報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「八王子で過ごす」

2024-10-03 21:31:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月13日21時00分 天候:晴 東京都八王子市旭町 京王プラザホテル八王子・愛原の部屋]

 部屋に戻ると、私は先に風呂に入ることにした。
 もちろん、買って来た飲み物を先に室内の冷蔵庫に入れておくことは忘れない。
 シティホテルの部屋ではあるが、バスルームの構造はトイレと洗面所、バスタブやシャワーが1つの空間にあるタイプである。
 もちろん安いビジネスホテルのそれよりは広いが、洗い場付きの広いバスルームは、もっと高い部屋でないと無いらしい。
 バスタブは広い物であったが。
 風呂から上がり、テレビを点けてニュースを見る。
 この時間にニュースをやっているのは、NHKくらいか?
 それでも、高橋のことについては、何も報道していなかった。
 報道規制でも敷いているのだろうか?
 そんな時、パールから電話が掛かって来た。

 愛原「おー、パール!お疲れ様!大丈夫だった!?」
 パール「マサは……逮捕されたんですね」
 愛原「ああ……。まあ、俺の頭をいじくった罪でな……。お前も色々疑われて大変だったな?」
 パール「いえ……。私は前科者ですから。疑われて当然です」
 愛原「こうして電話を掛けて来たってことは、無事に釈放されたってことだな?」
 パール「ええ。もっとも、警察には居場所はハッキリさせておくようにと言われましたけど」
 愛原「そうか……」

 未だに重要参考人としての立場は消えていないというわけだ。

 愛原「今、家にいるのか?」
 パール「はい」
 愛原「スマンが、俺は明後日、頭の手術がある。大掛かりな物になるだろうから、しばらくは帰れない。家の留守の方、よろしく頼むな?」
 パール「はい」
 愛原「リサは月曜日から学校だ。俺の護衛の為に明日までは一緒のホテルにいるけど、月曜日、学校が終わったら帰って来ると思う。仲良くしててくれな?」
 パール「リサさんと私は、あまり接点がありませんから……」
 愛原「そうか……」
 パール「先生。マサのことは、私も詳しくは知りません。ただ、あいつは手先が器用なヤツです」
 愛原「それは知ってる。車やバイクの改造も、それで上手くやってたんだろう。霧生市の時だって、あいつ、改造パーツを見つけては、銃を改造していたからな」
 パール「……そのマサが言っていたことなんですが……」
 愛原「何だ?」
 パール「その霧生市には……『魔王が棲んでいる』と言っていました」
 愛原「はあ?どういう意味だ?」
 パール「分かりません。あいつ、冗談っぽく言ってましたから……」

 リサのことだろうか?
 リサは学校の友達からは、『魔王』と呼ばれてるし……。
 でも、その『魔王』は今、ここにいる。
 また、生き残っていた日本版リサ・トレヴァー達はとっくの昔に掃討した。
 最後まで生き残っていた『1番』も、今はこの世にいない。

 愛原「警察には話したのか?」
 パール「話しましたよ。でも、『ふざけるな!こっち真剣に聞いてるんだ!』と、机をバンバン叩いてキレられましたよ」
 愛原「そうか……」

 霧生市は未だに住民は戻っておらず、廃墟の町のままだと聞いている。
 日本版リサ・トレヴァー達は掃討し、さすがにもう生き残っているゾンビとかもいないだろうに、どうして政府は『安全宣言』を出さないのだろうと思っている。

 愛原「まあ、とにかく、明後日にはリサが帰るし、俺も1週間くらいで連絡ができるだろうから、しばらく待っていてくれ」
 パール「かしこまりました」

 私は電話を切った。
 その時、今度は部屋の電話が鳴った。

 愛原「うん?」

 電話を取る。

 愛原「はい、もしもし?」
 リサ「あ、先生?そっちの部屋に行っていい?」
 愛原「んん?何か用か?」
 リサ「うーん……色々話しがしたい」
 愛原「まあ、いいや。こっち来な。……ああ、ダクトを通って来るなよ?」
 リサ「分かってるよ」

 電話を切ると、すぐに部屋のインターホンが鳴った。

 愛原「はいはい」

 私はドアスコープから外を覗いた。
 そこには口角を上げて、こちらを真っ直ぐに見つけるリサの姿があった。

 愛原「あいよ」

 私がドアを開けると、リサがサッと入って来た。
 そして、すぐにドアを閉める。

 リサ「不審者が入って来たらダメだもんね」
 愛原「あ、ああ、そうだな。廊下には誰かいたか?」
 リサ「今のところは……」
 愛原「ちゃんと、カードキー持って来たか?」
 リサ「うん!」

 リサの部屋はカードキーが2枚発行されている。
 リサ用とレイチェル用だ。

 リサ「ジュースも持って来たよー」
 愛原「レイチェルはどうした?」
 リサ「部屋で報告書書いてる。レイチェルはレイチェルで、ゴツいパソコン持って来てるんだね」
 愛原「あー……軍隊で使うヤツか?強い衝撃を受けても壊れないヤツ。あんなの持って来てたんだ」
 リサ「そうみたい。その後、お風呂入るみたいだから……あ、先生も入ったんだね」
 愛原「今日は何だか疲れたからな。病院に行くだけで疲れた」
 リサ「あー……そうか。わたし、邪魔?」
 愛原「まあ、いいや。善場係長が来るのは10時だから、そんなに早起きすることもないだろう。朝食の時間は朝7時からだし。7時から10時か」
 リサ「やっぱり、バイキングだよね?」
 愛原「ああ。2階のレストランは、基本的に昼食も夕食もバイキングらしいな」
 リサ「そうなんだ」
 愛原「それで、話ってのは?」

 リサは持って来たジュースのペットボトルの蓋を開けながら言った。

 リサ「ミキからのLINEのこと」
 愛原「太平山美樹か。秋田の」
 リサ「東京中央学園にする?って聞いたら、そこがいいって。ただ、ミキはあんまり頭良くないから、推薦入試はムリかもって言ってた。
 愛原「一般入試だと年明けの冬とかだな。リサは大丈夫なのか?」
 リサ「わたしは付属の高校からの進学だからね。普段の成績さえ確保できていれば、推薦入試で行ける」
 愛原「それでも、無試験ではないわけだな」

 それでも、他校からの推薦入試とはまた別枠且つ、試験内容も異なるのだろう。

 リサ「まあね」
 愛原「オマエは成績がいいから、そんな心配しなくてもいいんだろうがな、それでも油断しちゃダメだぞ」
 リサ「分かってるよ。それでね、わたしが聞きたいことが1つあって……」
 愛原「ん?」
 リサ「霧生市って、今どうなってるの?」
 愛原「どうなってるって……。未だに政府からの安全宣言が出されないもんだから、町全体が廃墟と化しているって聞いてるが、それがどうした?」
 リサ「なーんかね、ミキが変なこと言ってたんだよ」
 愛原「変なこと?」
 リサ「『鬼の王』がいるって」
 愛原「『鬼の王』!?」

 今度は『鬼の王』か!?
 霧生市って、今ホントにどうなってるんだ???

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