[5月17日10:30.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]
稲生:「『魔界の穴』を使うのが有料とは……。エレーナの奴め」
威吹:「まあ、人んちに邪魔して使わせてもらうわけだから、当たり前と言えば当たり前だがね」
一体エレーナはいくら請求したのか、【お察しください】。
エレベーターで地下階に下り、その奥に魔法陣が常設されている。
稲生:「それじゃ威吹、また来てね」
威吹:「ああ。ユタも是非また来なよ」
稲生:「うん。それじゃ」
最後に2人は握手を交わした。
威吹が魔法陣の中に入ると、魔法陣の下から白い光が現れ、それが威吹を包み込んだ。
そして、次の瞬間には威吹の姿は無くなっていた。
稲生:「ま、これを維持するのが大変だというのは分かるが……」
稲生は再びエレベーターまで戻ると、それで1階に戻った。
エレーナ:「おっ、稲生氏。随分早い別れだったな」
稲生:「宿泊しているわけでもないのに、長居はマズいだろ」
エレーナ:「いっそのこと泊まってくれたら、いくらでもいていいぜ?」
稲生:「そのつもりが無いからそう言ってるんだよ」
エレーナ:「私の部屋には入らなかっただろうね?」
稲生:「当たり前だよ。鈴木君じゃあるまいし」
エレーナ:「今、リリィが寝てるから。あいつの寝起きは悪いから、機嫌を損ねたら、まあ【お察しください】だな」
稲生:「分かってるって。それより、マリアさんとルーシーは?」
エレーナ:「東京駅に行くって言ってたな。多分、これからどこかに行くんじゃないか?」
稲生:「そうなの!?」
稲生は自分のスマホを取り出した。
エレーナ:「おっと。今、妖狐のヤツと『男の友情』を育んで来た所だろ?」
稲生:「変な言い方するなよ……」
エレーナ:「それと同時に、マリアンナとルーシーも『女の友情』で今行動中だ。そこに男が絡んじゃダメだぜ」
稲生:「そうなのか。じゃあ、僕はどうしたらいいんだ?」
エレーナ:「ワンスターホテルの『御休憩』サービスが……」
稲生:「さて、正証寺に行って唱題でもしてくるか」
エレーナの商売根性に付き合いきれなくなった稲生は、さっさとホテルをあとにした。
稲生:「全く。油断も隙も無いんだから……」
取りあえずは再び森下駅に向かうことにした。
[同日10:53.天候:晴 東京都文京区本郷 都営地下鉄本郷三丁目駅→東京メトロ本郷三丁目駅]
〔かすが〜、春日〜。都営三田線、丸ノ内線、南北線はお乗り換えです〕
稲生は大江戸線に乗ると、今度は春日駅に向かった。
正証寺のある池袋まで行くのに丸ノ内線に乗り換える為である。
それなら同駅名の本郷三丁目駅の方が良いと思われるだろうが、実はそちらは地下通路で繋がっていない。
地上に出て乗り換える必要がある。
その為、駅名は違えど(東京メトロは『後楽園』駅)、春日駅の方がまだ地下道で繋がっているので、こちらで乗り換えた方が多少は便利なのである。
但し、互いの駅名が違うだけに、多少歩かされることにはなるが。
電車を降りた稲生は連絡改札口に向かい、そこから今度は東京メトロ後楽園駅の方に入った。
と、そこへ……。
稲生:「あっ」
稲生のスマホが震えた。
画面を見ると、マリアからだった。
多分水晶球を介して通話するのだろう。
逆に稲生の方が水晶球を使わない。
稲生:「はい、もしもし?」
マリア:「ああ、私。今どこ?」
稲生:「地下鉄の春日駅から後楽園駅という所に移動した所です。あの、後楽園ゆうえんちとか東京ドームとかある所です」
マリア:「イブキとそこへ?」
稲生:「いえ、威吹を送った後、正証寺に行こうと思いまして。その途中です」
マリア:「忙しいならいいけど……」
稲生:「何かあったんですか?」
マリア:「東京駅の地下街でイベントがあったんだけど、ルーシーがそこで一発当てたんだ。その商品をどうしようか相談したくて……」
稲生:「エレーナなら真っ先に換金するか、どこかへ転売しそうなものですけどね」
マリア:「私もそれを一瞬考えたんだけど、何故かイラッと来たんで、他の方法を探したい。多分、勇太ならいい方法が浮かぶと思う」
稲生:「現金ならこの旅行で使っちゃえばいいと思いますけどね」
マリア:「それが違うから困ってるんだ」
稲生:「一体、何なんです?大型冷蔵庫でも当たりました?」
マリア:「だったらルーシーの家に空輸でもするよ。そうじゃないんだ。日本でしか使えないから困ってるんだ」
稲生:「ちょっと行きますよ。今、ちょうど丸ノ内線に乗る所ですから」
マリア:「ありがとう。私達は今、東京駅の八重洲地下街にいる。上のバスターミナルに上がった方がいいか?」
稲生:「その方が分かりやすいかもしれませんね。ちょっと待っててください。今行きますから」
稲生は電話を切ると、丸ノ内線の池袋行きではなく、反対側のホームへと向かった。
稲生:(ルーシーって地下とか苦手だと聞いたんだけど、地下街は大丈夫なのかな?)
