万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

核保有が日本国の戦場化を防ぐ-台湾有事への対応

2023年02月03日 12時31分58秒 | 国際政治
 中国の習近平国家主席が台湾の武力併合をも辞さない構えを見せている今日、台湾有事が、日本国の安全を直接的に脅かす事態であることは、誰もが認めるところです。アメリカのバイデン政権はウクライナ紛争への介入の度を強めており、同政権の介入主義的な方針からすれば、台湾有事に際して同様の対応を採ることが予測されます。

 台湾有事につきましては、あらゆる手を尽くしてこれを未然に防ぐのが最善の策です。平和的な解決手段としては、台湾の国際法上の独立的地位を確認訴訟を通して確立するという方策もあるのですが、各国の政治家の怠慢や中国、あるいは、世界権力の妨害により、阻止されてしまう可能性があります。このため、多方面からのアプローチを同時に進める必要があるのですが、軍事的手段としては、抑止力に期待する同国の核保有があります。そして、核保有案は、台湾有事が日本有事と同義となりかねない日本国につきましても、3つの局面において日本国の防衛力を高めるのではないかと思うのです。

 第一の局面は、中国が未だに台湾に軍事侵攻していない状態における間接的な対中抑止力の強化です。日本国と台湾とのダブルの核保有が実現すれば、第一列島線を凡そ覆ってしまいますので、最も効果的な対中核抑止体制となりましょう。否、仮に台湾の核武装が実現する一方で、日本国が非核兵器国のままですと、中国の拡張主義の矛先が日本国に向かうリスクが高まりますので、日本国にとりましては、両国の同時核武装が望ましいのです(日米同盟に基づく‘核の傘’については、有事に際して開かない可能性が高い・・・)。また、国際社会に対してNPTからの合法的脱退を説明するに際しても、対中抑止・防衛政策として両国同時の方が理解が得やすくなりましょう。

 第二の局面は、中国が台湾に軍事侵攻した際において期待される効果です。台湾有事に際しての日本国の関与については、(1)間接的な対台武器供与並びに後方支援に留める、(2)米軍と一体化して自衛隊が戦闘に参加する、という凡そ二つの選択肢があるそうです。(1)のケースは、さらに(1)a米軍は派遣されず、台湾関連法に基づく武器供与に限定する、(1)b.米軍のみが参戦し、自衛隊は後方支援を担当する、の凡そ二つに分かれることでしょう。(1)aのケースでは、日本国が直接的に中国の標的となる可能性は低いのですが、(2)b.の場合には、米軍基地並びに後方支援行為により対日攻撃の可能性が格段に高まります。

 (2)b.の結果、中国が対日攻撃を行なえば、日米同盟が発動されて(2)へと移行することとなるのですが、この場合、一つの大きな懸念があります。1月31日付けでJBプレスに掲載された「台湾有事に日本は戦場になる――が既成事実化し始めた危険度」というタイトルのWEB記事に依りますと、「米国はインサイド・アウト作戦と呼ばれる構想を採用している」といのです。この作戦、簡略化して述べますと二段階作戦であり、開戦後の第一段階にあっては、最初に第一列島線に配置されている「インサイド部隊」が中国からの対空・対艦攻撃をしのぎ、中国のミサイル攻撃力が消耗された時点で、第二段階に移行し、「アウトサイド部隊」によって人民解放軍を打ち負かすという作戦とされます。言い換えますと、自衛隊は「インサイド部隊」の一角を占めるのですが、第二段階への移行には、人民解放軍側のミサイルの消耗を要しますので、日本列島には、激しいミサイルの雨が降ることが予定されているのです(これらのミサイルを迎撃できなければ、日本国捨て石作戦、あるいは、米中戦争を装った世界権力による日中相打ち計画・・・)。

 ‘インサイド・アウト作戦’は米軍が決定した公式のものではないものの、現下の中国軍の海空によるミサイル攻撃重視の基本姿勢に対する米軍側の合理的な対応であり(陸続きのウクライナ紛争とは異なり、海を隔てた台湾や日本国への攻撃はミサイルが中心となる・・・)、実際に、この線に沿った米軍の配置転換が確認できるそうです。すなわち、中国と日台は、海を隔てているがゆえに、ミサイル戦となる確立は高いこととなりましょう。となりますと、たとえ最中的にアメリカが勝利をおさめたとしても、台湾有事は、日本国を廃墟と化しかねない深刻な事態となりましょう。日本国の核武装が必要とされる第三の局面は、中国が対日直接攻撃に踏み出そうとする時です。一端、中国が日本国を攻撃すれば、インサイド・アウト作戦が発動されてしまいますので、日本国には、何としても自国に対するミサイル攻撃を中国に躊躇わせる必要があるのです。

 以上に、中国からの核攻撃に対する報復という反撃効果もあるものの、三つの局面に分けて日本国の核保有の抑止効果について述べてきました。今般、日本国政府は、通常兵器の増強による抑止力の強化を訴えていますが、NPT体制とは、予めボードの四隅が核兵器国に与えられているオセロゲームのようなものですので、同ボードそのものを無効化しないことには、日本国は滅亡の危機に瀕してしまいます。最善の防止策は、中国を包囲する形でフィリピンから日本国に至るまでの第一列島線上にある国が同時に核兵器を保有することなのでしょうが、戦争の未然防止のため、すなわち、平和のための核保有という選択肢もあるのではないかと思うのです。固定概念への固執はしばしば身の破滅をもたらしますし、思考停止こそ、最大の‘内なる敵’なのかもしれません。

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