万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

怒りと憎しみの感情は解けないのか

2007年12月16日 18時42分24秒 | 中近東
揺るがぬハマス支配 ガザ制圧から半年(朝日新聞) - goo ニュース

 人間とは、怒りや憎しみが原因となって、相手に対して”絶対に許せない”とい感情を持つものです。そうして、頑なになった人の心を解きほぐすのは、並大抵のことではありません。創設記念集会に30万人もの住民を集めたハマスは、パレスチナ人のイスラエルに対する積年の憎悪を飲み込みながら拡大した勢力ですので、パレスチナ人に憎悪の感情ある限り、その勢力は衰えそうもないのです。

 人間の心の問題については、心理学や精神医学では専門的な対処法がありましょうが、最も一般的な方法としては、1)謝罪する、2)償う、3)相手の言い分を聞く、といった行為が考えられます。3)に関しては、イスラエルは、自らの存在を否定しなくてはなりませんので、無理なお話になりますが、1)と2)については、中東和平交渉の過程で、占領地の拡大や入植地の建設などに関連して、謝罪や賠償、あるいは、相応の代償を示すことはできそうです(もちろん、パレスチナ側もテロ行為などについては謝罪の必要がありますが・・・)。これらの行為には、確かに、行き過ぎていた側面が認められるからです。

 イスラエル側の真摯な対応が、あるいは、パレスチナ人の憎悪を解くことになると期待することは、楽観的に過ぎるかもしれません(ハマスには、紛争を長引かせたい外部の思惑による支援があるかもしれませんし・・・)。しかしながら、紛争解決のためには、この問題の根底にある人間の感情というものに、もっと心を配る必要があるように思うのです。

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他民族を支配するリスクと負担

2007年12月15日 18時38分10秒 | ヨーロッパ
コソボ独立容認と引き換えに、セルビアのEU加盟前倒しも(読売新聞) - goo ニュース

 コソボの独立承認は、自国領土の喪失を意味しますので、セルビアが、できる限り阻止したいと考えることは、理解に難くありません。しかしながら、その一方で、他民族を支配するということも、メリットばかりというわけではないのです。

 古今東西を問わず、他民族支配が紛争の原因となった事例は枚挙に遑がありません。19世紀後半から、民族主義運動は、各地で激しい独立運動を引き起こしましたし、近年でも、アイルランド紛争、バスク紛争、チェチェン紛争、チベット問題などなど、民族紛争の多くは流血を伴う悲惨なものでした。テロ事件の多くも、民族紛争に起因する場合が少なくないのです。もし、独立を認めないとしますと、領域内に留まるという相手方の合意を取り付けない限り、長期にわたって不毛なる武力闘争が続くことになりましょう。

 他民族支配には、政治的な不安定化というリスクに加えて、そのリスクに耐えるための経済的コストもかかるものです(ただし、ロシアや中国のような資源目当ての支配は別として・・・)。セルビアは、コソボを手放したとしても、EU加盟というチャンスを上手に生かすことができれば、むしろ、自国の発展と安定の基礎を築くことができるかもしれないと思うのです。

 

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国家独立には国連決議が必要?

2007年12月14日 21時51分57秒 | ヨーロッパ
コソボ独立で首脳協議 EU、合意達成が焦点(共同通信) - goo ニュース

 コソボ独立に反対するセルビアのタディッチ大統領は、コソボが国連手続きを経ずして独立宣言をした場合、国際司法裁判所に訴える用意があるとする声明を発表しました(日経新聞本日朝刊)。この提訴は、突き詰めますと、国家独立には、国連決議が必要なのか、という問題を問うものとなりそうなのです。

 国家独立については、国際慣習法が要件としているのは、一定の領域内に、民族自決権に由来する特定の国民が存在し、かつ、政治的な権力(主権)が確立していることです。この要件を満たしていれば、独立国家としての資格を持つことになります。しかしながら、国家承認の効果については定説はありません。現在までのところ、承認は、それぞれの国々が独自の判断で行っており、国家独立には国連の承認を必須条件とするというルールは成立していないのです。このため、国際司法裁判所に提訴したとしても、そもそも、こうしたルールがありませんので、判断のしようがないことになりましょう。もし、独立には国連の承認を必要とする、というルールを国際社会でつくるとするならば、それは、司法ではなく立法行為となるからです。

