報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「一方の愛原達は……」

2023-11-30 21:53:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月2日22時33分 天候:晴 栃木県宇都宮市 JR東北新幹線223B列車5号車内→JR宇都宮駅]

 私達を乗せた東北新幹線“やまびこ”223号、仙台行きは無事に東北新幹線の下り線を走行していた。
 車窓からはきれいな月がよく見える。
 だが西の方、日光市の方角を見ると、全く星が見えない。
 どうやら、山の方は曇っているようだ。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、宇都宮です。日光線と、烏山線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。宇都宮の次は、新白河に止まります〕
〔「宇都宮でお降りのお客様、ご乗車ありがとうございました。お乗り換えの御案内です。日光線下り、普通列車の日光行きは、5番線から22時48分。烏山線下り、普通列車の烏山行きは、8番線から22時46分。宇都宮線下り、普通列車の黒磯行きは、9番線から22時51分。宇都宮線上り、普通列車の大宮行きは、9番線から22時42分の発車です。各線とも、本日の最終列車となっております。ご利用のお客様は、お乗り遅れの無いよう、ご注意ください。まもなく宇都宮、宇都宮です。到着ホーム1番線、お出口は左側です。宇都宮の次は、新白河に止まります」〕

 仙台行きの最終列車である。
 通過駅はあるものの、ある程度は停車駅の多い列車なので、もちろん終点の仙台まで乗り通す乗客はいるだろう。
 しかし、今のアナウンスを合図に、ここで降りる乗客達もそれなりにいるようだ。

 愛原「俺達も終電に乗り換えるぞ」
 高橋「はい」

 列車はグングン速度を落とし、ガクンと大きく左右に揺れた。
 本線からホームのある副線へと転線したのである。
 窓の外に、宇都宮駅の新幹線ホームが見える。

〔ドアが開きます〕

 停車すると、ドアチャイムではなく、アナウンスが流れてドアが開く。

 

〔「ご乗車ありがとうございました。宇都宮、宇都宮です。お忘れ物の無いよう、お降りください。1番線に到着の列車は、“やまびこ”223号、仙台行きです。本日、仙台行きの最終列車です。お乗り遅れの無いよう、ご注意ください」〕

 私達は他の乗客と共に列車から降りた。
 最終列車ということもあり、車掌や駅員が乗客の乗り遅れが無いかをチェックしている。
 その為、駅によっては発車が遅れることもあるが、それもまた終電の風物詩である。
 尚、この場合はさすがに乗務員に責任が問われることは無いそうである(そもそも客扱い遅れは、乗務員は責任を問われない)。

 愛原「で、次は日光線だ」
 高橋「ういっス」

 乗り換え時間15分と、比較的余裕のある乗り換え時間である。
 エスカレーターで新幹線コンコースに下り、そこから在来線への乗換改札を通過する。
 そこで特急券は回収され、手元には乗車券だけが残る。
 在来線コンコースに移動すると、今度は日光線が発車する5番線へと向かう。

 

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。5番線に停車中の列車は、22時48分発、普通、日光行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 ホームに行くと3両編成の新型車両が発車を待っていた。
 3両編成、ワンマン列車である。
 驚くことに、宇都宮駅を発車する宇都宮線上り列車以外の全ての列車がワンマン運転である。

 愛原「ん?」
 高橋「どうしました?」

 電車に乗り込もうとすると、善場主任から電話が掛かって来た。

 愛原「ちょっと電話に出るから、先に乗っててくれ」
 高橋「はい」

 どうせ地方都市とはいえ、平日下りの終電だ。
 メチャ混みというわけではないが、全ての車両が満席で立ち席が出ている。
 日光駅までその状態ではないだろうが、逆を言えば慌てて乗って、席を確保する必要も無いということだ。
 高橋は最後尾の車両に乗り込んだ。

 愛原「もしもし?」
 善場「愛原所長、お疲れさまです。御移動の最中、申し訳ありません」
 愛原「いえ、大丈夫です。因みに今、宇都宮駅です。これから、日光線の最終列車に乗り込むところです」
 善場「かしこまりました。終点の日光駅で、高橋助手の知り合いの情報提供者と合流するわけですね?」
 愛原「その予定です」
 善場「かしこまりました。これまでに分かったことを、情報共有という形でお伝えしたいと思います。頭の片隅にでも、入れておいてください」
 愛原「承知しました」

 善場主任の情報によると、情報提供者が言っていたバスは、確かに廃車寸前の所を、タダ同然でそのバス会社が譲ったということだった。
 情報提供者がバスのナンバーを覚えていたのと、そのバスの塗装の特徴を覚えていたことから、デイライトの情報収集能力で割れたという。
 そこでそのバス会社に当たってみたところ、確かに廃車予定のバスを引き取りたいと突然申し出て来た人がいたとのこと。
 バス会社は都内に本社を置き、主に東北方面に高速バスを運行する所であった。
 また、高橋が追い掛けた怪しい人物についても、警察が任意で事情を聞いているという。
 廃車寸前のバスをタダ同然で引き取った所と、警察に事情を聞かれている男が所属している組織には、ある共通点があった。

