goo

「明日の記憶」の記憶。

 しばらく先になるかと思っていたら、何と昨日土曜日に監督と「明日の記憶」を見に行くことができた。夜8時からということで、ちょっとしたデート気分。否、連行気分。

 主人公の佐伯雅行演じる、渡辺謙の鬼気迫る迫真演技。妻役の樋口可南子の抑え目であるが存在感のある演技。あっという間の2時間10分であった。

 登場人物の設定という点では、これまでにもあったシナリオ構成になるので、あまり斬新な映画にはなりにくいのではないかという危惧をしていたが、杞憂に終わった。

 2004年から2010年という時間スパンを設定し、病を得る前の広告代理店でバリバリ働く中間管理職としての佐伯。アルツハイマーという運命的な病を前にして、徹底的に病気を否定し、主治医に反抗する佐伯。余りに重なる症状に、遂には病を認めざるを得なくなり自暴自棄になる佐伯。精神的動揺からくる妻に対しての被害妄想とその気持ちをコントロールできず自己嫌悪に陥る佐伯。

 日本認知症ケア学会の役員の末席を汚す自分が、もし若年性アルツハイマーになったら。考えただけで、飛行機が着陸時に揺れる時と同じくらい恐ろしい。結局、人間は誰しも人に迷惑をかけながら別世界にいくのであるから、この現世界で自分のことが分かる間は、常に人に優しくしておきたいものである。

 おりしも、先週の授業福祉論aで、HDS-R(改訂版長谷川式認知症スケール)全項目(30点満点)を資料として配付し、説明したところである。小生の授業を受講する若い学生諸君にも是非、見てほしい映画である。映画の中では、神経内科医扮する及川光博がこのHDS-Rの問診を、主人公に対ししている。

 この映画の惹句は、おそらく、大滝秀治扮する陶器の先生であり、まわりから認知症と疑われている高齢者が、映画のエンディング近くで2回発した『生きてりゃいいんだ』と思われる。どんな病を得ようとも、寿命ある限り、生きてりゃいいんだ。妻や子どもや周りの人々に遠慮することはない。生きてりゃいいんだ!

この映画余程人気が高いのであろう。映画を見終わった後、パンフレットを買おうと思ったが、売り切れ。どなたか売ってちょうだい!
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )