[12月13日13:00.天候:不明 栃木県日光市某所 旧・日本アンブレラ地下研究所跡B2F通路]
今いる場所がどこかは不明だ。
というのは、今いる場所が東京中央学園栃木合宿所の一部分なのか、あるいは旧・日本アンブレラ秘密研究所の一部分なのか、今一つ判別できないからだ。
今歩いている通路は、どこかのビルの地下通路といった場所。
私が若い頃、まだ警備会社で警備員として働いていた時、派遣されたビルの地下がこんな感じだった。
ただまあ、旧・日本アンブレラの一部分と見るのが自然だろう。
昭和時代の木造校舎を最低限のリニューアルしかしていないのであれば、地下の通路なんか素掘りかコンクリート吹き付け程度のものだっただろう。
そして、もう1つ不自然なことがある。
私はマグライトを持ってきたのだが、今は使用していない。
何故なら、打ち棄てられたはずの施設にも関わらず、電気が通っているからだ。
そして、打ち棄てられたとされる割にはこぎれいである。
まるで、昨日廃止されたばかりのようだ。
東京中央学園がここを合宿所として買い取って、それから凡そ20年以上は経っているとのこと。
令和の時代になって、ようやくこの合宿所も廃止されようかと検討されているようだ。
代わりに箱根辺りに造るとのこと。
温泉地に拘っているのか?
愛原:「なあ。この施設、実は今でも使われてるんじゃないのか?」
高橋:「俺もそんな気がしてきました」
しかし、その割にはもっと不自然なことがある。
旧・アンブレラも製薬会社の端くれだ。
大日本製薬もそうだが、どこの製薬会社でも、その新薬開発研究所とあらば、そのセキュリティはとても厳格なものだ。
あいにくと私は警備員時代、そのような施設に派遣されたことが無いので、実際どんなものだったのかは知らないが、元同業者として何となく想像はつく。
もしもこの施設がまだ稼働状態であるのなら、導入されているセキュリティも作動しているはずなのである。
そんな感じはしない。
例えば今、真上に監視カメラがある。
それが埃被って、絶対に映っていないこと請け合いなのだ。
かと思うと、カードキー式による電子ロックは生きている。
リサのカードでそれは通過できるので世話ない。
もちろんカードは本物なので、それだけで不審者扱いにはならない。
だが、もし監視カメラが生きていて、どこかで警備員が監視しているのであれば、私達の姿を見て飛んで来るはずである。
愛原:「人の気配はしないんだよなぁ……」
誰かが施設内にいるような気がしない。
シンと静まり返っている。
しかし、電子ロックだけは生きている。
人の話し声や足音などしないし、実験動物やクリーチャーの気配すらしない。
もしもクリーチャーがいるのなら、リサの鼻が利くはずである。
高橋:「先生、どこまで調査しますか?」
愛原:「取りあえず行ける所まで行こう。もしもこの地下室が、この近くにあったという新研究所の地下と繋がっていたのであれば、どこかで行き止まるはずだ」
高橋:「はい」
斉藤社長の依頼内容は、あくまでも合宿所の地下に何があるのかを調査することだ。
しかしあるのは通路と、そこ沿いにある機械室や倉庫くらいで、試しに入っても何も無かった。
そう、何も無いのである。
では今、この通路を照らしている照明の電源はどこから引いているのだろう?
