世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。
TPP交渉の参加表明広がる 域内経済統合の動き加速(朝日新聞) - goo ニュース
TPP交渉への参加には、日本国のみならず、カナダやメキシコも名乗りを上げ、さらにはフィリピンやパプアニューギニアも関心を示しているそうです。参加国の拡大によって、交渉も複雑化することが予測されるのですが、全ての分野で合意が成立した時点で”TPP協定”を締結する包括方式ではなく、積み上げ方式でも構わないのではないかと思うのです。
もし、全参加国が940品目に亘る全ての項目について合意するのを待つならば、TPP交渉は、10年以上の歳月を要するロングランとなる可能性もあります。こうした長期化を避けるためには、問題や対立点の少ない分野から出発して、漸次に自由化の範囲を拡大してゆく方法も考えられます。例えば、940品目のうち、最初の合意を70%から90%ぐらいに設定し、残りは、継続協議とするのです(もちろん、この数字よりも低くなる可能性も…)。このためには、TPPの機構として、参加国の代表が協議するための常設の機関を設置する必要がありますが、包括決定方式よりも、柔軟性には富んでいます。また、こうした側面を考慮しますと、TPP協定に記載すべきは、TPPにおける合意形成や司法解決といった、基本的な運営上の仕組みなのかもしれません。例えば、全会一致方式にするのか、多数決制にするのか、部分的な不参加を意味するオプト・アウトを認めるのか、あるいは、極めて重要な国益上の問題については拒否権を認めるのか、といった機構上の問題は、論点となりそうです。
TPPへの参加問題については、情報が少ないこともあって、各国とも、国内では疑心暗鬼に陥っているようです。しかしながら、参加国の権利や意向が尊重される仕組みが備わっていれば、こうした不安も薄らぐことになります。TPPは、参加国も、市場も、国民も納得するような、公平で公正な経済圏を目指すべきではないかと思うのです。
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もう止まらない「TPP交渉参加」という名の電車 政府・業界の議論迷走で置き去りにされた国民の不安(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
戦後の国際社会の流れを観察していると、興味深い現象を見つけることができます。それは、政治の分野では、国家分離・独立が急激に増加して細分化される一方で、経済分野は、逆に国境を越えて拡大方向に向かっているということです。このため、国家と市場とは、得てして敵対関係として描かれてきました。
とりわけ、80年代以降においては、市場のグローバル化が進み、EUを始めとした地域経済圏の成立もまた、こうした経済活動の広域化を背景としています。そうして、ついにTPPへの参加議論が持ち上がったことで、日本国もまた、国家と市場との軋轢問題に直面することになったのです。自らの国を保持したいという保守的な願望と自由で広々とした空間で経済活動をしたいという願望は、しばしば一人の人間が同時に抱くアンビバレンツな感情でもあります。果たして、これらの両願望を同時に充たす解は存在しているのでしょうか。今日では、政治の論理に走って鎖国政策を採ることはできませんし、経済の論理を極大化して、国民の多くが職を失い路頭に迷ったり、農地がペンペン草が生い茂る荒れ地になることを望む国はないはずです。
TPPの成否は、実のところ、この国家と市場との調和点を見つけることにあるのかもしれません。この問題は、21世紀に解決すべき困難な問題の一つでもあります。このように考えますと、TPPの議論とは、国家と市場の問題に真剣に取り組む重要な機会となるのではないかと思うのです。
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TPP、大枠合意=米大統領「来年中に結果を」―9カ国が首脳会議(時事通信) - goo ニュース
昨日、ホノルルで開かれたAPECの首脳会議において、TPPについても大枠の合意が成立したと報じられています。日本国の野田首相も、交渉参加への意欲を示したのですが、現時点では、TPPの将来像について、明確なヴィジョンが見えているわけではありません。
