[12月13日21:40.天候:晴 栃木県日光市相生町 JR日光駅→日光線874M列車1号車内]
私達を乗せた車はJR日光駅前のロータリーに到着した。
管理人:「こちらでよろしいですか?」
愛原:「はい、ありがとうございます」
リサ:「きれい……」
レトロ調の駅舎はライトアップされ、澄んだ冬の空気に輝いている。
管理人:「……!」
愛原:「お世話になりました。もし、宜しかったら私の名刺をどうぞ」
管理人:「ありがとうございます。ただ、あいにく私は嘱託の管理人なもので、名刺は持ち合わせていないのですが……」
愛原:「ああ、いいですよ。お名前は何と仰るのですか?」
管理人:「白井伝三郎と申します」
愛原:「白井さんですか。今日はありがとうございました」
白井:「いえいえ。どうぞ、お気をつけて」
私達は車を降りた。
リサ:「冷えるねぇ」
愛原:「リサの場合、『寒い』じゃなくて『冷える』なんだな」
高橋:「先生、終電は?」
愛原:「21時52分だそうだ。まだ10分くらいあるな」
高橋:「ちょっと便所行ってきていいっスか?」
愛原:「いいよ。俺も行こう」
リサ:「私も行くー」
JR日光駅には駅舎内に客用トイレが無いので、ロータリー内にあるトイレを使用することになる。
そこでトイレを済ませてから、私達は駅の中に入った。
〔「今度の宇都宮行きは、1番線から21時52分の発車です。本日の宇都宮行き、最終電車です。お乗り遅れの無いよう、ご注意ください」〕
ずっとダンジョンを駆け巡っていたせいか、トイレの後は随分と水分を欲した。
自動販売機で水のペットボトルを買うと、それを一気に半分ほどは飲んでしまうほどだ。
リサなんか完全に一気飲みである。
リサ:「お代わり」
愛原:「冬場だとなかなかスポーツドリンク、自販機で売ってないもんな」
仕方ないので、2本目はお茶のペットボトルにしておく。
私も寒いので、温かいお茶のペットボトルをもう一本購入した。
愛原:「しまった!斉藤社長に連絡を忘れていた」
高橋:「先生、もうすぐ発車ですよ」
愛原:「分かってる分かってる」
改札口を通ると、目の前のホームに4両編成の電車が止まっていた。
往路で乗ったような観光仕様ではなく、普通の通勤電車だった。
もっとも、塗装や行き先表示など、日光線のオリジナリティの出た物になっている。
愛原:「もしもし?斉藤社長ですか?愛原です。夜分遅くに、申し訳ございません。今、日光駅です。……はい。調査の方は先ほど終了しまして……」
私は時間を気にしながら、電車と車掌の方をチラチラ見る。
愛原:「報告の方は……あ、また後日でよろしいですか?かしこまりました。それから帰りなんですけど……」
斉藤:「ええ、分かっております。うちの使用人に伝えておきましょう。夜も遅いので、今夜はうちに泊まってください」
荷物を斉藤家に置いていたのが裏目だったな。
荷物を引き取る為に、また泊まらせて頂くことになるとは……。
〔「1番線から宇都宮行き、最終電車が発車致します」〕
愛原:「申し訳ありません。まもなく終電の時間ですので……はい。それでは失礼致します」
私は電話を切った。
後部乗務員室からホームに降りた車掌が信号機と時間の確認をした後、笛を吹いた。
それを合図にするかのように、私は高橋とリサが先に乗っている最後尾の車両に飛び乗った。
と、同時にドアが閉まる。
205系というと圧縮空気の音がしてドアが閉まるイメージだが、こちらは改造されたのか、静かな閉まり方であった。
乗り遅れ客はいなかったらしく、そのまま電車は走り出した。
高橋:「先生、こちらに」
愛原:「ああ」
夜の上り電車ということもあってか、車内はガラガラである。
私達は7人席に座っていたが、その席には他に誰も座っていない。
私は高橋とリサの間に座った。
〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。21時52分発、宇都宮行き最終電車です。【中略】終点、宇都宮には22時32分の到着です。【中略】次は今市、今市です」〕
愛原:「宇都宮で乗り換える電車も終電になりそうだ。乗り遅れの無いようにな」
高橋:「うっス」
愛原:「但し、乗り換える電車は大宮止まりだ」
高橋:「え?それじゃ……」
愛原:「荷物も斉藤社長の家に置いたままだろ?」
高橋:「そ、そういえば……」
愛原:「取りに行かないといけないんだが、ついでに泊まっていいってさ」
リサ:「おー!……でも、サイトーは先に東京に行ったでしょ?」
愛原:「いや、分からんな」
リサは自分のスマホを取り出した。
リサ:「凄い。LINEが一杯……」
どうやら実験場にいる間、リサには斉藤絵恋さんから大量のLINEが来ていたらしい。
で、最後には、リサが再び泊まってくれることを信じて、未だに実家にいるということだ。
2人とも、明日は学校のはずだが……。
リサ:「何か、運転手さん?白髪の……。その人が駅まで送り迎えしてくれるんだって」
愛原:「新庄さん……。申し訳無いな」
明日は斉藤社長を会社まで乗せて行かなくてはならないだろうに……。
リサ:「それより、お腹空いた……。昼も夜も食べてない……」
愛原:「参ったな。NEWDAYSはもう営業終了だと思う」
リサ:「えー……」
リサは電車の中で第一形態に変化しかけた。
愛原:「ホームに何か自販機があるかもしれない。それを探そう」
あるといいな……。
[同日21:53.天候:晴 栃木県日光市相生町 JR日光線陸橋]
(この部分だけ三人称です)
JR日光駅に程近い陸橋の上に立ち、愛原達を乗せた最終の上り電車を見送る者がいた。
それはガスマスクを被った男だった。
ガスマスク:「また会おう、愛原君。そして、斉藤秀樹君」
私達を乗せた車はJR日光駅前のロータリーに到着した。
管理人:「こちらでよろしいですか?」
愛原:「はい、ありがとうございます」
リサ:「きれい……」
レトロ調の駅舎はライトアップされ、澄んだ冬の空気に輝いている。
管理人:「……!」
愛原:「お世話になりました。もし、宜しかったら私の名刺をどうぞ」
管理人:「ありがとうございます。ただ、あいにく私は嘱託の管理人なもので、名刺は持ち合わせていないのですが……」
愛原:「ああ、いいですよ。お名前は何と仰るのですか?」
管理人:「白井伝三郎と申します」
愛原:「白井さんですか。今日はありがとうございました」
白井:「いえいえ。どうぞ、お気をつけて」
私達は車を降りた。
リサ:「冷えるねぇ」
愛原:「リサの場合、『寒い』じゃなくて『冷える』なんだな」
高橋:「先生、終電は?」
愛原:「21時52分だそうだ。まだ10分くらいあるな」
高橋:「ちょっと便所行ってきていいっスか?」
愛原:「いいよ。俺も行こう」
リサ:「私も行くー」
JR日光駅には駅舎内に客用トイレが無いので、ロータリー内にあるトイレを使用することになる。
そこでトイレを済ませてから、私達は駅の中に入った。
〔「今度の宇都宮行きは、1番線から21時52分の発車です。本日の宇都宮行き、最終電車です。お乗り遅れの無いよう、ご注意ください」〕
ずっとダンジョンを駆け巡っていたせいか、トイレの後は随分と水分を欲した。
自動販売機で水のペットボトルを買うと、それを一気に半分ほどは飲んでしまうほどだ。
リサなんか完全に一気飲みである。
リサ:「お代わり」
愛原:「冬場だとなかなかスポーツドリンク、自販機で売ってないもんな」
仕方ないので、2本目はお茶のペットボトルにしておく。
私も寒いので、温かいお茶のペットボトルをもう一本購入した。
