報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「ターミナル駅からターミナル駅へ」

2019-06-21 18:57:45 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月19日11:26.天候:晴 東京都新宿区新宿 JR新宿駅・中央快速線ホーム]

〔まもなく8番線に、青梅特快、東京行きが参ります。危ないですから、黄色いブロックの内側までお下がりください。次は、四ツ谷に止まります〕

 バスタ新宿をあとにした稲生達は、今度こそ東京駅に向かうべく、中央快速線上りのホームに移動した。
 新宿駅は魔界王国アルカディアの王都アルカディアシティで言えば、インフェルノタウンという地区に当たり、日本の東京と同様、南北に走る山手線や東西に走る中央線に相当する高架鉄道も存在する。
 前者は環状線と称し、後者は全く同じ名前、中央線と称する。

〔「8番線には青梅特快、東京行きが参ります。四ツ谷、御茶ノ水、神田、終点東京の順に止まります。黄色い線の外側には出ないでください」〕

 やってきた電車は埼京線とは色違いの車両。
 オレンジバーミリオンという色合いの帯を巻いている。

〔しんじゅく〜、新宿〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、四ツ谷に止まります〕

 魔界高速電鉄の中央線もなかなか賑わう路線であるが、JRの比ではない。
 何故ならJR中央線は現段階で10両編成、しかも将来的にはグリーン車2両を増結して12両編成での運転が予定されている。
 それに対し、魔界高速電鉄では6両前後。
 しかも、快速運転すらしていない。
 たまに元JR西日本の207系が7両編成(4両編成+3両編成)でやってくる。
 モハ40系も運転されている鉄道会社で、どうして207系がいるのか不思議である。
 2005年から運転されているらしいが……。
 もちろん、233系はまだ向こうの鉄道会社に1両たりとも引き取られていないので、この電車は幽霊ではない。
 中央線で最も混雑する区間を利用する3人の魔道士。
 二等辺三角形の吊り革を掴んだり、その隣の手すりを掴んだり……。

〔8番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 賑やかな発車メロディの後でドアが閉まり、電車が発車した。
 ホームドアが無いと、その分のブランクが無い為、すぐに発車する。

〔この電車は中央線、青梅特快、東京行きです。停車駅は四ツ谷、御茶ノ水、神田、終点東京です。次は、四ツ谷です。……〕
〔This is the Cyuo line,special rapid service train for Tokyo.The next station is Yotsuya...〕

 マリア:「四ツ谷……四谷怪談……」
 稲生:「よく知ってますねぇ。『お岩稲荷』という神社があって、それを物語っているんですよ」
 マリア:「復讐……チェックメイト……」
 稲生:「勘弁してください」

 と、田宮伊右衛門が言ったかどうか……。

[同日11:40.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔まもなく終点、東京、東京。お出口は、左側です。新幹線、山手線、京浜東北線、上野東京ライン、東海道線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 神田駅から先は新幹線と並行して走る。
 それを期待してか、そちら向きに立っていた稲生達。

 稲生:「1番丸の内寄りに止まる中央線と、八重洲寄りに止まる新幹線ですから、乗り換えが少し大変かもしれませんね。もっとも、地下ホームから乗り換えるよりはマシですが」

 新宿駅から乗車した為、実質的には普通の快速と変わらない青梅特快は、東京駅の1番丸の内寄りの1番線に入線した。
 この駅でもまだホームドアは無い。

〔とうきょう〜、東京〜。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 中央線ホームは他の在来線ホームと比べて、ワンフロア高い位置にある。
 電車を降りると、3人はエスカレーターに移動した。
 そのエスカレーターはコンコースに下りる為のもので、直接他のホームに行くわけではない。
 なので途中、3番線を見ることになるが、そこは通過するだけ。
 2番線が3番線の上にあり、エスカレーターはホームの中央にある。
 だから、エスカレーターは3番線を掠める。
 ……文字にしたり言葉で言っても分かりにくいと思うので、どういうことかは直接現地にて確認して頂きたい。

