報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” 「その頃、人間達は……」

2014-06-20 21:49:19 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月20日10:00.JR秋葉原駅→都営地下鉄岩本町駅 稲生ユウタ&威吹邪甲]

〔あきはばら〜、秋葉原〜。ご乗車、ありがとうございます〕

 秋葉原駅に到着する京浜東北線南行。
 その先頭車から、ユタと威吹が降りてきた。
「えーと、ここから岩本町駅まで少し歩くから」
「承知。なるべくなら、街中は外れて歩きたいんだけどね……」
 威吹はそう言った。
「分かってるよ。昭和通り口から出て、昭和通りを歩けば大丈夫だと思うよ」
 ユタはそう答えた。
 どういうことかというと、前に電気街に遊びに行った時、羽織袴姿の威吹に外国人観光客が集まりだし、何枚も写真を撮られたからである。
 ユタが宥めすかしていなければ、
『南蛮人!無礼者!』
 と、隠し持っていた刀を抜いていただろう。
「そうか……」
「京都の舞妓さんは、街中でも頼めば写真撮らせてくれるから、その延長だと思ったんだよ」
「ここは京の都ではないだろう。京には京の、江戸には江戸の事情というものがある」
「いや、江戸じゃなくて東京ね」
 と、ユタは訂正した。
「そうか。秋葉原は堂々と江戸の区域内か。渋谷や池袋は違うみたいだけど……」

 昭和通り口を出て、昭和通りを南に向かう。
 途中に神田川があり、そこに架かる和泉橋を通るが……。
「威吹は江戸時代、この辺、歩いたことある?」
 ユタの質問に、
「いや、無いな。そもそも江戸自体、1度しか行ったことが無い」
「1回は行ったんだ?」
「さよう」
 威吹は頷いた。
「何しに?」
「まあ……さくらの護衛かな」
「威吹の初恋の人!」
「新たにできた寺社奉行に出向く必要があったついでに、その他の寺社を回ったものだ」
「へえ……」
 初めて聞いた話だった。
 今まで威吹は封印前、江戸時代の話をあまりしなかったのだが……。
「奉行所に出向くって、何かやらかしたの?」
「いや、さくらが巫女として霊術を駆使し、凶悪な妖怪を調伏したというので、その報告に向かっただけだ」
「凶悪な妖怪って……」
「ふふ……」
 当時、青梅街道を荒らし回っていた人喰い妖狐、威吹のことだ。
「江戸市中において、さすがに手ぶらで歩くわけには行かなかったからね」
「なに……?」
 その時、たまたま犬の散歩をしている住民の近くを通った。
 人間と似た姿をしておきながら、そうではない臭いに警戒した犬は威吹に吠える。
 飼い主が慌てて、リードを引っ張った。
「まあ、あんな感じだ」
 と、威吹。
 最初は眼力で、吠えて来た犬を怯ませていたが、今は勝手に吠えさせている。
「え?」
 何だろう?さくらは威吹に首輪を付け、リードで歩かせたのだろうか。
「江戸時代からあったんだ。BDSM」
「何を想像しているか分からんが、何故興奮する?」
 威吹は不審な顔をした。

[同日10:30.東京都墨田区菊川 藤谷ビル 稲生ユウタ&威吹邪甲]

