[3月6日02時46分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・リサの部屋]
リサ「ん……?」
リサはふと夜中に目が覚めた。
別に変な夢を見たわけではないのだが、変な寝苦しさを憶えたのだ。
リサ「んん……」
リサはトイレに行こうと部屋を出た。
ドアを開けると、真っ暗な廊下がある。
リサはそこを照明を点けずに進んだ。
今のリサは鬼形態なので、暗闇でも見えるのである。
但し、瞳は赤くボウッと暗闇に浮かんでいることだろう。
さすがに、トイレの照明は点ける。
そこも照明を点けずに用を足していたら、以前鉢合わせになった愛原を驚かせてしまったので、さすがにトイレの照明は点けるようにしていた。
ただ、リサにとっては大変眩しく、目を細めなくてはならなかったが。
リサ「ふーん……」
トイレから出た後、階段の所にある窓を見ると、窓からはだいぶ明るい月明りが差し込んできた。
窓から外を見ると、それは満月だった。
リサ「……!!」
リサは何とも言えぬ高揚感を掻き立てられた。
と、そこへ突然、食人衝動が沸き起こる。
リサ「ウゥ……」
視線の先には、愛原の部屋のドアがある。
右手だけでパキッと骨を鳴らすと、爪を長く鋭く伸ばした。
リサ「……って、ダメダメダメ!」
ドアを蹴破ろうとした時、リサは正気に戻った。
リサ「ううっ!」
そして階段を駆け下り、キッチンに保管されている“鬼ころし”を開ける。
それを飲むと、酔いが回って来るものの、食人衝動は失せて行った。
リサ「そ、そういえば、樽1個分飲もうとしていた鬼がいたな……」
全く夢を見なかったわけではなく、僅かに夢は見ており、どこかの日本屋敷を歩いていた夢だ。
屋敷には人間はおらず、廊下や部屋には時折一張羅の男の鬼がいただけだったが、鬼化しているリサを見ても、何もしてこなかった。
そして、ある部屋に入ると、女の鬼がいて……。
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こんな感じで“鬼ころし”を飲んでいた。
リサが、『何をしているのか』問うと、リサと大して年恰好の変わらぬ鬼の女は、『酒を飲んでいるのだ』と答えた。
いやもちろん、見れば分かる。
どうして、そういう飲み方をしているのか聞いたまでだ。
『医者に酒は1日一杯までと言われたから』とのこと。
いや、違う、そうじゃないとリサは思った。
そこで目が覚めたのである。
鬼の常識は、人間の非常識なのだろうと改めて思った。
そして、人間と鬼の両方を行き来できるリサだからこそ、ツッコミが入れられたのだろうと。
リサ「もう寝よう」
リサは“鬼ころし”1パックを空けると、自分の部屋に戻った。
最後に夜風を浴びて、酔いを醒ますことにする。
リサ「ん?」
なるべく満月は見ないようにしながら窓を開けて、冷たい夜風に当たっていると、何だか変な予感がした。
風は西から東に向かって吹いているように見える。
その風に向かって、鬼の臭いがしたような気がしたのだ。
まさか、この近くに鬼がいるのだろうか。
愛原の血肉を狙っているのなら、全力で阻止しなくてはならない。
鬼同士の戦いなど不毛なことこの上ないが、大事な“獲物”を取られては元も子もないのである。
リサ「気のせいかなぁ……?」
リサは窓を閉めて鍵を掛け、カーテンを閉めた。
そして、再びベッドに入ったのだった。
[同日08時00分 天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校2年5組]
翌朝になり、リサは学校は登校した。
もちろん、昨夜に食人衝動が起きて、それを防ぐ為に“鬼ころし”を1パック飲んだことは愛原に報告した。
その理由が満月を見たからと話すと、愛原は一応納得してくれたが、高橋からは、『狼男かよw』とイジられた。
因みに2度寝した後、もう1度夢を見て、樽酒の“鬼ころし”を飲んでいた鬼女が現れた。
そして、『人を食わない鬼も珍しいねぇ』と、珍しがられた。
淀橋「作戦通り、『魔王軍』メンバーを10人くらい連れて来たよ」
リサ「ありがとう。イトーエンが来たら、ヨドバシとコジマ、そしてレイチェルも含めて、皆で取り囲むんだ」
レイチェル「わ、私もですか?私はマオーグンではないですが……」
リサ「協力してくれたら、また愛原先生に頼んで、焼き鳥屋に連れて行ってあげる!」
レイチェル「そういうことなら。でも、私は何も言えませんよ?」
