[4月12日13時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
善場「御足労頂き、ありがとうございます。昼食後の眠い時間帯ではありますが、宜しくお付き合い願います」
愛原「いえ、こちらこそ」
私と高橋は、デイライトの事務所に呼ばれていた。
善場「報告書は拝見しました。早速近日中に、調査員を現地に派遣して確認したいと思います」
愛原「お役に立てれば、何よりです。リサが幽霊と付き合ってたことが、功を奏しましたね」
善場「幽霊といっても、特異菌の胞子が見せていた幻覚ですね」
東京中央学園に長らく蔓延っていた怪奇現象の数々は、登場人物が人間のみの話を除いて、全てが特異菌による幻覚のせいだと分かった。
その菌床は旧校舎(現・教育資料館)にあると分かり、現在は滅菌がされている。
リサがTウィルスから特異菌に、Gウィルスのエサを変えることとなったのもそのせいだ。
善場「できれば、リサの白い仮面をお借りしたいのですが、宜しいでしょうか?」
愛原「私は構いませんが、あれはリサの物なので、リサに聞いてみませんと」
恐らく、実際にその白い仮面を斉藤早苗に被せてみて、本人かどうかを確認するのだろう。
現時点では、まだ『同姓同名のそっくりさん』程度のレベルでしかないからだ。
私はスマホを取り出すと、リサにLINEを送ってみた。
幸いまだ昼休み中のせいか、すぐに返信が返って来た。
私の頼みだから2つ返事でOKしてくれる物だと思っていたが、意外にも、『何に使うの?』という質問が返って来た。
そこで私が正直に、デイライトが使いたいと返信したところ、『他の女に着けさせるんだったら貸さない。あれはわたしの物』と、拒否してきた!
高橋「ほお……!先生の御命令を拒否するとは、いい度胸だなぁ!」
高橋は、対BOW用に所持を許可されているデザートイーグルを取り出した。
もっとも、リサはこれを頭に被弾しても死ぬことはない。
体内に宿したGウィルスが、即座に回復させるからだ。
Gウィルスのワクチンはあるのだが、あくまでも胚を植え付けられ、完全に体を乗っ取られる状態になるまでの措置だ。
今、Gウィルスを完全に除去できる技術は無い。
日本アンブレラは、アメリカの本社が危険過ぎるとして放棄した研究を独自に引き継いで、Gウィルスの研究を続けている。
その責任者に白井伝三郎が就いたのが運の尽きだった。
愛原「リサには効かないよ」
リサに対する最大の脅しは、『研究所送りにする』『私に嫌われる』である。
善場「それでは天長会の本部に買い付けに行きましょう」
高橋「ありゃっ!?」
あっさりとした善場係長の反応に、高橋がズッコケた。
高橋「いいのかよ!?リサのヤツ、命令拒否したんだぜ!?」
善場「別に命令ではなく、ただの『協力依頼』ですから。たまたま今回は、強力を得られなかったまでです」
愛原「確か、ホテル天長園の売店に、お土産用の仮面が売られていたみたいです」
高橋「信者以外の誰が買うんだよって感じのヤツですね」
愛原「そう。まあ、元々ホテル天長園は、天長会の信者の研修道場として建てられたのが始まりだったからな。それが一般にも開放されただけで……。係長、何でしたら、私達が買い付けに行ってきましょうか?」
善場「今からですか?それは助かりますが……」
愛原「リサが命令拒否したお詫びでもあります」
善場「ありがとうございます。費用に関しては、全てこちらで持ちますので、領収証を取っておいてください」
愛原「分かりました。こうしちゃいられない。まずは、電話してみよう」
私は自分のスマホを取り出すと、ホテル天長園に電話した。
上野利恵「お電話ありがとうございます。ホテル天長園でございます」
愛原「あっ、利恵か!俺だ!愛原だ!」
利恵「愛原先生……運命のお電話ありがとうございます……」
愛原「誰が運命だw リサに殺されるぞ!」
利恵「失礼致しました。先生のお電話が、あまりにも嬉しくて……」
電話の向こうから、妖艶な息遣いが聞こえて来る。
まるで、これから『致す』かのようだ。
愛原「ちょっと聞きたいことがあるんだが、そっちに天長会信者向けの物販コーナーがあるだろ?」