エレベーターは、合宿所から引っ張ったと見ていいだろうが……。
愛原:「何も無さそうだな。このまま行き着く所に行き着いて、それから引き返すってパターンかもな」
高橋:「はい……」
突き当りまで行くと、また電子ロックに閉ざされた扉があった。
愛原:「リサ、カードを……」
リサ:「あい」
リサはカードをカードリーダーに翳そうとした。
リサ:「うん?」
愛原:「どうした?」
リサが鼻をヒクつかせる。
リサ:「この奥から、何か変な臭いがする」
愛原:「マジか!?……どんな臭いだ?」
リサ:「……肉の腐った臭い……血の腐った臭い……」
愛原:「なに?」
私と高橋は銃を用意した。
リサも第1形態に変化し、白い仮面を着けた。
愛原:「よし、行くぞ」
高橋:「うっス」
リサ:「了解」
私はカードキーでドアの鍵を開けた。
リサ:「私が中を見るね」
愛原:「頼む」
リサがドアを開けると、確かに向こうから、腐臭と言われればそんな気がする臭いが出て来た。
リサ:「何これ?ちょっと来てみて」
愛原:「何だ?」
私と高橋も後から入る。
そこに広がっていたのは、意外な空間だった。
愛原:「……学校?」
高橋:「え?何でです?」
そこにあったのは、まるで先ほどの合宿所が当初の学校だったかのような空間であった。
通路は木の廊下として続いており、片側には木造校舎の教室が並んでいる。
愛原:「何かの実験施設なのか、これも?」
リサ:「うっ……!」
その時、リサが頭を抱えてよろめいた。
私がそれを支えてやる。
リサ:「これは……実験施設……」
愛原:「やっぱりか。何の?」
リサ:「私達……リサ・トレヴァーが『学校の怪談』の支配者になれるかどうかの……」
愛原:「?? どういうことだ?」
リサ:「来て……」
私がリサに着いて行くと、途中にトイレがあった。
それは水洗トイレになっておらず、女子トイレは個室が5つあった。
扉も木製で、中を覗くと汲み取り式の和式便器があるだけだった。
リサ:「私は『トイレの花子さん』……。奥から2番目の個室に潜んで、獲物を待つ……」
愛原:「それがどうしたんだ?」
リサ:「『学校の怪談』にかこつけて、私達が人間を上手く捕食できるかの実験なの。実験生物は、他にもいた……」
何かよく分からん実験を日本アンブレラはしていたんだな。
とにかくここは、学校を模した実験施設であったということは分かった。
リサ:「私がサイトーとかをトイレに連れ込んで『捕食』したのは、ただの偶然じゃなかったんだ……。私、ここで『トイレの花子さん』になったら、その時の記憶が無くなっても、ああいうことをしたんだ……」
愛原:「老廃物を食べることか?」
リサ:「実験では本当に人間を捕食できるように……。実験動物を使ってたけど……。他にもサスペンデッドとか、クリーチャーとかいたよ」
愛原:「“逆さ女”は妖怪としても恐ろしいヤツだから、学校の怪談に登場してもおかしくないわけだな」
リサが実験体だった頃の記憶が少し戻っただけでも、報告のし甲斐があるというものだ。
但し、こちらに関しては善場主任になるだろうがな。
愛原:「よし。もう少しこの施設を探索してみよう。実験体の痕跡が見つかるかもしれないし、リサの記憶も戻るかもしれない」
リサ:「うん……」
私達は薄暗いトイレから出ようとした。
だが、開け放たれていたドアが突然バタンを閉まる。
愛原:「な、何だ!?」
高橋:「開かないっスよ!?」
その時だった。
???「こっちィ……」
不気味な女の声がした。
声がしたのは、奥から2番目の個室。
そこを覗くと、正に学校の怪談ならではの現象が現れた。
便器の中から、1本の手が伸びていたのだ!
