万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

限りなく怪しいイスラエルとハマス

2023年11月08日 12時54分20秒 | 国際政治
 人道的中断であれ、停戦であれ、世界各地において戦闘中止を求める声が高まる中、イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスの壊滅、否、ガザ地区の制圧を目指した地上侵攻続行の構えを崩してはいません。もっとも、ポーズとしては停戦の条件としてハマスが連れ去った人質の解放を挙げているのですが、イスラエルとハマスとの間には、どこか気脈を通じている気配が感じられるのです。

 この‘気配’は、第六感によるものというよりも、両者が示す相互反応の観察に基づいています。既に、中東地域における過激派武装集団の存在自体が、CIAあるいはその背後にあって同組織をもコントロールする世界権力が育成・支援したとする指摘があります。ハマスもその一つである可能性も当然に頭に入れておくべきことです。そして、この疑いを一層強めているのが、両者に見られる幾つかの不可解な行動です。

 本日、プレジデント・オンラインに、「ユダヤ批判は絶対に許せない立場だが…アラブ系移民の「反イスラエルデモ」に手を焼くドイツの苦悩」というタイトルの記事が掲載されておりました。同記事において注目されたのは、ハマスによるイスラエル奇襲の際して撮影された映像に関する記述です。同記事には、以下のような記述があります。

 「実はイスラエルは、10月7日の朝、ハマスのテロリストたちが急襲時に衣服に付けていたボディカメラの映像を、複数入手している。しかし、そこに映っていた蛮行のあまりの酷さに、イスラエル政府はそれを一般公開できず、ジャーナリストにのみ公開した。それを見たドイツ系のイスラエル人記者の話では、海千山千の同僚たちが、皆、ショックで言葉を失ったという。」

 この記事が正しければ、10月7日のハマスによる奇襲作戦が、イスラエルにとりまして事前に何らの動きもキャッチし得ない寝耳に水の‘奇襲’であったのか、疑わしくなります。テロリストが衣服に付けていたボディカメラの映像をリアルタイムで入手できる情報盗取技術をイスラエルが有しているならば、テロリスト達は、ガラス張りの箱の中で行動していたに等しいからです。あるいは、ガザ地区における戦闘中に同映像のファイルをテロリストもしくはその拠点から押収したとも考えられますが、後日の入手であれば、イスラエルは、テロリストの‘蛮行’の実態を知らずし、激烈な報復行動に出たことになります。

 また、上記の記事ではイスラエル政府は、自らが入手した映像については一般公開せずにジャーナリストのみに公開したとしています。しかながら、この判断もどこか不自然です。イスラエル側の報道姿勢が抑制的な一方で、ハマス側は、奇襲に際しての自らの‘蛮行’を積極的に内外に向けて発信しているのですから。イスラエルは、ハマスの残虐行為に対する報復として軍事作戦を展開しているのですから、むしろ、ハマスの非人道性を内外に向けて積極的にアピールした方が多くの人々の支持を得られたはずです。人々を‘報復やむなし’の方向に誘導する残虐性のアピールについては、イスラエルとハマスとの間で役割分担があったとも推測されるのです。

 そして、イスラエルのネタニヤフ首相が人質解放を停戦の条件として提示しながら、同提案の受託にハマスが消極的である点も、疑わしさを増しています。ガザ地区では、毎日、数百人規模で住民の命が奪われています。ハマスは、イスラエルとの交渉に応じれば、ハマスもろともガザ地区の壊滅が予測される地上侵攻作戦が中止され、人質の人数を大きく上回る多数の住民の命を救うことができるわけですから、人質の解放は合理的な判断となるはずです。それにも拘わらず、消極的姿勢を示すことには、紛争を終結させたくないイスラエル、あるいは、その背後に控える世界権力の意向に従っているのかもしれません。敢えてハマス側が停戦を拒否することによって。

 何れにしましても、イスラエルとハマスとの関係については、その実態を見極める必要がありましょう。仮にイスラエルとハマスとの協力関係が実際に存在する、あるいは、世界権力という同一組織に属していることが明らかとなれば、長きに亘って続いてきたパレスチナ紛争も、対立の構図が空中分解することで、思いの他に速やかに終息に向かうのではないかと思うのです。

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