利恵「はい、ございますが……」
愛原「そこに『最も危険な12人の巫女達』が着ける儀式用の仮面があるだろ?」
利恵「あくまでも、お土産用のレプリカですよ?もしもリサお姉さま用にあつらえるのでしたら、会の方へ正式に……」
愛原「いや、ただの確認用だから、レプリカで十分だ」
そう言いつつ、本当にそれで良いのか、私は善場係長の方を見た。
係長は首を縦に振った。
愛原「それを1つ、これから買いに行く!用意しててくれ!」
利恵「今からですか?ご宿泊は……」
愛原「いや、買ったらすぐに帰るから宿泊の予約はいい!バレたらリサに殺される!」
高橋「電撃か火あぶりか、もしくは引っ掻きや噛み付きもあるんで……フルコンボっスね」
利恵「なるほど。リサお姉さまを怒らせたら怖いですものね。かしこまりました。それでは、仮面をご用意してお待ちしております」
愛原「悪いな!それじゃ、今から行くから宜しく!」
私は電話を切った。
愛原「よし、行こう!」
高橋「はい!」
愛原「係長、早速行って参ります!」
善場「宜しくお願いします。その間、こちらは調査員を選定しておきますので」
[同日13時39分 天候:晴 同地区内 JR新橋駅→山手線1364G電車・最後尾車内]
私達は準備を整えると、新橋駅に向かった。
新橋駅には“みどりの窓口”もあるが、指定席券売機もある。
そこで、東京駅から那須塩原駅までの新幹線のキップを買った。
このキップで、新橋駅から在来線電車に乗ることも可能。
乗車券は『東京』ではなく、『東京山手線内』になっているからだ。
これは書いて字の如く、東京の山手線の駅とその内側のJR駅ならどこでも乗り降りして良いという意味だ。
当然、山手線が通っている新橋駅も含まれる。
それならばと、東京駅までは山手線で向かうことにした。
〔まもなく6番線を、電車が通過致します。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。京浜東北線の快速電車は、当駅には停車致しません。山手線の電車を、ご利用ください〕
土休日問わず、昼間は京浜東北線は全電車快速となり、新橋駅には止まらないからである。
但し、東海道線や横須賀線は快速であっても停車する。
〔まもなく5番線に、東京、上野方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
山手線は各駅に止まる為、こちらに乗車する。
〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます。次は、有楽町に、停車します〕
新幹線への乗り換えを考慮して、ここでは後ろの車両に乗り込む。
平日とはいえラッシュ時間以外の昼間ということもあり、電車は空いていた。
グリーンとグレーの柔らかい座席に腰かける。
すぐに発車メロディがホームに鳴り響く。
〔5番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
ホームドアと車両のドアが閉まり、電車が動き出す。
尚、車掌は若い女性である。
私がそちらの方を気にしていることに高橋は気づいたか、ツッコミを入れてきた。
高橋「ヤンデレリサにバレたら、東京に帰れなくなりますよ?」
愛原「おっと……」
〔次は有楽町、有楽町。お出口は、左側です。地下鉄有楽町線と、地下鉄日比谷線はお乗り換えです〕
高橋「先生、夕食はどうします?」
愛原「あー、そうか……。夜までに帰るつもりだが、夕食には間に合いそうにないな」
高橋「そうですね。パールに、『夕食は要らん』とLINEしておきますか」
愛原「か、もしくは『遅くなる』という風にしておくか」
高橋「腹減りません?」
愛原「新幹線の中で、何か摘まんでもいいだろう」
高橋「買った仮面はどうするんスか?」
愛原「明日の朝一、事務所に取りに来るそうだから、それまで預かってて欲しいそうだ。今回の費用、領収書なんかもその時に受け取るそうだ」
高橋「そういうことっスか。じゃあ、パールには『夕飯は遅めで』ってLINEしときますね」
