万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

現代国家は現実と理想の間で苦しむ

2007年11月17日 18時09分50秒 | アメリカ
LA警察、イスラム教徒のコミュニティー示す地図の作成を中止(ロイター) - goo ニュース

 現代国家は、法の前の平等の原則を尊重し、宗教、民族、人種などによって差別をしてはならないことになっています。多くの国では、この原則は憲法においても明記されており、国民は、法的な側面から見ますと、いわば抽象的な個人に還元されているとも言えましょう。しかしながら、その一方で、この理想が現実と食い違う時、現代国家は、解決の難しい問題に直面することになるのです。

 現代国家の多くは、移民を受け入れており、出身国を同じくする人々が独自のコミュニティーを形成している場合は少なくありません。このことが、何らかの治安や社会上の問題を起こさない場合には、表だって問題化することはないのですが、現実には、そうとばかりは言えないのです。例えば、本記事にあるように、イスラム教徒のコミュニティーがテロリストを生む土壌となったり、犯人の潜伏先となるような場合には、安全な社会を求める他の住民側から取り締まり強化の要望が寄せられることになるのです。

 個人ではなく、集団が問題となる場合、現代国家は、理想と現実との間で苦しむことになります。理想を追求すると有効な手段をとれなくなり、現実に対処しようとすると、今度は、法律上の原則とぶつかることになるからです。誰もが安心して生活できる社会を築くためには、もう一度、集団(コミュニティー)と個人、そうして、集団(国、地方自治体、都市・・・)の中の集団(コミュニティー)の問題を考えてみる必要がありそうです。

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