[5月20日09:30.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 ホテルキャッスルイン仙台]
ホテルをチェックアウトした稲生達は、ホテル前に止まっている予約したタクシーに乗り込んだ。
陸前高砂駅ではたまたまタクシー乗り場に止まっていた普通のタクシー2台に分乗したが、今回はホテルに頼んでミニバンタイプのタクシーを予約してもらった。
これならわざわざ分乗する必要は無いし、料金も普通のタクシーより割高なものの、それの2台分の料金よりは安くなるはずだ。
運転手:「お荷物、お積みします」
ルーシー:「ありがとう」
イリーナ:「ルーシーはうちの弟子達よりも、ひときわ大きなケースを持って来てるのね」
ルーシー:「マリアンナが『買い物するなら、これくらいの物を持って来た方がいい』と言ってましたので」
稲生:(爆買い用!?)
弟子達のローブには師匠用と違い、四次元ポケットのようなものが無いので、必然的に荷物は普通の人間と同じになる。
稲生やマリアの荷物がルーシーより少ないのは、そもそも稲生にとってはただの国内旅行だし、マリアも永住者である以上は似たようなものだからだ。
因みに爆買い用のケースは、しっかり稲生の実家に置いている。
アナスタシア組の面々を見ると、わざわざ山奥に屋敷を建てる必要は無かったのではと最近思う。
その組はタワマンのてっぺんに拠点を構えたからだ。
確かにある意味、近づきにくい場所ではあるし、ホウキ乗りの発着場としてもちょうどいい。
運転手:「それでは出発します」
稲生:「お願いします。荒井駅まで」
運転手:「かしこまりました」
黒塗りのアルファードタクシーは、ホテルの前を出発した。
[同日09:45.天候:晴 仙台市若林区荒井 仙台市地下鉄荒井駅]
ルーシー:「もう一度乗らなくてはダメですか……?」
ベイカー:「ガイドの稲生君がこのルートを選択した以上、外来者はそれに従わなければならないの。どうしてもダメなら、あなた一人でルゥ・ラで追い掛けなさい」
イリーナ:「行き先の動物園に行ったことがあるのなら、簡単に飛べるよ」
ルーシー:「……ありません」
ベイカー:「じゃ、決まりね。稲生君、ガイドお願い」
稲生:「は、はい。じゃあちょっと、キップを買って来ますので」
稲生は急いで券売機に向かった。
マリア:(うちの組がどれだけユルいか分かるってもんだ)
マリアは俯き加減になるルーシーの肩を叩いて励ました。
そして稲生がイリーナとベイカーの分の乗車券を買って来ると、そこから改札口へ向かう。
朝のラッシュも終わり、始発駅ということもあってか、ホームに停車している電車内はガラガラだった。
〔お知らせします。この電車は、八木山動物公園行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕
一応、テロに遭いやすい先頭車とその次の2両目は避け、最後尾に乗車するという配慮はしている。
〔「9時45分発、仙台方面、八木山動物公園行きです。まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕
発車の時間が迫り、運転士の肉声放送が流れた後でホームから自動放送が流れる。
〔2番線から、八木山動物公園行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
〔ドアが閉まります。ご注意ください〕
短い発車サイン音が流れた後、ホームドアと車両のドアが一緒に閉まった。
駆け込み乗車は無く、すぐに発車する。
〔次は六丁の目、六丁の目、サンピア仙台前です〕
〔The next stop is Rokuchonome station.〕
ルーシー:「私は……どうやってトラウマを克服すればいいんだろう……?」
マリア:「地下鉄によく乗って慣らすしか無いんじゃないかなぁ……?」
ルーシー:「無理よ、そんなの」
マリア:「じゃあ、こうすればいい。私も『狼』共に復讐した。ルーシーも地下鉄テロ犯に復讐すればいい。私達はそういう力を持っているんだから」
ルーシー:「でも、レイプと違って、そういうテロはそうそう無い。ましてや、日本なら尚更」
マリア:「まあね。だからこそ、のんびりと慣らしていけるんじゃないかなぁ?」
ルーシー:「他人事みたいに……」
[同日10:00.天候:不明 仙台市青葉区一番町 地下鉄青葉通一番町駅]
〔次は青葉通一番町、青葉通一番町、藤崎前です〕
〔The next stop is Aoba-dori Ichibancho station.〕
〔本日も仙台市地下鉄をご利用頂き、ありがとうございます。お客様にお願い致します。……〕
イリーナ:「勇太君。この『藤崎』というのもデパートのこと?」
稲生:「そうですよ。ちょうど10時だから、開店時間ですね」
イリーナ:「ベイカーさん」
ベイカー:「ちょっと降りてみましょうか」
すっくと立つ大魔道師2人。
稲生:(バーゲンに向かう臨戦態勢のオバちゃん!?)
