[3月26日13時00分 天候:晴 栃木県那須塩原市某所 ホテル天長園2階・205号室]
愛原「ん……?」
枕元に置いたスマホが着信音を鳴らす。
ついでに室内の時計を見ると、13時を指していた。
どうやら、3~4時間ほどは眠れたらしい。
警備員の仮眠時間だな。
画面を見ると、善場主任からだった。
愛原「はい、もしもし……」
私は少し寝ぼけた様子で、電話に出た。
私が寝ている部屋は洋室のツインであり、そこに1人で寝ていた。
和室にしなかったのは、洋室の方が遮光カーテンであり、昼間に仮眠を取るには障子よりもカーテンの方が良いと思ったからだ。
善場「愛原所長、善場です。お休みのところ、申し訳ございません」
愛原「いえ、とんでもないです。どうか、なさいましたか?」
善場「リサの意識が戻りました。経過は良好です。そのお知らせです」
善場主任の知らせに、私の眠気は一気にぶっ飛んだ。
愛原「本当ですか!?」
善場「これから詳しい検査をしたりするので、まだしばらくは入所していなくてはなりませんが、今のところ彼女が不調を訴えるようなことは無いそうですので、そこはご安心ください」
愛原「そうですか!それは良かった……。リサとは、いつ会えますか?」
善場「そうですね……。まだこれから色々検査しないことには何とも申し上げられませんが、退所の手続きの際には間違い無く来て頂くことにはなるかと。例え治療の後でも、リサの単独行動は認められておりませんので」
愛原「そうですか。……具体的には、いつでしょう?」
善場「予定としては、あと1週間ほどを考えております。何事も無ければ、次週末には帰宅できるかと思います。その時には、またお知らせしたいと思います」
愛原「分かりました」
善場「GPSによりますと、所長方はまだ天長園ですか」
愛原「すいません。何しろ徹夜の戦いでしたし、利恵……副支配人からの行為で、夕方まで休ませて頂くことになりました」
善場「帰りの足はあるのですか?駐車場の車両のほぼ全てが炎上していたようですが?」
愛原「はい。路線バスが通っていますので。その最終便に乗って那須塩原駅まで行き、そこから新幹線で帰京する予定です」
善場「そうですか。そういうことでしたら……。とにかく、お気をつけてお帰りください。御存知とは思いますが、栗原蓮華の遺体がどう捜索してもございません。報告ではロケットランチャーの直撃を受けたとのことですが、ネメシスでさえ、それを1度素手で弾き返せるほどです」
愛原「そ、そうですよね。気をつけます」
私はそう言って電話を切った。
どんなに強くても、蓮華は昼間は外に出られない。
それならば、明るいうちに移動した方が良いのでは思った。
利恵から教えてもらったバスの時刻、昼間のバスはあと30分後に出るはずだ。
それなら急いで準備すれば、間に合いそうなものである。
だが、しかし……。
利恵が言っていたように、例え蓮華は生きていたとしても、もうここにはいないかもしれない。
それならば、下手に移動するよりはここに留まっていた方が安全と言える。
ここなら、まだ上野利恵一派が守ってくれるという面もある。
愛原「ん……?」
私は空腹を感じた。
朝食は取ったのだが、あまり量は多くなかったせいか、昼過ぎには空腹になってしまうようだ。
私は室内の電話を取り、それでフロントに掛けてみた。
上野利恵「はい、フロントでございます」
愛原「ああ、利恵さん。愛原だけど……」
利恵「まあ、愛原先生!まだ、お眠りにならなくて宜しいのですか?」
愛原「ちょっと目が覚めちゃってね。それより、腹が減ったんだけど、1階のレストランはまだやってるかな?」
利恵「はい。1階のレストランは、午後2時までとなっております。ラストオーダーは1時30分ですね」
愛原「14時までの、ラストオーダー13時30分か。分かった。急いで下に下りるよ」
利恵「いえ。料飲の者には伝えておきますので、ゆっくりご準備なさって結構です」