 善場「それは、『栗原道場』です。全身火傷を負って療養中の栗原蓮華の家が経営する剣道場ですね」
 愛原「そこにリサが連れて行かれたんですか!?マズい!」
 善場「こちらとしても、重大な協定違反です。法的措置を持って、対処に当たる所存です」

 どういった法的措置になるのかは不明だが、仮とはいえ今のリサには戸籍がある、つまり人権があるから、それを侵害した罪で刑事告訴するのではないだろうか。
 要は未成年者略取・誘拐とか。
 また、彼らは鬼狩りの為に真剣を多数所持している。
 もちろんちゃんと許可が取れているものだが、剥奪するのではないだろうか。
 何百年にも渡って、日本国内の脅威(主に鬼などの魑魅魍魎の類)を裏で対処してきた家系ではあるが、ある意味でアウトローな彼らも現代では不要というのがデイライトの考えである。
 デイライトは日本政府の諜報機関によるカムフラージュ組織。
 つまり、日本政府の考えである。
 国家権力で持って、栗原家を潰そうと思えばできるのかもしれない。

 愛原「私達はこのまま現地に向かっても宜しいでしょうか?」
 善場「一応、そうしてください。こちらもBSAAに連絡します。愛原所長のGPSを頼りに向かうことになると思いますので、宜しくお願いします」
 愛原「分かりました」
 善場「それと、絶対に無理はなさらぬように。無理にでも捜査を行うのは、BSAAですので」
 愛原「もちろんですとも」

 私達はあくまで、デイライトから調査業務を委託された民間の探偵業者である。
 とはいうものの、いざとなったら責任押し付けて捨て駒にするつもりであるだろう。
 もちろん私も、それ覚悟で高い報酬を受け取っているわけだが。
 私は電話を切ると電車に乗り込み、誰も乗っていない後部乗務員室の前に立った。

 高橋「ねーちゃん、何ですって?」
 愛原「向こうも向こうで色々調査して分かったことがあるから、それを教えてくれたよ。まあ、ここでは話せないから、向こうに着いたら話すよ」
 高橋「分かりました」
 愛原「それより、彼らはちゃんと駅で待っていてくれてるのかな?」
 高橋「はい。さすがに駅の真ん前では怪しまれるので、少し離れた所で待機してるみたいっス。で、この電車が見える位置にいるそうなんで、日光駅に着き次第、すぐ向かえるようにするって言ってました」
 愛原「違法改造車で迎えに来られても困るなぁ……」
 高橋「いや、さすがに別の車にするみたいっスよ。改造クラウンで、雪道はさすがに厳しかったみたいっスから」
 愛原「当たり前だ!」
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“愛原リサの日常” 「囚われの鬼娘」

2023-11-30 14:42:40 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月2日21時00分 天候:晴 栃木県日光市某所]

 リサは1人で遅い夕食を食べていた。
 スマホは取り上げられて、外部と通信が無い。
 しかしテレビだけはあるので、それで番組を観ることはできた。
 手掛かりを求めて色々とチャンネルを回してみたが、テレビ東京は映り、TOKYO MXが映らないことから、東京都やその周辺の県ではなく、更にその外側にある関東地方の県だということは想像できた。
 もちろんテレビば地デジ対応で、番組表も今日の物である。

 リサ「あっ……!」

 その番組表に、『とちぎテレビ』とあった。
 文字通り、栃木県を放送対象区域とする県域テレビ局である。
 地上アナログ放送時代で、1番新しく開局したテレビ局だという。

 リサ「ここは栃木県なんだ!」

 外は雪が積もっていることから、栃木県の山奥に連れて来られたのだと理解したリサだった。

 リサ「先生に助けを呼ばないと!」

 夕食を終えたリサは、8畳間の外に出た。
 しかし、家の窓は閉め切られており、しかもその外側は雨戸が完全に閉められていた。
 室内には電話が無く、玄関に行っても電話は無い。
 当然ながら、玄関扉は堅く閉ざされていた。
 玄関扉は内鍵になっているはずだが、ここの玄関は違った。

 リサ「これ何!?クランクハンドルで開けるの!?」

 よく見ると玄関扉は引き戸ではあるものの、硬い重厚な鉄扉であった。
 それでもリサが本気を出せば、こじ開けられるかもしれないが……。

 リサ「ダメだ。大きな音がして、鬼狩り隊にバレる。どうせなら、タイラント君みたいな力持ちに壊して開けてもらう方がいい」

 当然ながら、都合良く手近に召喚できるタイラントなどいるわけがない。

 リサ「くそ……!」

 ならば窓から脱出しようと思ったが、ガラス扉の錠も鍵穴式になっていて、そこに鍵を通さないと開かない仕組みになっていた。
 また、雨戸も鉄扉である。

 リサ「ガラスを割って、鉄扉をこじ開けることはできるかもしれない……」
 老婆「残念ながら、それはオススメできません」
 リサ「ひゃあっ!?」

 さすがのリサもびっくりした。
 リサもまた気配を隠して、獲物の後ろから襲うのは得意であるが、されるのは慣れていなかった。
 振り向くと、そこにはここでリサの世話係を務めるという老婆がいた。

