[5月14日23:39.天候:曇 静岡県三島市 JR三島駅]
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、三島です。東海道本線、伊豆箱根鉄道線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
乗車時間は1時間足らず。
これは“こだま”809号が本当の最終列車で、後続列車は無い。
その為、途中駅での“のぞみ”や“ひかり”の通過待ちが無い分、早く進めるということだろう。
〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、三島に到着致します。お出口は、右側です。三島からのお乗り換えをご案内致します。東海道本線下り、沼津行きは4番線から23時47分。……」〕
途中、新横浜駅から小田原まではスピード感を堪能できるはずだが、いかんせん深夜帯なのでそれほどではないし、そもそも今はそういう心境ではない。
そもそもこの辺りではよく見えるはずの富士山自体が夜で見えないのと、どうやら今は曇りのようである。
雨が降るのかどうか、今は分からない。
列車はホームのある副線に入る為、ポイントを渡る。
三島駅は外側線が本線、内側線が副線となっていて、島式ホームも内側にある。
〔みしま〜、三島です。ご乗車、ありがとうございました。東海道本線、伊豆箱根鉄道駿豆線はお乗り換えです。5番線の電車は、回送電車です。……〕
稲生達は深夜の新幹線ホームに降り立った。
稲生:「東海道新幹線の最終に乗るのは初めてだ」
鈴木:「俺もです」
マリア:「私も……」
稲生:「今度は在来線ですよ」
足早に在来線ホームへ向かう3人。
もちろんそれは稲生達だけでなく、乗客の半分くらいはそうだった。
これは三島市よりも沼津市の方が栄えていることの表れである(人口も三島市より沼津市の方が凡そ8万人多い)。
もっとも、この3人にとってはどちらの町にも用は無く、単なるトランジットである。
〔「4番線に停車中の電車は23時47分発、沼津行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕
在来線ホームに行くと、5両編成の電車が停車していた。
しかも2台連結。
前2両が旧型の211系、後ろ3両が新型の313系である。
但し、鉄ヲタならもうとっくに知っていると思うが、静岡地区の東海道本線普通列車はまずオールロングシートだと思ってもらって良い。
この電車も御多聞に漏れず、両方ともそうだった。
もっとも、新幹線の終電から乗り換えて来た乗客を詰め込むにはちょうど良い構造かもしれない。
とはいえ、そこまで混んでいるわけではないが。
日によってはそうなることもあるのだろうか。
取りあえず稲生達は先頭車の乗降ドア付近に立っていたが。
どうせ1駅だけ、しかも乗車時間5分だけの電車だ。
この211系、JR東日本のものと構造はほぼ同じ。
だが、優先席の位置が違う。
東日本のは連結器横の5人席が優先席なのに対し、東海のは乗務員室後ろの2人席が優先席なのである。
同じ旧国鉄車両でも、JRが違えばここまで違うというトリビアである。
しばらくして発車時間になった。
発車メロディではなく、普通の発車ベルである。
しかも、ちゃんと車掌が笛を吹いて閉めるタイプ。
211系であっても、ドアチャイムは後付けされている。
少し甲高いタイプの、JR東海では当たり前の2回チャイム。
東日本では京王電車で聞けるタイプか。
夜の電車が走り出す。
実はこれ、終電の新幹線に接続した電車ではあるが、在来線としては終電ではない。
この後にもう一本、沼津止まりの電車が存在する。
しかもそれは、この電車みたいに三島始発ではない。
何と、宇都宮からやってくる電車なのだ。
さすがにそれに乗るという発想は稲生達には無かったようだ。
もっとも、東京駅発が22時台前半ではそもそも間に合うはずがない。
〔「今日もJR東海をご利用頂き、ありがとうございます。この電車は東海道本線、普通列車の沼津行きです。終点の沼津には23時52分の到着です。次は終点、沼津です」〕
