静岡県の島田市の蓬莱橋というのを渡りたかったのです。1年前、橋のたもとまで行きましたが、時間の都合で行けなかった。だから、ぜひ行ってやろうとはおもっていました。
これらは去年の写真です。どうして白黒で撮ったんでしようね。大井川鉄道でSLを見たあとだったから、もう何もかも黒白にしてしまおう、そんな気持ちがあったのかもしれません。
だったら、どうして最近は白黒で撮らないの? カメラの調子が悪くて、何か撮る私もモヤッとしていて、踏み切れないみたいです。微妙な芸術家魂みたいなのがあるんでしょうね。
どうなんだか……?
5時間かけて、島田市までたどり着けた。お天気は、黒い雲が見え隠れするけれど、雨は降っていなかった。駅から蓬莱橋まで、予定通り歩きました。地図で見るより少し遠かった。もっと近くにある感じだったけれど、背中に汗はかきました。
入り口で百円を払い、さあ、橋の往復にチャレンジです。これを楽しみに来たわけですから、橋を渡りきったら、牧ノ原台地の公園みたいなところでお昼ごはんを食べる予定です。そのためにコンビニで食べ物を仕入れてきました。
大井川は、何度も流路を変えながら、行ったり来たりを繰り返しているそうです。今は牧ノ原台地ということで数十メートルは高い段丘も、実は昔、川原だったこともあるそうです。台地の上には、川原に転がっていたような石などがごろごろ転がっているらしい。
それが何万年というサイクルの中で、少しずつ盛り上がり、今は台地になってしまっている。台地は有名なお茶の産地になっていますし、静岡空港だってあります。その台地までまっすぐな木の橋がつづいている。
下流まで十数キロくらいかもしれないですが、ゆるやかな扇状地になっていて、大井川そのものは水が流れていなくても、地面にしみこんだ水が、あちらこちらに湧き、島田市は川は普段はそれほどでもないけれど、水はわりとあるような感じです。飲めるような水もあるのかな。
1年前は、川沿いに太平洋まで向かいましたが、今回は歩きだから、この橋を歩くだけです。
歩いてみれば、ところどころ修理してあって、新しい杉板みたいなのがわりとたくさん変えられている。そういう新しい板以外はどうなのかというと、これももうすぐあぶない板と、そうでない板とが区別されていて、近々板を変えなきゃいけないものは、黄色の印が打ってありました。日々点検されているようです。そりゃ、条件的には厳しいところですから、メインテナンスは必要かもしれない。
上流はこんな感じで、こちらの山側には雲がびっしりで、いつでも雨は降りそうでした。
島田駅にはいるとき、製紙工場と野球場が見えましたが、島田市をぐるりと囲むようにして大井川は流れているようです。川の向こうは、金谷の宿場であり、牧ノ原台地であり、昔は別の自治体だったはずですが、今はみんな島田市になっている。
橋の真ん中まで来ました。市街地が小さく見えるし、風が吹いている。橋のたもとまで来るときの暑さがありません。風はそよそよと涼しい風でした。それは、川の上を空中散歩しているんだから、涼しいんでしょう。
牧ノ原台地、いよいよ対岸が見えてきました。橋のたもとにオッチャンが2人いるみたいでした。何をしている人?
そして、たどり着くと、2人のオッチャンに声をかけられます。
「どうぞ、見てやってください!」
手前のオッチャンはしらひげの、芸術家然としたような人で、石にあれこれ彫刻をしているようでした。この人は、経歴を書いた札やら、いろんなストラップなどを売っておられた。一番安いのが五百円で、買おうかどうしようかと悩んだ末に買わなかった。
今思うと、何か記念に買えば良かったのに、また来そうな気がしたので、その時にはぜひ買おうと思ったのです。もう少しデザインも考えてくださると、買ったかもしれないけど、まあ、次のチャンスに買います。
このオッチャンに、この橋はどれくらい? 何キロ? と訊いたのです。
「897.4m やくなしで、縁起のいい長さなんですよ」ということでした。
「そうか、キロではないのだ。かなり歩いた気分でいたけど、それほどでもなかったんだ」
もう1人のオッチャンは、木札を売っておられた。商品が目に入らず、観光協会かなにかの人かなと見ていました。それほどに講釈も説明も慣れたもので、オッチャンの言われるポイントで写真も撮りました。
それからもう1つ、こちらのオッチャンから、晴れた日は富士山も見えるんですよ、と教わります。
確かにネットでは、そういう写真が公開されています。
なんとお昼ごはんも食べたんですが、この橋の往復だけで1時間くらいかかってしまった。だから、去年の場合はここを歩くのはパスしなければならなかったんです。観光ならばいいけれど、地理的なスポットとしては、ただの木の橋だから、あまり見るところはなかったわけですね。
私のペースは、チンタラ1時間かけて、橋の上は涼しい。街中は汗ダグだ、とか言いながら歩かねばならないのです。だから、1人で歩かなきゃいけない。他人と一緒には歩けないのです。どこででも、変なところへ分け入りたくなってしまう。さて、このあとは?