稲生は首を傾げて地上に向かった。
後楽園駅では丸ノ内線だけが地上を走っているからだ。
〔まもなく1番線に、荻窪行きが参ります。乗車位置でお待ちください。ホームドアから手や顔を出したり、もたれ掛ったりするのはおやめください〕
地下鉄らしからぬ地上のホームに上がると、ちょうど電車が来たところだった。
しかしやってきたのは、旧型の02系。
なかなか新型の2000系には当たらない。
銀座線の1000系が開業当初の銀座線の1000形をモチーフにしているのに対し、こちらの2000系は開業当初の丸ノ内線車両をモチーフにしているとのこと。
〔足元にご注意ください。後楽園、後楽園。荻窪行きです。南北線、都営三田線、都営大江戸線はお乗り換えです〕
稲生は電車に乗り込んだ。
この時間、池袋行きは混んでいたが、東京方面は空いていた。
発車メロディが鳴ってドアが閉まる。
ホームドアが閉まる分、発車まで数秒のブランクがある。
もっとも、丸ノ内線はワンマン運転を行っているので、車掌の発車合図のブザーが鳴るまでのブランクだと思えばいいかも。
〔次は本郷三丁目、本郷三丁目です。都営大江戸線は、お乗り換えです〕
〔The next station is Hongo-Sanchome.Please change here for the Toei Oedo line.〕
で、電車が走り出して再び地下に入る頃、稲生は気付く。
稲生:(今日って金曜日だよな?こんなド平日にイベントで福引?……八重洲地下街ならやってるのかな???)
と、首を傾げた。
稲生:「『魔界の穴』を使うのが有料とは……。エレーナの奴め」
威吹:「まあ、人んちに邪魔して使わせてもらうわけだから、当たり前と言えば当たり前だがね」
一体エレーナはいくら請求したのか、【お察しください】。
エレベーターで地下階に下り、その奥に魔法陣が常設されている。
稲生:「それじゃ威吹、また来てね」
威吹:「ああ。ユタも是非また来なよ」
稲生:「うん。それじゃ」
最後に2人は握手を交わした。
威吹が魔法陣の中に入ると、魔法陣の下から白い光が現れ、それが威吹を包み込んだ。
そして、次の瞬間には威吹の姿は無くなっていた。
稲生:「ま、これを維持するのが大変だというのは分かるが……」
稲生は再びエレベーターまで戻ると、それで1階に戻った。
エレーナ:「おっ、稲生氏。随分早い別れだったな」
稲生:「宿泊しているわけでもないのに、長居はマズいだろ」
エレーナ:「いっそのこと泊まってくれたら、いくらでもいていいぜ?」
稲生:「そのつもりが無いからそう言ってるんだよ」
エレーナ:「私の部屋には入らなかっただろうね?」
稲生:「当たり前だよ。鈴木君じゃあるまいし」
エレーナ:「今、リリィが寝てるから。あいつの寝起きは悪いから、機嫌を損ねたら、まあ【お察しください】だな」
稲生:「分かってるって。それより、マリアさんとルーシーは?」
エレーナ:「東京駅に行くって言ってたな。多分、これからどこかに行くんじゃないか?」
稲生:「そうなの!?」
稲生は自分のスマホを取り出した。
エレーナ:「おっと。今、妖狐のヤツと『男の友情』を育んで来た所だろ?」
稲生:「変な言い方するなよ……」
エレーナ:「それと同時に、マリアンナとルーシーも『女の友情』で今行動中だ。そこに男が絡んじゃダメだぜ」
稲生:「そうなのか。じゃあ、僕はどうしたらいいんだ?」
エレーナ:「ワンスターホテルの『御休憩』サービスが……」
稲生:「さて、正証寺に行って唱題でもしてくるか」
エレーナの商売根性に付き合いきれなくなった稲生は、さっさとホテルをあとにした。
稲生:「全く。油断も隙も無いんだから……」
取りあえずは再び森下駅に向かうことにした。
[同日10:53.天候:晴 東京都文京区本郷 都営地下鉄本郷三丁目駅→東京メトロ本郷三丁目駅]
〔かすが〜、春日〜。都営三田線、丸ノ内線、南北線はお乗り換えです〕
稲生は大江戸線に乗ると、今度は春日駅に向かった。
