23 浜木綿(はま )の花も終りの時化(しけ)一つ 浜口今夜
……よく見られる花ではありません、たぶん。意識して探さないとみつからないかも。私もあまりはっきりわかっていません。でも、海岸べりに咲いているのだろうというのは知っています。そして、夏の終わりに嵐がやってくる。花の終わりと季節の終わりがリンクしているような句ですね。
24 この国のゆふべの匂ひ花蜜柑( ) 岩本貞子
……少し大げさな気もします。国の匂いってなんだろう。穏やかさをいいたいのかもしれないけど、国を持ち出してもらいたくないなあ。いや、それは私がねじ曲がっていて、この国は「国家」じゃなくて、「ふるさと」という意味なのかもしれません。でも、現代は「国」という概念がおっかぶさってきて、すぐ「国」でのけぞってしまいます。
私たちは、国家にとらわれないように社会を推し進めてきたはずなのに、21世紀もずっと「国」なのかなあ。カントリーというよりエンパイヤなのかもしれない。
25 あまさ柔らかさ杏( )の日のぬくみ 室生犀星
……室生犀星と「杏」って、もう定番の組み合わせです。私の「ぶどう」みたいなものかな。いや、私はいちぢく、柿、みかん次から次と浮気しますからね。きまったくだもの恋人いないなあ。ザンネンでした。
26 大雷雨やみ仙人掌(さ )の花に蝶 安田北湖
……雷雨と仙人掌と蝶、組み合わせとしてはおもしろいですね。だから歳時記に載っているんですね。私も何かを訴えるんじゃなくて、ポンと提出するだけの句が作れたらいいんですけど……。
27 ものいへば南瓜( )ころがし人みしり 中村汀女
……人見知りは、何を転がすのか? スイカか? ヘチマか? キュウリか? ひょうたんか?
28 糸瓜( )水とるや月夜の鶏が鳴く 村上暁村
……トリは朝に鳴いてるんですよね。朝のお水取りなのかな。そこにうすっぺらい月が出ている。おもしろいなあ。これは少し気に入りました。でも、こんなにうまくトリが鳴くなんて、多少のフィクションが入っているんでしょう。これが俳人の物語性なんでしょうね。私も十七音で物語作れないかなあ。
29 歯にあてて雪の香ふかき林檎( )かな 渡辺水巴
……これも物語性がありますね。一つのくだものに冬の雪をイメージするなんて、確かにそうなんだけど、なかなかのものだ。でも、今の若い人なら意外と簡単に作れてしまうかもしれない物語なのかな。
30 壺に插して河原撫子( こ)かすかなり 田村木国
……あれ、この花は夏だと思っていました。秋なんですね。知らなかった。ああ、秋もどこかへ行きたいです。
答え 23・はまゆう 24・みかん 25・あんず 26・さぼてん ……以上夏の句
27・かぼちゃ 28・へちま 29・りんご 30・なでしこ ……以上秋の句