報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの牙抜き」 当日3

2023-11-11 21:17:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月28日12時00分 天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR大宮駅→丸建つばさ交通“けんちゃんバス”車内]

 リサがトイレから出て来るまで少し時間が掛かったものの、バスの時間には間に合った。
 やはりどうしてもターミナル駅の宿命というか、そういった所の女子トイレは混雑しやすく、リサもそれで待たされたのだという。
 西口から外に出て、ペデストリアンデッキを下りる。
 外観は仙台駅の色違いといった感じの大宮駅だが、ペデストリアンデッキの規模は仙台駅の方が上かな。
 バスプールの規模が仙台駅より小さいからというのもあるかもしれない。

 

 バスプールから少し外れた一方通行の道上に、ポツンとバス停が立っていて、そこに1台の小型バスが停車している。

 リサ「このバス、だいぶ前に乗ったことあるかな?」
 愛原「あるある。まだ我那覇さんが斉藤さんだった頃、その家に遊びに行く時に乗ったことあるよな?」
 リサ「あー、あの時のバスか……」

 コミュニティバスのようだが、けして地元自治体は関わっていない為、そういう意味でのコミュニティバスではない。
 また、ICカードは使えないので、現金か回数券を買わないといけない。

 愛原「先に現金渡しておくよ」
 リサ「ありがとう」

 運転は均一性で、大人200円。
 しかし、前乗り前払いではなく、後ろ乗り後払いである。
 バスに乗り込むと、私達は空いている1番後ろの席に座った。
 かつては1時間に1本ほどあったバスだが、今は1日に3本という減便ぶりである。
 残念ながら、私達の他に乗客の姿は見られなかった。
 再び私は、善場主任に定時連絡。
 乗り物が替わる度に定時連絡を入れなくてはならない。
 GPSで追っているのだろうから別に良いではないかと思われるかもしれないが、向こう側でも位置情報を詳しく知りたいのだそうだ。
 BOWを管理するというのは、こういうことなのだ。
 本当ならアメリカ政府が言うように、完全に一般人の目に触れない所に隔離するべきなのだろうが……。
 発車の時間になり、バスがエンジンを掛ける。

〔「12時ちょうど発、与野本町先回り、大宮西口循環、発車致します」〕

 バスは前後のスライドドアを閉めて発車した。
 エアーの音がしないのは、小型バスはエアブレーキを使わないからだ。

〔ピンポーン♪ お待たせ致しました。毎度ご乗車、ありがとうございます。このバスは与野本町先回り、大宮西口循環線でございます。次はあおぞら保育園、あおぞら保育園でございます〕

 昼休みに入ったからか、さっきの電車よりも返信がやや遅かったが、バスが発車してから、了解の旨の返信が来た。
 ところが、GPSで追跡できてはいるのだが、新規参入のバス会社である為か、グーグルでは検索できないとのこと。
 私も後でグーグルマップで調べてみたのだが、確かにバス停の位置情報までは、グーグルに反映されていないようだった。
 公共交通機関は追跡しやすいとはいうが、たまにこういうイレギュラーも発生するということだ。
 但し、幸いなのは地方の山奥とかに行くわけではないので、そういった意味での危険性は無いということだ。
 それと更に主任から、ついでといった感じで聞かれた。

 善場「先ほど所長方が乗られた列車から、エラー表示が頻発していたのですが、何か御存知ないですか?」

 とのこと。
 何でも、列車内からクリーチャー反応が一瞬出ては消え、かと思ったら、今度は前の車両からBOWの反応が出ては消えを繰り返していたそうだ。
 私達は最後尾に乗っていたが、それっぽい物は見ていない。
 私よりもそういったモノに敏感なリサにも聞いてみたが、そんな気配は全くしなかったという。

 リサ「上空でレイチェルがヘリの訓練をしてたから、そのせいじゃない?」

 とのことなので、私もそのことを善場主任に伝えていた。

 善場「なるほど。BSAAが訓練飛行していたのですね。後ほど確認してみます。所長方は今のところ順調のようですが、くれぐれもお気を付けください。何か異変を感じましたら、些細なことでもお知らせください」

 とのメールで、一旦は終了した。

[同日12時15分 天候:晴 さいたま市中央区上落合 上落合公園前バス停→焼肉屋くいどん大宮店]

〔「上落合公園前でございます」〕

 私達はここでバスを降りた。
 幸い、途中のバス停からお年寄りが2名ほど乗ってきたので、私達の貸切バスということは無くなっていた。

 愛原「ここに入れて。どうも、お世話様」
 運転手「ありがとうございました」

 現金を直接運賃箱に入れるという行為は、ここ最近やったことがない。
 なので、逆に少し新鮮味がある。
 私が子供の頃は、当たり前だったのだが。
 バスを降りて道路を渡り、来た道とは反対方向に戻る。

