報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「徹夜の帰京」

2019-07-25 19:06:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月13日06:30.天候:曇 福島県郡山市 東北自動車道・安積パーキングエリア]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 昨日から仕事で南東北へ行って来た。
 どうにか仕事は終わったのだが、バイオハザード絡みのせいでBSAAの調査がうるさく、なかなか帰してもらえなかった。
 それでも私達は契約通りに働いたわけだからな、ちゃんと報酬はもらうさ。
 とはいえ、バイオハザードのせいでトンネルは封鎖されるようだから、工事会社など関係各所には大きな痛手だろう。
 今ある旧道を拡張するなどして対応する他は無さそうだな。
 え?それができないから新道を作るんだって?んなもん知るかい。
 私は探偵であって、土木工事関係者ではない。
 契約に無いことにまで口を出すつもりはないさ。

 高橋:「先生、ここで少し休みましょう」
 愛原:「そうだな」
 リサ:「お腹空いた……」

 さっきから高橋の運転がふら付いている。
 このままでは事故るのは時間の問題だろう。

 愛原:「どうせ今日は土曜日だ。事務所は遅めに開けるさ」

 事務所には留守電を入れておいたから、高野君がもし出勤してくれば聞いてくれるだろう。

 愛原:「それより、飯の前にシャワー使おう。カビの化け物のせいで、こっちまでカビ臭くなってるよ」
 高橋:「そうですね」

 こんなこともあろうかと着替えは持って来ている。

 高橋:「着きました」
 愛原:「ご苦労さん」

 私達は車を降りた。

 愛原:「こんな朝早くからシャワー使えるかな?」
 高橋:「温泉とかはともかく、シャワーくらいなら24時間使えるはずですよ」
 愛原:「そうか」

 その旨はちゃんと看板に書かれていた。
 10分で200円らしい。
 確かに温泉施設よりずっと安い。
 売店の奥のあるようだ。
 当たり前だが、トイレのように男女に別れている。
 入口が何だかトイレみたいだ。

 愛原:「じゃあ、リサはそっちな?」
 リサ:「うん」

 女性のみ売店に声を掛けて利用することになる。

 愛原:「このコが使うのでよろしく」
 店員:「はい、どうぞ」

 男性用は中に入ると更に3部屋に分かれている。
 1つは使用中だった。
 大型車のスペースに長距離トラックが何台か止まっていたから、その運転手が使っているのかもしれない。
 脱衣所があって、その向こう側に折り戸があってシャワーブースがある。

 高橋:「先生、一緒に入r……」
 愛原:「オマエはそっちを使え!1人用だ!」

 来ると思ったw
 リサも寂しそうな顔をして女性用に入って行ったが、そのリサでも我慢しているのだから、高橋にも辛抱強くなってもらわなきゃあ。
 シャワーブースに入ると、天井にスプリンクラー……もとい……あ、いや、いいのか。
 固定シャワーとハンドシャワーがある。
 因みに脱衣所にドライヤーはあるが、タオルや石鹸などは無い。
 これは売店で購入することになる。
 リサは持っていなかったので、リサの分を買う時にリサが女性用を使う旨、店員に伝えたというわけだ。
 尚、シャワーブースは一回使う事に自動洗浄機能がある為、結構きれいである。
 それにしても私はこういう時、急な泊まりになることを覚悟して着替えやら洗面道具を持って行くことにしており、それを高橋にも教えたのだが、リサのことは忘れていた。
 反省すべき点だな。
 もっとも、売店も24時間営業なのでタオルも石鹸もちゃんと購入できる。
 さすがにコインランドリーは無いので、汚れた服は帰って洗濯しないとダメだな。
 クリーニングに出さないと、普通の洗濯では汚れが落ちないかもしれない。
 それにしても、リサでもダメージを食らうBOWがいるとは思わなかった。
 リサもアメリカのオリジナル版はラスボスクラスだったというし、あのエブリンもアメリカの第一号はラスボスで、BSAA北米支部の介入でもって倒されたと聞く(実際に介入したのは正義に目覚めた新生アンブレラで、BSAA北米支部の幹部を作戦遂行に招聘しただけに過ぎない)。
 でも、私はしかと聞いた。
 リサの決意を。
 リサは私を信頼してくれている。
 この信頼を裏切らない限り、彼女は暴走することはないだろう。
 私のミッションはリサを成人になるまで面倒を看、日本政府エージェントとして採用されるのを見届けることだ。

