[6月16日11:00.仙台市泉区のぞみヶ丘 アリスの研究所 敷島孝夫、アリス・シキシマ、十条伝助]
「ほお……。それでは不妊治療を行うようにしたのか」
「まあ、現実に目を背けてはなりませんね」
研究所の事務室で、敷島と十条は話をしていた。
「まあ、希望は最後まで捨ててはならんよ。ところで、わしがここまで足を運んだのは、もう1つ理由があってな……」
「何ですか?」
「覚えているかね?この鍵を……」
十条は鞄の中から、古めかしい黄色の鍵を取り出した。
「覚えていますよ。東京くんだりでしたねぇ……。ウィリーの遺産探しに翻弄されて……。結局、宮城県沖の海底に埋まってるなんて結果が出て、どうしようも無くなったんで、調査は中止になったんでしたっけ」
「ふむ。厳密には中止ではなく、休止なのじゃが。まあ、理由は予算によるものだが、実は政府が海洋調査の予算を付けてくれる手筈になっての」
「えっ!?」
「この前の理事会で、それが明らかになった」
「ということは……」
「政府もウィリーの遺産に目を付けたってことじゃよ。埋まっている場所が日本の領海内である可能性が高く、引き上げればこっちのものじゃろうて……。何しろ、ウィリーは独り者で身寄りなどおらんしな」
とはいってもアメリカ国籍を持っていたから、場合によっちゃ、アメリカ政府が、
「アメリカ人の遺産なんだから、ウチのもんや、コラー!!」
なんて言いそうだが……。
「でも、いくら予算が付くといっても、見つかる手立てはあるんですか?『宮城県沖』と一口に言っても、相当広いですよ?ただ単に潜って見つかるものなんでしょうか?」
「政府だって、夢見空で予算を付けるわけが無かろう。ちゃんと、勝算あってのことじゃ」
「へえ……」
[同日14:00.JR仙台駅西口一般車乗降場 敷島、MEIKO、KAITO、初音ミク]
「ただいま帰りました」
「おう、お疲れ。東京収録ご苦労さん。悪かったな。同行できなくて」
「いえ、いいんですよ」
「じゃあ、研究所に戻ろう。乗って乗って」
車に乗り込む。
「ドクター・ウィリーの遺産探しを再開すると聞きましたが……」
車が道路に出ると、KAITOが話し掛けてきた。
「ああ。来週な。財団がどういう風に動いたのか、最近フケっ放しだからワケ分からんよ」
「ははは……」
「で、どういう感じでやるの?」
と、MEIKO。
「エミリーに捜索させるらしいな」
「エミリーに?」
「いくら海の底に沈めたと言っても、その後回収できなきゃ意味が無いだろ?どうやって回収するんだろうって、理事達は考えたらしいな」
更に続けて言う。
「当初はレーダーで位置情報をと思ったんだけど、それだと別の機関が傍受して横取りされる恐れがある」
「で?」
「エミリーのライブラリの中に、『海の底の箱』にしか見えない画像があって、これじゃないかってことになった。つまり、モノ自体をエミリーに記憶させる。位置情報なんかも、エミリーだけ分かるようにしてるんじゃないかな?」
「でも、どうやってエミリーに覚えさせたんでしょうか?」
「アリスが持参した『嫁入り道具』の中にあったよ。外付け記憶媒体の中に。だから元々はシンディが記憶していたものだと思う」
「なるほど」
「でも、よくアリス博士が許しましたね。ドクター・ウィリーの形見には、あまり触れさせないじゃないですか」
「ああ、まあな……。あいつも少しは丸くなったってことかな……」
敷島は苦笑いした。
(この前の逆レ○プの詫びだとは口が裂けても言えねぇ……)
そう思った後で、
「天ぷら食いてぇとか言いやがったけどな、あいつ」
「いいじゃない。食べさせてあげれば……」
「いや、普通の店じゃなくて、カウンターで職人が直接揚げて客に出すヤツね」