稲生:「本来なら、向こうに富士山が見えるはずなんだけど……」
鈴木:「真っ暗で何も見えませんよ」
稲生:「それもそうだな」
[5月15日00:00.天候:雨 同県沼津市 JR沼津駅]
たった5分だけ、一駅だけの電車は無事に沼津駅に着いた。
稲生:「あ、どうせなら313系に乗れば良かったかな」
鈴木:「そうですよ。先輩にしては珍しいなと思ったんです」
電車を降りてからの稲生の発言に、鈴木が呆れたように言った。
稲生:「ゴメンゴメン。どうせロングシートだし、立ってるからどっちも同じだろうと思ったんだ」
鈴木:「ま、気持ちは分かりますけどね……」
で、今、稲生と鈴木は北口改札内コンコースでマリアを待っている。
トイレに行ったのだ。
一応、稲生と鈴木も行ったのだが、やはりこういう場合、男性の方が出て来るのが早い。
鈴木:「先輩、こんな時間に大石寺に行って何をしろというんですか?」
稲生:「うちの先生が言うには、遺品が足りないんだそうだ」
鈴木:「遺品が足りない?」
稲生:「そう。先生が水晶球で見た限り、ロザリーが首から掛けていたペンダントが衝撃で飛んで、どこかに落ちたらしいね」
鈴木:「警察が回収したんじゃ?」
稲生:「それでも警察がどういうものを回収したか、遺族に教えるでしょ?で、捜査の為……証拠品として預かる旨の書類とか……」
鈴木:「あー……」
稲生:「で、そのリストの中にペンダントが無かったんだってさ」
鈴木:「ほおほお。……ん?ということは?」
稲生:「現場付近にまだ落ちてる可能性が高い。それを速やかに回収するんだ」
鈴木:「あの辺、警察が捜索したはずですよ」
稲生やマリアは意識を失ってしまったが、鈴木は呆然自失としながらも意識喪失は免れた。
だからイリーナが現れて、もろもろ対処しているのも見たし、そして不幸なことに、ゼルダとロザリーの無残な死体を見て嘔吐するハメになってしまった。
マリア:「お待たせ」
トイレから出て来たマリアと合流した稲生達は改札口を出て、駅の外に出ると、タクシー乗り場に止まっていたタクシーに乗り込んだ。
そして、それで大石寺へ向かったのである。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、三島です。東海道本線、伊豆箱根鉄道線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
乗車時間は1時間足らず。
これは“こだま”809号が本当の最終列車で、後続列車は無い。
その為、途中駅での“のぞみ”や“ひかり”の通過待ちが無い分、早く進めるということだろう。
〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、三島に到着致します。お出口は、右側です。三島からのお乗り換えをご案内致します。東海道本線下り、沼津行きは4番線から23時47分。……」〕
途中、新横浜駅から小田原まではスピード感を堪能できるはずだが、いかんせん深夜帯なのでそれほどではないし、そもそも今はそういう心境ではない。
そもそもこの辺りではよく見えるはずの富士山自体が夜で見えないのと、どうやら今は曇りのようである。
雨が降るのかどうか、今は分からない。
列車はホームのある副線に入る為、ポイントを渡る。
三島駅は外側線が本線、内側線が副線となっていて、島式ホームも内側にある。
〔みしま〜、三島です。ご乗車、ありがとうございました。東海道本線、伊豆箱根鉄道駿豆線はお乗り換えです。5番線の電車は、回送電車です。……〕
稲生達は深夜の新幹線ホームに降り立った。
稲生:「東海道新幹線の最終に乗るのは初めてだ」
鈴木:「俺もです」
マリア:「私も……」
稲生:「今度は在来線ですよ」
足早に在来線ホームへ向かう3人。
もちろんそれは稲生達だけでなく、乗客の半分くらいはそうだった。
これは三島市よりも沼津市の方が栄えていることの表れである(人口も三島市より沼津市の方が凡そ8万人多い)。
もっとも、この3人にとってはどちらの町にも用は無く、単なるトランジットである。