経済圏には、様々なタイプがあるのですが、相互に関税を撤廃する単なる自由貿易圏であるならば、EFTAと同様の機構となります。関税の撤廃に加えて、サービス、投資、知的財産の保護といった分野にまで自由化や統合の対象を拡大しますと、一部の市場開放を伴うNAFTAに近づきます。加えて、”人”の自由移動をも目的に掲げるとしますと、市場統合進めたEUということになるのですが、果たして、TPPは、どの道を進もうとしているのでしょうか。どのレベルの経済圏を目指すかによって、機構の設計もまた、大きく違ってくるのです。関税撤廃に留まらないとしますと、加盟国とTPPとの間の管轄権を明確に分けると共に、国際法と国内法の調整を行う仕組みを作りませんと、混乱や紛争が多発することになります。因みに、NAFTAの条約は2022条にものぼる条文からなっておりますが、EUの場合は、条文の数は機能条約だけで358条ほどですが、変化に対応し、かつ、詳細な規定を設けるために立法の仕組みを備えています。
もっとも、こうした経済圏には、幾つかのマイナス面も指摘されておりますし、TPPの参加国の経済構造などにも著しい違いがありますので、過去のモデルをそのまま踏襲できるわけではありません。否、TPPでは、過去のモデルの経験や失敗の教訓に学んで、加盟国の多様性に対応できる、より柔軟性に富んだ新たなシステムを作る必要があるかもしれないのです。
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六重苦…産業界「早く」 止まらぬ空洞化(産経新聞) - goo ニュース
日本国にのしかかる”六重苦”は、産業の空洞化を加速させ、早晩、深刻な雇用問題に直面しそうです。TPPの交渉参加に踏み出したことで、”六重苦”のうち、一つの”苦”は緩和できる見通しは立ったのですが、電力不足というもう一つの”苦”を取り除くために、原発のストレス・テストを時間差実施にしてはどうかと思うのです。
もちろん、できる限り早い安全確認は言うまでもないことなのですが、地震発生のタイム・スパンを考えますと、一日を争って急ぐ程の緊急性があるわけではありません。1年を何期かに分け、それぞれの原発において、最も建設時期の古い原子炉から順番にテストを実施し、他の比較的新しく設置された安全性の高い原子炉については、時機をずらして後回しするのです。今後とも、運転停止状態となる原発が増えますので、電力不足とコスト高の問題は、さらに深刻化します。時間差実施にすれば、全原発の一斉停止による節電や制限措置を採らなくて済みますし、電力を安定供給することもできます。
寒さが厳しくなる冬も迫っており、電力不足は産業のみならず、国民生活をも苦しめます。政府は、できる限り、国民と産業への負担を軽減する形で、ストレス・テストを実施すべきではないかと思うのです。
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国の借金、過去最高を更新…3か月で10兆円増(読売新聞) - goo ニュース
欧州の財政危機は、グローバル規模でのマネーの流れにも影響を与えており、本日の新聞記事では、安定性を重視して、日米独の国債に資金が集まっているそうです。政府は、こうした状況に気を良くしてか、国債を乱発し、ついに、国家の借金は、過去最高を記録してしましました。
しかしながら、何時までも、国債発行に好都合な環境が続くわけでもありませんし、借金は、利払いを含めて返済しなければなりません。現在の日本国の経済状況を見ますと、6重苦は依然として改善されておらず、今後、大幅に歳入が増加する見込みはありません。むしろ、歳入の減収と失業者の増大による社会保障費の増加が予測されており、財政状況は悪化の一途を辿りそうです。野田首相は、10%の消費税率上げを”国際公約”としたそうですが、たとえ、増税したとしても、消費の落ち込みによるマイナス影響も否めません。貿易収支も赤字に転じていますので、国内の金融機関も、いつまでも大量に国債を購入できるという保証はなく、現に、上述したように、日本国債は、海外の投資家から資金を集めているのです。そして、その資金が引く時が来るとしますと・・・。
政府は、来たるべき危機を想定して、何らかの対応策を準備しているのでしょうか。最善の策は、危機を未然に防ぐことなのですから、政府は、危機感をもって財政危機の回避と健全化へ向けての道筋をつけるべきではないかと思うのです。
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イタリア首相、12日にも辞任 後継、元欧州委員が軸(朝日新聞) - goo ニュース