「ここか。藤谷組の本社ビルって……」
 新大橋通り沿いにあるそのビルは、そんなに高いビルでは無かった。
 ざっと見た限り、7階建てくらいだろう。
 それでも自社ビルだというのだから、なかなか経営状態の良い中堅(?)ゼネコンのようだ。
 ほんの数年前に、足立区から移転したという。
 ここにユタ達が来たのは、藤谷春人に呼ばれたからである。
 まだ就職活動の時期でもないのだがとユタは疑問を投げたのだが、そうではないと。
 ちょっと手伝って欲しい事案があるのだ、と。
 普通の私服で構わないから、威吹と共に来てくれと頼まれたのだった。
「ちょっとした城だな」
 と、ガラス張りのビルを見上げた威吹は呟いた。
「まあ、今の都内のビルはだいたい城の天守閣くらいあるだろう」
 ユタ達は正面の自動ドアから、ビルの中に入った。
 セキュリティはしっかりしているらしく、入るとその先にエレベーターホールがあるのだが、その手前はオートロックの自動ドアで塞がれていた。
 小さなビルなので、別に警備員が立っているわけでもないし、受付嬢がいるわけでもない。
 入口に内線電話があり、そこで相手と連絡を取るという方式のようだ。
「えーと……藤谷班長に直に連絡取れるのかな???」
 ユタは内線電話の前にある番号表を見た。
 受話器を取り、そこから藤谷班長がいると思われる番号に掛けようとすると、
「ごめんごめん!2人とも、こっちこっち!」
 エレベーターから当の藤谷が降りてきて、自動ドアを開けた。
「そのまま入って!」
「は、はい。失礼します」
「出迎えの時機が少し遅れたようだな?」
 威吹はエレベーターに乗りながら、藤谷を見据えた。
「悪い悪い。ちょっと、顧客から電話があってさ……。ちょっと話がおしちゃって……」
 藤谷はばつが悪そうに頭をかいた。
 エレベーターは途中の4階で降りる。
 そこは会議室フロアのようだった。
 こぢんまりとした会議室に案内されると、既にそこには入口側に椅子が2つ並び、その奥に長机が1つ置いてあって、更にその後ろに椅子が3脚並べられていた。
 明らかに、面接試験の様相である。
「まあ、座って座って」
 藤谷は椅子を勧めた。
「あのな、藤谷班長よ」
 威吹は不機嫌そうな顔をした。
「ユタはまだお前の店(会社)に入ると決めたわけではないぞ。ユタに何をするつもりだ?」
「あ、違う違う。これ、別に入社試験じゃないから」
 と、藤谷。
「は?」
「それに、稲生君に座ってもらう席はここじゃなくて、そこだよ」
「は!?」
 藤谷が指さした場所は、3人席の方。
 つまり、試験官側だ。
「お茶もそこにポットと茶碗があるから適当に飲んでいいからね」
「あの、僕に何をしろと?僕は面接を受ける方はあっても、今の段階で受けさせる方にはならないと思いますが……」
「うん。実はこれから起こることを話そう。確かに採用試験ではないけど、これからここで面接はある。キミ達にはその立会人になってもらいたいんだ」
「こりゃまた面妖な……。本来無関係であるユタとオレを何かの事案に巻き込もうとは……」
「申し訳ない。もちろん謝礼は沢山するからね。これからここに面接に来る人に質問するのは、もちろん俺だ。キミ達はそのやり取りを見てくれてるだけでいい」
「一体、何を目的とした、どんな面接なんですか?」
「それだ。まだ少し時間がある。それまでに、この資料に目を通してほしい」
「雪女郎連合会?雪女の……コミュニティ団体ですよね?」
 ユタはそう言った。
 前にその話を聞いた時、組織概要がまるで法華講連合会だと思ったので覚えていたのだ。
 いや、法華連というよりは顕正会の組織に似ているかも、と……。
「そう。そして、これから面接に来るのはこのコ達だ」
「履歴書!本当は藤谷組の採用面接なんじゃないですか?」
「だったら、俺以外の役員や人事担当が来るよ」
「この雪女、あれじゃないのか?藤谷班長に“獲物”になるよう、接近している者では?」
「そうなんだ。さすがにあそこまでされたら、俺も話くらい聞いてやろうと思ってな」
「いい加減、締結書にサインしてあげましょうよ」
 ユタはニヤけた顔で言った。
「ダメだ。相手はヘタすりゃ人殺しも辞さない妖怪だぞ?そう簡単にサインしてたまるかってんだ」
「まあ……考え方は賢明であるが……だからと言って、何もユタやオレに出張らせる必要は無いだろうが。妖狐が関わったなんてなったら、話がデカくなって却って面倒だぞ」
 威吹は再び不機嫌になる。
「だから謝礼はするって。お得意さん用に用意する御中元の高級なヤツ、そっちに回すからさ」
「だってさ、威吹」
「ったく……。で、これから来る雪女が2人ってどういうことだ?一部の例外を除いて、雪女もまた獲物は1人につき、人間の男が1人という掟だと聞いたぞ?」
「この氷奈ちゃんってコの保護者だってさ。親ではないみたいだけど……」
「ふーん……。まあ、あいつらの繋がりはオレもよく分からん」
「じゃあ、オレが真ん中に座るから、あとは適当に両隣に座ってくれ」
「はーい」
「あいよ」