リサ「それでいい。レイチェルは後ろから圧掛けてくれればそれでいいから」
淀橋「ついでに、マシンガンとかショットガン構えてたら?イスラムの武装テロ組織の犯行声明ビデオみたいにw」
小島「『ジハード!』『神は偉大なり!』『十字軍どもにアッラーの制裁を!』って?w」
レイチェル「ややもすると、私がその『十字軍』扱いされる側なんですけどねぇ……」
小島「あっ、ごめんなさい!」
リサ「それしても、あいつ、遅いな……」
リサは伊藤縁の机を見た。
しかし、彼が登校してくる様子は無かった。
そして、ついに朝の全体朝礼開始の予鈴が鳴ってしまう。
淀橋「あいつ、遅刻かな?」
リサ「くそっ!」
小島「しょうがない。一旦解散して、体育館に行こう。逆に私達が遅刻になっちゃうよ」
淀橋「作戦の立て直しが必要みたいだね」
リサ「うう……!」
[同日09時00分 天候:曇 同高校 2年5組]
体育館における全体朝礼が終わった。
3年生はもう卒業してしまったので、1年生と2年生だけの朝礼となった。
教室に戻るが、伊藤縁の姿は無かった。
坂上「伊藤!伊藤縁はいないのか?」
担任の坂上修一にも欠席の連絡が来ていないらしい。
淀橋「何だアイツ?サボりか?」
小島「リサに振られたことが、よっぽどショックだったんじゃない?」
リサ「わたしのせいなのか?」
小島「い、いや、そういうことじゃなくって……」
坂上「ん?愛原は何か知ってるのか?」
リサ「い、いえ!別に、何も……」
そこへ、副担任の倉田恵美がやってきた。
何を隠そうこの2人、この学園のOB・OGどころか、学年も同じだったのである。
クラスは違ったようだが……。
倉田「坂上先生、伊藤君の家に電話してみて、ようやく本人が出ました」
坂上「本人が?何だって?」
倉田「体の具合が悪いので、今日は休むとのことです」
坂上「何だ、そうだったのか」
男子生徒「イトーのヤツ、仮病っスか、先生?」
倉田「いや、電話に出た限り、とても具合が悪そうだったから、本当だと思うよ」
男子生徒「へー……」
淀橋「やっぱり、魔王様にフラれて大ショックだったんじゃない?」
リサ「いや、だから、わたしのせいじゃないって」
坂上「とにかく、授業を始めるぞ!教科書開いて!」
伊藤縁が病欠だと分かったことで、一応の解決扱いとなり、授業が始められた。
リサ「ん……?」
リサはふと夜中に目が覚めた。
別に変な夢を見たわけではないのだが、変な寝苦しさを憶えたのだ。
リサ「んん……」
リサはトイレに行こうと部屋を出た。
ドアを開けると、真っ暗な廊下がある。
リサはそこを照明を点けずに進んだ。
今のリサは鬼形態なので、暗闇でも見えるのである。
但し、瞳は赤くボウッと暗闇に浮かんでいることだろう。
さすがに、トイレの照明は点ける。
そこも照明を点けずに用を足していたら、以前鉢合わせになった愛原を驚かせてしまったので、さすがにトイレの照明は点けるようにしていた。
ただ、リサにとっては大変眩しく、目を細めなくてはならなかったが。
リサ「ふーん……」
トイレから出た後、階段の所にある窓を見ると、窓からはだいぶ明るい月明りが差し込んできた。
窓から外を見ると、それは満月だった。
リサ「……!!」
リサは何とも言えぬ高揚感を掻き立てられた。
と、そこへ突然、食人衝動が沸き起こる。
リサ「ウゥ……」
視線の先には、愛原の部屋のドアがある。
右手だけでパキッと骨を鳴らすと、爪を長く鋭く伸ばした。
リサ「……って、ダメダメダメ!」
ドアを蹴破ろうとした時、リサは正気に戻った。
リサ「ううっ!」
そして階段を駆け下り、キッチンに保管されている“鬼ころし”を開ける。
それを飲むと、酔いが回って来るものの、食人衝動は失せて行った。
リサ「そ、そういえば、樽1個分飲もうとしていた鬼がいたな……」
全く夢を見なかったわけではなく、僅かに夢は見ており、どこかの日本屋敷を歩いていた夢だ。
屋敷には人間はおらず、廊下や部屋には時折一張羅の男の鬼がいただけだったが、鬼化しているリサを見ても、何もしてこなかった。
そして、ある部屋に入ると、女の鬼がいて……。
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こんな感じで“鬼ころし”を飲んでいた。
リサが、『何をしているのか』問うと、リサと大して年恰好の変わらぬ鬼の女は、『酒を飲んでいるのだ』と答えた。
いやもちろん、見れば分かる。
どうして、そういう飲み方をしているのか聞いたまでだ。