ギリシャの財政危機は、イタリアにも飛び火し、イタリア国債の金利が危険水準である7%を越したと報じられています。
危機の連鎖にヨーロッパ経済は不安定な状況が続いていますが、この現象から導かれる結論とは、ユーロを導入した以上、ケインズ主義的な財政拡大政策は、もはや採用できないということなのかもしれません。中央銀行に高い独立性を与えたESCBの設計は、マネタリストの主張を基調としていると指摘されていましたが、今回の連鎖的な財政危機は、マネタリスト的な中央銀行とケインジアン的な政府とが、共存できないことを示しています。リーマン・ショック以来の急速な景気の後退に対処するために、各国は、財政規律を緩めて、国債の増発による財政拡大政策を実施しました。しかしながら、その後に起きる事態については、充分には予測していなかったようです。条約によって、ECBによる国債の直接的な引き受けを禁じられている以上、デフォルトの可能性は、独自の中央銀行を持つ国の数倍に跳ね上がるということを・・・。
ユーロ圏におけるECBとユーロ導入国政府との政策方針の齟齬は、結局、財政危機として表面化することになりました。ケインズ主義的な景気対策は、危機の先延ばしに過ぎず、時間を置いて、財政危機として欧州経済に襲いかかることになったのですから。この教訓は、ユーロ圏のみならず、世界各国の今後の財政および金融政策に、少なくない影響を与えるのではないかと思うのです。
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今月7日、訪日しておられるチベットのダライ・ラマ14世は、民主党政権の首席補佐官の長島議員と会談をもたれたそうです。ところが、中国からの要請があったのか、藤村官房長官は、長島議員に対して、口頭を注意をしたというのです。”ダライ・ラマ14世は日本では政治的行動や政府関係者と接触しないというのが今日までの通例だ”と・・・。
果たして、そのような通例は、あったのでしょうか。あったとしても、こうした面会拒絶のルールは、民主主義国家には相応しくありません。ダライ・ラマ14世は、歴代アメリカ大統領を始め、諸外国の首脳とも会談しておりますので、このルールは、”民主党のルール”にしか過ぎません。チベットでは、連日のように、中国政府に対して抗議の意思を表すために僧侶の方々が焼身自殺を図っており、良識ある人々は、チベットを、この悲惨な状況から救おうと心を砕いております。民主党政権は、中国の現状と同じように、道徳心も正義感も喪失してしまっているのでしょうか。チベットの歴史を知れば、中共政府が、国際法に違反してチベットから国を奪い、虐げ、そして痛めつけてきたのか分かるはずです。
中共政府に阿った民主党政権の態度は、ダライ・ラマ14世を、そしてチベットを迫害しているに等しいと言わざるを得ません。中国からの要請があれば、民主党政権は、日本国民をも迫害するのではないでしょうか。
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ギリシャの富裕層「税金ほとんど払っていない」(読売新聞) - goo ニュース
財政問題に揺れるギリシャ。その最大の原因は、歳入不足にあることは明白なのですが、法の抜け道を知る富裕層が脱税できる”脱税天国”である一方で、主たる納税者である中低所得者層が”公務員天国”を支えるという歪んだ構造となっているそうです。
処方箋としては、ギリシャ経済の活性化策が欠かせないのですが、この杜撰な税制を改革しませんと、有能な人材まで自国に失望し、国を後にすることになります。残るのは、脱税富裕者と、無責任な公務員と、無気力状態に陥った人々では、ギリシャの将来は暗いとしか言いようがありません。そこで、まず、ギリシャが着手すべきは、確実に納税額を捕捉できる、最先端のコンピュータ技術やIT技術を駆使した徴税システムを開発し、導入することではないかと思うのです。つまり、個々の国民の所得、財産、資産などを正確に把握し、納税額を正確に計算したうえで、金融機関の口座などから税を徴収できるシステムです(VATの捕捉も含めて…)。現在、こうした作業は、手作業で行われているそうですが、これでは、賄賂も横行しそうですし、正確性にも欠けています。公平な税制を実現し、政府が国民の信頼を取り戻すことができれば、ギリシャ経済も上向く可能性はあります。
もし、自国に開発企業が存在しないならば、ギリシャ政府が、政府調達として世界各国のシステム開発企業に呼びかければ、応札してくる企業もあるはずです。長期的に見ますと、先端的な徴税システムの導入の方が、財政問題解決への近道ではないかと思うのです。
