[21:00.闇の森“中央の村” 安倍春明]
闇の森は名前の通り、高い木々のせいで地表は常に薄暗い。エルフ族の村周辺では、シャーマンが“光の精霊”なるものを召喚して村を照らしている。もっとも、そんなことしなくたって、夜目の利く彼らのこと、それすら滅多に使わない。今回は私達、視察団が来ている為、特別にしてくれているようだ。
彼らは火を一切使わない。森林火災を極度に警戒しているためかと思うが、他に心情的な理由があるらしい。
出された夕食もベジタリアンな彼らのこと、やはりそれ系が全てだった。全てが質素に慎ましい生活だと私は思った。タンパク質はどうやって取っているのだろうと思ったが、これもそれが多く含まれている木の実や作物があるらしく、大豆に似たものもあった。
人間界の書物では、彼らを『森の妖精』と称することが多々ある。人間界でも、広大な森の中に住む未開の部族が存在する。……失礼。今、『部族』ってのも、差別用語なんだっけ?人間界は面倒だな。とにかく、人間の中でそういった生活をしている“民族”と根本的に違うのは、彼らの中には露骨な序列も無ければ、信仰も無いということだ。そして私が1番知りたかった男女格差。これも、一見すると無い。男女の体付きの違いによる“区別”はあっても、例えばここの村長職を堂々と女性が勤めているのもそうだし、弓矢を取って戦うのも男女関係無いようだ。
「アベさん、何か分かりましたか?オレ達のことについて……」
「ああ。本当に、視察に来るべきだと思ったね」
視察団は空き家にそれぞれ宿泊をしている。世話係として、各家に1人の村人が付いてくれているが、恐らく監視役でもあろう。その証拠に、何故か横田達の小屋だけ3人も付いていやがる。しかも全員男。私はサイラスに誘われ、彼の実家に泊まることになった。
私の所もサイラスを含めて3人ではあるのだが、横田達とは事情が違う。何故なら、残る2人はサイラスの弟達だからだ。つまりリーフも含めて、サイラスは4人兄妹ということになる。これは大家族だ。1年に1度しか子作りができず、それとて必ず受胎するとは限らないということなので、この兄妹は奇跡なのだろうか。
因みに彼らの母親は既に亡くなられており、先代村長の父親も民主党人民軍の“間引き”によって虐殺されている。しかし、そこが人間と大きな違いだ。当然なら同族である私達を憎み、断固抗議、もしくは視察自体を拒否となるだろう。ややもすれば、私達の命も無くなっていたかもしれない。
彼らは、自分達に危害を加えた“本人”しか憎まないようである。いち早くそれに気づいた私は人民軍掃討の際、王国の法律ではなく、あえて彼らの法律で裁かせた。当然それだって死刑だと思った。してやったり。彼らは自分達の手で仇討ちの手助けをしてくれた私達に報恩の念を抱いてくれた。
やはり、人間は狡賢いのかもな。もっとも、それで戦争を仕掛ける政権にはしたくないけどね。
「明日はどうする?」
「まだ村を全部回ってない。まあ、秘密まで知ろうとは思わないけど、もっと知っておきたいね。それで今後、ルーシーと相談して、この森をどうするか決めるさ。……あ、もちろん、悪い扱いはしないさ。それだと前の民主党みたいになっちゃうし、多分俺達、この森から出してもらえなくなる……」
最後のセリフに、サイラスは何故か口元を歪めただけだった。もしかして、本気かな?
[翌6:00.闇の森“中央の村” 横田高明]
清々しい朝です。ええ。さすが、常春の国アルカディア。正にこの淫らな温かさは、私の体の一部をホットにしてくれます。でも何故かその度に、総理や陛下に厳しい叱責を受けるのです。……グスン。
朝食の時間までまだ間がありますし、少し村内を散歩してみましょう。“護衛”の皆様方はまだ寝ていらっしゃるようですね。
人間からは迷いの森と呼ばれる森ですが、家々が見える間なら大丈夫でしょう。
おっ、どこからともなく沢の音が聞こえてきますね。環境汚染の「か」の字もない森。沢の水は清々しくて冷たく、私のホットになった体の一部をクール・ダウンしてくれます。ええ、正に魔法の水ですね。
「おっ?おおおーっ!!」
私はつい声を荒げてしまいました。何故ならその沢で、1人の少女が全裸で水浴びをしていたのです!嗚呼、何という……!!