愛原:「うわっ、出た!!」
私は思いっ切り後ずさった。
すると、手がにゅうと伸びて来る。
しかし、その元である体は現れない。
手だけが便器の中から伸びて来て、私を掴もうとした。
リサ:「先生に触るな!」
リサが持ち前の鋭い爪で、その手を引っ掻いた。
引っ掻き傷から血が溢れ出す。
手はびっくりしたように、手を大きく開いた。
そして、それは一旦便器の中に引っ込んで行ったが、代わりに全ての個室の便器からそれぞれ1本の手が伸びていた。
愛原:「うわっ、何だ!?気持ち悪い!」
高橋:「もしかしてこれ、『カミをくれー』とかいう、『クレクレ詐欺』の化け物じゃないっスよね!?」
愛原:「なるほど!そうかもしれん!だったら尚更捕まるな!」
高橋:「はい!」
日本アンブレラのヤツら、本当に学校の怪談に出て来そうな化け物なんかも造ってたんだなー。
今いる場所がどこかは不明だ。
というのは、今いる場所が東京中央学園栃木合宿所の一部分なのか、あるいは旧・日本アンブレラ秘密研究所の一部分なのか、今一つ判別できないからだ。
今歩いている通路は、どこかのビルの地下通路といった場所。
私が若い頃、まだ警備会社で警備員として働いていた時、派遣されたビルの地下がこんな感じだった。
ただまあ、旧・日本アンブレラの一部分と見るのが自然だろう。
昭和時代の木造校舎を最低限のリニューアルしかしていないのであれば、地下の通路なんか素掘りかコンクリート吹き付け程度のものだっただろう。
そして、もう1つ不自然なことがある。
私はマグライトを持ってきたのだが、今は使用していない。
何故なら、打ち棄てられたはずの施設にも関わらず、電気が通っているからだ。
そして、打ち棄てられたとされる割にはこぎれいである。
まるで、昨日廃止されたばかりのようだ。
東京中央学園がここを合宿所として買い取って、それから凡そ20年以上は経っているとのこと。
令和の時代になって、ようやくこの合宿所も廃止されようかと検討されているようだ。
代わりに箱根辺りに造るとのこと。
温泉地に拘っているのか?
愛原:「なあ。この施設、実は今でも使われてるんじゃないのか?」
高橋:「俺もそんな気がしてきました」
しかし、その割にはもっと不自然なことがある。
旧・アンブレラも製薬会社の端くれだ。
大日本製薬もそうだが、どこの製薬会社でも、その新薬開発研究所とあらば、そのセキュリティはとても厳格なものだ。
あいにくと私は警備員時代、そのような施設に派遣されたことが無いので、実際どんなものだったのかは知らないが、元同業者として何となく想像はつく。
もしもこの施設がまだ稼働状態であるのなら、導入されているセキュリティも作動しているはずなのである。
そんな感じはしない。
例えば今、真上に監視カメラがある。
それが埃被って、絶対に映っていないこと請け合いなのだ。
かと思うと、カードキー式による電子ロックは生きている。
リサのカードでそれは通過できるので世話ない。
もちろんカードは本物なので、それだけで不審者扱いにはならない。
だが、もし監視カメラが生きていて、どこかで警備員が監視しているのであれば、私達の姿を見て飛んで来るはずである。
愛原:「人の気配はしないんだよなぁ……」
誰かが施設内にいるような気がしない。
シンと静まり返っている。
しかし、電子ロックだけは生きている。
人の話し声や足音などしないし、実験動物やクリーチャーの気配すらしない。
もしもクリーチャーがいるのなら、リサの鼻が利くはずである。
高橋:「先生、どこまで調査しますか?」
愛原:「取りあえず行ける所まで行こう。もしもこの地下室が、この近くにあったという新研究所の地下と繋がっていたのであれば、どこかで行き止まるはずだ」
高橋:「はい」
斉藤社長の依頼内容は、あくまでも合宿所の地下に何があるのかを調査することだ。
しかしあるのは通路と、そこ沿いにある機械室や倉庫くらいで、試しに入っても何も無かった。
そう、何も無いのである。
では今、この通路を照らしている照明の電源はどこから引いているのだろう?
