災害のこと、書こうかと下書きをしました。でも、つまらないから消すことにします。ただぼやいているだけで、何にもならないから、ちゃんと行動した上で、何か書くことにします。
それで、夕方、ふと思いついたことを書くことにします。
カーペンターズのことです。帰りに、ハードディスクに入ってるから、もう何度でもリピートできて、「トップ・オブ・ザ・ワールド」を合計四回くらい聞いたかもしれません。他の「シング」「オンリーイェスタデイ」なども聞きました。ベストが入ってるから、聞き続ければ、カーペンターズの名曲の数々が聞けたでしょう。
でも、つい「トップ・オブ・ザ・ワールド」に傾いてしまう。
あなたといると、世界の頂点にいる感じ。すごく幸せ。みたいな、平和でのん気な曲です。ものすごく平和過ぎて、とても70年代の暗さなんて感じられないんです。本当は、ベトナム戦争があったり、冷戦があったり、核開発が進んだり、世の中の裏の部分ではとんでもないことが起こっていましたっけ。
でも、確かにそうかもしれないけど、世の中は落ち着かないし、実際に兵士になったら、生か死か、何のための戦争か、なんでこんなジャングルにいるのか、わからなかったと思われますし、もうムチャクチャな気分だったことでしょう。
「トップ・オブ・ザ・ワールド」がシングルカットされた1973年の秋から、まだ2年くらいはベトナム戦争は続いていきました。
そんな時代を感じさせないというのか、だからこそというのか、カーペンターズの作り出す音楽は、すべての悲しみをのみ込み、そこから再び立ち上がるために、そんなに無理してる雰囲気は見せないで、サラリとしあわせな世界を聞かせてくれた。
もう50年近く昔のことなんですけど、昔が恋しいのか、今が幸せなのか、カレンさんの声が素敵なのか、すべての辛さを呑み込んで、さあ、しあわせに生きていこうという気持ちになれるし、自分の若い頃がよみがえるし、いろんな感情がこんがらがって、しあわせなのに泣けてしまうような、そんな気分でした。
それなのに、私は、1975年にはカーペンターズを見限り、全く無視してしまいます。曲も作ってたと思うのに、意識的に無視して、そんな音楽を聞く人なんて、軽蔑してしまうくらいの極端な人になっていました。
あんなに好きだったのに、どうしてキライになってしまったんだろう。何かあったんだろうか。思い出せないけど、もう私の中では過去の人たちになっていました。
カーペンターズは、もちろん活動していたと思うし、カレンさんも結婚したり、リチャードさんも音楽の模索をしたと思います。
そうです。そのころ聞いたユーミンとか、しばらくしたら聞くようになったスーパートランプとか、みんなA&Mのレーベルのアーチストで、「あれ、カーペンターズも新譜出してる」とかも思ったはずです。でも、かたくなに聞くことはしませんでした。
長いブランクがありました。だいたい10年ほど経過して、やがてカレンさんは亡くなってしまうし、彼女の死と共にグループとしては終わってしまいます。
そこから、私のカーペンターズ回帰が始まります。90年代の初めでしょうか。それからどんどん年を取り、30年近くが経過しました。
カーペンターズは消滅しましたが、ボクの心とクルマのハードディスクには歴然と存在し、年々大きさが増しています。
そうでした。ボクは、カーペンターズを支持し、やがて切り捨て、グループはなくなり、音楽を今に伝える人はリチャードさんだけになり、そんな心細い形になったのに、今さらながら支持している。
でも、ボクはカーペンターズを消耗させ、疲弊化させ、その結果としてカレンさんは亡くなってしまう。もう少し別のサポートもあっただろうに、グループを天から突き落とすことがボクたちの自己主張ではあったんでしょうか。そして、無くなった。
そういうアーチストを食いつぶすこと、私たちはたくさんたくさんしてきたんだと、思い至ったのです。ビートルズが8年しか活動できなかったのは、私たちが彼らを疲れさせ、もうこれ以上は無理だと突き詰めてしまった。マイケル・ジャクソンもそうなのかもしれない。プリンスだってそうだと思う。
私たちは、ファンの顔をして、アーチストたちを食いつぶすようにして消費していたのです。今もAKBとか、いろんなアイドルがいるのだと思われますが、もてはやしつつ食いつぶすこと、これがファンであり、アイドルは疲れ、ドロップアウトしないことには、やっていられなくなるのだと思うのです。
とにかく、いろんなアーチストを私たちファンが食い物にしているんだと気づき、他の世界でもたくさんあることに気づきました。
文学の世界でも、芥川さんも、三島由紀夫さんも、ファンが食いつぶした例ではないかと思いました。そうか、いろいろとファンって、知らぬこととはいえ、アイドルにひどい仕打ちをしているもんだよなと、カーペンターズ聞きながら、そっちも悲しくなりました。
うまくまとまってないけど、とにかく私たち大衆は、トップのアーチストをしゃぶりつくす勢いで襲いかかるから、アーチストの精神的負担は相当なものだろうなと思ったのです。