 現在の国際情勢を眺めてみますと、国連決議は国家独立の要件とするルールは、そう簡単には成立しそうにありません。国連を舞台に政治的に独立を否定される国が登場してきてしまいそうですし(台湾・・・)、国連が決定権を持つとしますと、結局は、第三者がその国の存立を左右してしまうことになるからです。時にして、国連の政治的な決定は、事態をさらに収拾のつかないものにする場合のあることを(パレスチナ紛争)、忘れてはならないと思うのです。

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闘う相手を間違えないで

2007年12月13日 18時24分04秒 | ヨーロッパ
慰安婦決議へ、欧州議会 日本政府に公式謝罪求める(共同通信) - goo ニュース

 米下院に始まる”慰安婦決議”の波は、オランダ、カナダと続き、終にEU議会にまで達することになりました。この動きが連鎖性を持つことから見ますと、おそらく、何らかの国際ネットワークを持つ組織的な背景があるものと憶測することができます(違う国や地域が、同時期に同じ内容の決議の採択するのは、あまりに不自然です・・・)。

 それでは、この背景とは一体何なのでしょうか。もちろん、16世紀以降の歴史を振り返りますと、欧米諸国の中で、他国を一方的に批判できるほど倫理的に潔癖であった国はありません。他国への批判は両刃の剣となります。それにも拘わらず、”慰安婦決議”が、こうも簡単に可決されるとなりますと、むしろ、現在、身に覚えのある国が、自らに国際批判の矛先が向くことを避けるために、日本国を人身御供にしているのではないか、という疑いさえ頭にもたげてくるのです。

 各国やEUの議会が心して闘うべき相手とは、本当は、今この時に起きている人権弾圧や迫害なのではないでしょうか。もちろん、日本国にも説明不足や軽率に談話を発表するなどの反省すべき点はあるのですが、何か、これら一連の決議採択には、”目くらまし”があるように思えてならないのです。

 なお、議会決議の手続き上の問題点につきましては、よろしければ、この記事(http://blog.goo.ne.jp/admin/editentry?eid=560f40d313c7f35fd6b2b67edc2ad42a)もご覧になってくださいませ。
コメント (2)
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中東和平は原則に立ち返ろう

2007年12月12日 18時41分35秒 | 中近東
軍事作戦や入植地拡大で進展期待薄=中東和平交渉の準備委が初会合(時事通信) - goo ニュース

 中東和平の難しさは言い尽くされてはいますが、こうした複雑な問題を解決するためには、まずは、遠回りなようでも、原則を確認することから始めることが大切なようです。原則に沿わない解決策は、必ず、どちらかに不公平感を残すことになるからです。

 第一の原則は、国際法の尊重です。現在の国際社会では、少なくとも国境線や国家の行為の正当性は、”法”によって支えられています。この原則は尊重されなくてはなりませんので、イスラエルは、軍事作戦によって入植地を増やすべきではありませんし、パレスチナ側も、ハマスといったイスラム過激集団によるテロ行為を止めさせなくてはなりません。

 第二の原則は、公平性です。1948年の国連決議による分割は、パレスチナ側に不当に不利であったことは事実ですので、本来、イスラエルは、国際法上の義務を負わないとしても、パレスチナに対しては負い目があります。イスラエルが、分割案の国境線とその後に獲得した植民地を維持することを望むならば、パレスチナに対して、相当な補償を行うことが妥当と言えましょう。分割線を越えて拡大された植民地については、同等の面積を持つイスラエル領をパレスチナに譲ると案が合意寸前まで達したと言いますが、その土地が不毛の地であるならば、インフラ整備などの経済的負担もイスラエルが負うべきであるかもしれません。

 第三の原則は、一民族一国家の原則です。イスラエルは、パレスチナ難民の帰還の許可が、イスラエルの人口構成をパレスチナ優位に変えることを恐れていると言います。分割案は、そもそも異なる民族による二国家共存を目的としていますので、難民の全員帰還の要求については、パレスチナ側が譲歩する番となります(もし、一国家の中での両民族が共存できるならば、あえて分割する必要はない・・・)。ただし、イスラエル側は、難民のパレスチナでの定住を経済的に支援する必要はありそうです。

