし、何れのケースにあっても、大元を辿れば、巨大な戦争利権を有すると共に世界大に広がるネットワークをも擁する世界権力に行き着くかもしれません。最悪の場合、ロシア攻撃説が一方的に認定され、第三次世界大戦へと発展してしまうのですから、ここは、公平・中立な立場からの厳正なる調査を実施し、たとえロシアによる‘犯行’であることが判明したとしても、日本国を含む国際社会は、戦火の拡大の阻止に知恵を絞るべきではないかと思うのです。