エレベーターは、合宿所から引っ張ったと見ていいだろうが……。
愛原:「何も無さそうだな。このまま行き着く所に行き着いて、それから引き返すってパターンかもな」
高橋:「はい……」
突き当りまで行くと、また電子ロックに閉ざされた扉があった。
愛原:「リサ、カードを……」
リサ:「あい」
リサはカードをカードリーダーに翳そうとした。
リサ:「うん?」
愛原:「どうした?」
リサが鼻をヒクつかせる。
リサ:「この奥から、何か変な臭いがする」
愛原:「マジか!?……どんな臭いだ?」
リサ:「……肉の腐った臭い……血の腐った臭い……」
愛原:「なに?」
私と高橋は銃を用意した。
リサも第1形態に変化し、白い仮面を着けた。
愛原:「よし、行くぞ」
高橋:「うっス」
リサ:「了解」
私はカードキーでドアの鍵を開けた。
リサ:「私が中を見るね」
愛原:「頼む」
リサがドアを開けると、確かに向こうから、腐臭と言われればそんな気がする臭いが出て来た。
リサ:「何これ?ちょっと来てみて」
愛原:「何だ?」
私と高橋も後から入る。
そこに広がっていたのは、意外な空間だった。
愛原:「……学校?」
高橋:「え?何でです?」
そこにあったのは、まるで先ほどの合宿所が当初の学校だったかのような空間であった。
通路は木の廊下として続いており、片側には木造校舎の教室が並んでいる。
愛原:「何かの実験施設なのか、これも?」
リサ:「うっ……!」
その時、リサが頭を抱えてよろめいた。
私がそれを支えてやる。
リサ:「これは……実験施設……」
愛原:「やっぱりか。何の?」
リサ:「私達……リサ・トレヴァーが『学校の怪談』の支配者になれるかどうかの……」
愛原:「?? どういうことだ?」
リサ:「来て……」
私がリサに着いて行くと、途中にトイレがあった。
それは水洗トイレになっておらず、女子トイレは個室が5つあった。
扉も木製で、中を覗くと汲み取り式の和式便器があるだけだった。
リサ:「私は『トイレの花子さん』……。奥から2番目の個室に潜んで、獲物を待つ……」
愛原:「それがどうしたんだ?」
リサ:「『学校の怪談』にかこつけて、私達が人間を上手く捕食できるかの実験なの。実験生物は、他にもいた……」
何かよく分からん実験を日本アンブレラはしていたんだな。
とにかくここは、学校を模した実験施設であったということは分かった。
リサ:「私がサイトーとかをトイレに連れ込んで『捕食』したのは、ただの偶然じゃなかったんだ……。私、ここで『トイレの花子さん』になったら、その時の記憶が無くなっても、ああいうことをしたんだ……」
愛原:「老廃物を食べることか?」
リサ:「実験では本当に人間を捕食できるように……。実験動物を使ってたけど……。他にもサスペンデッドとか、クリーチャーとかいたよ」
愛原:「“逆さ女”は妖怪としても恐ろしいヤツだから、学校の怪談に登場してもおかしくないわけだな」
リサが実験体だった頃の記憶が少し戻っただけでも、報告のし甲斐があるというものだ。
但し、こちらに関しては善場主任になるだろうがな。
愛原:「よし。もう少しこの施設を探索してみよう。実験体の痕跡が見つかるかもしれないし、リサの記憶も戻るかもしれない」
リサ:「うん……」
私達は薄暗いトイレから出ようとした。
だが、開け放たれていたドアが突然バタンを閉まる。
愛原:「な、何だ!?」
高橋:「開かないっスよ!?」
その時だった。
???「こっちィ……」
不気味な女の声がした。
声がしたのは、奥から2番目の個室。
そこを覗くと、正に学校の怪談ならではの現象が現れた。
便器の中から、1本の手が伸びていたのだ!
愛原:「うわっ、出た!!」
私は思いっ切り後ずさった。
すると、手がにゅうと伸びて来る。
しかし、その元である体は現れない。
手だけが便器の中から伸びて来て、私を掴もうとした。
リサ:「先生に触るな!」
リサが持ち前の鋭い爪で、その手を引っ掻いた。
引っ掻き傷から血が溢れ出す。
手はびっくりしたように、手を大きく開いた。
そして、それは一旦便器の中に引っ込んで行ったが、代わりに全ての個室の便器からそれぞれ1本の手が伸びていた。
愛原:「うわっ、何だ!?気持ち悪い!」
高橋:「もしかしてこれ、『カミをくれー』とかいう、『クレクレ詐欺』の化け物じゃないっスよね!?」
愛原:「なるほど!そうかもしれん!だったら尚更捕まるな!」
高橋:「はい!」
日本アンブレラのヤツら、本当に学校の怪談に出て来そうな化け物なんかも造ってたんだなー。