 愛原「どれ、マリンちゃんに会いに行くか」
 リサ「先生!」

 マリンちゃんの幟に絆されて、ホイホイとパチンコ店に入ろうとする私を、リサが鬼の力で食い止めた。
 今や電撃は使えなくなっているはずだが、

 愛原「あうっ!?」

 バチッと強い静電気が私を襲った。
 どうやら電撃は使えなくても、静電気を送り込むくらいのことは、まだできるようである。

 リサ「わたし、お腹空いたよ~?」
 愛原「は、ハイハイ。焼肉屋に行きましょうね」

 私は誤魔化し笑いをしながら、パチンコ屋の前を通り過ぎた。
 その際、リサは幟に描かれているマリンちゃんを睨みつけていた。

 リサ「胸が大きいからって、もう……!」
 愛原「リサの胸が大きくなったら、マリンちゃんのコスプレしてもらおうかな?」
 リサ「! いいよ!」

 今のリサはウリンみたいな体型だが、“鬼ころし”の効果がどんどん出てくれば、マリンちゃんみたいになれるだろう。

 店員「いらっしゃいませ」
 愛原「予約していた愛原です」

 焼肉店は昼時ということもあって混んでいたが、こんなこともあろうかと、私はネットで予約していた。

 店員「愛原様ですね。それではご案内致します」
 リサ「食べ放題のコース!?」
 愛原「お昼でそれは無いだろう。席だけ予約したから、あとはメニュー見て決めよう」

 昼食でも食べ放題のメニューは注文できるようだが、そもそも私がそんなに食い切れないというのがある。
 この時点だと、とてもこれから歯医者に行く感じにはとても見えないな。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの牙抜き」 当日2

2023-11-11 16:40:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月28日11時12分 天候:晴 東京都台東区上野 JR高崎線9083M列車1号車内]

〔「11時12分発、高崎線、吾妻線回りの特急“草津”83号、長野原草津口行き、まもなく発車致します」〕

 発車の時間になり、ホームから発車ベルの音が聞こえて来る。
 かつては発車メロディが使用されていた時期もあったが、ベルに戻されている。

〔「14番線から、11時12分発、特急“草津”83号、長野原草津口行きが発車致します。ベルが鳴り終わりますと、ドアが閉まります。ご利用のお客様は、お近くのドアからご乗車ください」〕
〔14番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 

 リサはキヨスクで買ったポッキーをポリポリ齧っている。
 別に歯の治療に行くわけではないし、昼食も挟むので、事前の飲食については全く遠慮が無い。
 ドアが閉まると、ガクッと車両が揺れて、ゆっくりと走り出した。
 まるで、機関車牽引の客車列車のようだ。
 旧国鉄型車両はそのような揺れ方をする。
 これはJRになって間もない頃に製造された車両だと思うが、まだまだ国鉄チックな走り方をするものだ。

〔♪♪(発車メロディ)♪♪。「本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。11時12分発、高崎線、吾妻線回りの特急“草津”83号、長野原草津口行きです。これから先、赤羽、浦和、大宮、熊谷、高崎、新前橋、渋川、中之条、終点長野原草津口の順に停車致します。主な駅の到着時刻をご案内致します。大宮には11時37分……」〕

 今や特急列車にも自動放送が流れる時代、この車両にはそのような機能は搭載していないようだ。
 改造して搭載できなくもないだろうが、来年度には、これよりもっと新しい車両に置き換わるという。
 まもなく引退する車両に、そこまで金を掛けたくはないだろう。
 私はスマホを取り出すと、それで善場主任に定時の連絡。
 それはメールで行う。
 すぐに返信が来て、了解との旨を頂く。

 リサ「あ……」
 愛原「どうした?」
 リサ「どうせ抜いちゃう牙なんだから、ビーフジャーキーの方が良かったかな」
 愛原「いやいや、お前、昼は焼肉だぞ?」
 リサ「そうだった」

 リサに頑張ってもらう為、昼と夜は機嫌を取ることになっている。
 私達が乗っている最後尾は自由席だが、どちらかというと、草津温泉まで行こうというような乗客は少ないように思える。
 いかにもな乗客達は、3号車から前の指定席に集中していて、今のところは自由席よりも指定席の方が賑わっている状態である。
 なるべく区間利用者を少なくしたいのか、停車駅もだいぶ減らされた。
 かつては快速と間違えそうなほどの停車駅の多さだったのだが、現在は特急の種別に相応しい、少ない停車駅となっている。

 リサ「ん?」

 リサも自分のスマホを見た。

 愛原「今度はどうした?」
 リサ「レイチェルからのLINE。今日はヘリコプターに乗って訓練するんだって」
 愛原「いつもながら、訓練内容を公表していいんだろうか?」
 リサ「BSAAの場合、敵がBOWとかバイオテロ組織だからいいんじゃない?日本にはいないみたいだし」
 愛原「白井という元凶がいたんだがな」