「ああ、なるほど」
「大変ですねぇ……」
「ほお……。それでは不妊治療を行うようにしたのか」
「まあ、現実に目を背けてはなりませんね」
研究所の事務室で、敷島と十条は話をしていた。
「まあ、希望は最後まで捨ててはならんよ。ところで、わしがここまで足を運んだのは、もう1つ理由があってな……」
「何ですか?」
「覚えているかね?この鍵を……」
十条は鞄の中から、古めかしい黄色の鍵を取り出した。
「覚えていますよ。東京くんだりでしたねぇ……。ウィリーの遺産探しに翻弄されて……。結局、宮城県沖の海底に埋まってるなんて結果が出て、どうしようも無くなったんで、調査は中止になったんでしたっけ」
「ふむ。厳密には中止ではなく、休止なのじゃが。まあ、理由は予算によるものだが、実は政府が海洋調査の予算を付けてくれる手筈になっての」
「えっ!?」
「この前の理事会で、それが明らかになった」
「ということは……」
「政府もウィリーの遺産に目を付けたってことじゃよ。埋まっている場所が日本の領海内である可能性が高く、引き上げればこっちのものじゃろうて……。何しろ、ウィリーは独り者で身寄りなどおらんしな」
とはいってもアメリカ国籍を持っていたから、場合によっちゃ、アメリカ政府が、
「アメリカ人の遺産なんだから、ウチのもんや、コラー!!」
なんて言いそうだが……。
「でも、いくら予算が付くといっても、見つかる手立てはあるんですか?『宮城県沖』と一口に言っても、相当広いですよ?ただ単に潜って見つかるものなんでしょうか?」
「政府だって、夢見空で予算を付けるわけが無かろう。ちゃんと、勝算あってのことじゃ」
「へえ……」
[同日14:00.JR仙台駅西口一般車乗降場 敷島、MEIKO、KAITO、初音ミク]
「ただいま帰りました」
「おう、お疲れ。東京収録ご苦労さん。悪かったな。同行できなくて」
「いえ、いいんですよ」
「じゃあ、研究所に戻ろう。乗って乗って」
車に乗り込む。
「ドクター・ウィリーの遺産探しを再開すると聞きましたが……」
車が道路に出ると、KAITOが話し掛けてきた。
「ああ。来週な。財団がどういう風に動いたのか、最近フケっ放しだからワケ分からんよ」
「ははは……」
「で、どういう感じでやるの?」
と、MEIKO。
「エミリーに捜索させるらしいな」
「エミリーに?」
「いくら海の底に沈めたと言っても、その後回収できなきゃ意味が無いだろ?どうやって回収するんだろうって、理事達は考えたらしいな」
更に続けて言う。
「当初はレーダーで位置情報をと思ったんだけど、それだと別の機関が傍受して横取りされる恐れがある」
「で?」
「エミリーのライブラリの中に、『海の底の箱』にしか見えない画像があって、これじゃないかってことになった。つまり、モノ自体をエミリーに記憶させる。位置情報なんかも、エミリーだけ分かるようにしてるんじゃないかな?」
「でも、どうやってエミリーに覚えさせたんでしょうか?」
「アリスが持参した『嫁入り道具』の中にあったよ。外付け記憶媒体の中に。だから元々はシンディが記憶していたものだと思う」
「なるほど」
「でも、よくアリス博士が許しましたね。ドクター・ウィリーの形見には、あまり触れさせないじゃないですか」
「ああ、まあな……。あいつも少しは丸くなったってことかな……」
敷島は苦笑いした。
(この前の逆レ○プの詫びだとは口が裂けても言えねぇ……)
そう思った後で、
「天ぷら食いてぇとか言いやがったけどな、あいつ」
「いいじゃない。食べさせてあげれば……」
「いや、普通の店じゃなくて、カウンターで職人が直接揚げて客に出すヤツね」
「ああ、なるほど」
「大変ですねぇ……」