正証寺のある池袋まで行くのに丸ノ内線に乗り換える為である。
それなら同駅名の本郷三丁目駅の方が良いと思われるだろうが、実はそちらは地下通路で繋がっていない。
地上に出て乗り換える必要がある。
その為、駅名は違えど(東京メトロは『後楽園』駅)、春日駅の方がまだ地下道で繋がっているので、こちらで乗り換えた方が多少は便利なのである。
但し、互いの駅名が違うだけに、多少歩かされることにはなるが。
電車を降りた稲生は連絡改札口に向かい、そこから今度は東京メトロ後楽園駅の方に入った。
と、そこへ……。
稲生:「あっ」
稲生のスマホが震えた。
画面を見ると、マリアからだった。
多分水晶球を介して通話するのだろう。
逆に稲生の方が水晶球を使わない。
稲生:「はい、もしもし?」
マリア:「ああ、私。今どこ?」
稲生:「地下鉄の春日駅から後楽園駅という所に移動した所です。あの、後楽園ゆうえんちとか東京ドームとかある所です」
マリア:「イブキとそこへ?」
稲生:「いえ、威吹を送った後、正証寺に行こうと思いまして。その途中です」
マリア:「忙しいならいいけど……」
稲生:「何かあったんですか?」
マリア:「東京駅の地下街でイベントがあったんだけど、ルーシーがそこで一発当てたんだ。その商品をどうしようか相談したくて……」
稲生:「エレーナなら真っ先に換金するか、どこかへ転売しそうなものですけどね」
マリア:「私もそれを一瞬考えたんだけど、何故かイラッと来たんで、他の方法を探したい。多分、勇太ならいい方法が浮かぶと思う」
稲生:「現金ならこの旅行で使っちゃえばいいと思いますけどね」
マリア:「それが違うから困ってるんだ」
稲生:「一体、何なんです?大型冷蔵庫でも当たりました?」
マリア:「だったらルーシーの家に空輸でもするよ。そうじゃないんだ。日本でしか使えないから困ってるんだ」
稲生:「ちょっと行きますよ。今、ちょうど丸ノ内線に乗る所ですから」
マリア:「ありがとう。私達は今、東京駅の八重洲地下街にいる。上のバスターミナルに上がった方がいいか?」
稲生:「その方が分かりやすいかもしれませんね。ちょっと待っててください。今行きますから」
稲生は電話を切ると、丸ノ内線の池袋行きではなく、反対側のホームへと向かった。
稲生:(ルーシーって地下とか苦手だと聞いたんだけど、地下街は大丈夫なのかな?)
稲生は首を傾げて地上に向かった。
後楽園駅では丸ノ内線だけが地上を走っているからだ。
〔まもなく1番線に、荻窪行きが参ります。乗車位置でお待ちください。ホームドアから手や顔を出したり、もたれ掛ったりするのはおやめください〕
地下鉄らしからぬ地上のホームに上がると、ちょうど電車が来たところだった。
しかしやってきたのは、旧型の02系。
なかなか新型の2000系には当たらない。
銀座線の1000系が開業当初の銀座線の1000形をモチーフにしているのに対し、こちらの2000系は開業当初の丸ノ内線車両をモチーフにしているとのこと。
〔足元にご注意ください。後楽園、後楽園。荻窪行きです。南北線、都営三田線、都営大江戸線はお乗り換えです〕
稲生は電車に乗り込んだ。
この時間、池袋行きは混んでいたが、東京方面は空いていた。
発車メロディが鳴ってドアが閉まる。
ホームドアが閉まる分、発車まで数秒のブランクがある。
もっとも、丸ノ内線はワンマン運転を行っているので、車掌の発車合図のブザーが鳴るまでのブランクだと思えばいいかも。
〔次は本郷三丁目、本郷三丁目です。都営大江戸線は、お乗り換えです〕
〔The next station is Hongo-Sanchome.Please change here for the Toei Oedo line.〕
で、電車が走り出して再び地下に入る頃、稲生は気付く。
稲生:(今日って金曜日だよな?こんなド平日にイベントで福引?……八重洲地下街ならやってるのかな???)
と、首を傾げた。