昨日の朝日新聞に原武史先生がこんな風なことを書いておられました。
東京を7:12発の山形行きの新幹線に乗る。山形到着は10:06なんだそうです。そして、別の人が7:16発の東北新幹線に乗って仙台まで出て、そこから高速バスに乗り換えると、東京駅で見送った人が先回りして山形で迎えることができる、ということだそうです。
昔は、「閑かさや岩にしみいるセミの声」でおなじみの立石寺のそばを通る仙山線にはたくさん快速があったので、もっと乗り換えが便利で、もっと早く着いたでしょうか。あの、昔懐かしい鉄道トリックみたいなのがあるんだなと、ふと思ってしまった。こんな世の中でもトリックは考えられそうですね。
でも、今の人たちがそんなトリックを楽しめるかどうか、あまり鉄道そのものにおもしろみを見つけられないかもしれない。
福島から奥羽線経由の在来線を走るので、特急に乗り替えなくてよくて一本で行けるのに、こんな感じになるようです。料金は山形新幹線だと11450円、東北新幹線経由だと12290円、ということだから、乗り替えなくてもいいのだから、山形新幹線を利用するのかもしれません。でも、それほどのメリットがあったのかどうか。在来線は新幹線のための負担を強いられ、本数も減らされ、都会に出ていく人には便利かもしれないけれど、どれだけ普通に生活している人のためになっているのやら。そこまで負担があるのなら、仙山線で仙台に出て、スッと新幹線に乗った方がよかったのかもしれない。
でも、新幹線網というのが70年代かその前なのかに計画され、以来営々と建設は進められています。札幌にまで通し、北陸新幹線は敦賀までは来春、そこから大阪まで突き進めさせる。確かに金沢の人たちが関西に出るには今までだったら特急一本で行けたのだから、それと同じように新幹線一本で行ける、というのは今と同じでしょう。
金沢、福井、富山の人たちがどれだけ関西に出て来るかですけど、みんなそんなに興味はないと思うし、いっそのこと自分のクルマで行こう、というのが自然です。
でも、計画はできているのだから、作って行くはずです。リニアは静岡の山の中でストップしているかもしれないけど、他はずっと作り続けているし、すべての既成事実を積み重ね、ここまで来たのだから、ただの水資源のことをゴチャゴチ言わないで、国民全体の利益を考え、静岡の人たちも了承してください、という結論になるでしょう。
九州は、まさか、やらないと思っていましたが、もう長崎あたりを作ってしまったので、あとは鳥栖あたりから長崎までつなげて、関西方面への直通新幹線を走らせるでしょうか。
何年かに一回なら、関西から長崎に乗ってみる、というのはありだけど、生活路線として走らせたり、ビジネスで使う人たちがそんなにたくさんいるとは思えない。東京につながりたい人たちは、一気に飛行機で行くでしょう。それよりも、長崎は、中国、韓国、台湾、東南アジアを相手にして生きていきたいかもしれない。でも、台湾の人に中華街とは、魅力ないだろうし、出島ですと歴史を伝えても、そんなのイマイチだと思うかな。
ああ、長崎は、魅力的な町だったのに、駅もステキだったのに、新幹線の最果て駅になってしまったそうです。大改装したということだから、またゴロッと変わったかもしれないな。
かくして一応の新幹線計画が完成したら、次はどんな計画をぶち上げるのやら、20年後・30年後の日本の人口はどうなっているのか。それなのに、計画したことだからと突き進んで行くのか。
たぶん、誰も止められないし、今の老人たちがいなくなっても、計画だけは生きていくんだろうか。若い人たちはそれでいいのかどうか。
ヤフーの路線情報で、名古屋から富山はどうなるだろうと検索してみました。
名古屋7:11発で富山10:57着、これはこだま・しらさぎ・つるぎと、新幹線に二回乗ります。料金は10230円。
名古屋7:00発で富山11:23着、これは4時間越えです。どうしてこんな時間になるのかと見てみたら、特急しなので長野まで出て、そこから新幹線なんだそうです。料金は11990円。時間もかかるし、少しだけ高くなって、時間もかかったけど、一つのルートとして存在する。中央線を長野まで乗るのがしんどいかな?
そして、怖ろしいことに、名古屋7:10発で富山10:54着。新幹線は利用しない。一番早いこのルートは何だろう? と見てみたら、高速バスでした。料金は4300円。早い、安い、言うことなし、です。
少し辛抱すると、名古屋8:43発で富山12:32着。4時間足らずだけど、乗り換えはなしです。高山本線経由でJR東海の特急ひだが連れてってくれます。料金は7260円。切符がとれるのなら、富山に行くのならこれか、高速バスであって、名古屋から富山に行くには新幹線は要らない。新幹線だとお金もかかるし、時間は変わり映えしない。
もうこの国に、新幹線は必要ないのかもしれない。今あるだけで十分で、若い人たちのことを考えたら、そういうのを建設するお金を別の使い道を考えた方がいいのです。
でも、単純なことなのに、誰も止められないまま、新幹線だ。夢の超特急だと、70年代の夢をもう50年抱え続けている。私たちはもうとっくに夢から覚めているのに、夢よもう一度という人たちが今もいるみたいです。
仕方がない。今のうちに新幹線の走っていないところを、ありがたく見させてもらおうと思います。そんなだから、沖縄とか、屋久島とか、伊豆の島々とか、新幹線ではいけない土地がみんなに支持されてるのかもしれないな。