今から47年前に作られた映画でした。製作は有名なディノ・デ・ラウレンテスというイタリアの人でしたか。息子さんも手伝ってあれこれしたそうですが、ウィキペディアには、息子さんがヒロイン役に新人のメリル・ストリープさんを連れてきたら、お父さんは「どうしてあんな女を連れてきたのか」と気に食わなかったそうです。
確かに、当時ははかなさはあっただろうけど、華やかさはなかったかもしれません。少しずつストリープさんはキャリアを積んでいって立派な女優さんになった人でした。ダスティン・ホフマンの「クレイマー・クレイマー」に出たり、ウッディ・アレンに起用されたり、少しハスキーで、何だか不満げだったストリープさんは、どんどん本来の、芯のある(たくましい)俳優へと成長していきました。
映画で、コングに好かれる女性を演じたジェシカ・ラングさんは、モデルさんであったそうですが、ストリープさん以上のまっさらな状態でデビューして、そんなに演技はしなかったのかもしれない(本人は頑張ったと思います)のに、いい味を出していました。
サントラのドーンのテーマというのは、ジェシカさんの役名でもあり、キングコングをニューヨークに連れて行く船での夜明けに流れていたかもしれません。私はわりと好きな曲でした。当時のサントラはセリフも入っていて、ジェシカさんと博士役(だったかな)のジェフ・ブリッジスとの会話も、ほんとにリラックスしていて、やがてはコングの死へと向かう、本来は悲劇でもあるのに、その嵐の前のほんのひと時、という感じが出ていました。
私は、1976年12月27日に見ました。冬休みに入って、飛び込むように見に行ったんですね。それくらい恋焦がれて見に行きました。
でも、もう怪獣の夢も、終わりなのかもしれないな、というはかなさも感じました。
それから後には、しばらく休止していた東宝のゴジラが復活したり、日本だけではなくて、ハリウッドも怪獣やら、パニック映画やら(ジョーズやエイリアン、スターウォーズなどがやって来るのでした)など、次から次と押し寄せて来るし、私なりに必死にそれらを受け止めよう、世の中の流れに乗っかろう、みんな楽しんでるじゃないの! そう思ったはずですが、今考えてみると、たぶん、終わってたんです。
「宇宙戦艦ヤマト」は再放送のクールに入り、俄然人気が出ていました。みんなが次はどうなるの、すごかったねえなんて、高校生の話題としてはどうなのか、というところもありましたが、みんな湧き上がるものがあった。
何度見ても、地球の平和が失われ、地球環境がズタズタで、地表は放射能まみれになっていました。当時から、私たちは放射能に汚染される地球のイメージを心のどこかに抱えさせられていったのでしょう。
それが今では、現実の問題になっているし、今もこれからも、全く自力では放射能除去ということができなくなっています。
仕方がないから、自然にゆだねたら、自然が放射能をなくしてくれるよ、という無責任な結論を立て、着々と国家事業として放射能を海に流そうとしています。
夢は47年前に終わっていて、厳しい現実が押し寄せていたんですね。そして、誰もそれを解決しようという手立てを持っていない。
「宇宙戦艦ヤマト」の話では、放射能除去装置をイスカンダルという星が提供してくれるということでしたし、ワープ航法も、そのエンジンも伝授してくれました。現実には、そんな地球に救いの手を与えてくれる星はありません。
「宇宙戦艦ヤマト」の根底も、私たちの心だけが希望で、現実はすさまじいものがあったんですね。よその星からの希望はありません。私たち、年寄りも若い人も、中堅層も、これから生まれてくる人たちも、みんなで最悪にならないようにしていかなくちゃ!
「キングコング」は、夢のようにはかなく、優しい物語でした。そして、悲しい結末です。私たちは、自然にあるものを人間の力で滅ぼしてしまうのです。弁明はできません。すべて私たちの自らが起こしていく罪だと思われます。