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「草の根」離反…オバマ大統領、再選に黄信号(読売新聞) - goo ニュース
長引く景気の低迷と、一向に改善の兆しが見えない雇用状況を背景に、オバマ大統領の再選には暗雲が立ち込めているそうです。特に、先の大統領選挙でオバマ氏を熱狂的に指示した若年層の離反が顕著とのことですが、その一つの原因は、”チェンジ”が禁句になってしまったからなのではないかと思うのです。
先の大統領選挙では、オバマ氏は、”チェンジ”をキャッチ・フレーズに掲げることで、斬新な改革によるアメリカの刷新を約束しました。”チェンジ”とは、颯爽と登場した大統領が、旧態依然としたアメリカに新たな風を吹き込むというイメージを国民に与えた、魔法の言葉であったのです。演説上手も然ることながら、この言葉ほど、アメリカ国民を惹きつけたものはなかったかもしれません。しかしながら、二期目の大統領選挙となりますと、”チェンジ”は、決して口にできない言葉となります。何故ならば、それは、自己否定を意味してしまうからです。
果たして、オバマ大統領は、”チェンジ”に優るキャッチ・フレーズを、次期選挙で掲げることができるのでしょうか。あるいは、”チェンジ”の結果が、国民の期待を裏切る形となったのですから、インパクトのある耳に心地よいキャッチ・フレーズを掲げる作戦もまた、使えない手法になりつつあるのかもしれません。
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国内は脱原発、でも輸出は推進 枝野経産相「矛盾せぬ」(朝日新聞) - goo ニュース
枝野経産相は、原発の輸出は認める一方で、国内については、脱原発を進めるそうです。しかしながら、この政策、我が国の産業の空洞化促進政策ではないかと思うのです。
国内で脱原発依存を進める理由は、日本国には地震が多く、安全性が確保できないからなそうです。ところが、強度の耐震性をもつ原発や、事故が起きてもメルトダウンを起こさない安全な原発は、既に完成しつつあります。こうした技術が確立さえすれば、国内でも脱原発を進める必要はなくなるのですが、それでも、枝野経産相は、脱原発路線を維持したいようなのです。もし、国内で脱原発を推進する一方で、海外への輸出だけを後押しするとしますと、輸入した国の電力供給能力は格段にアップしますので、電力不足と高い電力料金に苦しむ国内企業は、輸出先に製造拠点を移す動機が働くことになります。再生エネルギーでは、供給量とコスト面で原発に代替できませんので、国内=脱原発と海外=原発輸出を同時に遂行しますと、国内の産業が空洞化をさらに後押しすることが予測されるのです。
計算高い枝野経産相のことですから、当然に、この流れは読んでいるはずです。政治家に備わるべき資質の一つは、政策効果を見極める洞察力ですが、その”悪用”は、国民に対する背信となります(先を読んで意図的に産業を衰退させている…)。それとも、脱原発に実現しても産業の空洞化を防ぐ、何らかの秘策があるのでしょうか。
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タイ洪水 水門開閉、せめぎ合い 住民デモ、行政は対立(産経新聞) - goo ニュース
大洪水が続く中、タイでは、政府とバンコク市との間で水門の開閉をめぐる対立が発生しているそうです。水門を開けるとバンコク市に被害が及び、水門を閉めると上流部の被害が深刻化するという、まさに、ゼロ・サム問題です。
貧しい農村部を支持基盤としているインラック首相としては、水門を開けたいところなのでしょうが、バンコク市としても、人口が集中し、かつ、行政の中枢部でもある首都は、何としても守りたいはずです。こうした場合は、何らかの妥協が成立しませんと、結局、洪水被害の拡大と混乱を抑えることはできませんし、水が引いた後にも、両者の間に感情的な対立を残すことになります。タイの迅速な復興を考慮すれば、首都や重要拠点を優先して守ることには一理はあります。しかしながら、それでは、上流部の人々だけが被害を背負い込むことになりますので、より大きな被害を受ける上流部の住民の方々には、何らかの代償を約束する必要があると思うのです。例えば、復興期にあっては、政府が、責任をもって早期の復旧に努めるとともに、住民の被害に対しては、給付金や補償金を支給するといった措置を約束すれば、あるいは、水門の開閉問題に対する理解を得られるかもしれません。