マリア:(ブラックカードとプラチナカードを翳すグランドマスターが何いきり立っているんだろう……)
ベイカー:(久しぶりに気合いの入る先生見たなぁ……)
仙台駅を出た電車はそこで大量の乗客を降ろし、再び閑散とした状態で西の郊外へ向かった。
閑散といっても、立ち客がいなくなったという意味で、座席はそこそこ埋まっている。
だが、車内の雰囲気を見るに、やはり郊外まで乗って行くのは稲生達くらいのようなものだ。
朝のラッシュであれば東北大学のキャンパスに向かう大学生、休日であれば動物園に向かう行楽客で賑わうのだろうが……。
〔青葉通一番町、青葉通一番町、藤崎前。出入り口付近の方は、開くドアにご注意ください〕
電車がホームに滑り込む。
イリーナ:「それじゃ、また後でね」
稲生:「あ、はい。お気をつけて」
デパート巡りを楽しむ大魔道師達は、この駅で降りて行った。
他にもやっぱり買い物客と思しき乗客達も混じっている。
〔2番線から、電車が発車致します。ご注意ください〕
〔ドアが閉まります。ご注意ください〕
稲生:「買い物を楽しむのは今も昔も変わらないものなんですね」
マリア:「変なモノ買ってきたら、大師匠様にチクってやろう」
ルーシー:「まあまあ」
再び電車が走り出す。
〔次は大町西公園、大町西公園、菓匠三全本店前です〕
〔The next stop is Omachi Nishi-koen station.〕
稲生:「僕達は僕達で楽しんでいいみたいですね」
マリア:「プランを師匠に提出して承認を得ているからね」
稲生:「ん?」
マリア:「魔道士の世界は契約社会。それは師弟関係も同じ。約束事は絶対に守らないといけない」
稲生:「何度も言われて来ましたよ」
ルーシー:「帰りの列車など、きちんと予約するのはその為よ。もっとも、国によっては予約システムなんて無いに等しい所もあったりするから、そこはケースバイケースだけど」
つまりだ。
イリーナ達が航空機や新幹線のグリーン車に乗るのは、何も魔力の温存の為な上に金も持っているからというのは表向きで、計画通りに事を進ませる為の外堀埋めであるということだ。
稲生:「そうでしたか。奥が深い」
まだまだ新弟子扱いの稲生にとっては、ただ単に言われたことをホイホイやるだけなので、そこまで考えが及ばなかったようだ。
ホテルをチェックアウトした稲生達は、ホテル前に止まっている予約したタクシーに乗り込んだ。
陸前高砂駅ではたまたまタクシー乗り場に止まっていた普通のタクシー2台に分乗したが、今回はホテルに頼んでミニバンタイプのタクシーを予約してもらった。
これならわざわざ分乗する必要は無いし、料金も普通のタクシーより割高なものの、それの2台分の料金よりは安くなるはずだ。
運転手:「お荷物、お積みします」
ルーシー:「ありがとう」
イリーナ:「ルーシーはうちの弟子達よりも、ひときわ大きなケースを持って来てるのね」
ルーシー:「マリアンナが『買い物するなら、これくらいの物を持って来た方がいい』と言ってましたので」
稲生:(爆買い用!?)
弟子達のローブには師匠用と違い、四次元ポケットのようなものが無いので、必然的に荷物は普通の人間と同じになる。
稲生やマリアの荷物がルーシーより少ないのは、そもそも稲生にとってはただの国内旅行だし、マリアも永住者である以上は似たようなものだからだ。
因みに爆買い用のケースは、しっかり稲生の実家に置いている。
アナスタシア組の面々を見ると、わざわざ山奥に屋敷を建てる必要は無かったのではと最近思う。
その組はタワマンのてっぺんに拠点を構えたからだ。
確かにある意味、近づきにくい場所ではあるし、ホウキ乗りの発着場としてもちょうどいい。
運転手:「それでは出発します」
稲生:「お願いします。荒井駅まで」
運転手:「かしこまりました」
黒塗りのアルファードタクシーは、ホテルの前を出発した。
[同日09:45.天候:晴 仙台市若林区荒井 仙台市地下鉄荒井駅]
ルーシー:「もう一度乗らなくてはダメですか……?」
ベイカー:「ガイドの稲生君がこのルートを選択した以上、外来者はそれに従わなければならないの。どうしてもダメなら、あなた一人でルゥ・ラで追い掛けなさい」
イリーナ:「行き先の動物園に行ったことがあるのなら、簡単に飛べるよ」
ルーシー:「……ありません」
ベイカー:「じゃ、決まりね。稲生君、ガイドお願い」
稲生:「は、はい。じゃあちょっと、キップを買って来ますので」
稲生は急いで券売機に向かった。
マリア:(うちの組がどれだけユルいか分かるってもんだ)
マリアは俯き加減になるルーシーの肩を叩いて励ました。
そして稲生がイリーナとベイカーの分の乗車券を買って来ると、そこから改札口へ向かう。