 イエルサレムの帰属につきましては、宗教がかかわりますので、早急な結論には達しないかもしれませんが、パレスチナ側のテロ行為の停止が実現すれば、国境線と難民の問題は、早い段階で合意に近づく可能性はあります。双方とも相手の立場に立って考えてみれば、何が正義にかない、公平であるのか、おのずと見えてくるかもしれません。

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民主主義vs.後継者指名

2007年12月11日 18時47分30秒 | ヨーロッパ
プーチン後継指名、有力者ら一斉に歓迎 ロシア(朝日新聞) - goo ニュース

 強面で知られるプーチン大統領が、意外にも、リベラル派と目されているメドベージェフ第一副首相を後継者に指名したこという情報は、朗報としてロシア国内には伝えられたようです。ロシア証券市場の株価の急激な上昇が示しますように、ロシア経済の将来にとりましては、この指名は、歓迎すべき展開なのかもしれません(ただし、メドベージェフの経営手法は、必ずしも市場経済に適応的とは言えないようですが・・・)。

 しかしながら、その反面、後継者指名という方法が、民主主義国家にとって相応しい手法であるのか、ということになりますと、これは、大変疑問なところとなります。民主主義の原則に従えば、本来、国家のリーダーは、国民が選ぶべきものでありますので、前任者が個人的に後任者を選んでしまいますと、国民の政治的な選択権は大きく制約を受けることになるからです。

 もちろん、ロシア国民は、大統領選挙において、政治的権利を行使できるのですが、それは、選ぶというよりも承認の意味を持つかもしれません。アメリカ大統領選挙が、各党の候補者指名争いから始まることを考えますと、両国の間には、まだまだ民主主義に対する考え方の違いがあるように思うのです。


 

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本当は社会主義的な温暖化対策

2007年12月10日 20時28分25秒 | 国際政治
まず次の交渉の場を=温暖化対策、数値目標に慎重-経産次官 (時事通信) - goo ニュース

 地球温暖化対策は、排出権取引市場の設立が注目を集め、いかにも市場メカニズムが働く先端的な政策領域との印象を強く与えています。しかしながら、その最初のステージを観察してみますと、実は、とても社会主義的な政策であることが分かるのです。
 
 それは何故かと言いますと、バリ島で開催されているCOP13において各国政府がなかなか合意に達しないことからも窺えますように、この政策の根底には、政治的な”分配問題”があるのです。言い換えますと、削減目標が一たび設定されますと、誰がどれだけ負担するのか、という問題が全てとなるのです(ちなみに、日本国政府は、国別割当方式に反対しています。)。そうして、排出権取引という手法は、この分配なくして成り立ちません。しかも、もし、削減量が国別に割り当てられるとしますと、その国の産業活動のキャパシティとリンケージしますので、政治的ネゴシエーションが自国の経済レベルまでも決定してしまうのです。

 温暖化対策の本質が、”分配”や”割り当て”にあることは、この政策が、政府の配分によって経済活動がコントロールされる社会主義的な手法に近いことを示しています。負担というパイの分配をめぐって各国が争いを繰り返すよりも、パイそのものを小さくする努力の方が大切なのではないか、と思うのです。

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民主党は中国の術中に陥る?

2007年12月09日 18時41分09秒 | 日本政治
小沢氏、直言を封印 対中パイプ誇示に終始(産経新聞) - goo ニュース

 国会を休んで大訪中団を結成したこと自体、国民の多くから大顰蹙を買う行為なのですが、足元を見られた民主党は、迂闊にも、中国の術中に陥ったのかもしれません。民主党の思惑は外れて、この訪中において密かにほくそ笑んだのは、中国共産党であったようです。