 稲生:「新幹線改札口は向こうです。付いて来てください。人が多いから気をつけて」

 稲生はマリアの手は握るが、ルーシーの手は掴まない。
 当たり前だ。
 そんなことしたら、マリアにブン殴られるに決まってる。

 ルーシー:「このキップでそのまま通れるの?」
 稲生:「そうです」

 今やキップは買い方によっては、乗車券と指定席特急券が1枚に纏められる。
 既に乗車券(東京都区内)としては、新宿駅から使用開始済み。
 あとは新幹線乗換改札口を利用して、新幹線指定席特急券として使用開始すれば良い。
 乗車券の『東京都区内』と『東京山手線内』の違いは、まあ文字を見れば分かるだろう。
 東京23区内全てのJR駅で乗降できるのが前者、山手線とその内側のJR駅しか乗降できないのが後者だ。
 何を以って分けられるかというと距離である。
 距離が長ければ前者、短ければ後者だ。
 随分雑な説明をしたが、JR東日本の公式サイトや市販の時刻表にはちゃんと説明されているし、ウィキペディアにも書かれていたと思うので、気になる方は参照を。
 多分、日本人でも鉄道に興味の無い方は分からないだろう。
 ましてや、外国人はもっと分からないと思う。
 今回は新宿駅から乗車したから、前者でも後者でも問題は無いというだけだ。

 稲生:「あそこがJR東日本新幹線の改札口です。それでは、キップの御用意を」
 ルーシー:「お昼に出発するみたいだけど、ランチは?」
 稲生:「大丈夫。東北新幹線にも駅弁はあります」
 ルーシー:「なるほど」
 稲生:「但し、車内販売は山形新幹線側にしかありません」
 ミク人形:「ちっ!」
 ハク人形:「ちっ!」

 JR東日本でも車内販売は縮小傾向にある。
 山形新幹線だけ車内販売があるのは、仙台止まりの東北新幹線と比べて乗車時間が長いからだろうか。
 在来線改札口より一回り大きな新幹線改札口を通ると、稲生達は晴れて東北新幹線の旅客となる。

 稲生:「えーと……23番線ですね」

 そして、エスカレーターでホームへと上がった。
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“大魔道師の弟子” 「東京電車特定区間→東京山手線内」

2019-06-21 13:40:15 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月19日10:22.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR北与野駅]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の1番線の電車は、10時22分発、各駅停車、新宿行きです〕

 今日は新幹線に乗って仙台に向かう予定である。
 自宅から徒歩圏内で最寄り駅の北与野駅にやってきた稲生、マリア、ルーシー。

 稲生:「ああ、ギリギリ見えますね。富士山」
 ルーシー:「ほんと?!」

 北与野駅のホーム階南西からは、天気が良く、空気が澄んでいると富士山が見えることがある。

 稲生:「今日は少しカラッとしているので見えるんですね」

 早速ルーシーはその風景を写真に収めた。

 稲生:「ここから見えるのは山梨側の富士山です。あの向こう側に大石寺があるというわけですね」

 その為、大石寺がどの方向にあるのか分かりやすい位置でもある。

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが参ります。危ないですから、黄色いブロックの内側までお下がりください。次は、与野本町に止まります〕

 上り電車の接近放送が流れる。

 マリア:「? 勇太、大宮駅はこっちじゃない?」
 稲生:「いや、ちょっと寄りたい所があるんですよ。新幹線の時間には十分間に合いますから」
 マリア:「?」
 稲生:「ほら、ルーシー達の帰国が分かった以上、僕達も屋敷へ戻る計画をしませんと」
 マリア:「ああ、そうか。それとこれと何の関係が?」
 稲生:「行けば分かります」

 やってきた電車はE233系。
 埼京線のコーポレートカラーであるモスグリーンの帯を巻いた車両である。

〔きたよの、北与野。ご乗車、ありがとうございます。次は、与野本町に止まります〕

 電車はガラ空きの状態でやってきた。
 先頭車に乗り込むと、これまたモスグリーンの霜降り柄の目立つシートに腰掛ける。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 発車メロディが数秒だけ鳴って、あとはすぐにドアが閉まる。
 この駅は停車時分の余裕が無いのだろう。
 すぐに走り出すと、横から東北新幹線が追い抜いて来た。
 3人の着席位置は新幹線の方を向く側であり、車内も空いているので新幹線がよく見えた。
 当然のことながら、向こうの方が速い。

〔次は与野本町、与野本町。お出口は、右側です〕
〔The next station is Yono-Honmachi.The doors on the right side will open.〕

