祭畤（まつるべ）温泉の八句

　朝、５時に起きました。昨日、寝ながら、もうエアコンはいいだろうと、途中で止めて、窓を開けました。涼しかった。やはり、エアコンをつけずに窓を開けているほうが、夜は涼しかった。

　しばらくしたら、隣の部屋から奥さんがやってきました。

　奥さんは、妹さんと一緒の部屋で、私はひとりだけの部屋で、ひとりさっさと寝ました。

　だから、奥さんが何をしているのか見に来たらしい。

　もちろん、私はヒマがあるとネットして、ヒマがあると、やみくもに歩くので（といっても、トボトボと……昨日の中尊寺の最初の坂、とっかかりからヒザが痛かったんでした。だから、トボトボと……）、
何もしていませんでした。

　それで、朝の散歩に出かけました。

１　朝のみち　アカツメクサの話聞く

　もちろん、奥さんから、小さいころ、チューチュー吸ったということでした。どうしてそんな豊かな小さい頃があるんでしょう。本当にうらやましいし、そんな思い出をホイホイ出せる奥さんにビックリしてしまった。

　それで、あわてて興味がある気分になったけれど、私にはそんなに思い出はなく、奥さんに教えられて初めて知っただけです。

２　わたくしは　シロツメクサしか知らず

　さあ、せっかく温泉に来ているのだから、朝からお風呂に入らなきゃと、入ってみたら、昨夜は見なかったアブたちが早速現れました。

　露天風呂に客はだれもいなかったから、チャンスと飛び込んだら、すぐに露天風呂の管理人のアブたちに歓迎されてしまった。

　あれ、なんかかゆい。なんかいる？　と、見てみると、アブに吸い付かれています。まさか吸血じゃないと思うけれど、とにかく攻撃してくるのです。

　だから、すぐに逃げてしまった。

３　露天風呂　虫取り網が置かれをり

　男湯と女湯が入れ替わっても、やはり虫取り網がそれぞれ置かれてありました。

　朝の露天風呂は、アブや蛾たちと一緒くたに入らなくてはならなくて、何だか野趣満点でした。

４　朝ぶろや　アブハチ蛾らと混浴す

　あと、奥さんと散歩したら、大きなユリが咲いてました。てっきり植え込んだヤツだと思ったら、奥さんは、いや、そうじゃなくて、自然にそこから出てきたんでしょう、ということでした。

５　ヤマユリや　野生か人工か　議論して

６　まつるべや　八千年の昔より

　そういうふうに、縄文研究家の方が講釈しておられる看板をみつけたんでした。

７　ネット好き　浴衣腕まくりの温泉記

８　野のユリや　同級話の女将さん