 愛原:「!?」

 その時、私はふと思った。
 それってつまり、善場氏の部下になるということだろう。
 善場氏は上司として理想的な人物に見えるからそれはいいのだが、BOWを部下にしようとするくらいだから、もしかしたら善場氏も……普通の人間ではないのかもと思ってしまった。
 いや、まさかね。
 特殊部隊もかくやといった訓練は受けているだろうが、体まで改造されているとは……思わないよねぇ……。

 それから30分くらいして、私達はサッパリすることができた。
 汚れた服は先に車に積んでおいて、しかも高橋は車用のファブリーズを徹底的にスプレーしていた。

 愛原:「よし。ちょうど飯食う所も開いたし、ここで食べて行こう」
 高橋:「はい!」
 リサ:「お腹空いた」

 私は普通にラーメンを注文したのだが、リサはカツカレーを注文していた。

 高橋:「先生より高い物を注文するとはいい度胸だな?あぁ?」
 愛原:「オマエの定食も俺より20円しか違わないだろうが。いいんだよ、好きなもん頼んで」
 高橋:「でも先生、コイツが頼んだのジャンボサイズっスよ?」
 リサ:「お腹空いたもん」
 愛原:「だからいいんだって。俺と違ってお前達は若いんだから、ガンガン食っていいの!」

 リサと高橋なんて10歳くらいしか違わないだろう。
 10代と20代、どちらも食欲も性欲も旺盛な年代だ。
 私みたいなアラフォー世代とは違う。

 高橋:「へへ……じゃあ、お言葉に甘えまして、俺も飯大盛りで」
 愛原:「ああ、いいよいいよ。食え食え。その代わり、リサは絶対に人を食ったりしないように」
 リサ:「うん、分かった!」
 愛原:「高橋は高橋で、男を食うのは禁止だ。特に俺に襲い掛かったりしないように」
 高橋:「ええっ!?じゃあ、大盛りいいです……」
 愛原:「オマエの優先順位はどうなってるんだ?」

 私は呆れざるを得なかった。
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“私立探偵 愛原学” 「BOW同士でも軋轢はある」

2019-07-25 14:41:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月13日02:00.天候:不明 某県山中県道バイパス 妖伏寺トンネル工事現場]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は仕事で山奥を走る道路トンネルの工事現場に……って、暢気に解説している場合ではない。
 確か、私は……そうだ!
 シールドマシン内部で、黒カビに飲み込まれたんだった!
 それから程なく意識を失って……?
 ん?ここはどこだ!?真っ暗だぞ!?
 しかも、地に足の付いていない感覚!
 まるで無重力の中に閉じ込められているかのようだ。
 まさか私は死んだのか!?

 ……いや、待て。
 何か聞こえる。
 話し声のようだ。
 これは……リサの声?
 誰かと話している?

 ???:「いいじゃん、このまま食べちゃえば?あなたも人喰いなんでしょう?」
 リサ:「愛原さん達は別!愛原さん達と約束したもん!絶対に人喰いはしないって!」
 ???:「私達はどうせBOW。このまま言う事聞いてたって、どうせ実験台だとか色々利用されて終わり。アメリカ人のあのコだって、モノ扱いされて結局は殺されたのよ?このままでは私達も同じ」
 リサ:「私は愛原さん達を信じる!」
 ???:「あなたとは友達になれないようね」

 一体、何だ?
 リサは誰と話している?
 聞いたことのない声だ。
 声からして、リサと同じくらいの歳の女の子のようだが……。
 それより、私のこの状態は一体何なんだ?
 どうも、あのコ達と話の内容からして私は捕まったようなのだが……。
 と!

 リサ:「愛原さん!早くここから出て!」

 リサがベリべリと何かを剥がす音を立てた。
 私の向こうで、その音が聞こえる。
 まるで石灰岩を剥がすかのように……って、私はいつの間に石灰岩の中に閉じ込められたんだろうか?

