報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「警察の到着」

2025-01-30 16:15:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月1日21時30分 天候:雨 群馬県吾妻郡東吾妻町某所 ペンション『いたち草』3階プレイルーム&バー]

 ジュークボックスからは、相変わらずジャズが流れて来る。
 あの中に入っているのはピアノソロだけではなく、色々と入っているようだ。
 カジノで流れていそうな、アップテンポな曲が流れている。
 日本アンブレラの元社長で、今はペンションのオーナーである五十嵐皓貴氏との会話は進む。

 愛原「ところで、今日の夕食はとても美味しかったです」
 五十嵐「ありがとうございます。お気に召して頂けたようで良かったです」
 愛原「食べていて気付いたのですが、フランス料理のフルコースでありながら、コンセプトは沖縄のようでした。どうして沖縄なんですか?」
 五十嵐「元々あの料理は、サトウ様(斉藤秀樹の偽名)の御注文でした。サトウ様より、『私の次の旅行先、沖縄をモチーフにした料理にしてほしい』という御注文を受けまして……」
 愛原「『次の旅行先』!?」
 五十嵐「はい」

 なるほど!
 斉藤元社長は、次の逃亡先の暗示の為にあの料理を出させたのか。
 だったら最初から沖縄料理をオーナーに作らせて……というのもあるが、あからさま過ぎるし、何よりオリジナルの食材を集めないといけないからというのもあるか。
 しかし、今から沖縄に行くのか?
 無理だろう。
 どこかで夜明かしをして、それから沖縄に行くものと思われる。
 こうしてはいられない!
 私は席を立った。

 愛原「失礼!大至急、今の情報を私のクライアントさんに伝えなければなりません!電話を掛けてきます!」
 五十嵐「電話なら、そこのを使ってください」
 愛原「えっ?」

 厨房の入口の所に、壁掛けタイプの固定電話があった。
 1階フロントや301号室にあったようなアンティーク型ではなく、普通のプッシュボタン式である。

 五十嵐「他に、白井伝三郎の事とか、聞きたくないですか?」
 愛原「今は斉藤早苗という少女の体を使っているようですね」
 五十嵐「なに?もうそこまで行ったのか。……結局、ヤツの野望は成功したことになりますな」
 愛原「沖縄で私達の前に現れた後、また行方不明になったんです。クライアントさんによれば、沖縄本島から出ればすぐに分かるということなんですが、全く音沙汰無くて……」
 五十嵐「これでサトウ様の次の旅行先、そして旅行目的が分かりましたな」
 愛原「あっ……!」

 斉藤元社長は白井伝三郎(斉藤早苗)の居場所を知っているのだ。
 そして、これから会いに行こうとしているのだろう。
 多分、斉藤元社長の事だから、彼……いや、彼女というか……まあ、それを殺す算段が付いているのかもしれない。
 どうする?
 そこまで報告するか?
 ……まあ、契約だから、した方がいいか。

 愛原「ちょっとお電話お借りします!」
 五十嵐「どうぞ。なるべく早く御連絡をした方が良さそうですな」
 愛原「どういうことです?」
 五十嵐「ようやくゲリラ豪雨が収まって来たようです」

 確かに窓の外を見ると雨は弱くなり、雷の音も小さくなっていた。
 そしてその代わり、遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえて来た。

 愛原「パトカーが!?」
 五十嵐「恐らく目的地はここ。用件は……サトウ様の事に関してでしょうな。愛原様方はこちらでお過ごしになっててください。……こちら、お代わりのお飲み物と軽食です」
 リサ「おおっ!今度はスモークタンと生ハムの盛り合わせ!」

 オーナーは私用にマティーニ、リサ用にノンアルコールカクテルのシャーリー・テンプルを出してくれた。
 おつまみとして、私用にはバターピーナッツも。
 オーナーはその後、この部屋を出ていった。
 サイレンを鳴らしたパトカーは、確かにこのペンションの前に着いた。
 私は電話を借り、それで善場係長に電話を掛けた。
 そして、五十嵐オーナーから聞いた話をそのまま伝える。

 善場「お疲れ様です。実は斉藤早苗こと、白井伝三郎の行方は未だに分かっていないのです。もしも斉藤容疑者がそれを知っているのなら、泳がせる必要がありますね」
 愛原「はい。あと、どうやらこのペンションに警察が到着したようです」
 善場「警察が?」
 愛原「はい。善場係長の方で、警察には捜査の手配をされたんですよね?」
 善場「そうです。では捜査の一環で、ペンションに来たのですね」
 愛原「今のところ、従業員とオーナーが対応に当たっているようですが、どうも今夜の宿泊客は、逃亡した斉藤さんを除いて、私とリサだけのようなので、私達も事情聴取をされそうです。その場合はどうしたら?」
 善場「そうですね……。斉藤容疑者とは会食してしまったので、当然ながらその関係を警察は疑うでしょうね」
 愛原「最悪、共犯だと疑われるわけですか……」
 善場「すぐに警察に通報しなかったところとかは疑われるでしょうね」
 愛原「しかし、私は係長にはすぐに連絡しましたが?」
 善場「はい。ですので、警察には私の電話番号を教えて頂いて結構です。少なくとも、こちらとしては愛原所長の報告を受けて、こちらから警視庁には連絡しましたから」
 愛原「分かりました」
 善場「何も無ければ明日、帰京ですね。月曜日には今回の件について、詳しく教えてください」
 愛原「かしこまりました。明日には報告書を作成しますから」
 善場「ありがとうございます。また何かありましたら、すぐに御連絡ください」
 愛原「承知致しました」

 私は電話を切った。
 しばらくオーナーを待っていたが、事情聴取が長引いているのか、なかなか戻ってこない。
 リサはさっさとおかわりのシャーリー・テンプルを飲み終わり、おつまみも食べ終わてしまった。
 そして、待っているのに飽きたのか、壁際に置いてあるスロットマシーンやピンボールゲームで遊び始めた。

 リサ「先生も一緒にやろうよ!」
 愛原「そうだな」

 トランプ台にはトランプもあるので、それでトランプでもして時間を潰すという事もあり得るだろう。
 私はマティーニやピーナッツを口に運んだ。

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