 稲生:「仮に新幹線のダイヤが乱れて、渋滞が発生したりすると、更に減速したり、最悪停車することがあるんですよ。そういう時、いつも抜かれている埼京線がここぞとばかりに追い抜くわけです」
 マリア:「この電車で終点まで乗って行くとしたら、あのバスターミナルまで行くってことか?」
 稲生:「その通りです」
 マリア:「なるほど。今回の帰りはバスになるのか」
 稲生:「先生が御一緒だとそういうわけにはいきませんが、今回も先生はお忙しいようですので」
 マリア:「あの師匠が忙しい時、本当に何かが起こるんだよな……」
 稲生:「イルミナティカードを発行させる側の人なだけに、余計に怖いんですよねぇ……」
 マリア:「来月、どこかでまた大きな地震でもあるんじゃない?」
 稲生:「日本は地震国ですから、震度4くらいまでは全然平気なんですけどね、それ以上強いのが来ると厄介ですねぇ……」
 ルーシー:(震度4で平気なの!?)

 震度2で大地震扱いされるイギリス。

[同日11:01.天候:晴 東京都新宿区新宿 JR新宿駅→バスタ新宿]

〔まもなく終点、新宿、新宿。お出口は、右側です。山手線、中央快速線、中央・総武線、京王線、小田急線、地下鉄丸ノ内線、都営地下鉄新宿線と都営地下鉄大江戸線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 西武新宿線が案内に入っていないのは、他の新宿駅と繋がっていない為。
 住所も西武新宿駅だけ歌舞伎町になっている。
 新宿駅構内の複雑なポイントを通過する為、電車は減速してホームに進入した。
 ポイント通過による速度制限もあるだろうが、そもそもホームの北部方が狭い上に乗客が押し寄せている為でもあろう。
 で、ホームドアは無い。
 規格がそれぞれ違う電車が発着する上、そもそも新宿駅は魔改造中だからホームドアが設置できないのだ。

〔しんじゅく〜、新宿〜。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 電車が到着してドアが開くと、稲生達は他の乗客に混じって電車を降りた。
 その足でバスタ新宿に向かう。

 ルーシー:「戻るのに高速バスを使うことが多いの?」
 マリア:「そうだね。別に経費をケチられているわけではないんだけど、そもそも勇太の趣味だし、確かに乗り換え無しで帰れるんで、便利っちゃー便利なんだよね」
 ルーシー:「ふーん……」
 マリア:「まあ、そもそも新幹線でさえ、途中で乗り換えないといけないし、慌てて帰る必要も無いから」
 ルーシー:「そうなの」

 途中にトイレがあって、バスタ新宿の女子トイレはよく混むので、むしろ駅のトイレを使う方が良いということもマリアは知っている。

 ルーシー:「今から乗るわけじゃないよね?」
 マリア:「そりゃそうでしょ」

 新南口改札を出て、すぐにバスタ新宿がある。
 こちらは日曜日ということもあってか、待合室が混雑していた。

 マリア:「昼間でさえこのザマだ。夜行便が発車する時間帯は、もっとカオスだよ」
 ルーシー:「夜行列車は無いの?」
 マリア:「殆ど無い。あったら多分、勇太はそれを狙うはず」

 夜行快速すら絶滅寸前なのである。
 臨時列車扱いだから、廃止もクソも無く、“ムーンライトえちご”並みにしれっと無くなっていたりする。
 勇太は自動券売機の方に行くと、慣れた手つきで操作した。

 稲生:「夜行便で帰りますよ」
 マリア:「ああ、やっぱり」
 稲生:「キップは僕が預かっておきますね」
 マリア:「そうして」
 ルーシー:「東京ディズニーリゾート行きのバスも出てるんだ」
 稲生:「そうですね。JRバスが運行しているヤツです。確かここ最近、2階建てバスを導入したとか……」
 ルーシー:「へえ……」
 稲生:「そう言えばディズニーリゾートには行ってませんね」
 マリア:「行く気が無いというか……。殆どの場合、魔道士は悪役扱いだし」
 ルーシー:「教会の息が掛かってるから、当然と言えば当然だけどね」
 マリア:「師匠なんか行ったら、キャストだと思われるぞ」
 稲生:「た、確かに……」

 というわけでイリーナ、ローブのフードをやめて帽子に変え、髪型もストレートから三つ編みにしてみたことがある。
 そしたら、今度はジブリになってしまった。

 ルーシー:「うちの先生は、どちらかというとミヤザキ監督のアニメに出て来る魔法使いっぽいんだけど……」
 マリア:「歳を取ると、ディズニーかジブリのどっちかになるわけか……」
 稲生:(男の僕はどっちになるんだろう……?)