 こうして、面接の時間が刻々と迫ってくる。
 一体、何が起こるのだろうか。
 緊張感が高まる人間2人に対し、威吹はのんきにお茶を啜っていた。
(この茶、ヌルい……)
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小説の途中ですが、ここで通常の日記をお送りします。

2014-06-20 00:04:41 | 日記
 小田急線、やっちまいましたね。
 股尾前科が小田急にもいたのかと思ったが、もう少し事故原因の究明が進まなければ何とも言えない。
 事故のあおりを受けた利用者の皆さんにおかれてはとんだ災難であったが、ケガ人が無くて何よりである。
 脱線した1000系らしき車両も、あの程度なら修理で済むだろう。

 ところでここ最近、名前の欄に「差別用語」と書かれた方の書き込みが2回あった。
 無論、特に問題のあるコメント内容ではないのだが、名前の欄に書かれているので、「差別用語さん」とお呼びして良いのか迷った次第だ。
 “差別用語”さんはパラパラ茜さんのブログ内容や、その他のネット内での振る舞いに対して苦言を呈しておられる。
 私はそこまで関知してはいないが、バーズさんの所にも書き込まれているところまでは知っている。
 少なくとも私が出した結論は、
「武闘派以外は関わらない方が良い」
 ということだ。
 風の噂で聞いたところによると、彼女は私より10歳ほど年上らしい。
 つまり、バブル(末期)世代である。
 あーあ……だ。
 いや、まあ、その……何だ。
 あまり、いいイメージは無いということだ。
 私と同じ世代、もしくはもっと若い世代なら、
「これからの未来を大事に」
 と思い、大きなお世話かもしれないが、何とかしてあげたいという気持ちが働くのだが、あの歳でアレだともう……【お察しください】。

 私も顕正会、法華講と色々な人と話をしてきたが、1番ご遠慮願いたいタイプというのが、
「私が!私が!」
 と自己主張の強いタイプと、マシンガントークぶっ放されて相槌打ち続けるこっちの身にもなれよと突っ込みたくなるタイプだな。
 相槌を打つのをやめた時点で、何かに気づいてほしいものだ。
 え?反論不能になったから私の勝ちだって?……なに?法論ってのは、マシンガントークを先にブッ放す方が勝ちなのかい?
 法華講にもいるタイプなので、この辺はまあ……といった感じだな。

 少なくとも私はそういうタイプじゃないよ。
 何だか知らんが、顔を合わせると、マシンガントークされる側だから。
 聞いてるこっちはワケ分からんよ。
 小説だったら作者のサジ加減で、セリフをキリのいい所で打ち切れるのだが。
 だからなのか、小説家にはマシンガントークを放つタイプってのはあまりいないそうだ。
 長ったらしいセリフがどうなのかを知っているからだろう。

 ああ、今思い出した。
 顕正会時代の話だが、大抵折伏する時って、上長と一緒じゃない?
 私は短く話して相手の反応を伺い、それに応じてまた短く答え……という会話法が主流で、今もそうなのだが、隣の上長がマシンガントークやらかしちゃうと、隣にいる私はヒマでしょうがなかった。
 相手に反論させる隙を与えないんだってさ。
 いや、反論させてあげようよ!別にいいだろ!
 反論というか、むしろ質問だろうが。
 法華講ではそんなことないのだろうと思ったが、意外とそうでもなかった。

 短く話して相手の反応を伺い、それに応じてまた短く答え……っての、ダメなのかな?
 いや、確かに成果は出てないけどね。
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“ユタと愉快な仲間たち” 「幻想郷の穴」 2

2014-06-18 19:31:54 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
 ※著作権を放棄した“新人魔王の奮闘記”が出てきますが、著作権譲渡先の作家さんの許可を頂いております。

[魔界時間6月18日13:00.アルカディア王国 魔王城 ルーシー・ブラッドプール1世&ポーリン・ルシフェ・エルミラ]

