神西清さんが編んだ『北原白秋詩集』(1950 新潮文庫)から、「紺屋のおろく」という詩を写してみます。
紺屋のおろく
にくいあん畜生は紺屋(こうや)のおろく。
猫を擁(かか)えて夕日の浜を
知らぬ顔してしゃなしゃなと。
にくいあん畜生は筑前しぼり、
華奢(きゃしゃ)な指さき濃青(こあお)に染めて、
金の指輪もちらちらと。
何となく妖しいキャラですよ。みんなから嫌われてるの?
いや、愛されてると思うし、みんなの憧れの的じゃないのかな。
それを「にくいあん畜生」と呼んでるんじゃないのかな。
おろくさんはネコが好きらしい。
かなりおしゃれで、少し服装は目立ってる気がします。
古道具というか、アクセサリというのか、そういうのもさりげなく持ってる気がしますよ。
結婚してるのかな。してないと思うんだけど、もうお店のダンナの若女将なんですか?
にくいあん畜生が薄情な眼つき。
黒の前掛け、毛繻子(けじゅす)か、セルか。
博多帯しめ、からころと。
にくいあん畜生と、擁(かか)えた猫と、
赤い入日(いりひ)にふとつまされて、
潟(がた)に陥(はま)って死ねばよい。ホンニ、ホンニ……。
そんな、ひどいこと言うんだ。そこまで憎らしいと思ってるの?
わざと憎まれ口をたたいているの?
そうじゃないと思うし、愛情表現だと思うんだけど、
それともみんなの気持ちを代弁してる気分で、もう僕たちを悩ませないでくれという祈りみたいなものなんだろうか。
とつぜん白秋フリークになろうとしても無理ですよ。
何となく、九州のダンナみたいな気分になりたくて、書き写してみました。
でも、わかりません。でも、何となく面白い。テンポがいいのが好きだな。