[3月26日17:45.天候:曇 東京都千代田区 ホテルメトロポリタン丸の内・客室]
マリア:「ん?そろそろ夕食の時間だ」
稲生:「あっ、そうですね」
2人でテレビを観ていた大魔道師の弟子達。
マリア:「夕食はこのホテルで?」
稲生:「そうです。大師匠様はお疲れでしょうから、あまり移動しない方がいいでしょう」
マリア:「そうだな」
稲生:「ちょっと先生方に連絡を……」
稲生は室内の電話を取り、イリーナとダンテの部屋に掛けてみた。
稲生:「あっ、すいません、稲生ですけど。あの、そろそろ夕食に行こうかと思うんですが……はい」
稲生は電話を切った。
稲生:「すぐに出れるみたいです」
マリア:「そうか。じゃあ、私も準備してくる」
稲生:「エレベーターの前で待ってますんで」
マリア:「ああ、分かった」
稲生はクロゼットに掛けていたスーツの上着を取ると、ネクタイを締め直した。
現代の魔道師はスーツ姿であることも多い。
アナスタシア組など、男性魔道師は黒スーツ着用を義務付けているくらいだ。
時代の変遷と共に、服装も変わってきているということだ。
それは宗教の世界においてもそう。
日蓮正宗では未だに僧職は着物の上から袈裟を羽織るが、浄土真宗などはワイシャツにネクタイ着用の上から袈裟を羽織っている姿を公式サイトで確認できる(恐らく、自分達は本来の意味での「僧侶」ではないことを自覚しているのだろう。因みに浄土真宗では、「功徳は回向するものではない」という教えなので、「功徳は回向して当然」という日蓮正宗とガチ論争になるところ)。
稲生は革靴を履いて、部屋を出ようとした。
稲生:「おっと!カードキー!……危うく締め出されるところだった」
稲生は慌ててカードキーを持ち出した。
[同日18:00.天候:曇 同ホテル27F・レストラン“TENQOO”(テンクウ)]
大師匠ダンテと師匠イリーナと合流した稲生とマリアは、夕食会場のレストランに向かった。
稲生:「既にレストランは予約してあります」
ダンテ:「そうか。用意周到だね」
マリア:「国内の魔道師達が挨拶に来られたそうですが、お疲れですのに大丈夫でしたか?」
ダンテ:「なぁに、心配要らん。こういうことにはもう慣れている。多くの弟子を抱えた師範の義務だよ」
イリーナ:「やっぱりナスターシャとマルファが、空気も読まずにやってきたわ」
稲生:「そうでしたか。まさか、夕食も一緒になんて……」
ダンテ:「いやいや。あくまでこれは旅行の一環なんだから、私は認めなかったよ。そもそも、稲生君は4名で予約したのだろう?」
稲生:「そうです」
ダンテ:「なら、大丈夫。何も心配要らない」
稲生:「は、はい!」
エレベーターを降りて、稲生達はレストランの中に入った。
稲生:「予約していた稲生です」
スタッフ:「はい、稲生様。4名様ですね。お待ちしておりました。どうぞ、ご案内させて頂きます」
予約していただけに、テーブルは眺望の優れた窓側の所が確保されていた。
イリーナ:「ユウタ君、電車が見たいなら代わるよ?」
稲生:「あ、いえ、結構です。部屋で十分見てますので」
イリーナ:「あはははっ!そう?」
稲生:「先生はどうぞ、窓側に」
というわけで、本来のビジネスマナーの通りになった。
飲み物はワインを注文した師匠達だったが、稲生とマリアはカクテルを注文した。
特に稲生の場合は、アルコールを低めに抑えてもらった。
案内者が酔い潰れては元も子もないからだ。
稲生:「先生方、今日はお疲れさまでした」
ダンテ:「うむ。ありがとう。明日が正念場となるから、キミ達にも迷惑を掛けることになるだろう。こんなことを言っておきながら何だが、今から覚悟しておいてくれ。向こうは何をしてくるか分からんからな」
稲生:「はい」
マリア:「承知しました」
イリーナ:「恐らく、稲生君がネックになると思います」
稲生:「えっ!?」
マリア:「日本人だから、本来は東アジア魔道団の一員になるはずだったのに、ダンテ一門で取ってしまったからですか?」
ダンテ:「確かにそういう不文律はあるけどね、交通が発達した現代においては、ほぼ形骸化したものだよ。現に、東アジア魔道団にだって、東欧出身者が含まれている」
イリーナ:「そうですね。特に、トランプ君は向こうさん推しでしたから、尚更勢いづいていますものね」
ダンテ:「うむ。だからこちらも、手は打たせてもらった。韓国人のチェ師が手引きしていたパク大統領には、その職を降りてもらうことにした」
