[12月13日08:11.天候:晴 栃木県宇都宮市 JR宇都宮駅]
〔まもなく終点、宇都宮、宇都宮。お出口は、左側です。新幹線、日光線と烏山線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
私達を乗せた宇都宮線電車は、快調に走行していた。
この前の東武線だと、最新型BOWエブリンの影がちらついたりしていたが、JRではそのようなことは無かった。
やはり善場主任の目論見通り、栃木県の東武線沿線に何かあるのだろうか?
あれ以来、何も情報は無いが……。
途中でリサがトイレに立ったりしたが、リサは首を横に振るだけだった。
〔「……日光線下り、鹿沼、今市方面、普通列車の日光行きは、5番線から8時40分の発車です。……」〕
愛原:「乗り換え時間、凡そ30分ってとこだな」
高橋:「結構長いですね」
愛原:「その代わりこういう場合、入線時間が長いんだ。さっさと乗って、席確保しようや」
高橋:「はい」
もっとも、ロングシートの通勤電車っぽいのが来るだろうけどな。
そこにお情けでトイレが付いているということくらいか?
〔うつのみや、宇都宮。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕
電車が駅に到着すると、私達は電車を降りた。
日曜日なので乗客は少なかったが、それでも学生の姿がチラホラ見えた。
リサ:「高校生は授業時間足りなくて、土日も潰してるんだ……」
リサが呟いた。
愛原:「そうなのか?」
リサ:「そう思った。うちの学園も、高等部は時々土曜休みを潰してるんだって」
愛原:「ふーん……」
義務教育である中学校の方が切実のように思えるが、授業自体は高校の方が多いからか。
愛原:「取りあえず、5番線に向かおう」
私達は階段を登ってコンコースに向かった。
高橋:「先生、ちょっと便所いいっスか?」
愛原:「ああ。行ってこい」
高橋:「先生は?」
愛原:「俺はさっき電車のトイレ使ったから」
リサ:「ねー?」
そこへリサが人懐こい顔で私に合わせて来た。
私がトイレから出ようとしたら、リサがドアの真ん前に立っていたのでビックリした。
昼間の電車でそう感じるのだから、これが夜の薄暗いトイレとかだとホラーものである。
もっとも、リサはホラーを演出する側なのである。
本人にその自覚があろうと無かろうと。
リサ:「先生、あそこのNEWDAYSでお菓子買ってきていい?」
愛原:「いいけど買い過ぎるなよ?」
リサ:「分かったー」
リサはNEWDAYSに向かった。
先に戻って来たのは高橋。
高橋:「お待たせしました。……って、リサは?」
愛原:「あそこで食料補給中」
高橋:「またっスか。あれだけ食って、よく太らないもんスね」
愛原:「余剰エネルギーは変化の際に消費されるんだろう。むしろ変化の際に使うエネルギーの量が多過ぎて、それでBOWというのはいつでも空腹なんだそうだ」
実はリサ、第1形態より第0形態の方が空腹を訴えやすい。
これは今のリサにとって、人間の姿の方が『化けている』状態だからである。
鬼のような姿をした第1形態の方が普通の姿である。
もっとも、いざ食べる時の量はどちらも同じ。
リサ:「お待たせー」
リサが戻って来た。
その手にはポッキーが握られていた。
愛原:「ポッキーか」
リサ:「うん。先生となら、一緒にポッキーゲームするよ?」
愛原:「……う、うん。『前向きに検討します』」
リサ:「あーっ!する気無いでしょ!」
愛原:「前向きに善処します」
リサ:「絶対しない!」