政治には、判断に苦しむゼロ・サム問題に直面することがしばしばあります。タイの大洪水もまた、苦渋の決断を要する問題なのですが、調整力を上手に働かせることができれば、被害を最小限にとどめ、速やかに復興に向かうことができるかもしれないと思うのです。
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野田首相、消費増税を表明=国際公約に―G20(時事通信) - goo ニュース
G20で消費増税を国際公約とした野田首相と、国民投票という”賭け”に出たギリシャのパパンドレウ首相。両首相は、逆関係の手続きエラーをしているように見えるのです。
野田首相のエラーとは、消費税率の10%上げという国内問題を、G20という国際舞台で公約としたことです。当然に、国民は、野田首相が、国民の合意もなく増税を強行すると予測しますので、野田政権に対する不満は高まります。正しい順序は、最初に、国内において10%の消費税上げについて、国民に充分に説明し、歳出カットなど、財政健全化の道筋を示した上で合意を形成した後で、国際社会に向けて自国の政策として表明することです(国内⇒国際)。一方、パパンドレウ首相のエラーとは、国際問題の解決策を、国民投票という国内手続きに求めたことです。もちろん、民主主義的な手続きとしては、国民投票そのものは否定すべきことではないのですが、ギリシャの場合、政府が包括案を実施しませんと、他のユーロ導入国や世界経済に打撃を与えることになります。ですから、国際責任が伴う事案については、最初に、国際社会において加盟国としての義務の履行を明確にし、その後で、国民を説得するという順序になるはずです(国際⇒国内)。
ギリシャのパパンドレウ首相は、国民投票で否決されるとは予測せずに、国民投票という手段を選んだのでしょうが、万が一にも”賭け”に負ければ、ギリシャ発の経済危機が世界を覆うことになりかねません。そして、もし、野田首相の手続きが正当化されるとしますと、それは、日本国の財政破綻発の恐慌のシナリオが現実味を帯びていることになるのですが、果たして、敢えて、”国際公約”としなければならないほど、日本国には危機が迫っているのでしょうか。何れにしましても、両政府の説明不足は、内外の混乱に拍車をかけていると思うのです。
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「農家の大半、製造業で収入」枝野氏、TPP必要性強調(朝日新聞) - goo ニュース
TPPについては、交渉内容が不明な点が多く、断定的な書き方はできないのですが、日本国にとりましては、WTO交渉も含めて、農業分野がネックとなっていることは確かなことです。農業従事者の失業者が340万人発生すると主張されますと、さすがに考え込んでしまいます。この試算が妥当であるかどうかは別として、TPP交渉では、国内農業保護を目的とした”逆ダンピング”の容認を提案してはどうかと思うのです。
どの国であれ、食糧問題は、自国の存立にかかわる重大問題であり、一定の食料自給率だけは確保したいのが本音ではないかと思うのです。日本国もまた同様であり、TPPの参加により、主食のコメの自給率が0%に近くなれば、万が一の場合には、国民が飢餓に苦しむことになります。もちろん、この見解は、農産物輸出国にとっては、受け入れ難いことなのですが、この問題の解決策の一つとして、”逆ダンピング”という方法があります。通常のダンピングとは、自国製品の輸出を促進させるために、輸出先では自国より安い価格で販売することです。この方法は、WTOでは、不公正な手段として禁じられています。一方、これとは、逆に、輸入国政府が、輸出国農家や企業に対して、一定基準以上の高い価格で農産物を売ることを求める場合はどうでしょうか。この場合、輸出国の農家は、高い価格設定による増収が見込めますし、一方、輸入国の農家は、輸入品による価格破壊的な効果が和らぎ、農業経営を維持することができます。例えば、現在、国産のコメの平均価格が2000円ぐらいとしますと、輸入米の最低価格を1700円ぐらいに設定するのです。この方法ですと、日本向け輸出農産物の急激な増加による最貧国への輸出減少も防ぐことができるというメリットもあります。