愛原「分かった。ありがとう」
私は電話を切った。
そして、洗面所のあるバスルームに向かった。
この部屋は洋室ということもあり、ビジネスホテルのようなユニットバスが付いている。
私はそこで顔を洗った。
そして、浴衣から私服に着替えて部屋の外に出た。
よくよく考えてみれば、温泉ホテルなのだから浴衣姿のまま出ても良いのだが、ビジネスホテルのような洋室にいるせいか、つい着替えてしまった。
愛原「エレベーターは……工事中か」
蓮華一派の鬼達にエレベーターが壊された為、私達は2階の部屋を使わせてもらっている。
1階への出入りは非常階段だ。
少なくともエレベーターが直らない限りは、ホテルも営業ができないだろう。
とんだ損害である。
昼食に高橋達も誘うか迷ったが、寝ているかもしれないので、そっとしておくことにした。
[同日13時30分 天候:晴 同ホテル1階レストラン]
スタッフ「いらっしゃいませ」
愛原「ラストオーダーの時間になっちゃったみたいだけど、大丈夫かな?」
スタッフ「はい。副支配人から聞いております。どうぞ」
スタッフの女性は、人間なのか半鬼なのかは分からない。
蓮華一派のように、半鬼の癖に見た目に鬼という連中と違い、上野一派の半鬼は普段は人間と変わらぬ姿をしている。
スタッフ「何になさいますか?」
愛原「そしたらね、このカツカレーもらえる?あと、ドリンクでウーロン茶」
スタッフ「カツカレーとウーロン茶ですね。かしこまりました」
愛原「よろしく」
少しして、先にウーロン茶が運ばれてくる。
大きめのグラスにストローが差し込まれており、そのストローからウーロン茶を飲む。
上野利恵「愛原先生、お疲れ様でございます」
そこへ利恵がやってくる。
利恵「あまり、眠れませんでしたか?」
愛原「いや、電話さえなければ、もっと爆睡してたと思う」
利恵「電話?」
愛原「デイライトの善場主任からさ。何でも、リサの意識が戻ったらしいぞ」
利恵「リサ姉様の!それは良かったですね」
愛原「ああ。……それにしても、あのリサの化身の手達がいなくなったな?」
利恵「そういえば、そうですね」
愛原「リサの意識が戻ったから、消えたのかもな」
利恵「もしくは、お荷物の中に入っておられるのかもしれません」
愛原「あ、そうか。後で見てみよう」
利恵「この時間に御昼食ということは、お帰りのバスは夕方の最終便で……」
愛原「まあ、そうなるね。ところで、栗原蓮華の情報はあるか?」
利恵「いえ、あいにく、今のところは……。一応、部下に命じて、この辺りを捜索させたのですが、いかんせん昼間ということもありますので……」
愛原「そうか。どこかに隠れてるかもしれないな」
利恵「山の中ですから、隠れられる所はいくつかございます。しかし、私共はそういう場所も把握しておりますので、そういう所も隈なく捜索しました」
愛原「そうなの!?」
利恵「はい。ですが、見つかりませんでした。ですので、恐らくもうこの近辺にはいないと思われます」
愛原「……灯台下暗しで、この建物のどこかに隠れていたりとかは?」
利恵「ヤツの手下の鬼達が隠れていることを考慮し、ここも隈なく捜しましたが、見つかったのはその手下の鬼達だけでした」
愛原「そうなのか」
利恵「ですので、どうかご安心してお過ごしください。……こう申し上げては何ですが、こちらの方が、東京よりも安全かもしれませんよ?」
愛原「予定が無かったらそうしても良かったんだが、さすがに予定があるからな、しょうがないよ」
利恵「それは残念です」
そんなことを話しているうちに、カツカレーが運ばれてくる。
スタッフ「ごゆっくりどうぞ」
愛原「ありがとう」
利恵「先生はお時間は気にせず、ごゆっくりお過ごしください」
愛原「分かった、ありがとう」
利恵はそれだけ言うと、再びフロントの方へと戻って行った。
カツカレーは至って普通の味で、辛さも中辛といった感じだった。