「あなたを宮廷魔導師にしろ、と……?」
「ええ。少なくとも私は、イリーナみたいに途中で投げ出して逃げるようなことはしませんわ」
 玉座に座る魔界の女王ルーシー・ブラッドプール1世は困惑した表情で、眼下に畏まる女魔道師を見下ろした。
 雪女のように病的なほどに青白い肌。
 美しくウェーブの掛かった金髪に碧眼。
 これだけ見ると、まるで“雪の女王”だが、あいにくと彼女は吸血鬼……ヴァンパイアが出自である。
 人間界で生まれ育った者で、そこでも先祖を辿れば、辺境領主に仕えていた貴族の家系に行き着くという。
「確かに昔……まだこの魔界がバァル大帝の政治だった頃には、そのような役職がありました。それに一時期、あなたの妹弟子であるイリーナ師が就いていたというのは事実です。そして、どのような経緯でその役職を退いたのかは、私も知りません。ですが今はバァル大帝による絶対王制ではなく、政党や議会が国政を運営する立憲君主制です。宮廷魔導師なる役職に、必要性を感じ得ません」
「ふふふ……」
 すると、ポーリンは笑みをこぼした。
 彼女もまた金髪碧眼の白人であるが、ルーシーの髪が銀色に近い金だとすれば、こちらは黄色に近い。
「恐れながら、陛下は宮廷魔導師の業務内容について、全てをご存知ではないようですね」
「と、言いますと?」
「イリーナが逃げ出した理由について、陛下はどうお考えでしょうか?」
「……バァル帝政が変わって、私が王政を引き継ぎました。その際、政治体制について混乱があったのは事実です。恐らくそれで王国を見限ったのではないでしょうか。あの政変では、仕方の無いことです」
「それは表向きの理由です。どんなに政変が起ころうと、そこに国が存在する限りは居続けるのが魔道師というものです。このお城の地下に、“大水晶”がございますね?」
「それが何か?」
「あれを暴走させた責任を取らされるのが嫌で逃げ出したのですよ」
 ポーリンは妹弟子の不祥事を嘲笑った。
「大水晶の操作を魔道師が?」
「はい」
「バァル大帝は私に王政を引き継がせる際、大水晶は全て私が管理するように強く言っていた……」
「魔道師に管理させて失敗したので、懲りたのでしょうね。場合によっては、国が1つ無くなる代物ですから。私ならイリーナと違い、大水晶を正当な使用法で管理することができますわ」
「あなたの言いたいことは分かりました。いずれにせよ大水晶は、国宝級のものです。それに関わる役職の復活とあれば、議会に掛けなくてはなりません。あいにくと今、議会は閉会中で首相も不在です。回答はしばらくお待ちください」
「ふふふふ……」
「さっきから無礼だぞ、貴様!」
 ポーリンの笑みに、侍従長のセバスチャンが突っ込んだ。
「申し訳ありません。陛下が事情もご存知無く、悠長でおられるのに驚きまして……」
「何が言いたいのですか?」
 ルーシーは髪の色と同じ眉を潜めて、魔道師を見据えた。
「既に大水晶は、欲求不満が溜まった7人の悪魔達を吸い取って暴走しかかっています」
「分かっています。しかしそれは私が責任を持って、抑えていますので、余計な心配は御無用」
「本来それは魔王様のお仕事ではなく、側近たる宮廷魔導師の仕事なのです。まあ、バァル大帝は人選に失敗されたようですが……。既に、人間界に影響が出始めているようですよ」
「多少の影響はご容赦です。ハル……うちの安倍首相も、それは承知の上です」

[同日同時間帯 東京都江東区森下 ワン・スター・ホテル エレーナ・マーロン]

