作曲家の池辺晋一郎さんのインタビュー記事が続いています。11月19日の朝日新聞の中では、おしゃべりについて語っておられました。
池辺さんは、1996年から13年間、NHKの「N響アワー」の司会をされたそうで(お相手は檀ふみさんだったとか)、そこでリハーサルの時と、本番とでこれはというネタを隠しておいて、本番でふみさんをびっくりさせたり、あれこれ工夫をしたということでした。
芸術的な作曲家というよりも、話芸もあるし、映画のサントラだって、大監督にあれこれ提案もするし、何でもやってみようという方だったみたいです。
それで、おしゃべり・話芸に関して、どんなことを言っておられるのか、聞いてみましょう!
話し方を意識するようになったのはもっと前、30代の頃です。音楽に限らず人前でしゃべる機会が増えてきたので、自分に三つの課題を与えたんです。
一つ目、いったん口にした「てにをは」は言い直さない。
ねっ、何か気になるでしょ。そこにどれだけのヒミツがあるんでしょう。
たとえば「今日、Aさんに会います」と言おうとしたのに「Aさんが」と言っちゃったら、そのまま「Aさんが下北沢に来るので会います」などと、続く文章でつじつまを合わせていく。
時間を巻き戻すのは、聞いている人にとてもストレスを与えるんです。
少し怖くなりますね。私なんて、どれだけ無駄に何度も同じことを繰り返しているでしょう。なのに、肝心なことは抜け落ちてて言わないことが多いし、ミスばっかり。いろんなことを繰り返さないでいいから、あれもこれもとしゃべれていたら、人にストレスを与えないで済むんだろうか。
少し考えさせられます。
二つ目。「あのー」と言わない。重要なことを言う時だけ、「たとえばですね、あのー」という風に「演出」として使う。
しゃべりながら、いつも計算をして、話し方に工夫をされているということですか。それだけ余裕があれば、聞く人におもしろいことを提供できそうです。見習いたいけど、もともとネタのない空っぽの私には、難しいことのような気がします。
三つ目。結論を先に言う。前置きが長くならないよう構成を考えてからしゃべり出す。
これも余裕と計算があればこそできる話で、相手を楽しませようという気構えでしゃべらなくてはいけないですね。これでなくっちゃ、オファーは来ないし、仕事も舞い込んでこないんですね。
「いま」がすべて。即興と瞬発力が大事。引き返せない。考えてみたら全部、音楽と同じですね。
ということでした。即興と瞬発力、そういうのを試されながら生きていくと、何かが自分の中に生まれ出てくるもんなのかなあ。