愛原「頼むよ」
善場「御足労頂き、ありがとうございます。昼食後の眠い時間帯ではありますが、宜しくお付き合い願います」
愛原「いえ、こちらこそ」
私と高橋は、デイライトの事務所に呼ばれていた。
善場「報告書は拝見しました。早速近日中に、調査員を現地に派遣して確認したいと思います」
愛原「お役に立てれば、何よりです。リサが幽霊と付き合ってたことが、功を奏しましたね」
善場「幽霊といっても、特異菌の胞子が見せていた幻覚ですね」
東京中央学園に長らく蔓延っていた怪奇現象の数々は、登場人物が人間のみの話を除いて、全てが特異菌による幻覚のせいだと分かった。
その菌床は旧校舎(現・教育資料館)にあると分かり、現在は滅菌がされている。
リサがTウィルスから特異菌に、Gウィルスのエサを変えることとなったのもそのせいだ。
善場「できれば、リサの白い仮面をお借りしたいのですが、宜しいでしょうか?」
愛原「私は構いませんが、あれはリサの物なので、リサに聞いてみませんと」
恐らく、実際にその白い仮面を斉藤早苗に被せてみて、本人かどうかを確認するのだろう。
現時点では、まだ『同姓同名のそっくりさん』程度のレベルでしかないからだ。
私はスマホを取り出すと、リサにLINEを送ってみた。
幸いまだ昼休み中のせいか、すぐに返信が返って来た。
私の頼みだから2つ返事でOKしてくれる物だと思っていたが、意外にも、『何に使うの?』という質問が返って来た。
そこで私が正直に、デイライトが使いたいと返信したところ、『他の女に着けさせるんだったら貸さない。あれはわたしの物』と、拒否してきた!
高橋「ほお……!先生の御命令を拒否するとは、いい度胸だなぁ!」
高橋は、対BOW用に所持を許可されているデザートイーグルを取り出した。
もっとも、リサはこれを頭に被弾しても死ぬことはない。
体内に宿したGウィルスが、即座に回復させるからだ。
Gウィルスのワクチンはあるのだが、あくまでも胚を植え付けられ、完全に体を乗っ取られる状態になるまでの措置だ。
今、Gウィルスを完全に除去できる技術は無い。
日本アンブレラは、アメリカの本社が危険過ぎるとして放棄した研究を独自に引き継いで、Gウィルスの研究を続けている。
その責任者に白井伝三郎が就いたのが運の尽きだった。
愛原「リサには効かないよ」
リサに対する最大の脅しは、『研究所送りにする』『私に嫌われる』である。
善場「それでは天長会の本部に買い付けに行きましょう」
高橋「ありゃっ!?」
あっさりとした善場係長の反応に、高橋がズッコケた。
高橋「いいのかよ!?リサのヤツ、命令拒否したんだぜ!?」
善場「別に命令ではなく、ただの『協力依頼』ですから。たまたま今回は、強力を得られなかったまでです」
愛原「確か、ホテル天長園の売店に、お土産用の仮面が売られていたみたいです」
高橋「信者以外の誰が買うんだよって感じのヤツですね」
愛原「そう。まあ、元々ホテル天長園は、天長会の信者の研修道場として建てられたのが始まりだったからな。それが一般にも開放されただけで……。係長、何でしたら、私達が買い付けに行ってきましょうか?」
善場「今からですか?それは助かりますが……」
愛原「リサが命令拒否したお詫びでもあります」
善場「ありがとうございます。費用に関しては、全てこちらで持ちますので、領収証を取っておいてください」
愛原「分かりました。こうしちゃいられない。まずは、電話してみよう」
私は自分のスマホを取り出すと、ホテル天長園に電話した。
上野利恵「お電話ありがとうございます。ホテル天長園でございます」
愛原「あっ、利恵か!俺だ!愛原だ!」
利恵「愛原先生……運命のお電話ありがとうございます……」
愛原「誰が運命だw リサに殺されるぞ!」
利恵「失礼致しました。先生のお電話が、あまりにも嬉しくて……」
電話の向こうから、妖艶な息遣いが聞こえて来る。
まるで、これから『致す』かのようだ。
愛原「ちょっと聞きたいことがあるんだが、そっちに天長会信者向けの物販コーナーがあるだろ?」
利恵「はい、ございますが……」
愛原「そこに『最も危険な12人の巫女達』が着ける儀式用の仮面があるだろ?」