食べ終わった後どうするか、考えながら食べたので、少し食べ終わるのは遅かった。
愛原「ん……?」
枕元に置いたスマホが着信音を鳴らす。
ついでに室内の時計を見ると、13時を指していた。
どうやら、3~4時間ほどは眠れたらしい。
警備員の仮眠時間だな。
画面を見ると、善場主任からだった。
愛原「はい、もしもし……」
私は少し寝ぼけた様子で、電話に出た。
私が寝ている部屋は洋室のツインであり、そこに1人で寝ていた。
和室にしなかったのは、洋室の方が遮光カーテンであり、昼間に仮眠を取るには障子よりもカーテンの方が良いと思ったからだ。
善場「愛原所長、善場です。お休みのところ、申し訳ございません」
愛原「いえ、とんでもないです。どうか、なさいましたか?」
善場「リサの意識が戻りました。経過は良好です。そのお知らせです」
善場主任の知らせに、私の眠気は一気にぶっ飛んだ。
愛原「本当ですか!?」
善場「これから詳しい検査をしたりするので、まだしばらくは入所していなくてはなりませんが、今のところ彼女が不調を訴えるようなことは無いそうですので、そこはご安心ください」
愛原「そうですか!それは良かった……。リサとは、いつ会えますか?」
善場「そうですね……。まだこれから色々検査しないことには何とも申し上げられませんが、退所の手続きの際には間違い無く来て頂くことにはなるかと。例え治療の後でも、リサの単独行動は認められておりませんので」
愛原「そうですか。……具体的には、いつでしょう?」
善場「予定としては、あと1週間ほどを考えております。何事も無ければ、次週末には帰宅できるかと思います。その時には、またお知らせしたいと思います」
愛原「分かりました」
善場「GPSによりますと、所長方はまだ天長園ですか」
愛原「すいません。何しろ徹夜の戦いでしたし、利恵……副支配人からの行為で、夕方まで休ませて頂くことになりました」
善場「帰りの足はあるのですか?駐車場の車両のほぼ全てが炎上していたようですが?」
愛原「はい。路線バスが通っていますので。その最終便に乗って那須塩原駅まで行き、そこから新幹線で帰京する予定です」
善場「そうですか。そういうことでしたら……。とにかく、お気をつけてお帰りください。御存知とは思いますが、栗原蓮華の遺体がどう捜索してもございません。報告ではロケットランチャーの直撃を受けたとのことですが、ネメシスでさえ、それを1度素手で弾き返せるほどです」
愛原「そ、そうですよね。気をつけます」
私はそう言って電話を切った。
どんなに強くても、蓮華は昼間は外に出られない。
それならば、明るいうちに移動した方が良いのでは思った。
利恵から教えてもらったバスの時刻、昼間のバスはあと30分後に出るはずだ。
それなら急いで準備すれば、間に合いそうなものである。
だが、しかし……。
利恵が言っていたように、例え蓮華は生きていたとしても、もうここにはいないかもしれない。
それならば、下手に移動するよりはここに留まっていた方が安全と言える。
ここなら、まだ上野利恵一派が守ってくれるという面もある。
愛原「ん……?」
私は空腹を感じた。
朝食は取ったのだが、あまり量は多くなかったせいか、昼過ぎには空腹になってしまうようだ。
私は室内の電話を取り、それでフロントに掛けてみた。
上野利恵「はい、フロントでございます」
愛原「ああ、利恵さん。愛原だけど……」
利恵「まあ、愛原先生!まだ、お眠りにならなくて宜しいのですか?」
愛原「ちょっと目が覚めちゃってね。それより、腹が減ったんだけど、1階のレストランはまだやってるかな?」
利恵「はい。1階のレストランは、午後2時までとなっております。ラストオーダーは1時30分ですね」
愛原「14時までの、ラストオーダー13時30分か。分かった。急いで下に下りるよ」
利恵「いえ。料飲の者には伝えておきますので、ゆっくりご準備なさって結構です」
愛原「分かった。ありがとう」