 エレーナは師匠ポーリンの元から日本に出張してきた。
 幻想郷の入口を探しに長期滞在するにも、その滞在先の確保は必要不可欠である。
 ポーリンのつてで、彼女は東京23区内のビジネスホテルに滞在が決まった。
 とはいっても、江東区の森下地区は山谷ほど有名ではないにせよ、いわゆるドヤ街が形成されていた町でもある。
 今あるビジネスホテルなどは、ドヤだった物がバージョンアップしたものだという。
 エレーナが滞在している場所も、シングル一泊数千円程度の部屋で、建物もこぢんまりとしているものだった。
 夫婦経営で、エレーナにはこの経営者夫婦が師匠とどういった繋がりがあるのか分からなかった。
 最上階の部屋(といっても、6階だが)を確保してくれたのは、ホウキで離発着するのに都合が良いからとのことだが、さすがにこんな街中過ぎる場所をホウキで離発着していたら、あっという間に騒ぎになるだろう。
 夜中であっても、人の目があるのが都会というものだ。
 飛ぶ練習なんかもしないといけないのだが、なかなかいい案が浮かばない。
 また、ワープの魔法なんて、そうそう使えるものでもない。
 それに、エレーナにはここでの仕事もあった。
 上記の理由から宅急便ではない。
 現実は厳しいのだ。
 それは、フロントの仕事。
 といっても、基本的にはその補助である。
 どういうことかというと、今、ドヤ街の客層に劇的な変化が訪れているのだ。
 それまでの日雇い労働者などから、若い外国人旅行客である。
 安い宿泊料金で且つ安全に泊まれるホテルということで、特にバックパッカー達からの注目度が俄かに増しているという。
 だがあいにくと、彼らのほぼ全員が日本語を喋ることができない。
 バックパッカーも英語圏の人間だったり、ヒスパニックだったり、中華圏の人間だったりと様々だ。
 そんな時、どんな言語にも対応できる魔道師は貴重だった。
 エレーナを含め、流暢な日本語でユタ達と会話する彼女達だが、彼女らは知ってて日本語を喋ってるのではない。
 自分の母国語を魔力に乗せて喋っているだけである。
 逆に、外国人が話す外国語を魔力で変換して翻訳することも可能。
 つまり、彼女の仕事は通訳である。
(※宮崎アニメ版“魔女の宅急便”では、キキは外国に行ったわけではないので、そういった描写は無い)

 ここでホテルのフロントの仕事をしてみて、あることに気づいた。
 確かに、客層はバックパッカーが多かった。
 彼らはその名の通り、バックパック1つで世界中どこへでも旅をする。
 しかもパッケージツアーで行くような有名観光地ではなく、その国の内情を映し出す小さな町や村へ足を運ぶのを良しとする者もいる。
 その彼らがもたらす情報が、意外と大きいことに気づいたのだ。
 中には日本国中を旅した後、母国へ帰るというアメリカ人旅行客がいて、彼が体験した不思議な現象の話も聞いた。
 が、魔道師的には既に正体の分かるものだったので、エレーナは相槌を打つだけだったが。
(それにしても、飛ぶ練習もしないとなぁ……)
 確かに情報は溢れていたが、どれもこれも幻想郷の入口を連想させるものは無かった。
 やはり、自分で探さないとダメなのか。
 しかし、意外と日本も広い。
 1人で探していると、やはり時間と労力が無駄に消費されるだけだと思う。
 宿泊代どころか、アルバイト代が出るくらいだから、それでお金を貯めて、何日も掛けて探しに行こうか……。
 そんなことも考えていた。

 そんなある日のこと……。
「いらっしゃいませー」
 たまたま1人で店番していた時、1人の宿泊客がやってきた。
「こんにちは。予約してないんだけど、シングル1つ空いてるかしら?」
 1人の女性客が飛び込みでやってきた。
 その姿を見たエレーナは、
「ああーっ!?」
 物凄く驚いた。
 その相手とは……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 何かまたユタ達が登場してこないので、外伝みたいになってしまいました。
 いや、一応出る予定なんで、本編扱いなんだけど……もしかしたら……。
 本編に“外伝”という文字が後で追加されたら【お察しください】。

 それにしても“ドヤ”ってのも、差別用語なのかなぁ……???
 正式名称は『簡易宿所』って言うみたいだけど、これだとイメージ湧かないんだよなぁ……。
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紹介する予定は無いけど、こんなのもある。