 別にムリしてどちらかに属する必要は無いと思われるが。
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“大魔道師の弟子” 「後ろ髪 引かれてあとに てっぱくを 夕日に映える ニューシャトル線」

2019-06-21 10:10:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月18日16:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区大成 新館(南館)1F]

 稲生:「SL運転面白かったですねぇ」
 マリア:「私はキツかったけどな」
 ルーシー:「あなた達の仲が普段どんなだったのかが分かったよ」

 仕事ステーションと呼ばれる企画展の1つ、鉄道マンの仕事について紹介されているエリアがある。
 そこには踏切もあって、ちゃんと警報器も鳴るし、遮断機も下りる。
 何か異常があった場合、非常ボタンを押すとどうなるかを実践してみるものらしいが……。

 雲羽:「嗚呼……踏切の音がするぅ……。先立つ不孝をお許し下さい」
 多摩:「遺書は誤字・脱字に気をつけて氏ねよ」
 雲羽:「ちょっと多摩先生、冗談っスよ、冗談!見捨てちゃイヤ〜ン!」

 稲生:(本当にあのカントクの言ったこと、実現した試し無いな……)
 マリア:(何やってんだ、あのオッサン達……)
 ルーシー:(多摩準急名誉監督は、本当に作者とは別人ね……)

 もしも“クレヨンしんちゃん”の野原しんのすけが鉄道博物館に行ったら絶対にやりそうなネタだと思う。
 『踏切で電車に轢かれた死体ごっこ』的な。
 埼玉つながりでやらんかね?

[同日17:00.天候:晴 鉄道博物館本館1F ミュージアムショップ・トレニアート]

 稲生:「シンカリオン大人気みたいですね」
 マリア:「よく分かんなかった」

 シアターホールでPVを観て来た稲生達。

 ルーシー:「日本のアニメが世界中で大人気な理由が分かったよ」
 稲生:「イギリスでシンカリオン流したら面白いんじゃない?」
 ルーシー:「今はネットで観れる時代だからね。観たい人はそうして観てるんじゃない?」
 稲生:「それもそうか。あと1時間ですが、最後にお土産でも見て行きますか」

 というわけでそこに行く。

 稲生:「さすがに超進化研究所職員のコスプレはできないなぁ……」
 マリア:「ローブ代わりに来たら?」
 稲生:「一気に魔力と防御力が下がると思うので遠慮しておきます」

 稲生が購入したのは新幹線のネクタイピンと缶入りビスケットだった。

 稲生:「ビスケットは後で皆で分けましょう」
 マリア:「紅茶に合いそうだ」

 そういうマリアが買ったのは、意外にも時計。
 イリーナのジャンルは“時を掛ける魔道士”(クロック・ワーカー)ということだが、その繋がりだろうか。
 で、ルーシーが買ったのはロルバーンノートとマスキングテープ、そしてやはり菓子の詰め合わせだった。

 ルーシー:「私も色々書き込むものが欲しいからね」
 マリア:「要所要所で色々とメモってるけど、一体何なの?」
 ルーシー:「内緒」
 稲生:「マスキングテープも?」
 ルーシー:「工作とかもしてるからね」

 そもそも稲生はルーシーの所属するベイカー組がどのジャンルなのか聞いていない。
 工作と言っていたから、何かを作り出す魔法機工のジャンルではないかと思った。

 マリア:「お菓子は自分用ね」
 ルーシー:「え?何言ってんの?」
 マリア:「え?」
 ルーシー:「先生がお迎えに来られるんだから、先生用に決まってるじゃない。あなた達はイリーナ先生に買ってあげないの?」
 稲生:「! 僕買って来ます!」
 マリア:「わ、私も!」

 師匠の存在を忘れる弟子2人がここに。

[同日18:04.天候:晴 ニューシャトル鉄道博物館駅]

