甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

三人の鉄の女

2019年01月23日 21時17分52秒 | 鉄道のこと

 1月3日、私は吉松から人吉駅の鉄道に乗りました。たったの40分しか乗らないのに、ものすごい鉄道の人たちの熱情を感じました。怖いと思えるくらいでした。どうしてあんなにガムシャラなのか、どうしてみんな唯我独尊なのか、もう今もわかりません。

 これからも、あんな人たちと出会うでしょうけど、あんな人たちばかりがいるのなら、もう18キップの旅なんか、止めなきゃいけないかもしれない。もうウンザリだったのです。

 吉松から、真幸、矢岳、大畑、人吉という4駅だけなのに、スイッチバックや峠越えがあって、ものすごく丁寧に走っていきます。駅に着くたびに運転士さんは前から後ろと移動しなくてはならないし、駅にはたっぷり止まるし、乗客はつまらないものをたくさんたくさん写真を撮りまくりですし、もうどいつもこいつも同じ動きをするので、邪魔で邪魔で仕方がないのです。

 ということは、私も集団心理で同じようなことをしていたんでしょう。

 そんなことをしていた自分が情けなくなります。落ち着いていられないし、つまらないシーンを後生大事に撮ってみたり、もうバカみたいなのです。でも、あの車両の中にいると、そうなってしまわざるを得ないというのか、みんながヘンテコな、この車両内だけの不思議な法則でみんなが動いていた。

 そうなってしまうのがとても怖かった。

 みんな、専属のガイドさんの写真を撮り、連れてきた女の人を撮ったりしてワイワイ騒いでいました。

 そうした中で怖い女の人たち3人のうちのひとりは、怪しい感じの一人旅の鉄道お姉さんでした。顔はシャープで長い髪。若くはないけどオバさんというほどでもない。40くらいだったのかな……。彼女はだれにも交わらずに、フラフラ歩いているように見えて、実はここを旅のピークにしていたのか、念の入った撮り方をしている。だれとも話はせず、何か心に期するものがあるようです。長身でブーツ姿、スカートも黒でエレガントな感じ。こんな鉄道の旅どころではない風情なのに、確実に鉄オタのすることをしていた。

 ふたり目は、オバさんではないのだけれど、お姉さんでもない、ビミョーな女の人がいて、スタイルに自信があるのか、それともヤケクソなのか、紺のセーラー服コスプレをしていました。

 着眼点というのか、狙いとしてはおもしろい。鉄道のオタクたちの世界に迷い込んだ女の子みたいな雰囲気ではある。ただ、残念なことに、お姉さんではないから、そこそこ体に厚みがあって、セーラー服のハニワのような体型です。ものすごく残念な感じ。そして、年だから寒いはずで、ぶ厚いストッキングが悲哀を感じさせる。

 だから、本来なら、鉄道オタクたちからチヤホヤされて、みんなから写真撮らせてくださいとアイドル状態になるはずのところだったし、本人も心のどこかでそういう姿をイメージしていたのではないのかな。

 季節が悪いのです。お正月の3日に、変てこな鉄道コスプレオバさんを撮ろうという酔狂なヤツはいなかったと思われます。私の見ないところではチヤホヤされてたのかもしれないけど、見ていて寒々しい感じはありました。本人も手持ちぶさたの雰囲気を出していた。

 私は、怖いなあと、その人がやってきたら、縮み上がっていました。だから、まともに顔は見ていません。恐怖が先にあったから、どんな人なのか、それは見なかった。私には怖いもの見たさなんてないのです。素直に怖いものからは目を背けるクセがついています。

 3人目は、若い女の人です。私と同じように2両のうちのほとんどが指定席なんだけど、残された数人くらいの自由席に座った、地味な女性でした。髪の毛をきれいに後ろで編んで、いかにも大人しい風情を出している。もちろん一重の目で、うつむきがち、ではあるけれど、鉄道の興味はあるのでポイントでは小さい目が少し開いて、スマホで何か撮ろうとしていた。

 この女の人、それなりにしたたかで、指定席券はないけれど、しらないうちに指定席の展望席に行き、そこで大きな顔をしていたおじいさんに気に入られ、ずっとおじいさんと話し込んでいるようでした。おじいさんは途中の駅で降りていきましたが、その後にうまく入り込み、指定席は自分のものみたいにしていた。

 弱い女だけど、鉄道は好き、案内してくれる人も好き、みたいにして、上手に世界を泳いでいました。

 ああ、世の中は、バカとアホウのからみ合いなんです。私はだれとも交わらないアホウだけど、自由席で隣り合わせになったハゲおっちゃんとは少し話をしました。この人は、往復で楽しんでいるということでした。

 すごいです。18キップだったら、もう何度でも乗れるから、おっちゃんは心行くまで乗ってるんですね。たいしたもんだ。これには感心して、私は人吉駅を降りたんでした。



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