2014-06-17 19:26:30 | 日記
 今現在、当ブログで紹介させて頂いている私の作品は2つ。
 “ユタと愉快な仲間たち”と“アンドロイドマスター”である。
 昔々に書いた作品は、今よりずっと鉄道熱が高かったこともあって、鉄道をネタにした作品をよく書いていた。
 もちろん、今の鉄道システムでは有り得ない設定が満載なので、中二病もいい所である。
 今から思えば、敷島孝夫の原型となる人物もいたし、稲生ユウタの原型となる者もいた。
 主人公は3人。“国土交通省鉄道事故調査委員会特別調査室調査員”とか、“新日本鉄道倶楽部(略称、新日鉄。あの鉄鋼メーカーじゃないよ)参事”とか、“全国鉄道警備保障東京駅警備隊”とか、物凄く中二病感満載の設定だ。
 品川駅に京急の快速特急が時速120キロで3番線に突っ込むシーンは見ものです。……ありえねっつの。それ以前に北品川駅のカーブで脱線するっつの!
 因みにあの世とこの世を結ぶ冥界鉄道公社は、ここが初出である。
 動力車操縦免許(電車の運転免許)を持った国道交通省【中略】調査員の主人公が、悪魔に乗っ取られ、あの世に行けずにこの世の鉄道線を彷徨う電車(モハ63系)を運転して、あの世に行く線路に乗せて“成仏”させるシーンがある(←この時、まだ顕正会に入信すらしていなかったので、この場合の成仏とは世間一般的な意味)。
 この時の名前は魔界急行電鉄だった。
 電鉄なのにSLが登場するので変だと思い、改称した。そうなると、桃太郎電鉄も電鉄なのにSLが出てくるが……。
 魔界高速電鉄は、ここから取った。
 いや、路面電車も運行しているのに『急行』は無いだろうと思って。
 その割には東急、つまり東京急行電鉄も世田谷線という法律上は路面電車とされる路線を持っているが。

 まあ、今の作品もね、私の妄想をふんだんに盛り込んだものですよ。
 事実は小説より奇なりと言うが、私の作品を超える事態が現実で起こるかな。
 ……ま、起こったけどね。(例、上記作品執筆中に起きた福知山線脱線事故や宿毛駅に時速100キロで突っ込んだ特急列車。車止めは壊すわ、完成したばっかのエレベーターはブッ壊すは……確か先頭車、更にその先の壁もブッ壊して、駅の外に飛び出たんじゃなかったっけ?“ユタと愉快な仲間たち”の前に書いていた“顕正会版人間革命”の執筆中に起きた東日本大震災。折伏という名の勧誘をしていた対象者に、『天変地異でも起こるのかよ!』と売られた言葉に対し、『そうだ!』と答えた後【お察しください】)
 ……『メテオ・シューティング』が本当に起きたらゴメン。
 うちのポーリンがやったことにしておきますw

 明日は朝早くから仕事なので、この辺にさせて頂きます。
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“ユタと愉快な仲間たち” 「むさ苦しき男たち」 2

2014-06-17 14:36:32 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月18日12:00.日蓮正宗・正証寺近くのソバ屋 稲生ユウタ、藤谷春人、威吹邪甲、威波莞爾]

「いらっしゃーい!」
「ちわ」
 ユタ達は御経の時間を終え、昼時になると、近くのソバ屋で昼食を取ることにした。
 駅近くでもあるので、なかなか賑わっている。
 それでもテーブル4人席を確保すると、早速注文した。
 妖狐2人は相変わらず、きつねソバとキツネうどんを注文していた。
 狐だけに、油揚げには目が無い様子。
「遠慮しないで好きなもん食えよ。奢ってやるからな」
 と、藤谷。
「ありがとうございます、班長」
 この場合、奢ってくれる人より高い物を頼んではいけないというのは社会の鉄板ルールだ。
「よし。俺は、かけソバだな」
「はい?」
「!」
「カンジ。オレ達は別会計にしよう」
「ハイ」
「冗談だっつの!天ぷらソバ。冷たいヤツ」
「あ、じゃあ、僕はうどんで……」
「ありがとうございます」