「・・・・!・・・・・・・!!」
私の分析では人間換算年齢10歳前後、まだ平らな、それでいて今にも膨らもうとしている胸が何ともたまりません。エルフ語で何か言っているようですが、幸か不幸か、私はエルフ語が分からないのです。嗚呼、そして下半身はまだ陰毛も生えるか生えないかの……。
「・・・・・!・・・・・!」
おっと、いけません。私が大感激している間に、少女が服を着て私のところに抗議に来てしまいました。不肖、共和党理事。ここは1つ、大人の対応をしようじゃありませんか。
「お嬢ちゃん、悪かった。しかし、いいものを見せてくれてありが……じゃなかった。お詫びに、いいものをあげよう」
人間の娘ならお小遣いでも渡すところでありますが、何しろ金銭欲の無い種族です。たまたま私は、持参していたハッカ飴をあげました。
少女はそれまでの憤怒から、今度は珍しいものを見たという顔になりました。どうやら、私の作戦は成功したようです。
少女はそれまでの怒りはどこへやら、私が渡したキャンデーを持ってどこかへ行ってくれました。
「あっ、お嬢ちゃん!総理にはナイショだよ~!」
果たして、聞いてくれたかどうか……。
しかし!私のこの行動が、とんだ裏目に出るとは……っ!この横田高明、一生の不覚であります!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
何だか一人称にすると、本人達の呟きだけで、肝心のセリフが少なくなっているような……。こんなもんだったっけ?
ポテンヒットさん辺りはもう知ってると思うけど、ここに出てくる横田のモデルは【お察しください】。しかし、春明も何でこんなトラブルメーカー連れてきたのやら……。
闇の森は名前の通り、高い木々のせいで地表は常に薄暗い。エルフ族の村周辺では、シャーマンが“光の精霊”なるものを召喚して村を照らしている。もっとも、そんなことしなくたって、夜目の利く彼らのこと、それすら滅多に使わない。今回は私達、視察団が来ている為、特別にしてくれているようだ。
彼らは火を一切使わない。森林火災を極度に警戒しているためかと思うが、他に心情的な理由があるらしい。
出された夕食もベジタリアンな彼らのこと、やはりそれ系が全てだった。全てが質素に慎ましい生活だと私は思った。タンパク質はどうやって取っているのだろうと思ったが、これもそれが多く含まれている木の実や作物があるらしく、大豆に似たものもあった。
人間界の書物では、彼らを『森の妖精』と称することが多々ある。人間界でも、広大な森の中に住む未開の部族が存在する。……失礼。今、『部族』ってのも、差別用語なんだっけ?人間界は面倒だな。とにかく、人間の中でそういった生活をしている“民族”と根本的に違うのは、彼らの中には露骨な序列も無ければ、信仰も無いということだ。そして私が1番知りたかった男女格差。これも、一見すると無い。男女の体付きの違いによる“区別”はあっても、例えばここの村長職を堂々と女性が勤めているのもそうだし、弓矢を取って戦うのも男女関係無いようだ。
「アベさん、何か分かりましたか?オレ達のことについて……」
「ああ。本当に、視察に来るべきだと思ったね」
視察団は空き家にそれぞれ宿泊をしている。世話係として、各家に1人の村人が付いてくれているが、恐らく監視役でもあろう。その証拠に、何故か横田達の小屋だけ3人も付いていやがる。しかも全員男。私はサイラスに誘われ、彼の実家に泊まることになった。
私の所もサイラスを含めて3人ではあるのだが、横田達とは事情が違う。何故なら、残る2人はサイラスの弟達だからだ。つまりリーフも含めて、サイラスは4人兄妹ということになる。これは大家族だ。1年に1度しか子作りができず、それとて必ず受胎するとは限らないということなので、この兄妹は奇跡なのだろうか。
