報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「トンネルの中は異界」

2019-07-23 19:08:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月12日21:00.天候:雨 某県霧生市隣町 妖伏寺トンネル内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は仕事で地方の山の中までやってきた。
 トンネル工事現場に化け物が出るということで来てみたのだが、現れたのは人型のゴキブリのようなものであった。
 恐らくそれが延々と無限湧きするのだろうと思いきや、テラフォーマーみたいなゴキブリが現れたのは2匹だけ。
 それ以降現れたのは……。

 高橋:「先生、危ない!」
 愛原:「おっ!?」

 高橋が手持ちの違法改造エアガンで、私の背後に現れたクリーチャーの頭を撃ち抜く。
 アメリカのルイジアナ州にも現れたモールデッドと呼ばれるクリーチャーで、これが最新の“ゾンビ”なのだという。
 名前の由来は『モールド(カビ)』+『デッド(死人)』を合わせたもので、新種の黒カビに侵されてゾンビ化した元人間である。
 身体的な特徴は全身を厚い黒カビに覆われ、それが元々は人間であったことを忘れさせるほどだ。
 顔は分からず、男か女かも分からない。
 これが生前の名残があった従来のゾンビとは違うところだ。
 ゾンビにも亜種がいたが、こちらも何種類かいるもよう。
 中には4足歩行で這うように襲って来る個体もあり、これが山辺監督の見たモールデッドだったのだろう。
 ということは、リッカーや逆さ女……もとい、サスペンデッドはここにはいないようである。
 最大の特徴は、何と言ってもその現れ方。
 ダクトや排水溝の中から現れることもできれば、地面の中に潜んで、対象者が現れたら土の下から現れるなんてこともしてきやがる。
 なるほど。
 それで警察などがやってきても、隠れてやり過ごすことができたわけだ。

 高橋:「うらぁーっ!!」

 厚いカビに覆われているとはいえ、そこは元人間。
 頭を撃ち抜かれれば死ぬ。
 ただ、通常のゾンビもそうだったのだが、手足を撃ち抜いたくらいでは、這ってでも向かってくる。

 愛原:「高橋!あんまり弾を無駄にするなよ!?」
 高橋:「分かってますよ!」

 リサはリサで右手を触手のように変化させ、モールデッドが襲って来たら頭やら胸やらを槍のように突き刺して貫通させるのだ。

 リサ:「ペッ!マズい!」

 しかも、そのモールデッドを逆に食べてやろうという勢い。
 正体を曝け出したら腹が減るとか言っていたが、そんな腹ペコBOWでもカビゾンビは食えないようだ。

 愛原:「それにしても、何だか俺達を待っていたかのような感じだぞ!?一体どういうことだ?」
 高橋:「誰かの命令で動いてるんじゃないスか?」
 愛原:「リサ!こいつらが誰の命令で動いているか分かるか!?」
 リサ:「分かんない!」

 少なくとも、リサの知り合いがこの中にいるわけではなさそうだ。 

 愛原:「アメリカのルイジアナ州のパターンだと、エブリンという名の少女型BOWが全てを動かしていたらしいぞ!?」
 高橋:「リサ!本当何も知らねーのか!?」
 リサ:「知らないってば!」

 しょうがないから、このままトンネルの奥に進むしか無いのだが……。

 愛原:「行き止まりだ!」

 このトンネルはシールド工法で掘削されているらしい。
 そのシールドマシンの所まで来た。
 だが、ここはここで惨劇の現場だったらしい。
 シールドマシンのあちこちに血しぶきの掛かった痕がある。
 だが、死体は無い。
 恐らくその死体は、今まで現れていたモールデッド達だったのだろう。
 作業員の成れの果てか、或いは元々潜んでいた奴らか……。

 高橋:「先生!何にも無いですよ!?」
 愛原:「落ち着け。このシールドマシンの周辺を調べてみるんだ」
 高橋:「は、はい」

 このシールドマシンの裏側には何があるのだろうと思った。
 もしこの周辺に何も無いようなら、裏側に行ってみよう。

 高橋:「先生、何も無さそうです。こいつらに命令していたヤツはどこに行ったんでしょう?」

 もしくはそのような存在は最初から無く、勝手に行動していたか。
 襲い方に統率性が感じられなかったので、その可能性もある。
 無ければ無いでいいのだが……。

 愛原:「よし。シールドマシンの裏側に行ってみよう」

 私が言うと同時に、リサがシールドマシンの方に走って行った。

 高橋:「こら!俺より先に行くんじゃねぇ!」

 何かリサは見つけたのだろうか?
 私でもこの裏側へ行く方法を探していたのだが、リサは最初から知っているかのようにあっさりとそこへの入口へ向かった。

 愛原:「リサのヤツ、何か見つけたかな?」
 高橋:「何ですって?おい、リサ!何か見つけたんなら、先生に報告しろ!」

 私達もリサの後を追った。

 リサ:「どこにいるの〜!?」

 私達がマシンの中に入ると、リサは何かを探していた。
 何かというより、呼び掛け方から、誰かであろう。

 愛原:「どうしたんだ、リサ?」
 リサ:「女の子がいたの。私よりも小さいコ」
 愛原:「何だって!?」
 高橋:「なんでこんな工事現場に、オメーより小さいガキがいるんだよ?」
 愛原:「どんなコだった?」
 リサ:「黒っぽい服着たコ。小学生くらいの」

 リサは中学2年生だから、4つくらい下かな?

 愛原:「! 待てよ……!」

 確か、アメリカのルイジアナ州でモールデッドの軍団を操っていたエブリンというのは、見た目は10歳くらいの女の子で、黒いワンピースを着ていたとされる。

 愛原:「もしかしたら、リサが見たのはエブリンかもしれないぞ!?」
 高橋:「つまりボスですね!?おい、リサ!そいつはどこにいる!?」
 リサ:「この部屋に入って行く所は見たの。だけど、いないみたい」
 愛原:「きっと裏側だ!この中から裏側に行ったに違いない!」
 高橋:「行ってみましょう!」

 そのドアはすぐに見つかったが、何故か開かなかった。

 愛原:「鍵が掛かってる!?」
 高橋:「マジっスか!?クソですね!」

 しょうがない。
 一度戻って、山辺監督に鍵をもらってこよう。
 私がそう思った時だった。

 高橋:「せ、先生!」

 マシン内部から、まるで科学番組の映像を見るかのように、壁面から黒カビが現れた。
 それはどんどんどんどん内部を侵食していく。

 愛原:「マジかよ!?早く脱出するぞ!」

 私は先ほど入ったドアを開けようとした。
 だが、こちらも開かなかった。
 こちらはまるで、何かに押さえつけられているかのようだ。

 愛原:「開かないぞ!リサ、お前の力なら開けられるか!?」
 リサ:「やってみる!」

 リサがBOWならではの力を発揮してドアをこじ開けようとした。
 確かに私がやった時よりもドアは少し開いたが、それだけだ。

 愛原:「リサの力でも開かない!?」
 リサ:「そ、そんなぁ……!」
 高橋:「先生……うわっ!?」

 その時、高橋が黒カビに飲み込まれてしまった。

 愛原:「しまった!罠だったのか!」
 リサ:「きゃあああああっ!!」

 その次にリサと私が同時に黒カビに飲み込まれてしまい、私の意識はここで途絶えた。
コメント
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