報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「最終決戦の地へ」

2015-09-20 16:07:05 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月2日15:45.天候:雷雨 特急“きぬ”130号5号車内 敷島孝夫、井辺翔太、3号機のアルエット、8号機のアルエット、MEGAbyte]

「ただのゲリラ豪雨だ。晴れ間が向こうで見えてるよ」
 敷島は窓の外を見ながら言った。
 外からは雷鳴に混じって、発車メロディの音が聞こえる。
 この時点ではまだ満席ではないが、座席表を見ると満席になっていたことから、代行輸送を担う下今市駅や栃木駅辺りでそうなるのだろう。
 電車はインバータの音を響かせながら鬼怒川温泉駅を発車した。

〔♪♪♪♪。本日も東武鉄道をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は特急スペーシア“きぬ”130号、浅草行きです。停車駅は新高徳、下今市、新鹿沼、栃木、春日部、北千住、とうきょうスカイツリー、終点浅草の順に停車致します。【中略】……春日部17時11分、北千住17時32分、とうきょうスカイツリー17時40分、終点浅草には17時45分に到着致します。【中略】次は新高徳、新高徳です〕

「……ちっ、まだ見える」
「えっ?」
 東武鬼怒川線は、正に鬼怒川温泉の温泉街を走り抜けるのだが、窓の外を見ていた敷島が苦笑いした。
「ここの温泉街、バブル崩壊やリーマンショックによる大不景気で、一時期、ホテルや旅館の廃業が相次いだのは知ってるね?」
「ええ」
 井辺は頷いた。
「中には、廃墟化した建物が電車の窓から見えて、温泉街の見栄えが悪いから何とかしろっていう問題が発生しているってな感じの内容のテレビを見たことがある」
「今、ありましたね」
「あそこの自爆装置、起動させといた方が良かったかもな」
「は?」
「いや、あそこもウィリーのアジトだった所」
「ええーっ?」
「確か俺と平賀先生とエミリーで行ったんだが、USBメモリーしか見つからなかったよ」
 前作“アンドロイドマスター”未公開部分『狂科学者の遺品』より。
「自爆装置起動とか言いやがってさ、さすがにあの時は俺達の命がヤバかったから、平賀先生が爆発10秒前に起動装置を切ってくれて助かったよ」
「……社長はいつから、そのようなハードボイルドを……?」
「南里ロボット研究所への出向の時から、運命は決まっていたんだよ。あれから何年経ったのやら……。後ろに座るターミネーチャン2号が仲間になるとは思わなかったよ」
 敷島は後ろを指さした。
 敷島達の後ろにはシンディとアルエットが座っている。
「そろそろこの辺りで、本業に本腰を入れたいところなんだがな」
「そうですね。シルバーウィークは、全てのボーカロイドのスケジュールが埋まっています」
「……MEGAbyteも?」
「はい。ミクさん達のような、ベテランボカロほど大きい仕事ではありませんが……」
 それでも、ショッピングモールのキャンペーンやライブハウスでのライブなどがある。
「井辺君、やるねぇ!」
「いえ……」
「やっぱり戦いは今日で終わらせたいな。うん!」

[同日17:00.埼玉県さいたま市大宮区・KR団本部地下研究所 1号機のエミリー&ケンショーセピア]

「待たせたな。いつの間にかシステムが変わっていて、それを解析するのに時間が掛かってしまった」
 セピアは手動でロックを解除すると、監禁室のドアを開けた。
「ありがとう。だが・どうして・私を・助けて・くれる・のか?」
「敵ではない者まで、敵に回すことまでしたくないだけさ。私は砂上の楼閣と化した顕正会を盛り返すことだけが目的だ」
「……サイボーグ化・したのも?」
「既にブラックがサイボーグ化している。……一部の法華講員からは、『アデランス』と呼ばれてるみたいだがな。まだ件の博士は、ロボットを修理中だ。今のうちにここを脱出するぞ」
「OK。浅井先生は?」
「先に上で待機させている。但し、多少認知症気味なので、会館までは避難させていない。研究所の入口付近なら、外からも見えないからな」
「なるほど」
 研究所の廊下を走るエミリーとセピア。
 だが、
「侵入者ヲ発見!」
 バージョン4.0に発見されてしまった。
「お前達!下がりなさい!」
 エミリーはマルチタイプから見れば下位のロボット達に命令した。
 逆らわないよう、両目をギラッと光らせるなどの威嚇も忘れない。
 だが、4.0集団のリーダーと思しき個体は少し思案した後、
「……エミリー様ヲ、トシテ見做ス!」
「世の中、甘くはないみたいだぞ」
 セピアは右手をマシンガンに換装して4.0の集団に発砲した。
「その・ようだ」
 エミリーもショットガンに変形させる。

