プロデューサーがさらわれた!
この知らせが届いた時、研究所に震撼が起こった。
「何でうちの研究所だけ拉致被害に遭うのじゃ!!」
所長室の机をバンバンと叩く南里。
「うっ……!心臓が……!」
「ドクター南里。落ち着いて・ください」
「す、すまんの……!敷島君をさらったのは、シンディじゃな?」
「イエス」
「ウィリーの奴、ついに生身の人間にまで手を上げるようになったか」
「ドクター南里。すぐに・追跡します」
「頼むぞ。いいか?シンディはブッ壊しても構わん。敷島君は無事に救い出すのじゃ」
「イエス!ドクター南里!」
エミリーは所長室から飛び出して行った。代わりに入って来たのは平賀と七海。
「大変なことになりましたね?警察へ連絡は?」
「無論してくれ。それと、赤月君にもな」
「はい。ナツは確か、東京の現場でしたね?」
「うむ。アイドルJAMにミク、リン・レンを連れて行っておる。くれぐれも、ボーカロイド達には内緒じゃぞ?」
「はい。ここにいるルカ達とかは知ってるみたいですけど?」
「ここで知った分には構わない。とにかく、業務に支障を来たしてはならんのじゃ。ウィリーの奴、それもまた目的じゃろうからな」
「は、はい!」
その頃……。
「う……」
敷島が目を覚ますと、そこはベタな法則で、どこかの倉庫の中のようだった。
「どう?気分は?」
薄暗い室内の中、ボウッと緑色に目を光らせるガイノイドが近づいてきた。
「シンディ……!」
「ごめんなさいね。これもうちのドクターの命令なのよ」
「“親”の命令なら、例えどんな犯罪でもやる。卑劣だな」
「あら?それなら、うちの“姉機”も同じよ?エミリーだって、ドクター南里の命令なら町1つ消し炭にすることも平気でやるでしょう」
「ふん、まさか……」
敷島はバカにしたような笑いを浮かべた。
「あなたは知らないでしょうけど、エミリーはそうやって旧ソ連時代、政府に楯突く連中を村ごと消し去ったからね。1回や2回じゃないよ」
「……で、俺を誘拐した理由は?」
シンディは敷島に顔を近づけた。
「うちのドクターがね、うちの研究所で働かないかって。給料は今の3倍出すってよ?」
「バカか!こんな誘拐ヘッドハンティングがあるか!それに、俺の仕事はボーカロイドのプロデューサーだぞ?ウィリーの研究所にボーカロイドがいるのかよ!?」
「ボーカロイド・プロデューサーより、もっと面白い仕事があるんだって」
「なに?」
「うちの研究所に来てみない?」
「どこにあるんだよ?ラクーンシティのアークレイ山地の奥にでもあるのか?」
するとシンディ、ガクッと脱力する。
「“バイオハザード”じゃないのよ……。てか、あんた、この状況でよくボケれるわね……」
さすがドクター・ウィリーに見込まれる男だわ、とシンディは密かに感心したという。