 第1に、政権を狙う民主党は、自らの外交力を示すために、訪中を失敗に終わらせるわけには行きませんでした。このため、中国に対しては、対立を生むような議題を極力避け、言うべきことを言わずして、むしろ、中国に迎合する姿勢を示すことになりました。
 第2に、民主党が企画した友好関係の過剰な演出は、あたかも、訪問団が中国に対して朝貢に赴いているような印象を与えることになりました。胡錦濤国家主席との会談に際しては、はるか東方より来り、皇帝へのお目通りが叶って感激する使節団の役割を演じているようにさえ映ったのです。
 第3に、民主党は、中国重視の姿勢を明らかにしたことにより、アジアにおいて中国の地位が高まることに協力することになりました。与党の親中派に加えて、民主党との間の関係強化をも内外に見せつけたのですから、中国にとりましては、アピールのための絶好のチャンスを得たことになります。

 古来、中国の権謀術数は世に名高く、うっかりしていますと、計略に嵌ってしまうことになります。気づいた時には、時すでに遅し、とならないように、民主党のみならず全ての政治家の方々は、自らの行動には慎重になっていただきたいと思うのです。

 

 

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歴史の重層性が国家の線引きを困難にする

2007年12月08日 18時52分07秒 | ヨーロッパ
コソボ問題合意できず 仲介の米欧露、国連に「失敗」報告(産経新聞) - goo ニュース

 国民国家体系の基本的な原則は、一民族一国家です。もちろん、移民国家や連邦国家などの例外もあるのですが、この原則でさえ、時にして、国際社会に極めて複雑で解決し難い問題を突き付けることがあります。

 コソボ問題も、国際秩序を支えるはずの原則に根本的な原因がある事例の一つです。確かに、各民族がそれぞれ自らの国家を持つことは国際社会において合法性を持つのですが、この原則には、”領域”の概念が抜けているのです。実際に、”何処に”ということになりますと、これはもう、各民族の歴史的な既得権を持ってしか正当性を主張できないのです。

 ところが、人類の歴史を振り返ってみますと、ある地域が、常に同じ民族によって統治されていたことは稀でしかありません。民族の移動や帝国の栄枯盛衰は人類史に付きものであり、現在という時点で国家の枠組みや国境線の線引きをしようとすると、どうしても、きれいに区分線を引けない場合があるのです。コソボの場合には、住民の多数を占めるアルバニア人は古代のイリリア人の末裔とされながら、その後、セルビア帝国、トルコ帝国、セルビア王国、ユーゴスラビア王国、ユーゴスラビア共和国国に組み込まれ、そうして現在では、セルビアの自治州となるに至っています。ある土地に、民族が入り乱れながら歴史が重層している場合、線引きには相当の困難が伴うのです。

 もし、アルバニア人が古代からコソボの地に継続的に居住していたとするならば、やはり、独立を主張するだけの正当な根拠はあると言えそうです。ただし、近代国際法成立以前の歴史的な事実に基づく正当性や先住と移住の問題については、当事者のみならず、国際社会における合意に至るまで、もう暫く議論をしなければならない課題なのかもしれません。

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似て非なる商品市場と証券市場

2007年12月07日 21時41分39秒 | 国際経済
 先日、経済産業省と農林水産省が協力して、資本提携により証券市場と商品先物市場とを融合させるという、「総合取引所構想」が公表されました。しかしながら、投機マネーの流入により石油価格や穀物価格が急騰したことを考えますと、この構想、果たして、世界経済にとりましてプラスとなるか怪しいところなのです。

 何故ならば、証券市場と商品市場は、似て非なるものだからです。証券市場は、企業の経済活動に必要な資本を調達したり、企業がM&Aなどの戦略を追求する場としての機能があり、投機の対象となる側面を持ちながらも、経済成長のメカニズムにひとまずは組み込まれています。一方、商品市場は、それ自体が経済活動に貢献するわけではないのです。値上がりによる利ざやの獲得を目的とした商品市場への資金流入は、すなわち、投機マネーの流入、あるいは、バブル化を意味し、商品価格の上昇のみを招く結果となります。つまり、商品市場に資金が流入しても経済発展には繋がらず、むしろ、資源価格などの上昇が経済にマイナス影響をもたらすかもしれないのです(「商品市場投機のブーメラン」http://blog.goo.ne.jp/admin/editentry?eid=20c6a0a3fbfdb749cf4c482ac74537a6)。

 欧米の金融市場では、証券と商品の融合が進み、日本国も国際競争力を高めるために総合取引所の設立を急いでいるようですが、両者の分離を維持し、商品市場への投機マネーの流入を抑える方が、経済にとりましては良策かもしれないと思うのです。

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番組の捏造は報道の自由?

