[3月26日13:45.天候:晴 羽田空港・国際線ターミナル]
白とオレンジ色のバスが、国際線ターミナルのバス降車場に到着する。
マリア:「師匠、起きてますよね?」
イリーナ:「あいよ。アタシゃ起きてるよー」
実はマリア、国内線第2ターミナルにバスが到着してからイリーナを起こす活動をしていた。
第1ターミナルにバスが到着した時、また寝そうになったので、再びマリアが起こした。
マリア:(見た目は30代なのに、中身はBBAなんだから……)
マリアはチッと舌打ちした。
大魔道師として尊敬はしているが、こういう所が面倒で仕方が無かった。
稲生が面白がっているところを見ると、ただ単に自分が“怠惰の悪魔”と契約しているが故の面倒臭がりなのかとマリアは思ってしまう。
係員:「ありがとうございました」
稲生:「お世話様でした」
稲生はターミナルの係員から荷物を受け取った。
荷物の大きさだけなら、確かにこれから飛行機に乗りそうな出で立ちではある。
実は稲生、国内線の利用も考えた。
だが、今回はそれを控えることにした。
結局はバスと鉄道のみになった次第。
マリア:「師匠、まだ大師匠様が到着されるまで時間があるので、ここでランチにしませんか?」
イリーナ:「うんうん、そうだね。どこか、お勧めのお店があるのかい?」
マリア:「ユウタ」
稲生:「あ、はい。一応、検索しておきました。……和食いいですか?」
マリア:「家ではいつも私達の食生活になっているので、たまにはいいかと」
イリーナ:「そうだね。ただ、夕食もダンテ先生のことだから、日本食を希望されると思うよ?」
稲生:「はい、そこは考えてあります」
イリーナ:「それならユウタ君の意見を全面採用しようかしら」
稲生:「ありがとうございます」
稲生達、国際線ターミナルの中に入った。
[同日14:15.天候:晴 羽田空港国際線ターミナル4F]
イリーナ:「なるほど。ポークカツレツとは、考えたね」
稲生:「朝が早かったので、お腹ペコペコでしたから」
イリーナ:「うんうん、そうだね。……あ、ライスとサラダお代わり」
店員:「かしこまりました」
マリア:「師匠が1番食べてます」
稲生:「少し、ゆっくりでしたかね?飛行機は14時40分着とのことですが、どこから来るんでしたっけ?」
イリーナ:「ロンドンだって。ロンドンのヒースロー空港」
稲生:「東アジア魔道団と会うような場所では無さそうですが……」
イリーナ:「別件でしょう。まだ“魔の者”との戦いは完全終結したわけじゃないからね」
稲生:「そうですか」
イリーナ:「イギリスといえば、マリア絡みの“魔の者”発祥の地でもあるからね、ダンテ先生、何か発見されたかねぇ……」
稲生:「東アジア魔道団は“魔の者”との戦いは無いのでしょうか?」
イリーナ:「彼らは彼らで、別の問題を抱えてるみたいだね」
稲生:「そうなんですか?」
イリーナ:「そう。私達の問題と彼らの問題。今ケンカしていいものなのかどうか、それとも協力すべきか、それとも付かず離れずの関係にするか……そういう話し合いだね」
稲生:「向こうは日本支部の支部長、それに対してこちらは総師範である大師匠様、何か違う気がしますね」
イリーナ:「しょうがないさ。向こうはちゃんとピラミッド式の組織作りがされているけど、こっちは違うもの」
稲生:「と、言いますと?」
イリーナ:「ダンテ一門の日本支部ってどこだと思う?」
稲生:「えっ?えっと……それは……」
イリーナ:「ね?確かにアタシ達は日本に拠点を作ってはいるけども、別に正式に門内から日本支部と決められているわけじゃない。勝手に私達が日本を拠点にしているだけの話。だから、彼らとはそもそも組織体制が違うのよ」
稲生:「なるほど。エレーナだって日本を拠点にしてますもんね」
イリーナ:「そういうこと。ナスターシャだって、日本拠点を作ったって言ったからね」
イリーナはグラスワインを口に運んだ。
イリーナ:「だからいいのよ。ここはダンテ先生に任せて」
稲生:「なるほど。よく分かりました」
[同日14:40.天候:晴 羽田空港国際線ターミナル・到着ロビー]
昼食を終えた稲生達は慌ただしく、到着ロビーに向かった。
稲生は緊張した面持ちで、スーツのネクタイを締め直す。
それにつられてか、マリアもえんじ色のリボンタイを直した。
国際線のダイヤだからか、定時性が高いとは言い難い。
それでも比較的、順調なフライトだったのだろう。
ロンドンからの乗客達が、ぞろぞろと到着口から出て来た。
そしてその中に、彼はいた。
稲生:「?」
言われないとダンテだと分からないくらい。