『医者に酒は1日一杯までと言われたから』とのこと。
いや、違う、そうじゃないとリサは思った。
そこで目が覚めたのである。
鬼の常識は、人間の非常識なのだろうと改めて思った。
そして、人間と鬼の両方を行き来できるリサだからこそ、ツッコミが入れられたのだろうと。
リサ「もう寝よう」
リサは“鬼ころし”1パックを空けると、自分の部屋に戻った。
最後に夜風を浴びて、酔いを醒ますことにする。
リサ「ん?」
なるべく満月は見ないようにしながら窓を開けて、冷たい夜風に当たっていると、何だか変な予感がした。
風は西から東に向かって吹いているように見える。
その風に向かって、鬼の臭いがしたような気がしたのだ。
まさか、この近くに鬼がいるのだろうか。
愛原の血肉を狙っているのなら、全力で阻止しなくてはならない。
鬼同士の戦いなど不毛なことこの上ないが、大事な“獲物”を取られては元も子もないのである。
リサ「気のせいかなぁ……?」
リサは窓を閉めて鍵を掛け、カーテンを閉めた。
そして、再びベッドに入ったのだった。
[同日08時00分 天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校2年5組]
翌朝になり、リサは学校は登校した。
もちろん、昨夜に食人衝動が起きて、それを防ぐ為に“鬼ころし”を1パック飲んだことは愛原に報告した。
その理由が満月を見たからと話すと、愛原は一応納得してくれたが、高橋からは、『狼男かよw』とイジられた。
因みに2度寝した後、もう1度夢を見て、樽酒の“鬼ころし”を飲んでいた鬼女が現れた。
そして、『人を食わない鬼も珍しいねぇ』と、珍しがられた。
淀橋「作戦通り、『魔王軍』メンバーを10人くらい連れて来たよ」
リサ「ありがとう。イトーエンが来たら、ヨドバシとコジマ、そしてレイチェルも含めて、皆で取り囲むんだ」
レイチェル「わ、私もですか?私はマオーグンではないですが……」
リサ「協力してくれたら、また愛原先生に頼んで、焼き鳥屋に連れて行ってあげる!」
レイチェル「そういうことなら。でも、私は何も言えませんよ?」
リサ「それでいい。レイチェルは後ろから圧掛けてくれればそれでいいから」
淀橋「ついでに、マシンガンとかショットガン構えてたら?イスラムの武装テロ組織の犯行声明ビデオみたいにw」
小島「『ジハード!』『神は偉大なり!』『十字軍どもにアッラーの制裁を!』って?w」
レイチェル「ややもすると、私がその『十字軍』扱いされる側なんですけどねぇ……」
小島「あっ、ごめんなさい!」
リサ「それしても、あいつ、遅いな……」
リサは伊藤縁の机を見た。
しかし、彼が登校してくる様子は無かった。
そして、ついに朝の全体朝礼開始の予鈴が鳴ってしまう。
淀橋「あいつ、遅刻かな?」
リサ「くそっ!」
小島「しょうがない。一旦解散して、体育館に行こう。逆に私達が遅刻になっちゃうよ」
淀橋「作戦の立て直しが必要みたいだね」
リサ「うう……!」
[同日09時00分 天候:曇 同高校 2年5組]
体育館における全体朝礼が終わった。
3年生はもう卒業してしまったので、1年生と2年生だけの朝礼となった。
教室に戻るが、伊藤縁の姿は無かった。
坂上「伊藤!伊藤縁はいないのか?」
担任の坂上修一にも欠席の連絡が来ていないらしい。
淀橋「何だアイツ?サボりか?」
小島「リサに振られたことが、よっぽどショックだったんじゃない?」
リサ「わたしのせいなのか?」
小島「い、いや、そういうことじゃなくって……」
坂上「ん?愛原は何か知ってるのか?」
リサ「い、いえ!別に、何も……」
そこへ、副担任の倉田恵美がやってきた。
何を隠そうこの2人、この学園のOB・OGどころか、学年も同じだったのである。
クラスは違ったようだが……。
倉田「坂上先生、伊藤君の家に電話してみて、ようやく本人が出ました」
坂上「本人が?何だって?」
倉田「体の具合が悪いので、今日は休むとのことです」
坂上「何だ、そうだったのか」
男子生徒「イトーのヤツ、仮病っスか、先生?」
倉田「いや、電話に出た限り、とても具合が悪そうだったから、本当だと思うよ」
男子生徒「へー……」
淀橋「やっぱり、魔王様にフラれて大ショックだったんじゃない?」
リサ「いや、だから、わたしのせいじゃないって」
坂上「とにかく、授業を始めるぞ!教科書開いて!」
伊藤縁が病欠だと分かったことで、一応の解決扱いとなり、授業が始められた。