私は電話を切った。
そして、洗面所のあるバスルームに向かった。
この部屋は洋室ということもあり、ビジネスホテルのようなユニットバスが付いている。
私はそこで顔を洗った。
そして、浴衣から私服に着替えて部屋の外に出た。
よくよく考えてみれば、温泉ホテルなのだから浴衣姿のまま出ても良いのだが、ビジネスホテルのような洋室にいるせいか、つい着替えてしまった。
愛原「エレベーターは……工事中か」
蓮華一派の鬼達にエレベーターが壊された為、私達は2階の部屋を使わせてもらっている。
1階への出入りは非常階段だ。
少なくともエレベーターが直らない限りは、ホテルも営業ができないだろう。
とんだ損害である。
昼食に高橋達も誘うか迷ったが、寝ているかもしれないので、そっとしておくことにした。
[同日13時30分 天候:晴 同ホテル1階レストラン]
スタッフ「いらっしゃいませ」
愛原「ラストオーダーの時間になっちゃったみたいだけど、大丈夫かな?」
スタッフ「はい。副支配人から聞いております。どうぞ」
スタッフの女性は、人間なのか半鬼なのかは分からない。
蓮華一派のように、半鬼の癖に見た目に鬼という連中と違い、上野一派の半鬼は普段は人間と変わらぬ姿をしている。
スタッフ「何になさいますか?」
愛原「そしたらね、このカツカレーもらえる?あと、ドリンクでウーロン茶」
スタッフ「カツカレーとウーロン茶ですね。かしこまりました」
愛原「よろしく」
少しして、先にウーロン茶が運ばれてくる。
大きめのグラスにストローが差し込まれており、そのストローからウーロン茶を飲む。
上野利恵「愛原先生、お疲れ様でございます」
そこへ利恵がやってくる。
利恵「あまり、眠れませんでしたか?」
愛原「いや、電話さえなければ、もっと爆睡してたと思う」
利恵「電話?」
愛原「デイライトの善場主任からさ。何でも、リサの意識が戻ったらしいぞ」
利恵「リサ姉様の!それは良かったですね」
愛原「ああ。……それにしても、あのリサの化身の手達がいなくなったな?」
利恵「そういえば、そうですね」
愛原「リサの意識が戻ったから、消えたのかもな」
利恵「もしくは、お荷物の中に入っておられるのかもしれません」
愛原「あ、そうか。後で見てみよう」
利恵「この時間に御昼食ということは、お帰りのバスは夕方の最終便で……」
愛原「まあ、そうなるね。ところで、栗原蓮華の情報はあるか?」
利恵「いえ、あいにく、今のところは……。一応、部下に命じて、この辺りを捜索させたのですが、いかんせん昼間ということもありますので……」
愛原「そうか。どこかに隠れてるかもしれないな」
利恵「山の中ですから、隠れられる所はいくつかございます。しかし、私共はそういう場所も把握しておりますので、そういう所も隈なく捜索しました」
愛原「そうなの!?」
利恵「はい。ですが、見つかりませんでした。ですので、恐らくもうこの近辺にはいないと思われます」
愛原「……灯台下暗しで、この建物のどこかに隠れていたりとかは?」
利恵「ヤツの手下の鬼達が隠れていることを考慮し、ここも隈なく捜しましたが、見つかったのはその手下の鬼達だけでした」
愛原「そうなのか」
利恵「ですので、どうかご安心してお過ごしください。……こう申し上げては何ですが、こちらの方が、東京よりも安全かもしれませんよ?」
愛原「予定が無かったらそうしても良かったんだが、さすがに予定があるからな、しょうがないよ」
利恵「それは残念です」
そんなことを話しているうちに、カツカレーが運ばれてくる。
スタッフ「ごゆっくりどうぞ」
愛原「ありがとう」
利恵「先生はお時間は気にせず、ごゆっくりお過ごしください」
愛原「分かった、ありがとう」
利恵はそれだけ言うと、再びフロントの方へと戻って行った。
カツカレーは至って普通の味で、辛さも中辛といった感じだった。
食べ終わった後どうするか、考えながら食べたので、少し食べ終わるのは遅かった。