2007年12月06日 18時23分48秒 | 日本政治
放送法改正修正案、衆院総務委を通過…今国会で成立へ(読売新聞) - goo ニュース

 昨今のテレビ番組の捏造事件を受けて、放送法の改正案の原案では、番組捏造を行った放送局に対して行政処分を行えるとする規定を設けていたと言います。ところが、この規定は、民主党が、”報道の自由”を盾に反対したため、修正案では削除されてしまいました。

 自由とは、決して無制限なものではなく、他者の自由や権利を侵害する場合には、制約を受けるものです。ねつ造という行為はどうかと申しますと、偽りを真実のように見せかける行為ですので、当然に、それを真実と信じた多くの人々を騙すことになりましょう。つまり、捏造は、自由という名において保障される対象ではなく、制約を受けるもの、つまり、してはいけない行為の一つなのです。

 このように考えますと、捏造番組について、報道の自由を持ち出して擁護することは、何かを誤魔化しているように思うのです。これでは、犯罪行為を行う自由があると言っているようにも聞こえてしまいます。捏造は怪しからん、捏造はだめ、と何故、はっきりと言えないのでしょうか。

 

 

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バチカンは信頼を失うリスクを負う

2007年12月05日 18時16分03秒 | ヨーロッパ
関係改善へ、北京で会合か 中国とバチカン(共同通信) - goo ニュース

 バチカンが中国との関係を改善しようとしている背景には、おそらく、中国国内での布教の許可があるものと推測されます。共産主義のイデオロギーが色褪せた今、バチカンにとって、13億の迷える人々の存在は、宣教師達の布教への熱意を掻き立てる存在なのかもしれません。

 しかしながら、その反面、チベット仏教やウィグル族のイスラム教を弾圧してきた中国と手を結ぶことは、バチカンにとって、大きなリスクを負うことを意味しています。中国は人権問題で国際世論から厳しい批判を受けており、全ての人類の幸福に貢献しようとはせず、国民に圧迫と忍従を強いようとしていることは、否定のしようもないからです。こうした状況の中で、バチカンが中国に対して融和的な態度をとることは、カトリックの信者のみならず、一般の人々のバチカンに対する信頼をも失わせるかもしれないのです。

 もし、バチカンが、布教の実利を得るために虐げられている人々を見放したとしましたら、それは、キリスト教精神に反することになるのかもしれません。それとも、異教徒の運命などは、とるに足りないものなのでしょうか。

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ブレトン・ウッズ2の崩壊はアメリカにプラス?

2007年12月04日 20時55分47秒 | アメリカ
唯一の基軸通貨=ドルの時代はそろそろ最終ラップに――フィナンシャル・タイムズ(フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュース

 中国や湾岸諸国といった後進工業国によるドル・ペグ制の見直しが、ドルの唯一の基軸通貨としての地位を揺るがしていると言います。これは、ドル安傾向が原因しているのですが、この事態、果たして、アメリカにとって大きな打撃となるのでしょうか。

 もちろん、ブレトン・ウッズ2が崩壊することによって、アメリカの経済のみならず、政治的な立場をも弱めることになるかもしれません。しかしながら、長期的な視点から見ますと、マイナス効果のみがもたらされるわけではないかもしれないのです。

 第1に、アメリカ国内の製造業にとりましては、ドルの下落は輸出競争力を回復させますので、低迷状況にある産業分野が息を吹き返すことになるかもしれません。

 第2に、後進工業国の資金の流れが、アメリカ以外の諸国に向かうとしても、そこが経済成長を達成して有力な輸出先に育てば、高度先端技術分野を含めたあらゆる輸出産業にビジネス・チャンスを与えることになります。