肖像画に出ている詩人・哲学者としてのダンテとは、全く違う風体をしていたからだ。
ダブルのグレーのスーツの上に茶色のコートを羽織り、ステッキを手にしていた。
頭にはグレーの中折れ帽。
その下に覗かせる顔は、肌の白いものだった。
イリーナ:「ああ、ダンテ先生。また、変装されておられるのですね」
ダンテ:「あの姿で日本に来るのは、無理があるからね。これならイギリスからやってきた、向こうの人間に見えるだろう?」
イリーナも高身長の女性であるが、ダンテはそれ以上の高さで、稲生やマリアを見下ろす形となっている。
見た目の歳は50代半ばくらいだろうか。
ダンテ:「昨年のクリスマスパーティ以来だね。元気なようで何より」
稲生:「お久しぶりです、大師匠様。本日から、よろしくお願い致します」
ダンテ:「こちらこそよろしく。今回の行程はキミが全て決めてくれたそうだね。期待しているよ」
稲生:「はい!」
ダンテ:「そして、キミがマリアンナ君だね?」
マリア:「はい。イギリスより遥々、お疲れさまです」
ダンテ:「見違えるほど明るいコになったそうじゃないか!日本での修行が功を奏したのだろう!」
ダンテはヒョイとマリアを抱え上げた。
マリア:「きゃっ!?ま、まだ私はそんなに……!」
イリーナ:「先生、はしゃぐのもこの辺してください」
ダンテ:「おお、そうだったな。いやいや、フザけて済まなかった」
ダンテはマリアを床に下ろす。
マリア:「は〜、ビックリした……」
稲生:「大師匠様、お荷物お持ちします。……これだけですか?」
ダンテが持っている鞄は、少し大きめのビジネスバッグであった。
ダンテ:「そうだよ。あとの荷物はここにある」
ダンテはコートの内ポケットを指さした。
稲生:「は、はあ……。(四次元ポケット?)」
イリーナ:「それより、そろそろ移動しましょう。先生もお疲れでしょう?今日はうちのユウタがいいホテルを予約してくれたそうですので、そちらで休みましょう」
ダンテ:「うむ、そうだな。私はさすがに、どこでも寝られる特技は持ち合わせていないんだ。今夜はちゃんとしたベッドで寝てみたいね」
稲生:「お任せください」
イリーナ:「東京駅の近くのホテルです。リムジンで向かうそうですので」
稲生:「そうですね。こちらです」
稲生の先導により、魔道師達が移動を開始した。
だが稲生、この後、とんでもないミスをしでかすことになる。
白とオレンジ色のバスが、国際線ターミナルのバス降車場に到着する。
マリア:「師匠、起きてますよね?」
イリーナ:「あいよ。アタシゃ起きてるよー」
実はマリア、国内線第2ターミナルにバスが到着してからイリーナを起こす活動をしていた。
第1ターミナルにバスが到着した時、また寝そうになったので、再びマリアが起こした。
マリア:(見た目は30代なのに、中身はBBAなんだから……)
マリアはチッと舌打ちした。
大魔道師として尊敬はしているが、こういう所が面倒で仕方が無かった。
稲生が面白がっているところを見ると、ただ単に自分が“怠惰の悪魔”と契約しているが故の面倒臭がりなのかとマリアは思ってしまう。
係員:「ありがとうございました」
稲生:「お世話様でした」
稲生はターミナルの係員から荷物を受け取った。
荷物の大きさだけなら、確かにこれから飛行機に乗りそうな出で立ちではある。
実は稲生、国内線の利用も考えた。
だが、今回はそれを控えることにした。
結局はバスと鉄道のみになった次第。
マリア:「師匠、まだ大師匠様が到着されるまで時間があるので、ここでランチにしませんか?」
イリーナ:「うんうん、そうだね。どこか、お勧めのお店があるのかい?」
マリア:「ユウタ」
稲生:「あ、はい。一応、検索しておきました。……和食いいですか?」
マリア:「家ではいつも私達の食生活になっているので、たまにはいいかと」
イリーナ:「そうだね。ただ、夕食もダンテ先生のことだから、日本食を希望されると思うよ?」
稲生:「はい、そこは考えてあります」
イリーナ:「それならユウタ君の意見を全面採用しようかしら」
稲生:「ありがとうございます」
稲生達、国際線ターミナルの中に入った。
[同日14:15.天候:晴 羽田空港国際線ターミナル4F]
イリーナ:「なるほど。ポークカツレツとは、考えたね」
稲生:「朝が早かったので、お腹ペコペコでしたから」
イリーナ:「うんうん、そうだね。……あ、ライスとサラダお代わり」
店員:「かしこまりました」
マリア:「師匠が1番食べてます」
稲生:「少し、ゆっくりでしたかね?飛行機は14時40分着とのことですが、どこから来るんでしたっけ?」
イリーナ:「ロンドンだって。ロンドンのヒースロー空港」