[同日17:11.天候:晴 特急“きぬ”130号5号車内→春日部駅1番線 敷島孝夫&シンディ]

〔♪♪♪♪。まもなく春日部、春日部です。お出口は、左側です。春日部では、2号車と5号車の扉のみ開きます。お降りのお客様は、2号車または5号車へお越しください。春日部から東武アーバンパークライン、岩槻、大宮方面と柏、船橋方面はお乗り換えです。春日部を出ますと、次は北千住に止まります〕
〔「お客様にお知らせ致します。東武アーバンパークラインは、さいたま市内における暴動事件のため、岩槻〜大宮間で本日中の運転を中止しております。……」〕

 出発時の雷雨が嘘みたいに晴れ渡った中を走る特急列車。
「よし。俺とシンディはここで降りる」
「はい」
「何かがあったら、事務所を頼むぞ」
「社長、どうか御無事で」
「アルエットは皆を守ってあげてね」
「う、うん」
 電車は春日部駅の1番線に滑り込んだ。

〔ご乗車ありがとうございました。春日部、春日部です。……〕

 ここから乗車しようとする乗客が意外にも多いことに驚かされる。
 JRが動いていないので、振替輸送の客達だろう。
 早いとこKR団を潰して、最後の立ち入り禁止区域(大宮区、中央区、浦和区)を解除させなければならない。

 電車がインバータの音を響かせて発車して行く。
 敷島達は終点まで乗るメンバーを見送ると、改札口へ向かった。

[同日17:20.春日部駅改札外 敷島、シンディ、村中課長]

「少し遅かったな。電車が遅れたのか?」
 村中はズボンのポケットに両手を突っ込みながら話し掛けた。
「ちょっとトイレに寄っていただけです」
「なるほど。さしものヒーローも、緊張しているということだな」
「そんなところです」
「ふむ……。覚悟のほどはいいかね?」
「ええ。行きましょう」
「車を用意してある」
 駅の外に出ると、一般車乗降場にはシルバーのアルファードが止まっていた。
 リアシートから後ろはフルスモークだが、明らかに覆面パトカーである。
 運転席で待っている村中の部下は制服警官ではなかったが、やっぱり一般人という感じはしてこない。
「よし。向かってくれ」
「はい」
 敷島達を乗せた覆面パトカーは、春日部駅前を出発した。

[同日17:40.KR団本部地下研究所入り口 ケンショーイエロー]

「全く、セピアのヤツ、ワシをこんなジメジメした所で待たせおって……。何か、下からは爆発音や発砲音が聞こえるし、ここも安全とは言えんかもしれんのぉ……」
 粗末なベンチの上に座っているイエローは、そんな独り言を呟いた。
「どれ。セピアには悪いが、先に避難させてもらうとするかの……。確か、地上に上がるエレベーターのスイッチは……」
 壁にはレトロなレバーが突き出ている。
 取っ手が木製なところが何ともレトロだ。
「確か、このレバーだったかのぅ……?」

 ガチャン!(イエローがレバーを下げる)

 ビーッ!ビーッ!ビーッ!(けたたましいアラームと共に、所々に取り付けられた赤ランプが点滅する)

「な、何じゃ!?」

〔自爆装置が起動されました。関係者全員の速やかなる避難を勧告。このプログラムを停止させることはできません。繰り返します。……〕

「うおおおお!?な、何じゃと!?」

 ガチャン!(イエロー、慌ててレバーを戻す。だが、アラームと自動放送は止まらない)

「ままま、まずい!しまった!こっちのレバーじゃったか!」

 ガチャン!(隣のレバーを下げる)

 ウィィィィィィィィィィン……ガチャン(荷物運搬用に模したエレベーターが降りて来る)。
 ガチャ、ガラガラ……(ドアが開いた)。

「…………」
 後ろを振り返るイエロー、そして……。
「セピアよ。お前にはちゃんと唱題・回向しておくからの。さらばぢゃw」

 イエローは1人だけエレベーターに乗って脱出してしまった。

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