稲生:「!?」
イリーナ:「東アジア魔道団朝鮮支部ですが、どうも内ゲバの予感がします」
ダンテ:「向こうさんも苦労していることだろう。政治的にも火種の場所だからね、この日本は良い防波堤になるわけだ。東アジア魔道団としても、何としてでもこの国でのシェアを確保したいところだろうね」
イリーナ:「私達にとっても、ここは“魔の者”からの良いシェルターですわ。北海道での事件では結局、“魔の者”はエネルギー供給元がヨーロッパにしか無い為に十分な補給ができなかったのも、私達に負けた要因であるとのことです」
ダンテ:「そうだな。だから我々にとっても、日本をシェアにしたいところだ。この辺が大きな論争になりそうだな」
稲生にとっては難しい話が飛び交っていて、とてもついて行ける内容ではなかった。
マリアは手帳を取り出して、師匠達の会話をメモしている。
後で魔道書に書き写すつもりだろう。
契約悪魔の関係で物臭な性格になっているということだが、そこはまだ勉強熱心なところがある。
食事が運ばれて来てから、ダンテは日本国内の食材がふんだんに使われている料理に舌鼓を打った。
ダンテ:「食事が美味い国には未来がある。これだけでも、この国をシェアしたいくらいだな」
イリーナ:「ですねぇ……。マリアが“魔の者”からの疎開先に選んでくれて良かったですわ」
マリア:「私はダーツを投げただけです。それがたまたま日本に刺さっただけです」
魔道師に成り立ての頃、まだマリアは“魔の者”の脅威にさられていた。
イギリスは元より、ヨーロッパ全土が危険地帯だということで、そこ以外の地域に逃げる必要があった。
そこでイリーナはマリアに世界地図に向かってダーツを投げさせ、そこに刺さったのがたまたま日本であったのだ。
イリーナ:「この国土の小さい国でも、ちゃんと魔界の穴が空いているのですから便利ですわ」
ダンテ:「何しろ、アベ首相が魔界に行くくらいだからなぁ。世界的に見れば、実は日本はそんなに国土が狭い国では無いんだよ」
イリーナ:「なるほど。そうかもしれませんね」
長旅の疲れもあるのか、夕食の後はすぐに部屋に戻った師匠達。
稲生達もそうしたのだが、マリアは稲生の部屋に行って、一緒に映画を観て過ごした。
マリア:「ん?そろそろ夕食の時間だ」
稲生:「あっ、そうですね」
2人でテレビを観ていた大魔道師の弟子達。
マリア:「夕食はこのホテルで?」
稲生:「そうです。大師匠様はお疲れでしょうから、あまり移動しない方がいいでしょう」
マリア:「そうだな」
稲生:「ちょっと先生方に連絡を……」
稲生は室内の電話を取り、イリーナとダンテの部屋に掛けてみた。
稲生:「あっ、すいません、稲生ですけど。あの、そろそろ夕食に行こうかと思うんですが……はい」
稲生は電話を切った。
稲生:「すぐに出れるみたいです」
マリア:「そうか。じゃあ、私も準備してくる」
稲生:「エレベーターの前で待ってますんで」
マリア:「ああ、分かった」
稲生はクロゼットに掛けていたスーツの上着を取ると、ネクタイを締め直した。
現代の魔道師はスーツ姿であることも多い。
アナスタシア組など、男性魔道師は黒スーツ着用を義務付けているくらいだ。
時代の変遷と共に、服装も変わってきているということだ。
それは宗教の世界においてもそう。
日蓮正宗では未だに僧職は着物の上から袈裟を羽織るが、浄土真宗などはワイシャツにネクタイ着用の上から袈裟を羽織っている姿を公式サイトで確認できる(恐らく、自分達は本来の意味での「僧侶」ではないことを自覚しているのだろう。因みに浄土真宗では、「功徳は回向するものではない」という教えなので、「功徳は回向して当然」という日蓮正宗とガチ論争になるところ)。
稲生は革靴を履いて、部屋を出ようとした。
稲生:「おっと!カードキー!……危うく締め出されるところだった」
稲生は慌ててカードキーを持ち出した。
[同日18:00.天候:曇 同ホテル27F・レストラン“TENQOO”(テンクウ)]
大師匠ダンテと師匠イリーナと合流した稲生とマリアは、夕食会場のレストランに向かった。
稲生:「既にレストランは予約してあります」
ダンテ:「そうか。用意周到だね」
マリア:「国内の魔道師達が挨拶に来られたそうですが、お疲れですのに大丈夫でしたか?」
ダンテ:「なぁに、心配要らん。こういうことにはもう慣れている。多くの弟子を抱えた師範の義務だよ」