 第3に、このことは、政経両面の中国問題の解決を促すかもしれません。外貨準備の投資先として米国債の保有を積み上げてきた中国が、債権売却といた手法を政治的圧力として使う道を狭めることになります(中国による多額の米国債保有は政治的リスク)。また、中国がドル・ペグを放棄すれば、元安による過剰な輸出攻勢に晒されなくなります(実際に、どれ程自由に元が変動するようになるのか分かりませんが・・・)。つまり、中国の縛りからフリーになることができるのです。

 弟4に、経常収支のバランスの回復は、ドルの安定性に寄与するはずです。ブレトン・ウッズ2に基づいて無理に資金の還流をはかるよりも、貿易実績に基づいた資金還流の方がはるかに自然です。

 以上のように見てみますと、短期的にはマイナス局面と混乱を迎えるでしょうが、長期的には、アメリカ経済にとりましてはプラス面も予測できます(この通りに展開する保証はありませんが・・・もしはずれたらごめんなさい!)。ブレトン・ウッズ2に替わる制度が、ユーロとの二本立てや、バスケット通貨となるにせよ、アメリカがより健全な経済を取り戻せば、それは、世界経済全体にとってもプラスになると思うのです。

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OPECという巨大カルテル

2007年12月03日 20時32分18秒 | 国際経済
OPEC、5日の総会で生産量据え置きへ=カタール石油相(ロイター) - goo ニュース

 ”カルテルは厳禁”ということは、市場の参加者であれば、誰もが知っている市場のルールです。しかしながら、石油産出国にかかりますと、このルールは全く通用しなくなってしまいます。現在、石油市場は、すっかりOPECという巨大なカルテルに絡めとられてしまっているようなのです。

 このままでは、石油価格や生産量は、売り手によって完全にコントロールされ、買い手側は、一方的な高値で購入せざるを得なくなります。80年代以降、市場経済が急速にグローバル化し、ようやく多くの諸国に経済発展の機会がもたらされつつある矢先に、資源の囲い込みと資源保有国のカルテルという大きな壁が立ちはだかることになってしまいました。果たして、この壁は乗り越えることができるのでしょうか。

 世界経済全体の成長を考えますと、資源カルテルがプラスなはずはありません。そろそろ、OPECの存在を見直しませんと、グローバル経済なるものは歪な姿となってしまうように思うのです。

 

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国連から誕生したイスラエルとパレスチナの混迷

2007年12月02日 17時42分24秒 | 中近東
イスラエルのガザ攻撃で5人死亡、和平交渉決定も交戦続く(読売新聞) - goo ニュース

 11月27日に開かれた中東和平国際会議の結果、イスラエルとパレスチナとの間で和平交渉が再開され、両者は、解決への道を再び歩み始めたようです。ところで、パレスチナ問題が、こうも拗れに拗れてしまった原因の一つに、イスラエル、並びに、パレスチナが、史上初めて国連決議に依拠して建国された国家であったことが挙げられるのではないか、と思うのです。

 当時の中東を概観してみますと、大凡の諸国は、トルコ帝国の支配から英仏の委任統治、あるいは、保護領に移り、後に宗主国からの承認を得て独立国家となる、という道筋を歩んでいます。しかしながら、パレスチナの場合には、1947年2月に委任統治国のイギリスが、この問題の解決を国連に委ね、当事国ではなくなってしまうのです。このため、パレスチナの分割は、国連における多数決によって決せられることになり(国連決議181号)、しかも、その内容は、極めてイスラエル側に有利となりました。

 こうした決定の仕方が、本来、領土問題を解決する方法として適切であったのか、これは、大変疑問なところです。何故ならば、最も肝心な当事者間の合意が存在しませんでしたし(往々にして合意なき決定は禍根を残します・・・)、国連の決定は必ずしも中立的ではなく、政治的力学が働いた結果でしかなかったからです。また、本国の承認といった絶対的なお墨付きもありませんでした。つまり、極めて不安的な状況から出発しなければならなかったのです。

 もしかしますと、現在進められている交渉は、本来、1947年の時点ですべきであったことの”埋め合わせ”をしているのかもしれません。双方が満足する合意に達し、中東の地に、安らかな神の祝福が訪れることを願っています。
 
  

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