朝のラッシュも終わり、始発駅ということもあってか、ホームに停車している電車内はガラガラだった。
〔お知らせします。この電車は、八木山動物公園行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕
一応、テロに遭いやすい先頭車とその次の2両目は避け、最後尾に乗車するという配慮はしている。
〔「9時45分発、仙台方面、八木山動物公園行きです。まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕
発車の時間が迫り、運転士の肉声放送が流れた後でホームから自動放送が流れる。
〔2番線から、八木山動物公園行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
〔ドアが閉まります。ご注意ください〕
短い発車サイン音が流れた後、ホームドアと車両のドアが一緒に閉まった。
駆け込み乗車は無く、すぐに発車する。
〔次は六丁の目、六丁の目、サンピア仙台前です〕
〔The next stop is Rokuchonome station.〕
ルーシー:「私は……どうやってトラウマを克服すればいいんだろう……?」
マリア:「地下鉄によく乗って慣らすしか無いんじゃないかなぁ……?」
ルーシー:「無理よ、そんなの」
マリア:「じゃあ、こうすればいい。私も『狼』共に復讐した。ルーシーも地下鉄テロ犯に復讐すればいい。私達はそういう力を持っているんだから」
ルーシー:「でも、レイプと違って、そういうテロはそうそう無い。ましてや、日本なら尚更」
マリア:「まあね。だからこそ、のんびりと慣らしていけるんじゃないかなぁ?」
ルーシー:「他人事みたいに……」
[同日10:00.天候:不明 仙台市青葉区一番町 地下鉄青葉通一番町駅]
〔次は青葉通一番町、青葉通一番町、藤崎前です〕
〔The next stop is Aoba-dori Ichibancho station.〕
〔本日も仙台市地下鉄をご利用頂き、ありがとうございます。お客様にお願い致します。……〕
イリーナ:「勇太君。この『藤崎』というのもデパートのこと?」
稲生:「そうですよ。ちょうど10時だから、開店時間ですね」
イリーナ:「ベイカーさん」
ベイカー:「ちょっと降りてみましょうか」
すっくと立つ大魔道師2人。
稲生:(バーゲンに向かう臨戦態勢のオバちゃん!?)
マリア:(ブラックカードとプラチナカードを翳すグランドマスターが何いきり立っているんだろう……)
ベイカー:(久しぶりに気合いの入る先生見たなぁ……)
仙台駅を出た電車はそこで大量の乗客を降ろし、再び閑散とした状態で西の郊外へ向かった。
閑散といっても、立ち客がいなくなったという意味で、座席はそこそこ埋まっている。
だが、車内の雰囲気を見るに、やはり郊外まで乗って行くのは稲生達くらいのようなものだ。
朝のラッシュであれば東北大学のキャンパスに向かう大学生、休日であれば動物園に向かう行楽客で賑わうのだろうが……。
〔青葉通一番町、青葉通一番町、藤崎前。出入り口付近の方は、開くドアにご注意ください〕
電車がホームに滑り込む。
イリーナ:「それじゃ、また後でね」
稲生:「あ、はい。お気をつけて」
デパート巡りを楽しむ大魔道師達は、この駅で降りて行った。
他にもやっぱり買い物客と思しき乗客達も混じっている。
〔2番線から、電車が発車致します。ご注意ください〕
〔ドアが閉まります。ご注意ください〕
稲生:「買い物を楽しむのは今も昔も変わらないものなんですね」
マリア:「変なモノ買ってきたら、大師匠様にチクってやろう」
ルーシー:「まあまあ」
再び電車が走り出す。
〔次は大町西公園、大町西公園、菓匠三全本店前です〕
〔The next stop is Omachi Nishi-koen station.〕
稲生:「僕達は僕達で楽しんでいいみたいですね」
マリア:「プランを師匠に提出して承認を得ているからね」
稲生:「ん?」
マリア:「魔道士の世界は契約社会。それは師弟関係も同じ。約束事は絶対に守らないといけない」
稲生:「何度も言われて来ましたよ」
ルーシー:「帰りの列車など、きちんと予約するのはその為よ。もっとも、国によっては予約システムなんて無いに等しい所もあったりするから、そこはケースバイケースだけど」
つまりだ。
イリーナ達が航空機や新幹線のグリーン車に乗るのは、何も魔力の温存の為な上に金も持っているからというのは表向きで、計画通りに事を進ませる為の外堀埋めであるということだ。
稲生:「そうでしたか。奥が深い」
まだまだ新弟子扱いの稲生にとっては、ただ単に言われたことをホイホイやるだけなので、そこまで考えが及ばなかったようだ。