稲生:「東アジア魔道団と会うような場所では無さそうですが……」
イリーナ:「別件でしょう。まだ“魔の者”との戦いは完全終結したわけじゃないからね」
稲生:「そうですか」
イリーナ:「イギリスといえば、マリア絡みの“魔の者”発祥の地でもあるからね、ダンテ先生、何か発見されたかねぇ……」
稲生:「東アジア魔道団は“魔の者”との戦いは無いのでしょうか?」
イリーナ:「彼らは彼らで、別の問題を抱えてるみたいだね」
稲生:「そうなんですか?」
イリーナ:「そう。私達の問題と彼らの問題。今ケンカしていいものなのかどうか、それとも協力すべきか、それとも付かず離れずの関係にするか……そういう話し合いだね」
稲生:「向こうは日本支部の支部長、それに対してこちらは総師範である大師匠様、何か違う気がしますね」
イリーナ:「しょうがないさ。向こうはちゃんとピラミッド式の組織作りがされているけど、こっちは違うもの」
稲生:「と、言いますと?」
イリーナ:「ダンテ一門の日本支部ってどこだと思う?」
稲生:「えっ?えっと……それは……」
イリーナ:「ね?確かにアタシ達は日本に拠点を作ってはいるけども、別に正式に門内から日本支部と決められているわけじゃない。勝手に私達が日本を拠点にしているだけの話。だから、彼らとはそもそも組織体制が違うのよ」
稲生:「なるほど。エレーナだって日本を拠点にしてますもんね」
イリーナ:「そういうこと。ナスターシャだって、日本拠点を作ったって言ったからね」
イリーナはグラスワインを口に運んだ。
イリーナ:「だからいいのよ。ここはダンテ先生に任せて」
稲生:「なるほど。よく分かりました」
[同日14:40.天候:晴 羽田空港国際線ターミナル・到着ロビー]
昼食を終えた稲生達は慌ただしく、到着ロビーに向かった。
稲生は緊張した面持ちで、スーツのネクタイを締め直す。
それにつられてか、マリアもえんじ色のリボンタイを直した。
国際線のダイヤだからか、定時性が高いとは言い難い。
それでも比較的、順調なフライトだったのだろう。
ロンドンからの乗客達が、ぞろぞろと到着口から出て来た。
そしてその中に、彼はいた。
稲生:「?」
言われないとダンテだと分からないくらい。
肖像画に出ている詩人・哲学者としてのダンテとは、全く違う風体をしていたからだ。
ダブルのグレーのスーツの上に茶色のコートを羽織り、ステッキを手にしていた。
頭にはグレーの中折れ帽。
その下に覗かせる顔は、肌の白いものだった。
イリーナ:「ああ、ダンテ先生。また、変装されておられるのですね」
ダンテ:「あの姿で日本に来るのは、無理があるからね。これならイギリスからやってきた、向こうの人間に見えるだろう?」
イリーナも高身長の女性であるが、ダンテはそれ以上の高さで、稲生やマリアを見下ろす形となっている。
見た目の歳は50代半ばくらいだろうか。
ダンテ:「昨年のクリスマスパーティ以来だね。元気なようで何より」
稲生:「お久しぶりです、大師匠様。本日から、よろしくお願い致します」
ダンテ:「こちらこそよろしく。今回の行程はキミが全て決めてくれたそうだね。期待しているよ」
稲生:「はい!」
ダンテ:「そして、キミがマリアンナ君だね?」
マリア:「はい。イギリスより遥々、お疲れさまです」
ダンテ:「見違えるほど明るいコになったそうじゃないか!日本での修行が功を奏したのだろう!」
ダンテはヒョイとマリアを抱え上げた。
マリア:「きゃっ!?ま、まだ私はそんなに……!」
イリーナ:「先生、はしゃぐのもこの辺してください」
ダンテ:「おお、そうだったな。いやいや、フザけて済まなかった」
ダンテはマリアを床に下ろす。
マリア:「は〜、ビックリした……」
稲生:「大師匠様、お荷物お持ちします。……これだけですか?」
ダンテが持っている鞄は、少し大きめのビジネスバッグであった。
ダンテ:「そうだよ。あとの荷物はここにある」
ダンテはコートの内ポケットを指さした。
稲生:「は、はあ……。(四次元ポケット?)」
イリーナ:「それより、そろそろ移動しましょう。先生もお疲れでしょう?今日はうちのユウタがいいホテルを予約してくれたそうですので、そちらで休みましょう」
ダンテ:「うむ、そうだな。私はさすがに、どこでも寝られる特技は持ち合わせていないんだ。今夜はちゃんとしたベッドで寝てみたいね」
稲生:「お任せください」
イリーナ:「東京駅の近くのホテルです。リムジンで向かうそうですので」
稲生:「そうですね。こちらです」
稲生の先導により、魔道師達が移動を開始した。
だが稲生、この後、とんでもないミスをしでかすことになる。