報道によりますと、参議院選挙の結果、改憲勢力3分の2の状態を維持したことを受けて、岸田首相は、憲法改正に向けた発議を急ぐ方針を示しております。憲法改正は、暗殺された安倍元首相の悲願であっただけに、その行方に関心が集まっています。故安部元首相については評価が凡そ二分しており、保守派からは、戦後体制から脱却し、憲法改正への道筋を付けた偉大な政治家として称賛される一方で、左派からは、森友・加計学園の一件もあり、‘安倍政治を許さない’とする糾弾の声も聞こえていました。
今般の安倍元首相暗殺事件については、山上容疑者の個人的な統一教会に対する恨みによる犯行とする説が、マスメディアによって凡そ‘定説化’しています。しかしながら、日本国を代表する政治家の暗殺事件、しかも、‘敵’も多い政治家でしたので、同元首相の暗殺事件には政治的な意図や背景があるのではいか、と考える方がよほど常識的な反応です(他の可能性を考えようとしない思考停止が恐ろしい…)。それでは、政治的な動機があったとすれば、それは、どのようなものなのでしょうか。
ケネディ大統領暗殺事件にありましても、同大統領を暗殺する動機を持つ組織や人物があまりにも多く、それが真相究明を難しくしてきた側面があります。ソ連説、キューバ説、CIA説、マフィア説など、組織の名だけでも数限りがありません。安倍元首相の場合も、左右どちらかの政治勢力が狙った、あるいは、両者を操っている超国家権力体の指令であった可能性も否定はできません。容疑者が多すぎて判然とはしないのですが、この問題を考えるに当たって、一つ、重要な政治的ポイントがあるとすれば、それは、やはり憲法改正問題ではないかと思うのです。
安倍元首相は、これまで、憲法改正は、自らの生命をかけてでも果たすべき、政治家としての使命と述べてきました。保守層からの支持も、同首相の憲法改正に対する強い熱意に拠ります。中国の軍事的台頭や北朝鮮の脅威という現実を前にして、憲法第9条の改正を訴える安倍元首相を支持する国民も少なく、先にも述べたように、日本国にあって戦後政治に転換点をもたらした政治家として評価されているのです。
安倍元首相の保守派の旗手としてのスタンスからしますと、保守派が暗殺の動機を持つはずはないのですが、仮にあり得るとすれば、安倍元首相の暗殺、あるいは、襲撃事件の発生により、今般の参議院選挙にあって同情票を集めるというものです。選挙を目前にして、岸田政権に対する支持率は急激な下落を見せていましたので、‘弔い合戦’ともなれば、不利な形勢を逆転する、あるいは、自民圧勝の説明要因を得ることができます。
因みに、暗殺当日の午前7時半に、ネット上に以下の書き込みがあったそうです。
《本日金曜日、某所でまあまあ大きな出来事が起きる そのことが、特定の党にとって大きな追い風となる 追い風は弱まることなく投開票日に突入するるるる そのような夢をみた》(原文ママ)(Yahoo ニュースより引用)
同書き込みについては、山上候補者本人によるものとする推測があり、この推測が正しければ、供述とは違い、明らかに政治的目的があったことになります。その一方げ、山上容疑者本人の投稿でなければ、やはり、’安倍首相襲撃事件’のシナリオは存在していたのかもしれません…。(加筆)
その一方で、安倍元首相に対する護憲派の態度は、批判を越えて憎悪に近いものがありました。安倍首相が襲撃されたとする一報に、多くの人々は、まずもって日頃より罵倒してきた左派によるテロを思い浮かべたことでしょう。山上容疑者の逮捕後にあっても、暗殺の責任を、安倍氏に対してならば、何をしてもよいといった風潮を作り上げてきた左派の人々に求める声が上がったくらいです。
また、海外に目を向けますと、第9条を含む憲法改正は、日本国の軍事力の強化を意味しますので、中国、北朝鮮、並びに、韓国からしますと、望ましいことではありません。このため、政治的暗殺である場合には、これらの諸国の工作員による可能性も否定はできなくなります。
もっとも、上記の説明はつい数年前までは説得力があり、仮に、政治的な背景を疑うならば、真っ先に国内では左派、国外では中国、北朝鮮、韓国といった諸国に嫌疑がかけられたはずです。しかしながら、近年に至り、状況はそれほど単純ではなくなっています。とりわけ、コロナ禍、並びに、ウクライナ危機以降となりますと、必ずしも憲法改正が日本国の安全保障を強化し、国民の命を護るとは言い切れなくなっているからです。
コロナ禍にあっては、諸外国がロックダウンを行うなど、強制的な手段を用いたことから、憲法において緊急事態宣言条項の新設が提案されるようになりました。有事を想定してのことですが、感染症の蔓延が宣言対象に含まれると共に、同条項が濫用されますと、国民の基本的な権利や自由が大きく制限されるリスクがあります(ワクチンの強制接種も可能に?)。
また、ウクライナ危機に当たっては、日本国にも第三次世界大戦への参戦の可能性が生じてきています。しかも、トランプ政権時においてアメリカで提起されたディープ・ステート批判は、近現代史における超国家権力体の存在を陰謀論の世界から現実の政治の世界へと引き出す役割を果たしています。今日、revelationの時代にあって、明治以来、日本国の軍事力がこれらの勢力の利益のために利用されてきた側面も否定し得なくなる状況が生まれており、今般の憲法改正も、‘鉄砲玉’としての役割が日本国に期待されている、あるいは、対中ロ陣営との戦争に巻き込まれることにより、結果として再度国土が焦土と化し、併せて日本国が完全に超国家権力体の支配下に置かれるリスクも認識されるに至っているのです。超国家権力体による指図であれば、上述した保守派の動機は同組織と共有されており、安倍元首相は、憲法改正のために彼らの祭壇に犠牲として供されたこととなりましょう(あるいは、中国や韓国・北朝鮮等に対しては、日本国の憲法改正の阻止のために、中心的な役割を担ってきた安倍元首相を暗殺するよう教唆したかもしれない…)。
以上に述べてきましたように、憲法改正問題に照らして安倍元首相暗殺事件について考えてみますと、その背後には、様々な組織や人物たちの思惑や政治的動機が浮かび上がってきます。そして、それは、決して国内問題、あるいは、一宗教団体の問題ではなく、極めて国際性、あるいは、超国家性を帯びていることに気が付かされるのです。(続く)