2011年の6月某日の野坂昭如さんちのネコの話です。
わが家に二匹の猫がいる。オスとメスのきょうだい。オスの方をアルという。アルコールのアルである。メスはニコ。こっちはニコチンのニコ。ぼくの戒めのため、ぼくが命名。結構気に入っている。
ということだそうです。ネコのこの話にキュンとしたので写してみますね。
アルは弟、ややマザコン風。妻のそばを離れない。妻が出かけると、挨拶程度にぼくの部屋をのぞき、すぐ行ってしまう。滞在時間は短い。
そのアルが、朝からわが周辺を離れない。ぼくの寝床を占拠、くたびれきって寝ている。実は、ニコに腫瘍が見つかり。手術をして昨日病院から戻ってきた。普段はケンカばかりするくせに、この騒動の間中、アルは心配し通しだ。ニャーニャーと鳴き続け、様子のおかしいことを告げて歩く。どうやら、夕べは戻ったニコに徹夜で付き添ったらしい。
もちろん、ネコでもちゃんとわかることは分かります。というか、人間よりもはるかに敏感なんだと思われます。何もかもわかっている。だから、お姉ちゃんのそばにずっといてあげたみたいです。
ニコは二階の妻のそばで寝ているようだ。アルは邪魔にならぬよう、そしてようやく安心したのか、数日の疲労から解放された如くびくともせず寝ている。目が覚めたら、彼の好物、かつおぶしをやろう。
ということだったみたいです。つづきはまた今度打ち込んでみます。なんて、生きものって、助け合って生きているんだろう。そして、野坂さんも奥さんのおかげで原稿を書き、この連載を続けているようです。奥さんはやんちゃで酒飲みで、タバコ吸いの野坂さんを見守ってあげている。
野坂さんも少し奥さんコン風です。というか、助け合って生きているみたい。何だかしんみりとホンワリしています。
★ 『絶筆』2019 新潮文庫より 野坂さんは2015年に亡くなっています。これまたシンミリではあるのです。