三重県の熊野市から和歌山県の新宮市まで、二十数キロの海岸が続いています。どうしてこんな小石浜ができたのかといえば、三重と和歌山の県境となる熊野川からたくさんの土砂や石が運ばれ、凹凸のある海岸線をならしていき、小石でつないだ浜にしたのだと思われます。
二つの町の二十数キロ区間は、熊野地方としては珍しく少しだけ平地になっているのですが、所々に昔は海だった池のような湿地が残されているので、今、平地として利用され、国道42号が走り、人々が住んでいるところは昔は海だったはずです。とはいえ、どれほどの昔なんだろう。何万年? 何千年? それとも数百年?
熊野古道も、海側を通る道は浜街道という風に言われてはいるけれど、もっと山側の道の方が安全だったようなことを聞いたことがあります。海側は少し不安定であった。山賊でもいたんでしょうか。歩きやすい道ではない感じです。何年か前までは野生化したニワトリがいたけれど……。
その二十数キロの海岸線を七里御浜と呼び、熊野市と新宮市の中間に御浜町というところもあります。そこに私たち家族は二十数年前まで住んでいました。もうかなり昔のことです。
(手前のコンクリート、テトラポットに守られたカルバートです!)
その長い海岸線のスタートに鬼ケ城という観光名所があります。
前にテレビで(たぶんブラタモリだったかな)、那智の滝は花崗斑岩(火成岩)と堆積岩の境目にある境目の名所で、火成岩は硬いからなかなか浸食されないのだけれど、堆積岩は浸食されてしまうとか、聞いたことがありました。
吉野熊野国立公園の中には、岩の名所がいくつかありますが、それらは花崗岩系の地下から吹きあがってきたマグマの岩でしたか。
この写真の手前の神仙洞(これも何かの顔に見えます)、その奥の獅子岩、その奥の鬼ケ城、みんな世界遺産のうちなんだろうけど、火成岩だったんですね。
浜の小石は、何岩なんだろう。サッと見て答えられたらいいんだけど、私にはわかりませんでした。
花の窟屋という、イザナギノミコトがおまつりされている岩もありました。ここも昔は何もなかったのですが、世界遺産選定をきっかけに道の駅みたいになってしまいました。お社だって新設されて、まるで神社みたいになりました。確かに祈る場所ではあるけれど、お社を拝むのではなくて、大きな岩の下で何かに向かう場所だったような気がします。そんなにわかりやすい場所ではなかったんです。世界遺産って、外国の人にでもわかってもらうようにしなきゃいけないものでしょうか。
そんなありがたいものを作るよりも、自然のままの方がよかったのだけれど、まあ、仕方がないことなのかな。そうでもしないと、今の若い人は祈る気持ちが起こらないんでしょうね。何もない祈りの場って、沖縄にはあるけれど、あの自然信仰の場って、強烈な磁場があると思うんだけどな(どっちにしても、私には何も感じられないんだけど)。
(これは花の窟屋 はなのいわや の岩そのものです。写真に撮るのも畏れ多いけど、神様におすがりして撮らせてもらった!)
さて、鬼ケ城が断崖絶壁です。ここにオニが住んでいたということです。それは海賊だったのか、山賊だったのか、人間以外の生き物だったのか、それとも異民族だったのか、とにかくこの海に突き出た山の塊に何ものかがいて、付近の住民を威圧していた。
平安時代の初めのスーパーヒーローの坂上田村麻呂さんがその鬼征伐に来られたといいます。
難攻不落なので、仕方なしに海から攻めていった。確かに鬼ケ城は、洞窟があちらこちらにあって、誰かがいるのはわかっているに、攻めるのが簡単ではないようでした。とっかかりの港もないし、断崖絶壁だったと思います。でも、舟を隠す港はあったと思うな。それで、時には海賊行為もしたでしょうか?
さて、田村麻呂さんが攻めあぐんでいるとき、沖の島の上に一人の童子があらわれ、弓矢を携えて将軍を手招きしたそうです。びっくりする田村麻呂さんに童子さんは一緒に攻めようと提案してくれて、特別な鬼退治の矢までくださったそうです。そのご加護によって鬼どもを全滅させたということでした。
千手観音の化身とされた童子さんがあらわれた島を「魔見ヶ島(マミルガシマ・マミガシマ・マブリカ)」と呼び、童子伝説が伝わったということでした。
というので、鬼ケ城の向こう側に浮かぶ岩礁を「マブリカ」と呼ぶらしいのです。
よくはわからないままに、そう呼ぶのだというのはずっと聞かされてきました。海岸から向こう側は深い海になっているはずなのに、ここだけ少し陸があって、ここを通るたびに不思議な岩礁と思ってみたものでしたっけ。
これは鬼ケ城トンネルを抜けて、海が広がるところ、運転してても開放されるところなんですけど、チラッと左手にマブリカが見えたりするんです。この時は助手席から撮ったから、ついつい海だけを見たのかなあ。いや、写真を撮るのに必死になってましたっけ。
それと、「カルバート」ですけど、何にもない海岸線に突如放水のために堤防からコンクリートの放水口があって、それをカルバートと聞いて、同じようなところに二つのものがあって、二つともカタカナの耳慣れない言葉だなと、今まで記憶していたということでした。
二つを同時に撮ることはできなかったかな。