愛原:「可及的速やかに対処します」
リサ:「全然しない!」
昔の国会議員のセリフだな、こりゃ。
[同日08:35.天候:晴 JR宇都宮駅日光線ホーム→日光線833M列車4号車]
〔まもなく5番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。この列車は、4両です。折り返し、8時40分発、普通、日光行きとなります〕
発車の5分前に電車が入線してきた。
それは205系という通勤電車であったが、入線してきた車両はそれを改造した観光列車であった。
種車は武蔵野線や京葉線で運用されていた、ヘッドライトとテールライトが横並びになった『メルヘン仕様』と呼ばれるタイプであるが、内装がボックスシート付きの観光仕様に改造されていた。
愛原:「あ、こんなのあったんだ!」
高橋:「良かったっスね」
私達は早速、ボックスシートに座った。
席順は宇都宮線と同じ。
座るとリサは買ったポッキーを開けて食べ始めた。
愛原:「でもさすがにテーブルは無いか」
205系は4ドア車であるが、この“いろは”と呼ばれる観光仕様は中ほどの2つのドアを埋めてそこに座席を設置している。
片道1時間も無いせいか、トイレも付いていない。
愛原:「何か、このまま温泉旅行に行きそうな雰囲気だな」
日曜日なのに観光客が少なく見えるのは、コロナ禍で観光客が減っているのと、そもそも東武日光線が観光客のメインルートだからだろう。
JR日光線は地元民の地域輸送に甘んじていたが、少しは観光客も呼び込もうと努力しているようだ。
高橋:「行きますか?」
愛原:「行って何も無かったらな」
わざわざ私達を送り込むのだ。
何も無いとは思えない。
東京中央学園上野高校だって、一応、隠し通路は見つけたのだ。
今回も最低限、それくらいは見つけないといけない。
例え現物は無理だとしても、痕跡くらいは見つけないと、クライアントたる斉藤社長に顔向けできないだろう。
〔「8時40分発、日光線下り、鹿沼、今市方面、普通列車の日光行き、まもなく発車致します」〕
あっという間に発車時間がやってきて、ホームから発車メロディが聞こえてくる。
日曜日の朝昼は人身事故も少ないので、だいたい定刻通りに走ってくれる。
〔5番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車をご利用ください〕
電車は定刻通りに発車し、一旦逆方向に走り出す。
そして、進路を西に変えて進むのだが、終点は寒そうだ。
〔まもなく終点、宇都宮、宇都宮。お出口は、左側です。新幹線、日光線と烏山線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
私達を乗せた宇都宮線電車は、快調に走行していた。
この前の東武線だと、最新型BOWエブリンの影がちらついたりしていたが、JRではそのようなことは無かった。
やはり善場主任の目論見通り、栃木県の東武線沿線に何かあるのだろうか?
あれ以来、何も情報は無いが……。
途中でリサがトイレに立ったりしたが、リサは首を横に振るだけだった。
〔「……日光線下り、鹿沼、今市方面、普通列車の日光行きは、5番線から8時40分の発車です。……」〕
愛原:「乗り換え時間、凡そ30分ってとこだな」
高橋:「結構長いですね」
愛原:「その代わりこういう場合、入線時間が長いんだ。さっさと乗って、席確保しようや」
高橋:「はい」
もっとも、ロングシートの通勤電車っぽいのが来るだろうけどな。
そこにお情けでトイレが付いているということくらいか?