〔「4番線に停車中の電車は23時47分発、沼津行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕
在来線ホームに行くと、5両編成の電車が停車していた。
しかも2台連結。
前2両が旧型の211系、後ろ3両が新型の313系である。
但し、鉄ヲタならもうとっくに知っていると思うが、静岡地区の東海道本線普通列車はまずオールロングシートだと思ってもらって良い。
この電車も御多聞に漏れず、両方ともそうだった。
もっとも、新幹線の終電から乗り換えて来た乗客を詰め込むにはちょうど良い構造かもしれない。
とはいえ、そこまで混んでいるわけではないが。
日によってはそうなることもあるのだろうか。
取りあえず稲生達は先頭車の乗降ドア付近に立っていたが。
どうせ1駅だけ、しかも乗車時間5分だけの電車だ。
この211系、JR東日本のものと構造はほぼ同じ。
だが、優先席の位置が違う。
東日本のは連結器横の5人席が優先席なのに対し、東海のは乗務員室後ろの2人席が優先席なのである。
同じ旧国鉄車両でも、JRが違えばここまで違うというトリビアである。
しばらくして発車時間になった。
発車メロディではなく、普通の発車ベルである。
しかも、ちゃんと車掌が笛を吹いて閉めるタイプ。
211系であっても、ドアチャイムは後付けされている。
少し甲高いタイプの、JR東海では当たり前の2回チャイム。
東日本では京王電車で聞けるタイプか。
夜の電車が走り出す。
実はこれ、終電の新幹線に接続した電車ではあるが、在来線としては終電ではない。
この後にもう一本、沼津止まりの電車が存在する。
しかもそれは、この電車みたいに三島始発ではない。
何と、宇都宮からやってくる電車なのだ。
さすがにそれに乗るという発想は稲生達には無かったようだ。
もっとも、東京駅発が22時台前半ではそもそも間に合うはずがない。
〔「今日もJR東海をご利用頂き、ありがとうございます。この電車は東海道本線、普通列車の沼津行きです。終点の沼津には23時52分の到着です。次は終点、沼津です」〕
稲生:「本来なら、向こうに富士山が見えるはずなんだけど……」
鈴木:「真っ暗で何も見えませんよ」
稲生:「それもそうだな」
[5月15日00:00.天候:雨 同県沼津市 JR沼津駅]
たった5分だけ、一駅だけの電車は無事に沼津駅に着いた。
稲生:「あ、どうせなら313系に乗れば良かったかな」
鈴木:「そうですよ。先輩にしては珍しいなと思ったんです」
電車を降りてからの稲生の発言に、鈴木が呆れたように言った。
稲生:「ゴメンゴメン。どうせロングシートだし、立ってるからどっちも同じだろうと思ったんだ」
鈴木:「ま、気持ちは分かりますけどね……」
で、今、稲生と鈴木は北口改札内コンコースでマリアを待っている。
トイレに行ったのだ。
一応、稲生と鈴木も行ったのだが、やはりこういう場合、男性の方が出て来るのが早い。
鈴木:「先輩、こんな時間に大石寺に行って何をしろというんですか?」
稲生:「うちの先生が言うには、遺品が足りないんだそうだ」
鈴木:「遺品が足りない?」
稲生:「そう。先生が水晶球で見た限り、ロザリーが首から掛けていたペンダントが衝撃で飛んで、どこかに落ちたらしいね」
鈴木:「警察が回収したんじゃ?」
稲生:「それでも警察がどういうものを回収したか、遺族に教えるでしょ?で、捜査の為……証拠品として預かる旨の書類とか……」
鈴木:「あー……」
稲生:「で、そのリストの中にペンダントが無かったんだってさ」
鈴木:「ほおほお。……ん?ということは?」
稲生:「現場付近にまだ落ちてる可能性が高い。それを速やかに回収するんだ」
鈴木:「あの辺、警察が捜索したはずですよ」
稲生やマリアは意識を失ってしまったが、鈴木は呆然自失としながらも意識喪失は免れた。
だからイリーナが現れて、もろもろ対処しているのも見たし、そして不幸なことに、ゼルダとロザリーの無残な死体を見て嘔吐するハメになってしまった。
マリア:「お待たせ」
トイレから出て来たマリアと合流した稲生達は改札口を出て、駅の外に出ると、タクシー乗り場に止まっていたタクシーに乗り込んだ。
そして、それで大石寺へ向かったのである。