BSプレミアムでは、今ちょうど「時をかける少女」をやっています。あまりにザラついた画面にびっくりし、体操服の短パンの短さに衝撃をおぼえ、今は亡くなった方たちがでていると、そういえば、こういう俳優さんたちもいたなと、少しだけ懐かしい感じがしたり、そんな気分を味わっていたのに、途中でやめてしまいました。なんでかなあ……。(もう何度も見ましたからね。気分じゃなかったんでしょうね)
当時、大林宣彦監督に少し影響されて、ぜひ尾道を訪ねてみたいと思い、遠距離恋愛中だった奥さんを東京から呼び寄せて、新幹線に乗って遊びに行きましたっけ……。それも30年くらい前ということになります。
当時、映画の主人公になった気分で、少しだけ高校生的な気分で見ていた映画が、今では当時の岸辺一徳さん(国語の先生役)よりも年をとり、たぶん当時の大林監督よりも今の私の方がオッサンになってしまっています。どちらかというと、上原 健さんの方に近いかもしれない。恐ろしいことです。これが歳月というものなんでしょう。私たち自身がどんどん時をかけています。映画の中だけが1983年の気分です。
今の若い人たちは、この映画をどう見てくれるかなあ。古ぼけた、画面が汚くて、どちらかというと濁った映像で、登場人物たちのセリフが聞き取りにくく、しかも演技がなんとなくわざとらしいし、巨匠・小津安二郎の映画の中の登場人物のようなセリフ回しで、ものすごくギャップがあるだろうなと思いました。あまりお気に召さないかもしれません。
でも、しばらく我慢して、演技の下手さもわかった上で見てもらえたら、登場人物たちが切ない気持ちを抱えながら、それぞれが懸命に生きていたというのが、ドラマの中から浮かび上がってくるのではないかと思うのです。それが日々の生活を生きるパワーになったりするのですけど、そんなものは今の若い人は必要ないですか……。
それより今は、展開のおもしろさであったり、セリフで追いまくったり、次から次とテンポがよかったり、そういうのに慣れている若い人たちには、物足りない、とろくさい映画なのかもしれません。
また時代が変われば、どんどんこのままアップテンポの時代が進めば、逆にこのスローテンポの大時代的な古いドラマも、注目されるかもしれません。いつかそういう時代がきっと来ると思います。当時の大林さんの尾道作品はすべてわざと古めかしく、古風に、クラッシックな仕上げにしていたわけで、それが新鮮だったんですから、きっと時代がめぐって、世の中の人がそういうのを求めることがあるような気がします。
★ 懐かしい画像を見つけました。戎橋は真ん中にある橋で、心斎橋筋の商店街向き(北側)の写真です。左手はよくわからないけれど、左に入っていくと中華料理のハマムラさんがあったと思われますが、とにかくキリンビールのキャラクターが描かれた茶色の建物が戎橋劇場です。名画座でした。キリンさんの建物だったんですね。
それが壊されてすぐに「ブラックレイン」で取り上げられた風変わりな建物が建ちましたが、今はもうないと思うので、この狭い土地でコロコロと入れ替わっているんですね。シュークリームのヒロタさんが後ろに見えていて、これまた懐かしい。昔はシュークリーム4つがものすごいごちそうだったんです。それを大事に家族みんなで分け合った思い出がよみがえります。……つまらない回想ですね……。
この映画は1983年の映画で、私は大阪の戎橋劇場というところで、しかも満員だったので、もう後ろの方の2階席くらいから仕事の仲間と一緒に見にいきました。映画館の中には熱狂があって、見ていて観客みんなと一体になったような気がして、楽しくはなやかな気分がいっぱいでした。少し照れくさかったけれど、それは観客層が自分たちよりも少しだけ若いような気がしたせいかもしれません。
そういう経験を、80年代は何度も経験したものでした。「ET」は池袋で夜の部で見ましたが、自転車がETの力で空を飛ぶシーンでは、観客から拍手が起こったり、ロングラン興行だったけれども、観客はいつも新鮮に感動し続けていました。新宿で見た「クレイマークレイマー」では、ダスティン・ホフマンと別れた奥さん役のメリル・ストリープさんとが最後に顔を見合わせて、さてこれからどうなるの? というところで映画がおわります。見終わったお客としては、それからしんみりあれこれ考えたいのに、映画の入れ替えで、いい席を確保しようという次のお客さんたちが押し寄せて、映画のエンドロールもちゃんと見られなくて、落ち着かない気分だけどかたくなに画面を見ながら座っていたりした、そういう映画館の中ではものすごい熱狂があった時代です。
今の映画館みたいにキレイで、システマチックで、こじんまりとまとまったハコではなくて、ただっ広い、時にはがらんどうにもなるし、時には殺人的混雑状態になる、混沌とした世界がそこにはありました。
それは懐古趣味ですね。今は今、昔は昔だから、仕方ないですね。
とにかく、原田知世さんは、1983年からずっと好きです。しかも、彼女は長崎出身! それだけでもうドキドキしますが、まあ、こちらの片思いですね。いつもそんなことばかり!