 ただ、組織としてのバイオテロリストがいるかどうかは疑問視されている。
 かつてはヴェルトロの残党や後継組織がいるのではと言われていたが、全く摘発されないことから、デマだった疑い、或いは既に国外逃亡していると見られている。

 リサ「凄いね!レイチェル、ヘリコプター操縦できるんだ!」
 愛原「その為の訓練だろう?」

 因みに日本では、小型ヘリコプターが操縦できる自家用操縦士は17歳以上から取得できるという。
 アメリカではどういう制度になっているのか不明だが、少なくとも17歳のレイチェルは、日本ではその免許を取得できる年齢に達しているというわけだ。
 そしてその訓練を、所属するBSAAで行っているというわけだ。
 ただ、軍用ヘリも17歳から操縦できるのか?
 それとも、教官の横に乗って見学するだけか?
 さすがのリサも、そこまでは知らなかった。

 愛原「で、今頃都内上空を飛んでいるわけか」
 リサ「うん、そう。具体的には、この電車の上」
 愛原「は?」
 リサ「『バイオテロ組織が列車でBOWを運搬中。それの追跡をする』という想定なんだって」
 愛原「勝手に俺をテロリストにすんなよ、BSAAの連中……」

 私は苦笑した。

 愛原「それにしても、どうして突然、そんな訓練を?」
 リサ「訓練自体は前々から計画されていたんだけど、ちょうどわたし達が出掛けるからってことで。で、この電車、真っ白いでしょう?」
 愛原「あー、まあ、白っぽいな」

 

 タキシードボディと呼ばれる。
 常磐線特急時代はもっと白かったが、高崎線や吾妻線に転属してからは、それとの違いを表記する為か、窓の下にオレンジ色のラインを入れている。

 リサ「他の電車よりも目立つから、目視で追跡するのに、ちょうどいいんだって」
 愛原「それってつまり、戦争が始まったら、敵の飛行機のいい攻撃目標にされるってことだな。危ねぇな」

 タイムラインでリサの所に送っているということは、直接操縦はしていないということだ。
 さすがに操縦しながら、LINEは送れないだろうしな。

[同日11時37分 天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

 本当に真上を飛んでいたのか不明だが、私はBSAAのヘリコプターを確認することはできなかった。

〔♪♪♪♪。「まもなく大宮、大宮です。大宮駅7番線に入ります。お出口は、右側です。大宮の次は、熊谷に止まります。新幹線、宇都宮線、埼京線、川越線、東武アーバンパークラインとニューシャトル線はお乗り換えです。今度の宇都宮線下り列車、快速、宇都宮行きは11番線から11時41分。その後、普通列車、宇都宮行きは9番線から11時45分です。高崎線下り、特別快速、高崎行きは11番線から11時51分。その後、普通列車、高崎行きは8番線から11時51分です。……」〕

 本来、高崎線下りホームは8番線である。
 貨物線(湘南新宿ライン)からの列車は、線路配置の関係で、11番線に入るというわけだ。
 では、7番線は下りの副線ホームなのかというと、実は違う。
 本来は、上り副線ホームであり、逆走する形になる。
 何故こんな運転取扱規則に違反してそうなことをするのかというと、普通列車を待っている乗客が誤乗しないようにする為だという。
 他にも“スワローあかぎ”などの特急も、このような逆走入線をする。
 旧国鉄時代では例外を認めなかっただろうが、JR化後は随分と柔軟に例外を認めたものだ。
 尤も、JR西日本の大阪環状線内における中線ホームを特急が通過するという、国鉄時代なら明らかに違反な例もあるのだが。

 愛原「降りるぞ」
 リサ「うん」

 私達は手荷物を持ってリクライニングを直し、デッキに向かった。
 その際、ゴミはデッキにゴミ箱に捨てておく。
 プシューと大きなエアーの音がして開くドアも、今では珍しいかもしれない。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮、大宮です。7番線の列車は、高崎線、吾妻線直通、特急“草津”83号、長野原草津口行きです。ご乗車にはお手持ちの乗車券、ICカードの他、特急券が必要です。……」〕

 私達は列車を降り、そしてコンコースへと向かった。
 自動改札機へは乗車券だけを投入すればいいので、特急券は手元に残る形となる。
 キップを買う際に領収証は取ったが、この余った特急券も添えてデイライトに請求しよう。

 リサ「先生、まだ時間ある?」
 愛原「乗り換えるバスは12時ちょうど発だから、まだ少しあるな」
 リサ「ちょっとトイレ行きたい」
 愛原「分かった。行ってこい」

 リサはコンコースに上がると、そこにあるトイレに向かった。
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