愛原:「しまった!斉藤社長に連絡を忘れていた」
高橋:「先生、もうすぐ発車ですよ」
愛原:「分かってる分かってる」
改札口を通ると、目の前のホームに4両編成の電車が止まっていた。
往路で乗ったような観光仕様ではなく、普通の通勤電車だった。
もっとも、塗装や行き先表示など、日光線のオリジナリティの出た物になっている。
愛原:「もしもし?斉藤社長ですか?愛原です。夜分遅くに、申し訳ございません。今、日光駅です。……はい。調査の方は先ほど終了しまして……」
私は時間を気にしながら、電車と車掌の方をチラチラ見る。
愛原:「報告の方は……あ、また後日でよろしいですか?かしこまりました。それから帰りなんですけど……」
斉藤:「ええ、分かっております。うちの使用人に伝えておきましょう。夜も遅いので、今夜はうちに泊まってください」
荷物を斉藤家に置いていたのが裏目だったな。
荷物を引き取る為に、また泊まらせて頂くことになるとは……。
〔「1番線から宇都宮行き、最終電車が発車致します」〕
愛原:「申し訳ありません。まもなく終電の時間ですので……はい。それでは失礼致します」
私は電話を切った。
後部乗務員室からホームに降りた車掌が信号機と時間の確認をした後、笛を吹いた。
それを合図にするかのように、私は高橋とリサが先に乗っている最後尾の車両に飛び乗った。
と、同時にドアが閉まる。
205系というと圧縮空気の音がしてドアが閉まるイメージだが、こちらは改造されたのか、静かな閉まり方であった。
乗り遅れ客はいなかったらしく、そのまま電車は走り出した。
高橋:「先生、こちらに」
愛原:「ああ」
夜の上り電車ということもあってか、車内はガラガラである。
私達は7人席に座っていたが、その席には他に誰も座っていない。
私は高橋とリサの間に座った。
〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。21時52分発、宇都宮行き最終電車です。【中略】終点、宇都宮には22時32分の到着です。【中略】次は今市、今市です」〕
愛原:「宇都宮で乗り換える電車も終電になりそうだ。乗り遅れの無いようにな」
高橋:「うっス」
愛原:「但し、乗り換える電車は大宮止まりだ」
高橋:「え?それじゃ……」
愛原:「荷物も斉藤社長の家に置いたままだろ?」
高橋:「そ、そういえば……」
愛原:「取りに行かないといけないんだが、ついでに泊まっていいってさ」
リサ:「おー!……でも、サイトーは先に東京に行ったでしょ?」
愛原:「いや、分からんな」
リサは自分のスマホを取り出した。
リサ:「凄い。LINEが一杯……」
どうやら実験場にいる間、リサには斉藤絵恋さんから大量のLINEが来ていたらしい。
で、最後には、リサが再び泊まってくれることを信じて、未だに実家にいるということだ。
2人とも、明日は学校のはずだが……。
リサ:「何か、運転手さん?白髪の……。その人が駅まで送り迎えしてくれるんだって」
愛原:「新庄さん……。申し訳無いな」
明日は斉藤社長を会社まで乗せて行かなくてはならないだろうに……。
リサ:「それより、お腹空いた……。昼も夜も食べてない……」
愛原:「参ったな。NEWDAYSはもう営業終了だと思う」
リサ:「えー……」
リサは電車の中で第一形態に変化しかけた。
愛原:「ホームに何か自販機があるかもしれない。それを探そう」
あるといいな……。
[同日21:53.天候:晴 栃木県日光市相生町 JR日光線陸橋]
(この部分だけ三人称です)
JR日光駅に程近い陸橋の上に立ち、愛原達を乗せた最終の上り電車を見送る者がいた。
それはガスマスクを被った男だった。
ガスマスク:「また会おう、愛原君。そして、斉藤秀樹君」