イリーナ:「やっぱりナスターシャとマルファが、空気も読まずにやってきたわ」
稲生:「そうでしたか。まさか、夕食も一緒になんて……」
ダンテ:「いやいや。あくまでこれは旅行の一環なんだから、私は認めなかったよ。そもそも、稲生君は4名で予約したのだろう?」
稲生:「そうです」
ダンテ:「なら、大丈夫。何も心配要らない」
稲生:「は、はい!」
エレベーターを降りて、稲生達はレストランの中に入った。
稲生:「予約していた稲生です」
スタッフ:「はい、稲生様。4名様ですね。お待ちしておりました。どうぞ、ご案内させて頂きます」
予約していただけに、テーブルは眺望の優れた窓側の所が確保されていた。
イリーナ:「ユウタ君、電車が見たいなら代わるよ?」
稲生:「あ、いえ、結構です。部屋で十分見てますので」
イリーナ:「あはははっ!そう?」
稲生:「先生はどうぞ、窓側に」
というわけで、本来のビジネスマナーの通りになった。
飲み物はワインを注文した師匠達だったが、稲生とマリアはカクテルを注文した。
特に稲生の場合は、アルコールを低めに抑えてもらった。
案内者が酔い潰れては元も子もないからだ。
稲生:「先生方、今日はお疲れさまでした」
ダンテ:「うむ。ありがとう。明日が正念場となるから、キミ達にも迷惑を掛けることになるだろう。こんなことを言っておきながら何だが、今から覚悟しておいてくれ。向こうは何をしてくるか分からんからな」
稲生:「はい」
マリア:「承知しました」
イリーナ:「恐らく、稲生君がネックになると思います」
稲生:「えっ!?」
マリア:「日本人だから、本来は東アジア魔道団の一員になるはずだったのに、ダンテ一門で取ってしまったからですか?」
ダンテ:「確かにそういう不文律はあるけどね、交通が発達した現代においては、ほぼ形骸化したものだよ。現に、東アジア魔道団にだって、東欧出身者が含まれている」
イリーナ:「そうですね。特に、トランプ君は向こうさん推しでしたから、尚更勢いづいていますものね」
ダンテ:「うむ。だからこちらも、手は打たせてもらった。韓国人のチェ師が手引きしていたパク大統領には、その職を降りてもらうことにした」
稲生:「!?」
イリーナ:「東アジア魔道団朝鮮支部ですが、どうも内ゲバの予感がします」
ダンテ:「向こうさんも苦労していることだろう。政治的にも火種の場所だからね、この日本は良い防波堤になるわけだ。東アジア魔道団としても、何としてでもこの国でのシェアを確保したいところだろうね」
イリーナ:「私達にとっても、ここは“魔の者”からの良いシェルターですわ。北海道での事件では結局、“魔の者”はエネルギー供給元がヨーロッパにしか無い為に十分な補給ができなかったのも、私達に負けた要因であるとのことです」
ダンテ:「そうだな。だから我々にとっても、日本をシェアにしたいところだ。この辺が大きな論争になりそうだな」
稲生にとっては難しい話が飛び交っていて、とてもついて行ける内容ではなかった。
マリアは手帳を取り出して、師匠達の会話をメモしている。
後で魔道書に書き写すつもりだろう。
契約悪魔の関係で物臭な性格になっているということだが、そこはまだ勉強熱心なところがある。
食事が運ばれて来てから、ダンテは日本国内の食材がふんだんに使われている料理に舌鼓を打った。
ダンテ:「食事が美味い国には未来がある。これだけでも、この国をシェアしたいくらいだな」
イリーナ:「ですねぇ……。マリアが“魔の者”からの疎開先に選んでくれて良かったですわ」
マリア:「私はダーツを投げただけです。それがたまたま日本に刺さっただけです」
魔道師に成り立ての頃、まだマリアは“魔の者”の脅威にさられていた。
イギリスは元より、ヨーロッパ全土が危険地帯だということで、そこ以外の地域に逃げる必要があった。
そこでイリーナはマリアに世界地図に向かってダーツを投げさせ、そこに刺さったのがたまたま日本であったのだ。
イリーナ:「この国土の小さい国でも、ちゃんと魔界の穴が空いているのですから便利ですわ」
ダンテ:「何しろ、アベ首相が魔界に行くくらいだからなぁ。世界的に見れば、実は日本はそんなに国土が狭い国では無いんだよ」
イリーナ:「なるほど。そうかもしれませんね」
長旅の疲れもあるのか、夕食の後はすぐに部屋に戻った師匠達。
稲生達もそうしたのだが、マリアは稲生の部屋に行って、一緒に映画を観て過ごした。