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奥さんと連れだって、三重県の南をめざしました。奥さんは用事があったのです。でも、朝の電車に乗り遅れて、何だかすっきりしないままに、私の提案を受け入れて、一緒に三重県の南に出かけることになりました。
ですから、なるべく早く遠くまで行こうと、珍しく高速を使ってしまった。私はこれがザンネンでしたが、おかげさまで、夕方には自宅に帰ってこれました。でも、やはり不満は残ります。ザンネンでもあります。……みみっちい旅をすることが生き甲斐なのかもしれません。
そもそも奥さんが電車に乗り遅れたのも、私が昨夜、午前様だったからです。彼女はなかなか眠れなかったということでした。それなのに私は、こんなに遅くまで仕事をしていたのではなくて、ただ遊んでたわけですから、すべて私の責任です。迷惑をかけてしまった。
というので、用事が1つ済むはずだった奥さんなのに、電車に乗り遅れたので、気持ちを切り替えて私の提案につきあってくれました。何だか申し訳なかった。
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私は、実家の母と、奥さんの妹さんとかに、何か送ろうと思っていて、遊びついでに三重県の南まで行って、そこで極早生(ごくわせ)のみかんを送ることにしました。試食をしたら、ふつうくらいの甘さだったけれど、まあ送るためにここまで百数十キロを走ってきたわけだから、送ったら気分も軽くなるだろうと送ってしまいました。
これで13時すぎでした。さあ、次は何をしましょう。海もキレイ、みかんは街にあふれている。世界遺産の町歩きの人たちもチラホラ、昔住んでたあたりも、8月に18キップでたずねているので、何だかついこの前まで自分がいたような気分です。
ついこの間までは、何十年ぶりの帰還という感じでしたが、最近はそうではなくて、自分不在の街は、自分不在でもごくふつうに今の状態のまま、それなりに変化しているのだという感じでした。私の足跡などもちろんありませんし、知り合いも訪ねたらいるかもしれないけれど、何しに来たの? という感じだから、お訪ねするわけにもいかず、素通りをするばかりです。そこは何だか悲しい。
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さて、それでは時間もあるし、1度昔本当によく出かけた、勝浦の向こうにある温泉に行ってみようと提案しました。それもしぶしぶ了承してくれて、新宮の街中は渋滞しましたが、新宮の市街地を抜けると、わりとスイスイ行けて、1度通ってみたかった新宮と勝浦間の自動車専用道路を走りました。
スイスイ行けて、勝浦の街も見下ろすことができます。ここで出口で下りると、勝浦の街を抜けて、目的地に到着できます。ところがいつものスケベー心で、このまま専用道を走っていったら、もっと早く着けるのではないかとそのまま走ってみました。
いくつものトンネルを抜けますが、出口はありませんでした。いやな予感がしました。これはたぶん行き過ぎたのだ。だから、一般道に出たら、後戻りしなくてはならないと覚悟しました。
一般道の下り口で、すべてのクルマは左折でした。そちらは串本方面と書いてありました。ああ、それはもっと和歌山を海沿いに走ることになるし、それは避けなければならないし、後戻りしなくてはならないのだから、みんなと反対方向だろうと右折することにしました。右折すると、全く知らない地名が書いてありますが、たぶん勝浦の方にもどれるだろうと思いました。
地図はありません。何度も通ったところだし、間違うはずはないと自信を持っていました。
右折すると、のどかな集落です。川が流れ、低い山に囲まれ、住所表示は那智勝浦町とあります。まさしく私が望んでいる通りです。けれども、突破口がないのです。狭い道・工事中・後ろから猛然と迫り来るクルマはこちらをにらんで追い越していきました。
私たちは、どこを走っているのか、人家はあるし、道は続いているけれど、小さな集落には行き止まりになりそうな雰囲気が漂っているし、とにかく大きな道を走りたい。でも、その手がかりはない。
自転車で通り過ぎるオバサン、この人には道を訊けなかった。小学生の女の子たちの一団がこちらを見ていました。みんなキョトンとしていた。服装も何やら変だと思ったら、近づいてみると、みんなハロウィンの格好をしていました。こんな和歌山の田舎でハロウィンなのか! この子たちはどこへ? いや、それよりも、私たちの道はあるのか?
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大きな道を探しているうちに、最初に右折した専用道の下り口に出ました。どうやらグルッと和歌山の田舎の町を回っていたらしい。もうこうなれば、唯一知っている串本への道をたどるしかないと、さきほどたくさんのクルマたちが向かっていった方面に行くと、とうとう国道42号線を見つけることができました。
もう温泉に行きたい気分も吹き飛んで、ひたすら帰ることにしました。それにしても、和歌山の小さな田舎町のトリック・オア・トリート、これにはびっくりしました。この子らにお菓子をあげる大人のみなさん、彼女たちをぜひ楽しませてあげてくださいと、祈るような気持ちで、土曜の夜にパソコンを開いています。
帰る途中に、太地町の入り口のクジラが見えました。太地町は、勝浦町と合併せず、ほんの小さな町なのに、今も町としてやっているようです。さすが遠洋漁業の町で、現在の調査捕鯨の人材を支えている所で、独立独歩の気概のある町なのだと思いました。
そこを、今日の私が素通りしていたなんて、今自宅でパソコンを打っていますが、何だか信じられません。夢の中のことのようです。こんな私ですから、ヨーロッパに行こうが、宇宙ステーションに行こうが、何も実感がなく、ああこの映像見たなあ程度で終わっていくような気がします。本当に私という人間は!