 愛原:「プハッ!」

 息苦しさから解放された時、向こう側にリサの姿が見えた。
 リサは尚も私を閉じ込めている脆い岩のようなものを剥がしている。
 そして、最後には私はその中から落ちた。

 愛原:「いでっ!」
 リサ:「愛原さん、大丈夫!?」
 愛原:「いでででで……。一体、何なんだ?」
 リサ:「エブリンがね、愛原さん達を食べようとしたの。だけど、もう要らないって」
 愛原:「な、何だって!?」

 やはり私達は危うく捕食されるところだったようだ。

 愛原:「高橋は!?」
 リサ:「あそこ!」

 リサが指さした所には、私と同じように石灰化した歪な壁の中に下半身だけ呑み込まれた高橋の姿があった。

 愛原:「高橋!大丈夫か!?」

 私はリサと一緒に高橋を救出した。

 高橋:「う……先生……?俺は……?」
 愛原:「生きてるな!?よし!」

 私は高橋を起こそうと手を伸ばした。
 しかし、その手を掴む者がいた。

 ???:「この女と別れちゃいなよ、先生?」
 愛原:「わあっ!?」

 それはウェーブの掛かった黒い髪をショートボブにした少女。
 黒いワンピースを着て、不気味な笑顔を見せている。
 だが、私がびっくりして仰け反ると同時にその少女は消えた。

 リサ:「エブリン、やめて!」
 高橋:「敵ですか、先生!?……何だ、テメェは!?」

 高橋は見えない誰かに向かってマグナムを構えた。
 どうやら高橋は幻覚を見ているようだ。

 愛原:「! リサ、後ろにいるぞ!」

 リサの後ろには、リサの首に手を伸ばそうとしているエブリンの姿があった。
 リサよりも幼い顔立ちで、身長も低い為に年下らしく見える。
 しかし、リサは動じない。

 リサ:「エブリンはもういないよ。“黒いお友達”を連れて、引っ越して行っちゃった」
 愛原:「な、なに?!し、しかし、現に……!」
 エブリン:「リサなんかと付き合っても不幸になるだけだよ?」

 また私の手を掴んで来るエブリンの姿があった。

 リサ:「それは幻覚。私には見えるけど、恐らくそれは高橋兄ちゃんには見えない。そして、高橋兄ちゃんの手を掴んでるエブリンの姿も先生には見えないと思う」
 愛原:「ど、どういうことだ!?」
 リサ:「この中から早く出よう。あいつは獲物に幻を見せるのが得意なの」
 愛原:「な、何だ、幻覚か。高橋、何だかヤバそうだから早く出るぞ!」
 高橋:「先生から離れろ、クソガキが!!」
 愛原:「惑わされるな!幻覚だ!」

 私は先ほど入って来たドアを開けようとしたが、何かに引っ掛かっているのか開かない。
 そこはリサがBOWならではの強い腕力でこじ開けた。
 マシンの外も石灰化したカビに覆われていた。
 それにドアが引っ掛かっていたのだ。

 愛原:「まだモールデッドが外にいるかもしれないから、気をつけて行くぞ!」
 高橋:「はい!」

 私達が出口に向かって走ると、向こうから武装した男達がやってきた。
 ワッペンにはBSAAとある。

 愛原:「やっぱりバイオハザード絡みだったか……」

 というか、私達の方がこの国連組織より歩みが早いとは……。

[同日04:00.天候:晴 同トンネル工事現場事務所]

 BSAA極東支部日本地区本部の隊員達に連れられて、私達はトンネルの外に出た。
 そこには他にも多くの隊員達が駐留していて、さながらベースキャンプのような雰囲気だった。
 そこの一画に設置された救護所で、私達は検査を受けた。
 どうやら、アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザードと同じ特異菌であるらしい。
 そこで驚かれたのは、リサはBOWだから当たり前だが、私や高橋が殆ど感染していなかったことだ。
 高橋にあっては群馬県で起きたバイオハザードの時に抗体ができたと考えられるが、私の場合はどうも最初から抗体があったようであるとのことだった。

 高橋:「さすが先生!やはり凡人ではないですね!正に神降臨です!」
 愛原:「いや、大げさだよ」

 私は肩を竦めてみせたが、霧生市のバイオハザードといい、豪華客船のバイオハザードといい、そして新種のカビを利用した特異菌によるバイオハザードといい、全てにおいてその力を無効化させるものが私の体の中にあるという。

 BSAA医療技師:「もしよろしかったら今度、BSAAにて精密検査を……」
 愛原:「既にそちらさんの息の掛かっている病院で検査は受けているので、そこに問い合わせれば私のデータが出て来るはずです」

 そのうち、私もモルモットにされる日が来るのかもしれないな。
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