報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「太平山美樹との再会」

2025-03-01 14:41:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月15日12時30分 天候:晴 東京都大田区羽田空港 東京国際空港第2ターミナル・到着口]

 羽田空港第2ターミナルの到着口で、太平山美樹を待つ。

 リサ「ミキからは人食い鬼の臭いがする」
 愛原「そうかなぁ?」
 リサ「リエは臭いでしょう?」
 愛原「いや?そんなことは無いが……」

 この時は、あまり気にも留めていなかった。
 身近に人食い鬼を模した生物兵器がいるから、麻痺していたのかもしれない。

 リサ「ミキも臭うんだよ。気をつけて」
 愛原「まあ……鬼の末裔だってんなら、そうかもなぁ……」

 そして、ピンク色のキャリーケースを引いた太平山美樹が出て来た。
 学校では女子バレー部に所属しているとのことで、背は高い。
 人間に化けると黒髪だが、光に当たると赤く反射するという。

 太平山美樹「愛原先生~!久しぶりだべしゃ~!」

 満面の笑みを浮かべ、しかし東北訛りを響かせて美樹が近づいてきた。
 リサも人間形態だが、やはり牙までは隠せていない。
 牙程度なら、八重歯とか、生まれつきという言い訳はできる。

 愛原「ああ。長旅、お疲れさん」
 美樹「リサも久しぶりだべね~!」
 リサ「う、うん。そうだな……。いや、抱き着くな!」
 愛原「ちょうどお昼時だ。長旅で腹が減ったたろう。お昼を食べてから、予備校に向かおう」
 美樹「ヘェ!……いンや、はい!」
 リサ「ん?」
 愛原「じゃ、行こうや」

[同日13時00分 天候:晴 同ターミナル4階・エアポートグリル&バール]

 同じターミナル内にあるレストラン街に向かう。
 そこの一角に、目的の店はあった。

 愛原「リサは最低1食、肉を体に入れないと暴走するんでな」
 美樹「『転化組』は大変だっちゃね」
 リサ「『転化組』?」
 美樹「リサは元・人間なんだべ?あたしらみてェな、『生え抜き』の鬼たぁ違う。ンだからよ」
 リサ「『転化組』って言うんだぁ……」
 愛原「伝説でも、人間が鬼と化した話とかあるからね。その事だろう。だが美樹、リサはそれともまた違うんだ」
 美樹「そうなんスか」
 愛原「元・人間ということに、変わりは無いんだが……」

 美樹は言われた通り、秋北学院の制服を着ていた。
 下はエンジ色のプリーツスカートだが、上は白を基調としたセーラー服風のデザインになっている。
 というのは、本当のセーラー服と違って、前留めのボタンが3つ付いている。
 夏だからしないだけか、スカーフやリボンを着けていない。
 セーラー服とブレザーの折衷デザイン、『セーラーブレザー』というヤツだ。
 案外、地方の方が面白いデザインの制服を導入していることが多い。

 美樹「東京は『転化組』が多いと聞きます」
 リサ「そんなにいる!?」
 美樹「『生え抜き』はまずいねぇべ?」
 リサ「いないねぇ……」
 美樹「『転化組』でも、東京に鬼がいるっつーことだけでも、珍しいことだ。うちさ来てければ、大歓迎だべ」
 リサ「いや……遠慮しとく。そっちの男の鬼、女に見境無さそう」