 リサ「い、いつの間に……!?」
 老婆「全てが終わるまでは、あなた様はここでごゆるりとお過ごし頂きたいのでございます」
 リサ「で、でもせめて、家には電話させてよ!」
 老婆「それはなりませぬ。邪魔が入ってはいけませんので……」
 リサ「邪魔って、わたしの首を刎ねる邪魔?」
 老婆「……お風呂の準備ができてございます。ご案内致しましょう」
 リサ「んー……!」

 リサは食事をした隣の部屋に行くと、そこから寝巻の浴衣を取った。

 リサ「奥日光……。もう隠す気無いでしょ」

 浴衣には『奥日光』の文字が書かれていた。
 どうやら、文字通り、奥日光にいることが分かる。

 リサ「ここは旅館か何か?」
 老婆「それは……ご想像にお任せ致します」
 リサ「違うかな。もしそうなら、わたしを茂みで野ションや野グソさせないもんね」

 リサはあえて下品に言った。
 それでも老婆は腰を低くし、目を閉じるほどに細くしたまま何も表情は変えない。

 老婆「こちらでございます」

 旅館の女将よろしい着物を着ている老婆に誘われ、リサは浴室へと向かった。
 建物自体は『離れ』と呼ばれているだけあって旅館にしては小さく、浴室も人が2人入れるくらいの壺湯があるだけだった。
 それでも温泉の匂いはしており、本物の温泉であるとリサは分かった。

 老婆「どうぞ、ごゆっくりとお過ごしください」
 リサ「う、うん……」

 老婆が出て行くと、リサは脱衣所で服を脱いだ。

 リサ「んん?」

 脱衣所内には白黒の古い写真と、その謂れが説明された看板が立っていた。
 写真には詰襟の学ランのような服を着た若い男達と、着物姿の女性達が写っていた。
 撮影された年を見ると、今から100年くらい前の写真であるようだ。

 『鬼怒川の上流には文字通り、憤怒の如き表情で、近隣の村々を襲う鬼達が暮らしていました。当家では討伐隊を結成し、鬼退治に向かいました。この庵は当時、討伐隊の拠点になっていた場所で、鬼達との戦いに傷ついた隊士達の療養施設にもなっておりました。母屋の方は専用の診療所としても活用され、終戦後は一般の診療所に転用されました』

 という説明が隣にあった。
 写真の男女は、リサと大して年齢層が変わらないように見える。

 リサ「うーん……。写真を見た限りでは、わたし1人で倒せそうな気がするけど……。あっ、こっちの女の子のお肉美味しそう」

 反対側の壁を見ると、それまで鬼狩り隊が倒したという鬼の写真があった。

 リサ「うーん……何か、見た目人間っぽいのもいるけど……。こっちもこっちで、男女比同じくらいなんだねぇ……」

 リサは首を傾げた。

 リサ「うん。わたしの知ってそうなのはいないや」

 リサは一糸まとわぬ姿になると、まずは洗い場に向かった。

 リサ(あれだけ見ると、やっぱり首を刎ねられそうな気がしてならないんだけど……)

[同日22時00分 天候:晴 同庵]

 風呂から出たリサは浴衣に着替えて、寝る準備をした。
 ここで従順なフリをしておけば、向こうも油断して、逃げる隙ができるかもしれないと思った。
 浴衣の下はスポプラ、そして下は一応、黒いプーマのショーツだけにしておいた。
 今日は体育があったので、それで下着はそういうタイプを着けていたのである。
 敷かれていた布団は、フカフカのものだった。
 リネンもクリーニングしたばかりのパリッとアイロンが効いているものである。

 老婆「失礼致します」

 そこへ老婆が入ってきた。

 リサ「なに?」
 老婆「お医者様でございます」
 医師「どうも~」
 リサ「は?何で?わたし、どこも悪くないよ?」
 老婆「ここに来られる際、うちの男達に手荒な真似をされたと伺い、一応お医者様をと」
 リサ「いや、わたしは大丈夫だよ?むしろわたしの爪や噛み付きでケガした人達がいると思うから、そっち看てあげたら?」
 老婆「それでは先生、宜しくお願い致します」
 医師「はい~」
 リサ「って、聞けよ!」
 医師「それでは、診察を始めさせて頂きます~。まずは胸の音から聞かせてください」

 50代くらいの男性医師は、聴診器を手に持った。

 リサ「マジか……」
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