因みに彼らの母親は既に亡くなられており、先代村長の父親も民主党人民軍の“間引き”によって虐殺されている。しかし、そこが人間と大きな違いだ。当然なら同族である私達を憎み、断固抗議、もしくは視察自体を拒否となるだろう。ややもすれば、私達の命も無くなっていたかもしれない。
彼らは、自分達に危害を加えた“本人”しか憎まないようである。いち早くそれに気づいた私は人民軍掃討の際、王国の法律ではなく、あえて彼らの法律で裁かせた。当然それだって死刑だと思った。してやったり。彼らは自分達の手で仇討ちの手助けをしてくれた私達に報恩の念を抱いてくれた。
やはり、人間は狡賢いのかもな。もっとも、それで戦争を仕掛ける政権にはしたくないけどね。
「明日はどうする?」
「まだ村を全部回ってない。まあ、秘密まで知ろうとは思わないけど、もっと知っておきたいね。それで今後、ルーシーと相談して、この森をどうするか決めるさ。……あ、もちろん、悪い扱いはしないさ。それだと前の民主党みたいになっちゃうし、多分俺達、この森から出してもらえなくなる……」
最後のセリフに、サイラスは何故か口元を歪めただけだった。もしかして、本気かな?
[翌6:00.闇の森“中央の村” 横田高明]
清々しい朝です。ええ。さすが、常春の国アルカディア。正にこの淫らな温かさは、私の体の一部をホットにしてくれます。でも何故かその度に、総理や陛下に厳しい叱責を受けるのです。……グスン。
朝食の時間までまだ間がありますし、少し村内を散歩してみましょう。“護衛”の皆様方はまだ寝ていらっしゃるようですね。
人間からは迷いの森と呼ばれる森ですが、家々が見える間なら大丈夫でしょう。
おっ、どこからともなく沢の音が聞こえてきますね。環境汚染の「か」の字もない森。沢の水は清々しくて冷たく、私のホットになった体の一部をクール・ダウンしてくれます。ええ、正に魔法の水ですね。
「おっ?おおおーっ!!」
私はつい声を荒げてしまいました。何故ならその沢で、1人の少女が全裸で水浴びをしていたのです!嗚呼、何という……!!
「・・・・!・・・・・・・!!」
私の分析では人間換算年齢10歳前後、まだ平らな、それでいて今にも膨らもうとしている胸が何ともたまりません。エルフ語で何か言っているようですが、幸か不幸か、私はエルフ語が分からないのです。嗚呼、そして下半身はまだ陰毛も生えるか生えないかの……。
「・・・・・!・・・・・!」
おっと、いけません。私が大感激している間に、少女が服を着て私のところに抗議に来てしまいました。不肖、共和党理事。ここは1つ、大人の対応をしようじゃありませんか。
「お嬢ちゃん、悪かった。しかし、いいものを見せてくれてありが……じゃなかった。お詫びに、いいものをあげよう」
人間の娘ならお小遣いでも渡すところでありますが、何しろ金銭欲の無い種族です。たまたま私は、持参していたハッカ飴をあげました。
少女はそれまでの憤怒から、今度は珍しいものを見たという顔になりました。どうやら、私の作戦は成功したようです。
少女はそれまでの怒りはどこへやら、私が渡したキャンデーを持ってどこかへ行ってくれました。
「あっ、お嬢ちゃん!総理にはナイショだよ~!」
果たして、聞いてくれたかどうか……。
しかし!私のこの行動が、とんだ裏目に出るとは……っ!この横田高明、一生の不覚であります!
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何だか一人称にすると、本人達の呟きだけで、肝心のセリフが少なくなっているような……。こんなもんだったっけ?
ポテンヒットさん辺りはもう知ってると思うけど、ここに出てくる横田のモデルは【お察しください】。しかし、春明も何でこんなトラブルメーカー連れてきたのやら……。