関税率は0%ですので、輸入国政府は、関税収入にはなりませんが、農業を保護することはできます。一方、輸出国もまた、少量の輸出量でも高い利益を得られますので、必ずしも否定的ではないかもしれません。もっとも、”逆ダンピング”も不公正であると見なされるかもしれませんが・・・。少なくとも、TPP交渉に参加するならば、参加国の合意を得られる方法で、マイナス効果を低下させる工夫が必要なのではないかと思うのです。
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独仏首脳、「国民投票」でギリシャ首相説得工作(読売新聞) - goo ニュース
経済の世界では、契約や債務の履行こそ”命”であって、借りたお金が返せないとなれば、それは身の破滅を意味します。ところが、ギリシャの反応を見ていますと、市場経済を支えるモラルに対する意識が欠如しているように見えるのです。
ギリシャの財政問題は、全ユーロ導入国を巻き込むことになりました。言い換えますと、ギリシャ一国が、他のEU加盟諸国を地獄への道連れにしてしまったのです。しかも、この混乱は、EUを超えて世界大に広がり、ギリシャ発の経済危機は、全世界の人々の生活をも脅かしています。こうした状況を省みれば、ギリシャの人々は、責任を痛切に感じるはずなのですが、予定されている国民投票では、6割の国民が包括案の受け入れには反対を唱えているそうです。ギリシャよりも貧しい加盟国が、救済策の負担を強いられているにも拘わらず・・・。
これは、一体、どうしたことなのでしょうか。考えても見ますと、ギリシャは、長期にわたり左翼政権が政策運営を担ってきました(現在も、政権与党は全ギリシャ社会主義運動…)。もしかしますと、市場経済に馴染みの薄い左翼の人々にとっては、信頼や信用の重要性を全く理解していないのかもしれません。社会主義的な思考パターンが国民に広く浸透したために、デフォルトや債務削減で損失を蒙るのは、他国の金融機関であるからどうでもよい、とか、豊かな国が何とかしてくれる、とでも無責任に考えているかもしれないのです。ギリシャが責任ある国家であるのかどうか、国民投票の結果は、それを内外に示すことになるのではないかと思うのです。
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東京円相場、1ドル78円台 海外市場で介入継続か(朝日新聞) - goo ニュース
日銀の白川総裁が、インフレファイターとして名高い通貨の番人であることは、自他共に認めるところです。その一方で、この姿勢を貫けば、国家衰退の憂き目に遭うとしたら・・・。
通貨に関する政策とは、国内の金融政策と対外的な外国為替政策の、およそ内外二つの政策に分けることができます。中央銀行の主たる役割は前者であり、物価を安定させ、通貨価値を維持することが基本的な仕事です。この意味において、白川総裁は、自身の任務に忠実なのです。その一方で、金融市場のグローバル化によって、国内向けであった金融政策は、国際的なマネー・フローに影響を与えるようになり、もはや、国内向けの政策とも言い切れなくなりました。そして、対外的な外国為替政策は、その国の産業競争力を大きく左右しています。対外的な通貨政策には、政治性や戦略性が伴うのであり、市場介入が財務省主導となるのもこのためです。ところが、通貨発行権は、日銀にありますので、仮に、通貨発行とリンケージした政策を採る場合、例えば、紙幣の発行による無制限介入などを行う場合には、日銀との協力を要します。つまり、今日の中央銀行は、部分的にではあれ、政治的な政策決定に関与せざるをえない状況にあるのです。
ユーロについては、ECBは、設立以来、これまで市場介入を行ったことはなく、為替操作は、アメリカでも批難されています。また、後からインフレなどの副作用に苦しむかもしれません。その一方で、スイスのように無制限介入を宣言する国もありますし、また、国内的な中央銀行による財政赤字の引き受けや、通貨発行による量的緩和は、同様の効果を為替相場に及ぼします。できることならば、通貨の信頼性を意図的に低下させるような政策は、誰もが避けたいところなのですが、自国の存亡にかかわる非常事態となりますと、100%この政策を排除できないのではないかと思うのです(昨日の介入が、6兆円規模であるとしますと、もしかしますと、既にこの政策は採られているのかもしれませんが…)。超円高の原因については諸説あり、不明な点も多いのですが、通貨の番人は、投機筋からの攻撃に対しても、自国通貨を守る役割を期待されているのではないでしょうか。
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