利恵「あくまでも、お土産用のレプリカですよ?もしもリサお姉さま用にあつらえるのでしたら、会の方へ正式に……」
愛原「いや、ただの確認用だから、レプリカで十分だ」
そう言いつつ、本当にそれで良いのか、私は善場係長の方を見た。
係長は首を縦に振った。
愛原「それを1つ、これから買いに行く!用意しててくれ!」
利恵「今からですか?ご宿泊は……」
愛原「いや、買ったらすぐに帰るから宿泊の予約はいい!バレたらリサに殺される!」
高橋「電撃か火あぶりか、もしくは引っ掻きや噛み付きもあるんで……フルコンボっスね」
利恵「なるほど。リサお姉さまを怒らせたら怖いですものね。かしこまりました。それでは、仮面をご用意してお待ちしております」
愛原「悪いな!それじゃ、今から行くから宜しく!」
私は電話を切った。
愛原「よし、行こう!」
高橋「はい!」
愛原「係長、早速行って参ります!」
善場「宜しくお願いします。その間、こちらは調査員を選定しておきますので」
[同日13時39分 天候:晴 同地区内 JR新橋駅→山手線1364G電車・最後尾車内]
私達は準備を整えると、新橋駅に向かった。
新橋駅には“みどりの窓口”もあるが、指定席券売機もある。
そこで、東京駅から那須塩原駅までの新幹線のキップを買った。
このキップで、新橋駅から在来線電車に乗ることも可能。
乗車券は『東京』ではなく、『東京山手線内』になっているからだ。
これは書いて字の如く、東京の山手線の駅とその内側のJR駅ならどこでも乗り降りして良いという意味だ。
当然、山手線が通っている新橋駅も含まれる。
それならばと、東京駅までは山手線で向かうことにした。
〔まもなく6番線を、電車が通過致します。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。京浜東北線の快速電車は、当駅には停車致しません。山手線の電車を、ご利用ください〕
土休日問わず、昼間は京浜東北線は全電車快速となり、新橋駅には止まらないからである。
但し、東海道線や横須賀線は快速であっても停車する。
〔まもなく5番線に、東京、上野方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
山手線は各駅に止まる為、こちらに乗車する。
〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます。次は、有楽町に、停車します〕
新幹線への乗り換えを考慮して、ここでは後ろの車両に乗り込む。
平日とはいえラッシュ時間以外の昼間ということもあり、電車は空いていた。
グリーンとグレーの柔らかい座席に腰かける。
すぐに発車メロディがホームに鳴り響く。
〔5番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
ホームドアと車両のドアが閉まり、電車が動き出す。
尚、車掌は若い女性である。
私がそちらの方を気にしていることに高橋は気づいたか、ツッコミを入れてきた。
高橋「ヤンデレリサにバレたら、東京に帰れなくなりますよ?」
愛原「おっと……」
〔次は有楽町、有楽町。お出口は、左側です。地下鉄有楽町線と、地下鉄日比谷線はお乗り換えです〕
高橋「先生、夕食はどうします?」
愛原「あー、そうか……。夜までに帰るつもりだが、夕食には間に合いそうにないな」
高橋「そうですね。パールに、『夕食は要らん』とLINEしておきますか」
愛原「か、もしくは『遅くなる』という風にしておくか」
高橋「腹減りません?」
愛原「新幹線の中で、何か摘まんでもいいだろう」
高橋「買った仮面はどうするんスか?」
愛原「明日の朝一、事務所に取りに来るそうだから、それまで預かってて欲しいそうだ。今回の費用、領収書なんかもその時に受け取るそうだ」
高橋「そういうことっスか。じゃあ、パールには『夕飯は遅めで』ってLINEしときますね」
愛原「頼むよ」
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