 リサはたまに、男の鬼達から嬲り者にされる夢を見るのを思い出した。

 美樹「ま、まあ……リサも強いから大丈夫だべ」
 愛原「それに、ややもすると、本当にお邪魔させてもらうことになるかもしれない」
 リサ「先生?」
 美樹「愛原先生にも、1度は来てけれとは思ってました」
 愛原「『日本アンブレラに“鬼の血”を提供した者』についての情報が欲しい」
 美樹「うちの村には来たけど、断って追い返したって話しか聞いてねっスよ?」
 愛原「キミの村には、『太平山』の氏族しかいないのか?他の氏族はどうだ?」
 美樹「あー……。後で聞いてみます」
 リサ「心当たりあるのかよ」
 愛原「提供しそうな氏族に、心当たりがあるのかい?」
 美樹「あると言えばある、無ェと言えば無ェって感じです。うちのじっちゃん、ばっちゃんに聞けば、分かるかも……」
 リサ「追い返したって話は誰に聞いたの?」
 美樹「うちの父ちゃんと母ちゃん」
 愛原「実はその事について、国の役人の方達も聴きたいらしいんだ。なるべく早く問い合わせてくれると助かる」
 リサ「そっちの村、電波届くの?」
 美樹「今時、電話くらいあるっちゃ。それに、普段は人間に化けて生活してるんだ」
 愛原「だろうなぁ……」
 リサ「後で先生に、ミキの鬼形態見せてやんなよ」
 美樹「それはもう。ずっとこの姿でいるのは疲れるっぺしね」
 リサ「それは同感」
 愛原「家に着いてからな?」

[同日14時10分 天候:晴 東京国際空港第2ターミナル・リムジンバス乗り場→東京空港交通新宿線26便車内]

 昼食を終えた後は、リムジンバスのチケット売り場に移動する。
 有人のチケットカウンターでも買えるが、券売機でも購入できる。

 愛原「新宿ならバスだと乗り換え無しで行けるな。美樹も荷物が大きいし、その方が楽だろ」
 美樹「ありがとうございます。……あ、自分のバス代は自分で出しますんで」
 愛原「いいのか?」
 美樹「領収証出ますか?」
 愛原「ああ。出せるよ」
 リサ「何で領収証?」
 美樹「鬼は疑り深いんだ。あたしがちゃんと予定通りに行ったか、確認したいんだと」
 リサ「……まあ、気持ちは分かる。鬼はすぐをウソを付くからね」
 美樹「いや、あたしは正直なつもりだけど?」
 リサ「自分で言ってる時点で、ウソが少し出てるんだよ」
 美樹「同じ鬼は騙せねェね」
 リサ「当たり前だっつーの」
 愛原「じゃあ、これが美樹の乗車券と領収証」
 美樹「ありがとうございます」
 リサ「私達の分も出してるんだー?」
 愛原「交通費だし、経費で落とせないかなぁ……と」
 リサ「はは……さすがは先生」

 乗車券を手にし、バスの乗り場に向かう。
 羽田空港第2ターミナルから新宿方面行きは、5番乗り場だ。
 一口に新宿方面と言っても、細かい行き先がそれぞれ別れているので、確認が必要。
 私達の下車先はバスタ新宿だが、便によっては周辺のホテルにしか行かず、バスタ新宿を経由しない便もある。

 リサ「バスタ新宿の近くなの?」
 愛原「そう」

 ターミナルには係員がいるので、荷物室に預ける荷物は係員に託せば良い。

 愛原「2泊3日なのに、結構大きな荷物だな?」
 美樹「女の子は着替えが多いんです」
 愛原「……それもそうだな」

 それ、前にリサも言ってたな。

 係員A「お待たせ致しました!バスタ新宿行きの到着です!」

 白とオレンジ色が目立つリムジンバスがやってきた。
 既に先客が何人か乗っているのは、第3ターミナル始発だからである。

 愛原「リサは美樹と一緒に乗ってくれ」
 リサ「えー……」

 リサは不満そうだったが……。

 愛原「俺の命令は!?」
 リサ「絶対!」
 愛原「分かったら宜しく!」
 リサ「はーい……」
 美樹「今の何だべ!?」
 リサ「ミキも愛原先生の命令は絶対だからね!?」
 美樹「お、お~……。これから世話になるし、それはもう当たり前だべしゃ……」
 愛原「すいまーん、バスタ新宿までー」
 係員B「ありがとうございます。どうぞ」

 私は係員にチケットを渡して、さっさと乗り込んだ。

 リサ「あっ、待って先生!」

 リサも慌ててついてきた。

 美樹「大館能代空港のリムジンバスより大きい……」

 私は空いている席の窓側に座り、リサ達はその後ろの席に座った。
 この便は新宿駅西口しか経由せず、ホテル関係には行かない便だが、それでもなかなかの賑わいのようだった。
 恐らく、次の第1ターミナルでほぼほぼ満席となるだろう。

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