〔「こんにちは。お昼のNHKニュースをお送りします。今朝8時頃、東京都中野区の住宅街で火災があり、焼け跡から……」〕

 4人の座る位置からテレビが見える。
「今日は稲生君、大学はいいの?」
「今日は午後からです。今はもう、週に3回くらいは午後からの授業に固まってますね」
「その方が朝ラッシュも避けられていいな」
「ええ。なので、ここでご馳走になったら、大学に行きます」
「おう、そうか。精が出るな」
「いえ……」
「藤谷組では、総合職として大卒者を募集するぞ?」
「それは就職活動をする時に考えておきます。実はまだ進路決まってない……
「そうか」
 すると威吹が苦笑して言った。
「藤谷班長よ、ユタを勧誘してるヒマがあったら、雪女からの勧誘を何とかした方がいいんではないか?」
 最後にはニヤッと笑う。
 口元からは鋭い牙が覗いた。
「えっ、まだ続いてたんですか!?ついてっきり、体よく断って終了したのかと……」
 ユタは驚いた顔をした。
「いや、まあ、その……。そこの威吹君の言う通りでさ……。そろそろ暑くなれば時効かなと思ったんだが、雪女ってのは、意外と夏でも活動できるらしい」
「妖力はかなり落ちるが、それが却って人間のフリをしやすくなるって話だ」
「相変わらず、下着を送られてきてるんですか?」
「いや、さすがにそのネタは尽きたのか、今度は別のモン送ってきた」
「今度は何でしょう?確か、前回はスクール水着だと聞きましたが……」
「ブルマなんて、稲生君知らないだろ?」
「うーん……。覚えてる限り、女子の体操服はハーフパンツでしたねぇ……」
「だろ?スク水ときて、今度はそれかと思ったんだが、どうやら水着繋がりだったらしい」
「で、何ですか?」
「ビキニだった」
「はあ……」
「それってつまり、夏でも活動できるぞっと意味でもあるんだよな、きっと」
「あっ、そうか!」
「うむ。確かに暑さには弱いが、だからといって歩き回れないわけではない」
 威吹は大きく頷いた。
「人間達の伝説で、夏に雪女の話が無いのは、あいつら、冬以外は活動できないというよりは、大体が人間のフリしてるだけの話だよ。他の季節には、もう目ぼしい獲物を見つけるんだそうだ。そして冬を待って、一気に畳み掛ける。だから、大体が冬、雪女に狙われるのは、偶然というよりも、実は他の季節にもう目を付けられていたというわけだ。まあ、どこまで本当かは分からないけど、オレはそう聞いた」
「俺の場合は偶然だよな?」
「その行動からして恐らくそうだな」
「そのビキニも新品じゃなくて、着た跡があったよ」
「あらま……」
「ご丁寧に着てる時の写真付きで」
 ユタ達はその写真を見た。
「おおっ、美人さんですねぇ!」(ユタ)
「まあ、雪女はきれい所が揃っていて当たり前の集団だからな」(威吹)
「それを断るとは、藤谷班長も贅沢者だ」(カンジ)
「ちょっと待てや。俺が悪いのか?」
「班長、いい加減ハラ決めましょうよ〜」
 ユタは藤谷を促した。
「ばかやろ!まだ折伏のハラ決める方がいいっつの!氷漬けなんてカンベンだぜよ」
「ああ、それなら……」
 と、カンジが言った。
「今はよほどの裏切り行為が無い限り、そんなことはしないそうですよ。確かに昔……といっても、まだ連合会が結成される前の話ですが、男の精を搾り取って、後は氷漬けというのが横行していたようですが、今はそれは禁止になったようですよ」
「ええっ?」
「それを繰り返していたのでは、いずれ稲生さんみたいな特A級(S級の異称)の人間がやってきて滅されてしまいますし、そうでなくても、おまんまの食い上げ状態になってしまうでしょう。妖狐や鬼族みたいに、『獲物を1人に絞って、少しずつ精を分けてもらう』方式にしたそうです」
「それがオレかよ」
「いいんじゃないですか。僕や栗原さんを見れば分かるでしょ?結構、大事にしてもらえますよ。雪女がどんなことをしてくるか分かりませんけど、似たようなものでしょ?」
 ユタの言葉にカンジが同調するように頷き、言った。
「実はオレ、彼女らの“盟約締結書”の見本を見たことがあります。結構細かく書いているのですが、全体を見た限りでは、“獲物”を簡単に殺すような内容は見受けられませんでしたね」
「そうは言ってもなぁ……」
 藤谷は難しい顔をした。

