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……こちらはスイバという雑草だそうです。これも田のあぜで花盛りです。サクラはいなくなっても、春は役者がいっぱいです。
小さい頃、鉄のツメを武器にしたプロレスラーがいました。ただの握力自慢で、大きな手で相手の急所をつかんで(変なところをつかむわけではなくて、とにかく相手が痛がるところ、顔とか、いろいろ)相手を弱らせる、そんなレスラーでした。
だから、私たちもマネをして、ただ相手をつかんだだけなのに、「鉄のツメ、フリッツ・フォン・エリックだー!」と叫んだら、相手はそれだけでダメージを受けるのでした。
あのレスラー、まだお元気なのかなあ。お元気だといいんだけど……。
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エリックさんは特別でも、みんなそれなりにツメって、武器になるモノだと思っていました。でも、オッチャンになってから、私のツメは武器にならなくなったと思い知る場面が何度も何度もあって、もうツメを信じてはいけないと思うのに、つい昔のツメ力があるような気がして、何度も失敗しています。
もう何年も前から、ツメでずっこけています。親指に何か落としたら、へこんだ。小指を柱にぶつけたら欠けた。手のツメに縦の線が入るようになった。……等々。
私のツメは武器ではなくて、たまたま足と手についている、少し弱い部位となっています。信じてはいけないのです。
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先日、草抜きをしていました。軍手をつけて、道具も持たず、力ずくで草を抜いていました。どうして鎌とか、ショベルとか、鉄の道具を持たなかったのか……。自然を甘く見ていたということなんだと思われます。
もう何でもかんでも力づくです。ヨモギだって、ハルジョオンだって、花がついていようが、根っこに土がついていようが、ガムシャラにむしっていました。
右利きなので、左はあまり使いません。草をつかみ、親指・人差し指・中指、この3つは力があります。とにかくつかんで引っ張ります。引っ張るだけでは草むしりはできないから、最後の2つにしわよせがいきます。
上に引っ張ってあっさり抜けるのも多いけれど、地面にしがみつこうと草だってがんばります。それを薬指と小指で、角度をつけていきます。手首を返すというんでしょうか。上に引きつつ薬指、小指と引いていると、縦のラインがツメの縦じわに入り込み、それでも引いていました。そして、知らぬ間に、小指のツメの一番ラストに負担がかかり続け、縦に割れていったみたいです。
気づいたのは、ある程度むしった後の、ああ、疲れたと軍手をはずした時でした。縦に割れ、ツメの下の部分がかなり見えていた。
「あっ、大変! 破傷風になってしまう」とまでは言わないけれど、ツメが割れ、痛いのは確かで、割れてる部分を切り取り、水洗いしたものでした。
そして、自分のいろんなところが弱くなっているのを改めて知ったわけです。末端からどんどん崩れている感じです。
髪の毛、ツメ、筋肉、脳みそ、その他あれこれ、末端はもろくなっている。それで、どんどんトカゲのシッポのように、くずれるところをそぎ落として暮らしていかなければならなくなっているのでした。
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ただの老化の話ですね。そんなのみんなが経験している話で、当たり前のことかもしれない。
だから、せいぜい自分のパーツを大事にして、道具で補いながらやっていかなきゃいけないのに、ついムチャをして、痛い目に遭っているわけです。バカみたいな私です。
今、雑草たちもあれこれと花盛りです。あまり好きではないけど、これらと親しんでいきたいです。ドクダミやヨモギなんかは友だちなんだけどなあ。
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からすのえんどう、これは部分はかわいいのかもしれないけど、他の草花へのからみ方がいやらしくて、それが好きになれません。もっと上手に咲くようになれば、人からかわいがられたりするのにね。ムズカシイです。自然は人間の好みになんか合わせたくないだろうしね……。