★ 私たちが迷ったところは、そのまま進むと那智の滝の裏側の山奥にたどりつき、さらに進むと田辺と本宮を結ぶ道に出たようです。でも、もう心はフワフワしていたので、まるでどこを走っているのか、私の頭の地図が消滅していた何分かの迷走でした。コワイコワイ。
ですから、なるべく早く遠くまで行こうと、珍しく高速を使ってしまった。私はこれがザンネンでしたが、おかげさまで、夕方には自宅に帰ってこれました。でも、やはり不満は残ります。ザンネンでもあります。……みみっちい旅をすることが生き甲斐なのかもしれません。
そもそも奥さんが電車に乗り遅れたのも、私が昨夜、午前様だったからです。彼女はなかなか眠れなかったということでした。それなのに私は、こんなに遅くまで仕事をしていたのではなくて、ただ遊んでたわけですから、すべて私の責任です。迷惑をかけてしまった。
というので、用事が1つ済むはずだった奥さんなのに、電車に乗り遅れたので、気持ちを切り替えて私の提案につきあってくれました。何だか申し訳なかった。
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私は、実家の母と、奥さんの妹さんとかに、何か送ろうと思っていて、遊びついでに三重県の南まで行って、そこで極早生(ごくわせ)のみかんを送ることにしました。試食をしたら、ふつうくらいの甘さだったけれど、まあ送るためにここまで百数十キロを走ってきたわけだから、送ったら気分も軽くなるだろうと送ってしまいました。
これで13時すぎでした。さあ、次は何をしましょう。海もキレイ、みかんは街にあふれている。世界遺産の町歩きの人たちもチラホラ、昔住んでたあたりも、8月に18キップでたずねているので、何だかついこの前まで自分がいたような気分です。
ついこの間までは、何十年ぶりの帰還という感じでしたが、最近はそうではなくて、自分不在の街は、自分不在でもごくふつうに今の状態のまま、それなりに変化しているのだという感じでした。私の足跡などもちろんありませんし、知り合いも訪ねたらいるかもしれないけれど、何しに来たの? という感じだから、お訪ねするわけにもいかず、素通りをするばかりです。そこは何だか悲しい。
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さて、それでは時間もあるし、1度昔本当によく出かけた、勝浦の向こうにある温泉に行ってみようと提案しました。それもしぶしぶ了承してくれて、新宮の街中は渋滞しましたが、新宮の市街地を抜けると、わりとスイスイ行けて、1度通ってみたかった新宮と勝浦間の自動車専用道路を走りました。
スイスイ行けて、勝浦の街も見下ろすことができます。ここで出口で下りると、勝浦の街を抜けて、目的地に到着できます。ところがいつものスケベー心で、このまま専用道を走っていったら、もっと早く着けるのではないかとそのまま走ってみました。
いくつものトンネルを抜けますが、出口はありませんでした。いやな予感がしました。これはたぶん行き過ぎたのだ。だから、一般道に出たら、後戻りしなくてはならないと覚悟しました。
一般道の下り口で、すべてのクルマは左折でした。そちらは串本方面と書いてありました。ああ、それはもっと和歌山を海沿いに走ることになるし、それは避けなければならないし、後戻りしなくてはならないのだから、みんなと反対方向だろうと右折することにしました。右折すると、全く知らない地名が書いてありますが、たぶん勝浦の方にもどれるだろうと思いました。
地図はありません。何度も通ったところだし、間違うはずはないと自信を持っていました。
右折すると、のどかな集落です。川が流れ、低い山に囲まれ、住所表示は那智勝浦町とあります。まさしく私が望んでいる通りです。けれども、突破口がないのです。狭い道・工事中・後ろから猛然と迫り来るクルマはこちらをにらんで追い越していきました。
私たちは、どこを走っているのか、人家はあるし、道は続いているけれど、小さな集落には行き止まりになりそうな雰囲気が漂っているし、とにかく大きな道を走りたい。でも、その手がかりはない。
自転車で通り過ぎるオバサン、この人には道を訊けなかった。小学生の女の子たちの一団がこちらを見ていました。みんなキョトンとしていた。服装も何やら変だと思ったら、近づいてみると、みんなハロウィンの格好をしていました。こんな和歌山の田舎でハロウィンなのか! この子たちはどこへ? いや、それよりも、私たちの道はあるのか?
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大きな道を探しているうちに、最初に右折した専用道の下り口に出ました。どうやらグルッと和歌山の田舎の町を回っていたらしい。もうこうなれば、唯一知っている串本への道をたどるしかないと、さきほどたくさんのクルマたちが向かっていった方面に行くと、とうとう国道42号線を見つけることができました。
もう温泉に行きたい気分も吹き飛んで、ひたすら帰ることにしました。それにしても、和歌山の小さな田舎町のトリック・オア・トリート、これにはびっくりしました。この子らにお菓子をあげる大人のみなさん、彼女たちをぜひ楽しませてあげてくださいと、祈るような気持ちで、土曜の夜にパソコンを開いています。
帰る途中に、太地町の入り口のクジラが見えました。太地町は、勝浦町と合併せず、ほんの小さな町なのに、今も町としてやっているようです。さすが遠洋漁業の町で、現在の調査捕鯨の人材を支えている所で、独立独歩の気概のある町なのだと思いました。
そこを、今日の私が素通りしていたなんて、今自宅でパソコンを打っていますが、何だか信じられません。夢の中のことのようです。こんな私ですから、ヨーロッパに行こうが、宇宙ステーションに行こうが、何も実感がなく、ああこの映像見たなあ程度で終わっていくような気がします。本当に私という人間は!
★ 私たちが迷ったところは、そのまま進むと那智の滝の裏側の山奥にたどりつき、さらに進むと田辺と本宮を結ぶ道に出たようです。でも、もう心はフワフワしていたので、まるでどこを走っているのか、私の頭の地図が消滅していた何分かの迷走でした。コワイコワイ。