〔うつのみや、宇都宮。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕
電車が駅に到着すると、私達は電車を降りた。
日曜日なので乗客は少なかったが、それでも学生の姿がチラホラ見えた。
リサ:「高校生は授業時間足りなくて、土日も潰してるんだ……」
リサが呟いた。
愛原:「そうなのか?」
リサ:「そう思った。うちの学園も、高等部は時々土曜休みを潰してるんだって」
愛原:「ふーん……」
義務教育である中学校の方が切実のように思えるが、授業自体は高校の方が多いからか。
愛原:「取りあえず、5番線に向かおう」
私達は階段を登ってコンコースに向かった。
高橋:「先生、ちょっと便所いいっスか?」
愛原:「ああ。行ってこい」
高橋:「先生は?」
愛原:「俺はさっき電車のトイレ使ったから」
リサ:「ねー?」
そこへリサが人懐こい顔で私に合わせて来た。
私がトイレから出ようとしたら、リサがドアの真ん前に立っていたのでビックリした。
昼間の電車でそう感じるのだから、これが夜の薄暗いトイレとかだとホラーものである。
もっとも、リサはホラーを演出する側なのである。
本人にその自覚があろうと無かろうと。
リサ:「先生、あそこのNEWDAYSでお菓子買ってきていい?」
愛原:「いいけど買い過ぎるなよ?」
リサ:「分かったー」
リサはNEWDAYSに向かった。
先に戻って来たのは高橋。
高橋:「お待たせしました。……って、リサは?」
愛原:「あそこで食料補給中」
高橋:「またっスか。あれだけ食って、よく太らないもんスね」
愛原:「余剰エネルギーは変化の際に消費されるんだろう。むしろ変化の際に使うエネルギーの量が多過ぎて、それでBOWというのはいつでも空腹なんだそうだ」
実はリサ、第1形態より第0形態の方が空腹を訴えやすい。
これは今のリサにとって、人間の姿の方が『化けている』状態だからである。
鬼のような姿をした第1形態の方が普通の姿である。
もっとも、いざ食べる時の量はどちらも同じ。
リサ:「お待たせー」
リサが戻って来た。
その手にはポッキーが握られていた。
愛原:「ポッキーか」
リサ:「うん。先生となら、一緒にポッキーゲームするよ?」
愛原:「……う、うん。『前向きに検討します』」
リサ:「あーっ!する気無いでしょ!」
愛原:「前向きに善処します」
リサ:「絶対しない!」
愛原:「可及的速やかに対処します」
リサ:「全然しない!」
昔の国会議員のセリフだな、こりゃ。
[同日08:35.天候:晴 JR宇都宮駅日光線ホーム→日光線833M列車4号車]
〔まもなく5番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。この列車は、4両です。折り返し、8時40分発、普通、日光行きとなります〕
発車の5分前に電車が入線してきた。
それは205系という通勤電車であったが、入線してきた車両はそれを改造した観光列車であった。
種車は武蔵野線や京葉線で運用されていた、ヘッドライトとテールライトが横並びになった『メルヘン仕様』と呼ばれるタイプであるが、内装がボックスシート付きの観光仕様に改造されていた。
愛原:「あ、こんなのあったんだ!」
高橋:「良かったっスね」
私達は早速、ボックスシートに座った。
席順は宇都宮線と同じ。
座るとリサは買ったポッキーを開けて食べ始めた。
愛原:「でもさすがにテーブルは無いか」
205系は4ドア車であるが、この“いろは”と呼ばれる観光仕様は中ほどの2つのドアを埋めてそこに座席を設置している。
片道1時間も無いせいか、トイレも付いていない。
愛原:「何か、このまま温泉旅行に行きそうな雰囲気だな」
日曜日なのに観光客が少なく見えるのは、コロナ禍で観光客が減っているのと、そもそも東武日光線が観光客のメインルートだからだろう。
JR日光線は地元民の地域輸送に甘んじていたが、少しは観光客も呼び込もうと努力しているようだ。
高橋:「行きますか?」
愛原:「行って何も無かったらな」
わざわざ私達を送り込むのだ。
何も無いとは思えない。
東京中央学園上野高校だって、一応、隠し通路は見つけたのだ。
今回も最低限、それくらいは見つけないといけない。
例え現物は無理だとしても、痕跡くらいは見つけないと、クライアントたる斉藤社長に顔向けできないだろう。
〔「8時40分発、日光線下り、鹿沼、今市方面、普通列車の日光行き、まもなく発車致します」〕
あっという間に発車時間がやってきて、ホームから発車メロディが聞こえてくる。
日曜日の朝昼は人身事故も少ないので、だいたい定刻通りに走ってくれる。
〔5番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車をご利用ください〕
電車は定刻通りに発車し、一旦逆方向に走り出す。
そして、進路を西に変えて進むのだが、終点は寒そうだ。