「キツネうどんになりまーす」
「はい、どうも」
 注文したものが届き、それぞれ箸を付ける。
「ほら、オレ、女嫌いで通ってるだろ?だからこそ余計にOKできんのよ」
「これを機に、女嫌いを克服したらどうですか?」
 と、ユタ。
「彼女ができたら、いきなりモテ期が来たお前に言われたかねぇな。いいか?俺が、そもそもどうして日蓮正宗に入信したかだ。知ってるだろ?」
「ええ、まあ……」
「禅寺の住職に尼がやってきて、総本山とケンカしたんだろ?」
 威吹は油揚げをかじりながら言った。
「尼僧のいない宗派を探したら、日蓮正宗だったということですが……」
 カンジはズルズルとソバを啜りながら言った。
「そう。日蓮正宗はな、御隠尊猊下様の御母堂様であられるところの妙修上人が最後の尼僧だ。あとは1人もいない。実に素晴らしい宗派だ」
(それで、何人のゲイが入信してきたことやら……)
 と、ユタ。
(そんな入信勧誘成功させられるの、藤谷だけだな……)
 と、威吹。
「…………」
 ノーコメントのカンジ。
「まあ、もう1つ気になったことはあったんだけど、俺の思い過ごしかもしれねーし……」
「何ですか、それ?」

〔「たった今、入ったニュースです。寺の修繕費用と偽って、檀家から布施およそ3000万円を集めたとして、警視庁○○署は詐欺の疑いで、この寺の住職を逮捕しました。逮捕されたのは、東京都足立区○○にある××寺の女性住職……」〕

「ああっ!?」
 藤谷は驚愕の声を上げた。
「な、何ですか!?」
「俺が前いた、禅宗の寺!」
「何ですって!?」

〔「……調べによりますと、この元住職は寺の修繕費用と偽って、檀家から布施およそ3000万円を騙し取り……」〕

「こ、これ……どういうこと?」

〔(××寺の檀信徒Aさん)「いやあ、びっくりましたよ〜。まさか、うちの住職さんがねぇ……」(同じくBさん)「いや、実は夜な夜などこかに出かけてるって話は聞きました。……場所ですか?私が聞いた限りではホストクラブとか……」〕

「あのクソ尼!だから変だと思ったんだ!よし!今から、折伏しに行くぞ!」
「ええっ!?」
「あそこの檀家達が禅宗に対する信仰を失墜させた今、根こそぎ日蓮正宗に全て引っ張り込むんだ!」
「そんな、コバンザメみたいな折伏やめましょうよぉ〜」
「じゃかましい!いっそのこと、あの寺は日蓮正宗で乗っ取ってだなぁ……」
「まあ、落ち着けって。まだ、海老天が残ってるぞ」
 威吹に宥められる藤谷。
「ったく!何でこう女ってヤツぁ、金カネかねばっかなんだ!?」
「1つ言えることは……」
 既につゆを啜る段階まで食い終わっていたカンジが言う。
「少なくとも班長にラブコールを送っている雪女は、そういう類の者ではないということです」
「……締結書にそんなこと書いてあんのか?」
「というよりは、彼女らは“色欲”の妖怪であって、“強欲”の妖怪ではないのです。強欲……金銭欲ですね。つまり、基本的にカネに興味はありません。締結書のどこにも、少なくとも相手の男に金を求めるような記載はありませんよ?その代わり、どのくらいの頻度で“精”を寄越せというのはありますけど……」
「な、なにっ?」
「まあ、ヘタな人間の女と付き合うよりは楽かもしれないねぇ……」
 と、威吹。
「キノを見て御覧なさいよ、と。栗原さんに見事にあしらわれて、大変そうだろ?少なくとも雪女にああいう感じの女はいないよ?」
「そ、そうか?」
「ああ」
「後で、電話してみるかな……」
「おっ!」
「確か、この前送って寄越したビキニショーツの尻の部分(それも内側)に書いてあったような……」
(“色欲”の妖怪って……つまり、痴女ってことか。写真を見る限り、清純そうな人なんだけど……)
(最近の雪女は色んなことやるなぁ……)
(最後にはどんな物を寄越すのか、少し興味があったが……)

 実際に藤谷が盟約を締結したかは【お察しください】。
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