〔まもなく2番線に、電車が参ります。危ないですから、下がってお待ちください〕

 帰宅客で混雑するニューシャトルのホーム。
 簡易的な接近放送が流れると、大宮駅のホームと同様、沿線の高校の吹奏楽部が演奏した“銀河鉄道999”の接近メロディが流れた。
 ヘッドライトを輝かせてやってきたのは新型の2020系。
 これも編成ごとに様々な塗装があるが、往路の時と同じように緑色(グリーンクリスタル)が基調の21号車だった。
 ニューシャトルはどの車両においても、ロングシートが基本。
 電車に乗り込むと、今度は3人とも吊り革に掴まる。

〔「ドアが閉まります。ご注意ください。ドアが閉まります」〕

 ドアチャイムの音と共にドアが閉まる。
 そして、普通の鉄輪の電車とは違う加速力で走り出した。

〔次は終点、大宮、大宮でございます。大宮駅に入る際、急カーブの為、揺れますのでご注意ください。また、連結部分には立ち止まらないようお願い致します〕

 3人は進行方向右側に立っている。
 つまり、新幹線が見える位置だ。
 天気が良いので、夕日も車内に差し込んでいる。

 稲生:「夕日に映える新幹線もいいものですね」
 ルーシー:「明日には乗れるのね?」
 稲生:「ええ。もう指定席は取りましたから。問題は帰りですね。向こうに泊まって、どのタイミングで上り列車に乗るかです」
 ルーシー:「E5系に乗りたい」

 下り列車は山形新幹線を併結している時点でE2系であることが確定している。

 稲生:「E5系なら何でもいいですか?」
 ルーシー:「え、ええ……」
 稲生:「分かりました。問題の根本が、先生方がとの時点で僕達と合流してくれるかなんですよ」
 マリア:「後で私から師匠に聞いてみよう」
 稲生:「お願いします。危うくロシア空軍機に便乗してくる勢いでしたもんね」
 マリア:「素直にルゥ・ラ(瞬間移動魔法)使えっての」

[同日18:07.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 ニューシャトル大宮駅→大宮駅西口]

〔本日もニューシャトルをご利用くださいまして、ありがとうございました。どうぞ、お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕
〔The next station is Omiya,and final stop.Thank you for ridding the New Shuttle...〕

 乗車時間僅か3分ほどであるが、ルーシー達にとってはゴムタイヤ式の新交通システム乗車体験も初であっただろう。
 電車は無事に1面1線のホームに滑り込んだ。

〔終点、大宮、大宮でございます〕
〔This is the final stop,Omiya.〕

 ぞろぞろと乗客達が降りて行き、すぐ目の前の改札口に吸い込まれて行く。
 JR線と違い、ホームに降りたらすぐに改札口という点は便利であろう。
 ルーシーは有人改札口に行くと、乗車券を記念にもらった。
 それは往路でもしている。
 恐らく、鉄道博物館と書かれたキップなので記念にしたいのだろう。
 そういう利用者は意外と多いのか、駅員は2つ返事で無効印を押してくれた。

 稲生:「さすがに次に乗り換えるバスは、乗車券は無いですよ」
 マリア:「長距離バスじゃないからね」

 ニューシャトルの乗り場は駅の北西側にあるので、西口の方が出やすい。
 稲生の家の近くまで行くバスが出る停留所へと向かう。

 稲生:「さっき家からメールがあったんですが、今夜は外食だそうです」
 マリア:「師匠がいないのに恐縮だね」
 稲生:「近所の焼き肉屋らしいので、このままバスで現地入りできそうです」
 マリア:「ああ、あそこか」
 稲生:「そうです」

 ノンステップタイプの小型バスが停車していて、それに乗り込む。
 1番後ろの席に横並びに座った。

 稲生:「どうでしたか、鉄道博物館は?」
 ルーシー:「夢が一気に叶ったよ。ありがとう」
 稲生:「いえいえ」
 ルーシー:「薄暗い森の中から出してもらえたマリアンナは幸せだと思う」
 マリア:「今は私もそう思う」
 ルーシー:「私も、もっと地下の暗闇から出してくれる人に会えたら……」
 稲生:「?」

 バスは発車時間になると、エンジンを掛けて出発した。
 さすがにビルの谷間にまで夕日は差して来ず、車内の明かりは蛍光灯が主となっていた。
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